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ならく
ふりがな文庫
“
奈落
(
ならく
)” の例文
われは
邪魔扱
(
じゃまあつか
)
いにされて、まるで壁にへばりついているやもりを叩きおとすように、われ等の身体は
奈落
(
ならく
)
へ投げおとされるのである。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何
(
な
)
にしろ
弱
(
よわ
)
つたらしい。……
舞臺
(
ぶたい
)
の
歸途
(
かへり
)
として、
今
(
いま
)
の
隧道
(
トンネル
)
を
越
(
こ
)
すのは、
芝居
(
しばゐ
)
の
奈落
(
ならく
)
を
潛
(
くゞ
)
るやうなものだ、いや、
眞個
(
まつたく
)
の
奈落
(
ならく
)
だつた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そして、しまいには、うす
青
(
あお
)
い、
黄昏
(
たそがれ
)
の
空
(
そら
)
にはかなく
消
(
き
)
えて、また
低
(
ひく
)
く
岸
(
きし
)
を
打
(
う
)
つ
波
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
にさらわれて、
暗
(
くら
)
い
奈落
(
ならく
)
へと
沈
(
しず
)
んでゆくのでした。
海のかなた
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
舞台下の
奈落
(
ならく
)
では、一匹の野獣が麻酔剤に気を失った美しい女優を
小脇
(
こわき
)
にかかえて、穴蔵の
暗闇
(
くらやみ
)
の世界を、気ちがいのように走っていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし、
加賀見忍剣
(
かがみにんけん
)
の身のまわりだけは、
常闇
(
とこやみ
)
だった。かれは、とんでもない
奈落
(
ならく
)
のそこに落ちて、
土龍
(
もぐら
)
のようにもがいていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
クラクズーにグールメルにバベにモンパルナスという四人組みの悪漢が、一八三〇年から一八三五年まで、パリーの
奈落
(
ならく
)
を支配していた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
荘田勝平が、一方の手紙を読んで、
有頂天
(
うちょうてん
)
になったと同じに、直也は他の一方の手紙を読んで、
奈落
(
ならく
)
に突落されたように思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
掻爬
(
さうは
)
が済んだあと、ゆき子は、
躯
(
からだ
)
が
奈落
(
ならく
)
へおちこんだやうな気がした。ぐちやぐちやに崩れた血肉の魂が眼を
掠
(
かす
)
めた時の、息苦しさを忘れなかつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
一つの魂を救済することは一つの全生涯を破滅させても今は出来ない。
奈落
(
ならく
)
だ、奈落だ、今はすべてが奈落なのだ。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
私はやや失望の
奈落
(
ならく
)
から救い上げられそうな気持になりかけながら、そうなるとまた一層不安な思いに襲われて何だかあの耳一つが気にかかってくる。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
きのうまでの幸福感が、一瞬にして、
奈落
(
ならく
)
のどん底にたたき込まれたような気がした。ケチな、ケチな小市民根性。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
申してよいやら、あなたとご一緒に参るなら鬼の住む
窟
(
いわや
)
であろうとも
奈落
(
ならく
)
の底であろうとも決して
厭
(
いと
)
いは致しませぬ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すべて汝らの
族
(
やから
)
に属するものことごとく来たってわが呪いに名を
署
(
しょ
)
せよ。わしは今わしの
魂魄
(
こんぱく
)
を
永劫
(
えいごう
)
に汝らの手に渡すぞ。おゝ清盛よ。
奈落
(
ならく
)
の底で待っているぞ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
言い
棄
(
す
)
てて、部屋のなかに、ごろりと寝転んだ、碌さんの去ったあとに、圭さんは、
黙然
(
もくねん
)
と、
眉
(
まゆ
)
を
軒
(
あ
)
げて、
奈落
(
ならく
)
から半空に向って、
真直
(
まっすぐ
)
に立つ火の柱を見詰めていた。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
◯来世的光明の徐々として彼に臨みしは何に
因
(
よ
)
るか。これ彼に降りたる
禍
(
わざわい
)
、禍のための痛苦、痛苦の
極
(
きわみ
)
の絶望に因るのである。「来世の希望は
奈落
(
ならく
)
の
縁
(
ふち
)
に咲く花なり」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
さればといって急いで歩き出すと、いまにも眼の前に泥田圃か
肥料溜
(
こえだめ
)
が、ぱかと口を開き、それにのめり落ちたが最後、
奈落
(
ならく
)
の底までも沈み溺れそうな気がいたします。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
突然私は、
奈落
(
ならく
)
