)” の例文
お兄様は、到頭、悲劇の結末を言いててしまいましたわね。電報でお知らせしたように、漆戸は死にました。いえ、殺されました。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
王子珍考えて、玄石が言うたところの白衣は白鶏の毛、紫巾を戴くとは鶏冠、跣足とは鶏の足、左の眼つぶれたるは我が射てたのだ。
其年そのとし京都きやうとふゆは、おとてずにはだとほ陰忍いんにんたちのものであつた。安井やすゐこの惡性あくしやう寒氣かんきてられて、ひどいインフルエンザにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……渋豌豆しぶえんどうの堅いやつを、自分で持って行って、無理に頼んで、うどん粉をこってりと、揚物にさしたという、それにてられたんです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よし、助けてやる。だが、おれを護送して来た小役人ふたりは、毒酒にてられて眠ってらあ。早く、あいつらの手当をしろ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気の毒なことには郷里で学友と猟に行き、散弾を頭にてられて負傷したため健康を害し、製作も前のように行かなくなった。
この一団は、品川辺の何かきおいの職人衆だったが、馴れぬ雪の山路に、皆ひどくてられた風だ。翌朝はしかし、病人もどうにか歩けた。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
鉱脈こうみゃくを探る時など、よく鉱山かなやまの山師などは、笛か鼓を持って行って、それを奏して金の有無うむを、うまくてるということだよ
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうなすったの。さっきからひどくふさぎ込んでいらっしゃるじゃありませんか。余興にてられなすったのじゃなくって」
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
黄金万能の処世哲学には均平もしばしばてられたものだが、それはそれとして俗物としては偉大な俗物だと感心しないわけにいかなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼の僕等に対するや、いまかつて「ます」と言ふ語尾を使はず、「そら、そこを厚くてるんだ」などと命令することしばしばなり。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そののち僕は君とまじわっている間、君の毒気どくきてられて死んでいた心を振い起して高いのぞみいだいたのだが、そのお蔭で無慙な刺客しかくの手にかかって
「あの娘の毒にてられた苦しみようが、一番ひどかったが、他の人とはどこか調子が違っていはしませんでしたか」
源三がいだいているこういう秘密を誰から聞いて知ろうようも無いのであるが、お浪は偶然にも云いてたのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「そればかりじゃないんだ。彼奴あいつは警察でわざと大事な事を云い落しやがったんじゃねえかと思うんだ。俺に云いてられて、慌てて云い消しよったろう」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
暑気にてられた肺病患者が一様に食欲を失ってくると、庭の片隅のゴミ箱には残飯が山のように溜り、それがまたすぐに腐って堪えがたい悪臭を放った。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
語未だ畢らざるに、婦人は手中の扇をあげてしたゝかに我面を撃ちたり。その撃ちかたの強さよりすに、我は偶〻たま/\女の身上を占ひて善くてたるものならん。
己はかう云つてドユパンが真にその人が誰だと云ふことをてたのだか、たしかめて見ようと思つた。
こういう種々な中毒に支那人は罹っているんである。そうかといえば、元来支那民族は民族としては決してそれほど劣等なものに非ず、いわゆる毒にてられているのみだ。
つの呉起ごき射刺せきしするにつて、あはせて悼王たうわうつ。悼王たうわうすではうむられて、太子たいしつ。すなは(一一〇)令尹れいゐんをしてことごと呉起ごきあはせてわうてしものちうせしむ。
「罰などあたっても構わない。こんなラサのような所に生れて来ない方がありがたいのだ。実に気が晴々せいせいした。ラサに居る悪魔共が俺にばちてることが出来れば気がいてる」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
まさか小川さんの義太夫にてられたのでもあるまいが、丁度あの晩から熱が出て数日寝込んだ。三輪さんの面倒を見てやるどころか東京駅で三輪さんに迎えて貰うような始末。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何を、」とクランチャー君は、狙ったまとてそこなってから自分の呼びかける人間の言い方を変えて、言った。——「何を手前てめえはしてやがったんでえ、人に迷惑をかける奴め?」
