つゝみ)” の例文
長吉ちやうきちの時長命寺辺ちやうめいじへんつゝみの上の木立こだちから、他分たぶん旧暦きうれき七月の満月であらう、赤味あかみを帯びた大きな月の昇りかけてるのを認めた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
早めて歩行あゆめども夏の夜のふけやすく早五時過いつゝすぎとも成し頃名に聞えたる坂東太郎の川波かはなみ音高く岸邊きしべそよあしかや人丈ひとたけよりも高々と生茂おひしげいとながつゝみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
最初は丁度この月の始め、雨のシヨボシヨボ降る晩でした。戌刻いつゝ半頃小臺の方からつゝみの上に提灯が六つ出て、そいつが行儀よく千住の方へ土手を
(間夫の本義は妻妾さいせふ奸淫かんいんするをいふ)宿外の家のつゞかざる処はひさしなければ、高低たかびくをなしたるかの雪のつゝみ往来ゆきゝとす。
數ある石橋いしばし岩根より出で、つゝみと濠をよこぎりて坎にいたれば、坎はこれを斷ちこれを集めぬ 一六—一八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これを對岸たいがんからうつすので、自分じぶんつゝみりて川原かはら草原くさはらると、いままで川柳かはやぎかげえなかつたが、一人ひとり少年せうねんくさうちすわつてしきりに水車みづぐるま寫生しやせいしてるのをつけた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
社員しやゐん充満みちみちていづれも豪傑然がうけつぜんたり、機会ときにあたれば気は引立ひきたつものなり、元亀げんき天正てんしやうころなれば一国一城のぬしとなる手柄てがらかたからぬが、きしつゝみ真黒まつくろ立続たちつゞけし人も豪傑然がうけつぜんたり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
私達わたしたちはかへらねばならない。水神松生ふるつゝみの下へ、あかりのうつる八幡樣の下へ。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
敦賀つるが悚毛おぞけつほどわづらはしいのは宿引やどひき悪弊あくへいで、其日そのひしたるごとく、汽車きしやりると停車場ステーシヨン出口でぐちから町端まちはなへかけてまねきの提灯ちやうちん印傘しるしかさつゝみきづき、潜抜くゞりぬけるすきもあらなく旅人たびびと取囲とりかこんで
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゝみ枯草かれくさうへつて、但馬守たじまのかみおほきなこゑ新任しんにん挨拶あいさつねて一ぢやう訓示くんじ演説えんぜつをした。演説えんぜつすこしもみゝいためないでくことの出來できものは、おほくの與力よりき同心どうしんちうほとんど一人ひとりもなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
滊車はいまつゝみにかゝる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
打越下伊呂村のつゝみへ掛りし時は空もくも眞闇まつくらにて四邊あたりは見えねども急ぎて歸る途中思はず武士さぶらひ突當つきあたり段々樣子を承はりしにつれの女の行衞ゆくゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かはおもては悲しく灰色に光つてゐて、冬の日のをはりを急がす水蒸気すゐじようきは対岸のつゝみをおぼろにかすめてゐる。荷船にぶねあひだをばかもめ幾羽いくはとなく飛びちがふ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その間にも見世物の番數が進んで、最後の馬鹿々々しいのが一とくさり濟むと、小屋一パイの見物は、つゝみを切つたやうに、ドツと外に追ひ出されます。
そして自分じぶんおもひついた畫題ぐわだい水車みづぐるま、この水車みづぐるま其以前そのいぜん鉛筆えんぴついたことがあるので、チヨークの手始てはじめにいまこれを寫生しやせいしてやらうと、つゝみ辿たどつて上流じやうりうはうへと、あしけた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
今年正月友人いうじんらと梅見にゆきしかへるさ青楼せいろうにのぼり、そのあかつき雨ふりいだししが、とみにやみけるゆゑ青楼をいでて日本堤にさしかゝりしに、つゝみの下に柳二三ぼんあり、この柳にかゝりたる雨
つゝみとほし木は荒し
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
長吉ちやうきちはどん/\流れて河水かはみづをばなにがなしに悲しいものだと思つた。川向かはむかうつゝみの上には一ツ二ツがつき出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
殘らず白状はくじやうすべしとするどく問糺とひたゞされしかば段右衞門は此時このときはじめてハツトいつ歎息たんそくなしまこと天命てんめいは恐ろしきものなり然ば白状つかまつらんと居なほり扨も權現堂ごんげんだうつゝみに於て穀屋平兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
次第しだいかさなり両側りやうかはの家のあひだに雪のつゝみきづきたるがごとし。こゝに於て所々ところ/\に雪のほらをひらき、ひさしより庇にかよふ、これを里言さとことば胎内潜たいないくゞりといふ、又間夫まぶともいふ。間夫まぶとは金掘かねほり方言ことばなるをかりもちふる也。
頃は夏の最中もなか、月影やかなる夜であつた。僕は徳二郎のあとについて田甫たんぼに出で、稻の香高き畔路あぜみちを走つて川のつゝみに出た。堤は一段高く、此處に上れば廣々とした野面のづら一面を見渡されるのである。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ながつゝみひんがし
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)