の底に突き落されたような孤独さを感じた。私はしかし、瀬川はこうは言ったものの、実は何とか本気に考えてくれるものと思って、次ぎの言葉を待った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
これを聞いて、健吉くんは
奈落
(
ならく
)
の底へ突き落とされたように驚きかつ悲しみました。きよ子さんの話によると、兄さんはそれ以後、まるで別人のようになったのだそうです。
愚人の毒
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
先頭に立った吾輩は振り
顧見
(
かえりみ
)
ると、三番目に乗って来た未醒画伯、馬から真逆様に落ちて、大地へ四ツん這いになっておる。一歩外へ落とされたら、忽ち
奈落
(
ならく
)
の谷底である。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
わたしはあなたに警告しますが、あなたは今や
奈落
(
ならく
)
のふちに足をのせて立っているのです。悪魔の爪は長い。そうして、かれらの墓はほんとうの墓ではない場合があります。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
イエスを父に、マリアを母に、または如来を主に、
菩薩
(
ぼさつ
)
を親に、かくて浄土を憧れ
奈落
(
ならく
)
を恐れた。真理を極めるのは僧の務めであり、それを信じるのは衆生の務めであった。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
同じ団体にはいってヘッベルの劇場の楽屋見学をしたときは、
奈落
(
ならく
)
へ入り込んでモーターで廻わす廻り舞台を下から仰いだり、風の音を出す器械を操縦させてもらったりした。
ベルリン大学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ここで非道なものを
弾劾
(
だんがい
)
している言葉の重圧は、あらゆる道徳的懐疑からの、
奈落
(
ならく
)
に対する共感からの転向を宣明し、いっさいを理解するのはいっさいをゆるすことだという
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
こうなればもう我々の家業は、うず潮に吸われた
大船
(
おおぶね
)
も同様、まっ
逆
(
さか
)
さまに
奈落
(
ならく
)
の底へ、落ちこむばかりなのでございます。するとある夜、——今でもこの
夜
(
よ
)
の事は忘れません。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
或は風のために無辺際の虚空に吹き散らされ、又は雨のために
無間
(
むげん
)
の
奈落
(
ならく
)
に打落される。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ごゝゝゝごうと
奈落
(
ならく
)
の底へ沈むかと怪しまるゝばかり、風はいよ/\
烈
(
はげ
)
しく、雨さえまじりてザア/\/\ドドドウという音の
凄
(
すさ
)
まじさ、大抵の者なら気絶するくらいでございます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鬼と見て我を
御頼
(
おたのみ
)
か、
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
其様
(
そのよう
)
な義は御免
蒙
(
こうむ
)
ると、心清き男の強く云うをお辰聞ながら、櫛を手にして見れば、ても美しく
彫
(
ほり
)
に
彫
(
ほっ
)
たり、
厚
(
あつさ
)
は
僅
(
わずか
)
に
一分
(
いちぶ
)
に足らず、幅は
漸
(
ようや
)
く二分
計
(
ばか
)
り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
船は一上一下、
奈落
(
ならく
)
の底にしずむかと思えばまた九天にゆりあげられる、
嵐
(
あらし
)
はますますふきつのり、
雷鳴
(
らいめい
)
すさまじくとどろいていなづまは雲をつんざくごとに
毒蛇
(
どくじゃ
)
の舌のごとくひらめく。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
物すごい不動から、
奈落
(
ならく
)
の底までもとすさまじい勢いで波の背をすべり下った。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鳴鏑
(
めいてき
)
の如く
尖
(
とが
)
りたる声ありて、
奈落
(
ならく
)
に通ず、立つこと久しうして、我が
五躰
(
ごたい
)
は、
悉
(
こと/″\
)
く銀の
鍼線
(
しんせん
)
を浴び、自ら
駭
(
おどろ
)
くらく、水精
姑
(
しばら
)
く人と
仮幻
(
かげん
)
したるにあらざるかと、げに呼吸器の外に人間の物
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
黄泉國
(
よもつぐに
)
、
奈落
(
ならく
)
の
大城
(
おほき
)
、——
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
奈落
(
ならく
)
へか
虚
(
うつろ
)
する。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
大雷雨
(
だいらいう
)
奈落
(
ならく
)
の
底
(
そこ
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
黒暗々の
奈落
(
ならく
)
。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼の
日月
(
じつげつ
)
はまッ暗な
虚空
(
こくう
)
と変り、グラと
奈落
(
ならく
)
の口もとでかかとを踏まえるような思いだった。季房も背中合わせに大手をひろげ
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十七の
