“唐桟:とうざん” の例文
“唐桟:とうざん”を含む作品の著者(上位)作品数
林不忘7
夏目漱石6
中里介山5
吉川英治4
野村胡堂3
“唐桟:とうざん”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸3.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.1%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
がんりきの百蔵は、唐桟とうざん半纏はんてんかなにかで、玄冶店げんやだな与三よさもどきに、ちょっと気取って、
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
他は盲縞めくらじま股引ももひき腹掛はらがけに、唐桟とうざん半纏はんてん着て、茶ヅックの深靴ふかぐつ穿うが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ところへ唐桟とうざんの羽織を着て鳥打帽を斜めにいただいた男が来て、入場券は貰えません改札場の中はもういっぱいですと注進する。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小倉服も外のは汚れているに、この男のはさっぱりしていて、どうかすると唐桟とうざんか何かを着て前掛をしているのを見ることがあった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
着物は、つむぎじま、袴は唐桟とうざん、いつもごつい紀州の田舎好みを、千代田城の奥へ来てからも用いている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結城唐桟とうざんも着心地はよいが、頭が禿げてくると、いつかいかつく見える。亡くなった橘のまどか師が、
噺家の着物 (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
金を出して、通船楼つうせんろうのおかみさんは、唐桟とうざん一巻ひとまきを、自分の後ろへころがした。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐桟とうざんの新渡も古渡こわたりもわからないでは、一反の縞に、二十金も出すような物好きにはなれない。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐桟とうざんの半纒を着て平ぐけを締めたその男の風俗が、堅気の人間でないことは半七にもすぐに覚られた。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
着物は尋常の二子ふたこ唐桟とうざんといったようなのを着け、芥子玉けしだましぼりの頬かむりで隠したかおをこちらに突き出している。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
衣服も多くは唐桟とうざんに嘉平次平の袴位を着るし、あるいは前にいった、地方官会議の随行の時新調した、モーニングコートを着ることもあった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
また母の婚礼の時の重衣かさねや、いたことか、黄八丈とか、呉羅ごろとか、唐桟とうざんなどという古い織物の着物や帯なども教えられて見ました。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
源右衛門に注意されて、忠三郎はその一軸を一応あらためた上で、唐桟とうざんの大風呂敷につつんだ。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
虎蔵君と並んで立っているのは二十五六のせいの高い、いなせな唐桟とうざんずくめの男である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唐桟とうざんの袷をつぶに着て、キリッとしりばしょりをしている……小意気な、ちょいとした男前。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
七つ糸の唐桟とうざんついに、献上博多けんじょうはかたの帯をしめた彼を見ては、黒死館における面影など、何処いずくにも見出されないのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
又数年の後、古賀が浅草の奥山で、唐桟とうざんづくめの頬のこけたすごい顔の男に逢った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
見ると安さんは唐桟とうざんの着物に豆絞まめしぼりにかの三尺を締めて立っている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頬冠ほおかむりに唐桟とうざん半纏はんてんを引っ掛け、綺麗きれいみがいた素足へ爪紅つまべにをさして雪駄せった穿くこともあった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
館山たてやま唐桟とうざんわざがわずかに残っていたり、銚子に大漁着たいりょうぎの染めが見られたりはしますが、取り残された姿ともいえましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
