かど)” の例文
その故は、右三ヶ国、日本と取極めの条約中に、免許のかど多き国民これ有り候はば、同様の免許之有るべき旨、御立合の規定之有り候。
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
ればといいこれを幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア嫌疑けんぎの筋があるとか取調べるかどがあるとかいっ取敢とりあえず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
見捨みすてたと云かどがあるゆゑ道具だうぐ衣類いるゐは云までもなく百兩の持參金ぢさんきんはとても返す氣遣きづかひなしと思ふゆゑそれそんをしてもかまはぬが何分なにぶん離縁状りえんじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夏中休暇に、友達の処に滞留している筈であったハフは、ターンハムプトンと云う村で放浪飲酒、暴行のかどを以て拘引されました。
その頃は申告の為方しかたなんぞはまっていなかったが、かどあって上官にえっする時というので、着任の挨拶は正装ですることになっていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
平生へいぜい水戸学派の諸書を愛読し、就中なかんずく靖献せいけん遺言いげん』を尊奉し、毛利侯よりも「尊攘の大義を確守し……」のかどを以て賞賜しょうしを受けたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
明くる寛文四年の三月に水野十郎左衛門は身持よろしからずというかどで切腹を申付けられた。彼は自分の屋敷で尋常に死に就いた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この老婆ろうばは以前は大塚おおつか坂下町辺さかしたまちへん、その前は根岸ねぎし、または高輪たかなわあたりで、度々私娼媒介ししょうばいかいかどで検挙せられたこの仲間の古狸ふるだぬきである。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
悪人ながらお柳は実母でございますから、親殺しのかどは何うしてものがれることは出来ませんので、町奉行筒井和泉守様はよんどころなく
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うっかりすると謀殺か強盗のかどで首を絞められるかも知れないおそれが十分にある。そんなにまで恐しい事件にタッタ一人で触れて来たのだ。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
復讐ふくしゅうだ、復讐だ! きっと其の男を殺して、八ツきにしてやるんだ。おれがその男を殺したかどにより、次の日、死刑にされたっていい』
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
尚又謀叛に組したかど遠流おんるに処せられた人々は、延寿院玄朔、紹巴法眼、荒木安志、木下大膳亮だいぜんのすけ等であったが、それについて太閤記は云う
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「どうも已むを得ませんから、其筋へ上申して見ようかと思ひます。御職権外の事をなさるやうですから。」詞にかどを立てゝ云つたのである。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
規則違反のかどを以て刑事巡査に引き立てられ九段の警察へ引張られて屈辱きわまる取調べを受けた馬鹿々々しいにがい経験を持っている私は
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
断つて置くが、僕は北京官話が少し出来るといふかどで雇はれたので、督軍の数よりも四分五裂になつてゐる各省の方言にはまつたく通じない。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
主人の意にそむいたと云うかどであろう、伯耆は自ら不遇であることを感じたから、何につけにつけ、日頃不快に思っていた。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
藻西太郎は此外に何事をも言立ざりしかど彼が己の女房をかくも罪人と思い詰めたる所を見れば、何か女房に疑う可きかどの有りしには相違なく
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
關守る兵卒は手形に疑はしきかどなしと言渡しつ。この宣告の早かりしにはフエデリゴのひそかに贈りし「パオロ」一枚の效驗もありしなるべし。
「へえい。一夜も百夜もお貸しする段ではござりませぬ。お殿様に御不審のかどなぞあろう筈もござりませぬゆえ、およろしくば御案内致します」
それに従って、甘寧の手引きした呂蒙りょもうにも、このかどで恩賞があった。以後——横野中郎将おうやちゅうろうしょうととなうべしという沙汰である。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その左賢王に打破られた公孫敖こうそんごうが都に帰り、士卒を多く失って功がなかったとのかどろうつながれたとき、妙な弁解をした。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
画を逆さまに掛けて置いてそれが逆さまだと判るやうだつたら、う一かどの鑑定家といつてい。その上の心得は余り画を愛しないといふ事だ。
いきなり横あいからでも組み付いて——と、玄蕃、すきうかがってじいッ——見つめているうちに、かれもまた一かど武芸者ぶげいしゃ、ただちに看破かんぱ出来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一とかど筋の立つた手柄をさせて、八丁堀の旦那方に顏をよくした上、手頃な女房も持たせて、一本立ちの岡つ引にしてやらうと言ふ平次の望みが
「どんなわるいことをしたのか知らんが、お父さんは、ふみちゃんに不都合なかどがあるから退校させると書いてあるよ」
