ゆう)” の例文
そのうちに夕立もやんだので、ゆうの御飯を食べてから、叔母はその相談ながらわたくしの家へ来るつもりであったそうでございます。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やがて夕方ゆうがたになりました。松蝉まつぜみきやみました。むらからはしろゆうもやがひっそりとながれだして、うえにひろがっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あした美姫びきの肩の柳絮りゅうじょを払い、ゆうべに佳酒かしゅ瑠璃杯るりはいに盛って管絃に酔う耳や眼をもっては、忠臣の諫言は余りにもただ苦い気がした。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで諭吉ゆきちは、こんどはゆうがたにかよいはじめましたが、森山先生もりやませんせいは、あいかわらずいそがしくて、おしえてくれるひまがありません。
今でも朝げ夕げという名を使う人がすこしはあり、また神さまにさし上げるおぜんは、あさみけゆうみけと昔から敬語をそえてとなえている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あさ太陽たいようのぼるとともにき、ゆうべは、太陽たいようしずむときまで、ともにみずなかをはねまわって、なにやらわからぬことをくちやかましくいって
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは事実を打ち明けることに決めて、翌日の早朝に友達をたずねて行くと、彼はきのうのゆうに外出したままで帰ってこないというのです。
ゆうめしを食わせんぞお!(この一言で四人とも、いっぺんにだまりこむ。そのシーンとした中に、奥からのサンビ歌だけが、静かに流れて来る。)
その人を知らず (新字新仮名) / 三好十郎(著)
暖かい土地で、人に顔をあわさず、あしたゆうべに讃美歌を口ずさみながら、羊の群をおっているのは、廃残の彼女にはほんに相応ふさわしいことだと思った。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わたくしは丁度其ゆう、銀座通を歩いていたので、この事を報道する号外の中では読売新聞のものが最も早く、朝日新聞がこれについだことを目撃した。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まずへっついの影にある鮑貝あわびがいの中をのぞいて見ると案にたがわず、ゆうめ尽したまま、闃然げきぜんとして、怪しき光が引窓を初秋はつあきの日影にかがやいている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、第二の色紙には、東洋の聖人孔夫子の訓戒語「あしたに道を聞く、ゆうべに死すとも可なり」を書いた。
ペンクラブと芸術院 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
ああなつかしきかな余の生れ出し北地ほくち僻郷へきごうの教会よ、あさゆうに信徒相会し、木曜日の夜半の祈祷会、土曜日の山上の集会、日曜終日の談話、祈祷、聖書研究
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
それからそのそばに、あみだ寺をたてて、とくの高いぼうさんを、そこにすまわせ、あさゆうにおきょうをあげていただいて、海のそこにしずんだ人びとのれいをなぐさめました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
マリちゃんは、すっかりむねかるくなって、にいさんがまだきてでもいるような心持こころもちがして、うれしくってたまらなかったので、機嫌きげんよくうちはいって、ゆうはんべました。
ゆうやみの中でしきりにましたが、一ぽんのひょろひょろまつさえってはいませんでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それとって、おせんを途中とちゅうりかこんだ多勢おおぜいは、飴屋あめや土平どへいがあっられていることなんぞ、うのむかしわすれたように、さきにと、ゆうぐれどきのあたりのくらさをさいわいにして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆう六時頃伊達とさだ子がやつて来た。この時初江がいまだ生きていたかどうかそれは判らん。伊達を送つて林田とさだ子が外に出る。まもなく戻つて来たから君ら四人が又応接間にいたわけだ。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
真づみというのは、朝のをあさまづみ、晩のをゆうまづみと申します。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すがしゆう近づけてむかひ合ふ黒馬くろ黒馬くろとに月明りあり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
淋しきゆうべの鏡もきこゆ、——
恋しき最後の丘 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
入込いりこみ諏訪すわ涌湯いでゆゆうぐれ 水
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ゆうぐれになると
そのゆうべ、渡良瀬川の芦荻ろてきの中に小舟をひそめて、彼は身をつつむ蓑笠みのかさに、やがて、じっとり降りてくる晩春のおもたい夜を待っていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをみて、清吉せいきちは、写真しゃしんにあった、やまたにおもしました。いまごろは、そこも、ゆうやみがせまったであろう。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
岡の上に立っていた戸田茂睡とだもすい古碑こひも震災に砕かれたまま取除とりのけられてしまったので、今日では今戸橋からこの岡を仰いで、「切凧きれだこゆう越え行くや待乳山」
水のながれ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いやなにおいが着物きものにしみこんでしまって、ゆうがた、ふろにいくと、着物きものばかりか、からだにまでくさいにおいがしみついていて、みんなからはいやがられるし、いぬさえもほえついてきました。
「ところがせっかく下すった山の芋をゆうべ泥棒に取られてしまって」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
梅雨晴つゆばれゆうあかねしてすぐ消えし
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「たったいま、そうじしたばっかりだよ。せっかくひとが、すっかりかたづけておいたのに、またおまえがごちゃごちゃにしてしまう。おまえのはなにゃ、しょっちゅう人間の肉のにおいがくっついているんだよ。さあ、すわってゆうはんでも食べな。」
堺見物さかいけんぶつもおわったが、伊那丸のことがあるので、帰国をのばしていた穴山梅雪あなやまばいせつやかたへ、あるゆうべ、ひとりの男が密書みっしょを持っておとずれた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆうやけは、さびしい、たかやまあいだにうすれて、おおかみたちのかなしくほえるこえ谷々たにだににこだましたのでした。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てらまへて酒のませんともみぢ地口じぐちまじりの顔のゆうばへ
諭吉ゆきちゆうがたさけをのんで、いまねたばかりです。
「あなたはゆうべ何時に御休みになったんですか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆうやけが して、あすも また お天気てんきが つづきそうです。はたけの なすや きゅうりは しおれ、かだんの はなたちは あたまを たれて いました。
うみぼうずと おひめさま (新字新仮名) / 小川未明(著)
とはいえ、あしたゆうべに、異性を見ている吉野と、武蔵とでは、比較にならないほどな相違はある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このはなを二ばんめのむすめはことにあいしていました。それで、あさとなく、ゆうべとなく、みずをやったりしたので
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きつねは、小屋こやなかで、人間にんげんたちが、たのしそうにごちそうをべているのをながめました。そとは、くらくなって、ゆうやけは、わずかにもりあたまにのこっているばかりです。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かあさんは、やっとゆうはん後片付あとかたづけがわって、りょうちゃんをつれて、市場いちばへいかれました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よし、たたかうぞ! なんでわすれるものか。」と勇気ゆうきをとりかえして、さけぶと、たちまち、あわれな囚人しゅうじんたちの姿すがたは、白鳥はくちょうとなって、ゆうやけのする、そらいあがり、ようようとして
(新字新仮名) / 小川未明(著)
少女しょうじょは、おじょうさんの行方ゆくえをうらめしそうに見送おくっていますと、おじょうさんの姿すがたは、ゆうもやのうちにかくれて、えていってしまいました。少女しょうじょは、しかたなく、さびしいほうへとあるいてゆきました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
次郎じろうさんはそのまちがどこかとおもって、つづいてはしりました。あかゆうやけのそらながら、二人ふたりがいくと、きれいなきれいなまちにきました。たくさん、ちょうちんがついていて、にぎやかでした。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうはんのときに、そのはなしると、にいさんは、わらって
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)