時々酒問屋さかどんやの前などを御通りになると、目暗縞めくらじまの着物で唐桟とうざん前垂まえだれを三角に、小倉こくらの帯へはさんだ番頭さんが
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外に立っている男は、唐桟とうざんの襟のついた半纏はんてんを着て、玄冶店げんやだな与三よさもどきに、手拭で頬かむりをしたがんりきの百蔵であります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
唐桟とうざん単衣ひとえを一まい呉服屋さんにたのんで、こしらえてもらいました。
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
博奕の方ではスポンスポンと烈しい音がしていました。今まで着ていた唐桟とうざんの着物を脱いで抛り出すのもあり、縮緬ちりめんの帯を解いて投げ出すのもありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その時、節子は新しく仕立てた唐桟とうざんの綿入を取出して来て岸本に見せた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こんな真打のいることも、地味な唐桟とうざん結城ゆうきや黒紋付や、そうしたこしらえの東京の落語家ばかり見慣れてきた今松の目には、虫唾むしずの走るほどいやだった。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
双子ふたこの着物に白ッぽい唐桟とうざん半纏はんてん博多はかたの帯、黒八丈の前垂まえだれ白綾子しろりんずに菊唐草浮織の手巾ハンケチうなじに巻いたが
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御米は唐桟とうざん風呂敷ふろしきを出してそれをくるんだ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唐桟とうざん半纏はんてんに、御納戸おなんど博多はかたの帯を尻の上にむすんで、生白なまじろすねひざから下むき出しのまま今や片足を挙げて畳の上へ入れる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するりと掻いくぐった栄三郎。ダッ! と片脚あげて与吉の脾腹ひばらを蹴ったと見るや、胡麻ごまがら唐桟とうざんのそのはんてんが、これは! とよろめく与吉の面上に舞い下って、
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
という優しい声がして、おりからあおる横降りを細身の蛇の目で避けながら、唐桟とうざんずくめの遊人ふうの若い男がはいって来た。三次はそっちを一眼見たきり、気にも留めずにいると、
万筋まんすじ唐桟とうざんのふところへ両腕を引っ込めて、だらしなくはだけた襟元から出した手で顎を支えて眠ってでもいるのか、それとも、何かほかのことを考えているのかもしれない。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
秋が深いにしても、朝の光の中に鬱陶うっとうしく頬冠ほおかむり、唐桟とうざん端折はしょって、右の拳で弥蔵をきめた恰好は、どう贔屓目ひいきめに見ても、あまり結構な風俗ではありません。
唐桟とうざん半纏はんてんというやつである。
染吉の朱盆 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と言いながら、お隅は半蔵が着がえのためと、自分の亭主の着物をそこへ取り出した。町人多吉の好んで着る唐桟とうざんの羽織は箪笥たんすの中にしまってあっても、そんなものは半蔵には向きそうもなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小ざつぱりとせし唐桟とうざんぞろひに紺足袋こんたびはきて、雪駄せつたちやらちやら忙がしげに横抱きの小包はとはでもしるし、茶屋が桟橋とんと沙汰さたして、廻りどほ此処ここからあげまする
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「文句があるなら唐桟とうざんでも着るよ」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
唐桟とうざんの胸をしきって、
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
例へば雪みぞれのひさしを打つ時なぞ田村屋好たむらやごのみの唐桟とうざん褞袍どてらからくも身の悪寒おかんしのぎつつ消えかかりたる炭火すみび吹起し孤燈ことうもとに煎薬煮立つれば
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
列車が新橋しんばしに着くと葉子はしとやかに車を出たが、ちょうどそこに、唐桟とうざん角帯かくおびを締めた、箱丁はこやとでもいえばいえそうな、気のきいた若い者が電報を片手に持って、目ざとく葉子に近づいた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鉄面皮なおいは、すこしばかり目が出ると、今戸の浜金の蓋物ふたものをぶるさげたりして、唐桟とうざんのすっきりしたみなりで、膝を細く、キリッと座って、かまぼこにうにをつけながら、御機嫌で一杯いただいていた。