殊に、機関兵などは、前に疑はれたと云ふかどがあるものですから、大へんな嬉しがりやうでした。——所が集つた信号兵を見ると、奈良島がゐません。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「拙者は無礼討ちの届出に来たものでござる、貴殿の取調べを受けるために出頭したものではござらぬ、取調べのかどがあらば会津侯へ申し伝えられい」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
歌舞伎座の番附に事実相違のかどは云々とありしを押へ、「興行ごとに事実相違有無の世話がある様では大変なり」
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
後日支倉断罪に当って証拠に不十分のかどを生じたとしたら、正に此喜悦の余りの不用意と見るべきで、そこに人間としての彼を見る事が出来るではないか。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
僕の考では人が解釈すべからざる秘密だと思つてゐるかどが、却てその秘密をあばき易くするわけになるのだね。
そこで、その紳士泥坊は、五万円隠匿のかどによって、窃盗犯としては可也かなり重い懲役に処せられたのである。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのそばに黙ってを押していた小倉も、その侮辱を聞いたというかどによって、同罪であるべきであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
かくて一月二月を経るほどに、我もいつしか方様をあなたと呼ぶやうになれば、かなたにてもお幸さんといひたまふお詞のかどとれて人も羨む睦じき中となりしに。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
それに、自分に紹介を求めるのは、英吉に反対したかどもあり、主税は面当つらあてをされるようにくすぐったく思ったばかりか、少からず敵の機敏に、不意打を食ったのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
罪人扱いにするが、これでも未だ警察へ引っ張られるようなことはしていない。余り謹直なものだから、或は女房孝行というかどで表彰して呉れるのかも知れないよ
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御隠居の諫争かんそうにも耳を傾けず、長州の伏罪には疑惑のかどがあるとして、毛利大膳父子、および三条実美さんじょうさねとみ以下の五卿を江戸に護送することを主張してやまなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今日でこそルバシカは珍しくもないが、中村屋で採用した当時はずいぶん目に立ち、ロシヤ服を着ているというかどで店員が警察に引き立てられたことなどもあった。
その上にさらに呶々どど弁を弄する必要はないのであるが、事実上の主人公を三条西実隆にとった本篇においては、なお一回読者の忍耐を濫用しなければならぬかどがある。
経済学者や社会学者・政治家・経世家のまなこをもって見たならば、学ぶべきかどが多々あろうと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
よって、余は多年このことを研究したりしかどをもって、『修身書』に示されたる迷信の箇条を詳細に解釈し、多くの人に分かりやすきように説き明かしておきたいと思う。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
微塵みじん非難をするかどもなく、何となく奥ゆかしいので、自分は余念もなくその風に見とれていた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
彼のからだのどの線を見ても、この新しい味方が一かどの役に立つ人間だということは、明かだった。
変えている野武士盗賊ではあるまいか……あまりに尋常の香具師としては、不審のかどが多過ぎる
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いつわりの相続ねがいをさしあげたというかどにより、軽くて半地はんち、重ければ源頼光みなもとのよりみつ以来の名家古河十二万五千石も嫡子ないゆえをもって、そのまま廃絶というきわどい場合
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やくといふは、たとへば骰子さいかどがあり、ますにはすみがあり、ひとには關節つぎふしはうには四すみのあるごとく、かぜはうよりけば弱く、すみよりふけば強く、やまひうちより起ればしやすく
そして彼が話してゐる間に私の良心と理性そのものが私に對して裏切者となり、彼を拒絶するといふかどで私に罪を負はせた。それ等は感情に負けず劣らぬ位に呶鳴つてゐた。
拙者儀今般政府へ尋問のかど有之これあり、明後十七日県下登程とうてい、陸軍少将桐野利秋、篠原国幹及び旧兵隊の者随行致候間、其台下通行の節は、兵隊整列指揮を可被受うけらるべく、此段及照会しょうかいにおよび候也。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
挙動不審のかど拘引こういんされた嫌疑者、浮浪人、外国人らは全国でおびただしい数にのぼった。手がかりらしく思われる事物は、いかに些細ささいなことでもいちいち究極きゅうきょくまでたぐった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
裁判長閣下は、ストライヴァー氏(被告の弁護人)に向って、では吾々は次にはカートン氏(彼の同僚弁護士の名)を叛逆罪のかどで審理しなければならないのか? と尋ねた。
勘次かんじには卯平うへい村落むらみせくのは贅澤ぜいたく老人としよりであるやうひがんでえるかどもあつた。たゞさうしてうち舊暦きうれき年末ねんまつちかづいて何處どこうちでも小麥こむぎ蕎麥そばいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)