奈落
(
ならく
)
のうちの最も恐るべきもので、
吠陀
(
ヴェダ
)
の中で剣葉林と呼ばれてるあのバラモン教の地獄のありさまも、かくやと思われるほどだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
(間)日も
奈落
(
ならく
)
へ沈んでしまった。この旅人は、再び沈んだ日の登るのを見ない。永遠にこの旅人は眠りから醒めない。
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
此
(
これ
)
の
船中
(
せんちう
)
に
話
(
はな
)
したがね、
船頭
(
せんどう
)
はじめ——
白癡
(
たはけ
)
め、
婦
(
をんな
)
に
誘
(
さそ
)
はれて、
駈落
(
かけおち
)
の
眞似
(
まね
)
がしたいのか——で、
船
(
ふね
)
は
人
(
ひと
)
ぐるみ、
然
(
さ
)
うして
奈落
(
ならく
)
へ
逆
(
さかさま
)
に
落込
(
おちこ
)
んだんです。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ここかしこに、見物の通れぬ裏通りが出来ている。芝居の
奈落
(
ならく
)
みたいな所、がらくた道具を積上げた物置様の箇所。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
山なす
怒濤
(
どとう
)
は、筏をいくどとなくひっくりかえそうとした。あるときは
奈落
(
ならく
)
の底につきおとされた。次のしゅん間には、高く波頭の上につきあげられた。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
うつ伏せに
溝
(
みぞ
)
に墜ちたものや、横むきにあおのけに、焼け
爛
(
ただ
)
れた
奈落
(
ならく
)
の底に、墜ちて来た奈落の深みに、それらは悲しげにみんな天を眺めているのだった。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
私は、見られて、みんごと
糞
(
くそ
)
リアリズムになっちゃった。笑いごとじゃない。十万億土、
奈落
(
ならく
)
の底まで私は落ちた。洗っても、洗っても、私は、断じて昔の私ではない。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
水煙
(
すいゑん
)
は
飛
(
と
)
ぶ、
逆浪
(
さかなみ
)
は
打込
(
うちこ
)
む、
見上
(
みあ
)
ぐる
舷門
(
げんもん
)
の
邊
(
ほとり
)
、「ブルワーク」のほとり、
士官
(
しくわん
)
、
水兵
(
すいへい
)
頻
(
しき
)
りに
叫
(
さけ
)
んで、
我
(
わ
)
が
艇尾
(
ていび
)
の
大尉
(
たいゐ
)
は
舵
(
ラタ
)
の
柄
(
え
)
を
碎
(
くだ
)
けんばかりに
握
(
にぎ
)
り
詰
(
つ
)
めて、
奈落
(
ならく
)
に
落
(
お
)
ち、
天空
(
てんくう
)
に
舞
(
ま
)
ひ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
固
(
もと
)
より
洪水
(
こうずゐ
)
飢饉
(
ききん
)
と日を同じうして論ずべきにあらねど、良心は不断の主権者にあらず、
四肢
(
しし
)
必ずしも吾意思の欲する所に従はず、一朝の変
俄然
(
がぜん
)
として己霊の光輝を失して、
奈落
(
ならく
)
に陥落し
人生
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし成親殿はまるで何ものかにつかれているように
頑固
(
がんこ
)
だった。わしは力の限り抵抗したけれども、彼の欲望に征服されてしまった。彼の欲望は
奈落
(
ならく
)
の底に根を持っているように強かった。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ゆき子は、耳もとにざはつく、雨の音を、樹海のそよぎのやうに、聞いてゐたが、それが、
窓硝子
(
まどガラス
)
に、霧をしぶいてゐる雨の音だと判ると、ゆき子は、がつかりして、
奈落
(
ならく
)
へ落ちこむ気がした。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
有頂天になっていた彼の心持は
忽
(
たちま
)
ち
奈落
(
ならく
)
の底へまで、引きずり落された。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
奈落
(
ならく
)
に対して共感をこばみ、道ならぬものをだんがいしてきた、「みじめな男」の著者、おのれの知を
克服
(
こくふく
)
して、あらゆる
諷刺
(
ふうし
)
以上に生長しながら、大衆の信頼にともなう義務になれきっている
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そうした里の合言葉さえあるのに、これはまた、どうしたうかつ者だろうか、ただ一人、道もない峰を、闇の
奈落
(
ならく
)
へ下りてゆく男がいる。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社会の
奈落
(
ならく
)
にはい回ってるものは、もはや絶対なるものに対する痛切な要求の声ではなく、物質に対する反抗の念である。そこにおいて人は
竜
(
ドラゴン
)
となる。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“奈落”の意味
《名詞》
地獄。
どん底。
劇場で舞台下に設けた地下室。
(出典:Wiktionary)
奈
常用漢字
小4
部首:⼤
8画
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
“奈”で始まる語句
奈何
奈良
奈良井
奈良朝
奈辺
奈翁
奈良茂
奈
奈様
奈破翁