その人に寄り添ってくる道づれは、小股こまたの切れ上がった江戸前の女で、赤縞あかじまの入った唐桟とうざんの襟付きに、チラリと赤い帯揚をのぞかせ、やはりはにかましげな目を、草の花にそらしながら歩いていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔の友といふ中にもこれは忘られぬ由縁ゆかりのある人、小川町の高坂とて小奇麗な烟草屋たばこやの一人息子、今はこの様に色も黒く見られぬ男になつてはゐれども、世にある頃の唐桟とうざんぞろひに小気のいた前だれがけ
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唐桟とうざん、唐桟」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐桟とうざんを狭く着て、水髪みずがみ刷毛先はけさきを左に曲げた、人並の風俗はしておりますが、長い鼻、団栗眼どんぐりまなこ、間伸びのした台詞せりふ、何となく犢鼻褌ふんどしが嫌いといった人柄に見えるから不思議です。
ある夜、神田柳原河岸の米屋、村勝というじいさんにつれられて、唐桟とうざん絆纏はんてんを着て手拭てぬぐいの吉原かむり、枝豆や里芋のかごを包んだ小風呂敷を肩にむすんで、すっと這入はいって来たのが秀造さんだという。
唐桟とうざん素袷すあわせに高足駄を突っ掛けた勘弁勘次は、山谷の伯父の家へ一泊しての帰るさ、朝帰りのお店者たなものの群の後になり先になり、馬道から竜泉寺の通りへ切れようとしてこね返すような泥濘を裏路伝いに急いでいた。
いつも粋な唐桟とうざんぞっきで高座へ上がる文楽師匠は頬の剃りあと青い嫌味のない色白の江戸っ子で、まだ年はうちの師匠より十も下だろうが、いまが人気の出盛りで、それには下の者へよく目をかけてやるというので滅法楽屋の評判がよかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
わっちさ、扮装なりこしらえるね此様こん扮装いでたちじゃアいけないが結城紬ゆうきつむぎの茶の万筋まんすじの着物に上へ唐桟とうざんらんたつの通し襟の半※はんてん引掛ひっかけて白木しろきの三尺でもない
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『春告鳥』は「主女に対する客人のいで立ち」を叙して「上着うわぎ媚茶こびちゃの……縞の南部縮緬、羽織はおり唐桟とうざんの……ごまがら縞、……そのほか持物懐中もの、これに準じて意気なることと、知りたまふべし」といっている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
顔見識りの朝湯仲間、あっちこっちから声をかけるなかを黙りこくった八丁堀合点長屋の目明し釘抜藤吉、ついの古渡り唐桟とうざんに幅の狭い献上博多けんじょうはかたをきゅっと締めて、乾児の勘弁勘次を促し、傘も斜に間もなく紅葉湯を後にした。
羅紗らしゃ唐桟とうざん金巾かなきん玻璃はり、薬種、酒類なぞがそこからはいって来れば、生糸、漆器、製茶、水油、銅および銅器のたぐいなぞがそこから出て行って、かれしかれ東と西の交換がすでにすでに始まったように見えて来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
唐桟とうざん素袷すあわせ足袋跣足たびはだしのまま、雪駄せったを片っぽだけそこに放り出して、少し天眼てんがんに歯を喰いしばった死顔の不気味さ、男がいだけに凄味がきいて、赤い扱帯に、蒼い顔の反映も、なんとなくゾッとさせるものがあります。
結城ゆうきの袷に白の勝った唐桟とうざんの羽織、博田はかたの帯に矢立てを差して、念入りに前だれまで掛けた親分の岡っ引きいろは屋文次、御用の御の字もにおわせずに、どこから見ても相当工面のいいお店者たなものという風俗で、待遠しそうに土間のかまちにきちんと腰をおろしている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
日本でも徳川の初期時代には、男女の衣裳に区別がない程一般に派手好みの服装が流行して居たのだ。唐桟とうざんを喜んだり、結城ゆうきを渋がったりするのは、幕末頃の因循な町人趣味を受け継いで居るんだ。現代の日本人は宜しく慶長元禄時分の、伊達だて寛濶かんかつな昔の姿に復らなければいけない。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
煙草入たばこいれだの、唐桟とうざん小片こぎれだの、古代更紗こだいさらさだの、そんなものを器用にきちんと並べ立てて見世を張る袋物屋ふくろものやへでも行って、わざわざ注文しなければ、とうてい頭へ載せる事のできそうもないその帽子の主人は、彼の言葉づかいで東京生れの証拠を充分に挙げていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五分月代ごぶさかやき唐桟とうざんの襟附の絆纏はんてんを引っかけて、ちょっと音羽屋おとわやの鼠小僧といったような気取り方で、多少の凄味をかせて、がんりきの百蔵が現われることを期待していると、意外にも、それはおっちょこちょいの金公でしたから、二人も拍子抜けがしているのを、委細かまわず金助は、
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
驚いて見かへるに暴れ者の長吉、いま廓内なかよりの帰りと覚しく、裕衣ゆかたを重ねし唐桟とうざんの着物に柿色の三尺をいつもの通り腰の先にして、黒八のゑりのかかつた新らしい半天、印の傘をさしかざし高足駄たかあしだ爪皮つまかわ今朝けさよりとはしるき漆の色、きわぎわしう見えて誇らし気なり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)