一寸ちょいと島さんまっれ、云うて呉れるな、私がてゝ見せよう、大変と云えば何でもれは水戸の浪人が掃部様かもんさまやしき暴込あばれこんだと云うような事ではないかと云うと、島はらに驚き
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今ではイヅミと言つております。ここにヒコクニブクの命が「まず、そちらから清め矢を放て」と言いますと、タケハニヤスの王が射ましたけれども、てることができませんでした。
杏多き所にて、ジヤルルック君一風呂敷ひとふろしき買ひ来りしかど、余はエルサレムに、杏にてられたれば食はず。ほとり近く泉あり。村の婦人をんな甕を頭に乗せて来り汲む。或はこゝにて洗濯をなすあり。
多くの読者はあるいは自分の郷里ばかりの一些事さじなりと考えられるか知らぬが、小児が土筆をはかまの部分から二つに折って、そっと元の通りにして置いて、どこで続いだかをてさせる遊戯は
そして豆のような小さな物を鬼に見せないように手の中へかくして、唄をうたいつつ順々に次の人の手へ渡して行き、唄が終るとみなじっと動かずにいて、誰の手の中に豆があるかを鬼にてさせる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
輜重しちょうを運べる間流れ丸にたりて即死したる報道を得しより、いと痛う力を落しぬ、これよりは隠気にこもり終日戸の外にも出でず、屋の煙さえいと絶え絶えにて、時々寒食断食することさえあり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
文「そんなら上げもしようが、てられるなよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの雲のなかに生きているものをてて見ようか。
ああ、わたしはてられた。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たりてとここもれども
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
予これを忖度そんたくす〉とは夫子ふうしいいなり、我は自分でっておきながら、何の訳とも分らなんだに夫子よくこれを言いてたとめたので
「そうであろう」と頷いたが、葉之助の方へ眼をやると、「さて、お前に聞くことがある。てずに縁をこすったは、竹林派に故実あってかな?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やっぱり、旦那のカンはたっていました。五人組の賊へ、舟を貸したのは、木更津船の岩五郎という船親方でした」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は毒物として、もっぱら玉芹たまぜりを使った時代がある、玉芹の毒にてられて、友人の夫人が暴死したからである。
銭形平次打明け話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
されど普通教育を受たりといへどもまことの識見なき俗間の人には華文の毒にてらるゝものいと多かり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
保吉はいよいよてられたから、この客の存在を忘れたさに、隣にいる露柴ろさいへ話しかけた。が、露柴はうんとか、ええとか、い加減な返事しかしてくれなかった。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二十三年の弱点が一度に露見した様な心持であつた。おやでもあゝうまく言ひてるものではない。……
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その日は昼飯の時に食べた海老魚えびのフライにでもてられたのか、ウヰスキイの効き目も薄かつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
このたたかい火耳灰ホルフイほこって燕王にせまる、あいるたゞ十歩ばかり、童信どうしん射って、その馬につ。馬倒れて王のがれ、火耳灰ホルフイらる。王即便すなわち火耳灰ホルフイゆるし、当夜に入って宿衛しゅくえいせしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また陽州やうしうえきに、顏息がんそくといへる名譽めいよ射手しやしゆてきまゆつ。退しりぞいていはく、我無勇われゆうなしれのこゝろざしてねらへるものを、とこと左傳さでんゆとぞ。じゆつや、無勇ゆうなきり。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そしてその証拠として、丁度その時己の考へてゐた事をすつかりてゝ己を驚かした。
少々てられるかも知れないが、裁判長だから仕方があるまい……ハハハ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかるに惜しいかなダージリンの近傍の林の中に在るところの瘴毒しょうどくてられてとうとう死んでしまったです。これが一八四〇年頃の事で、現にダージリンの近傍にこの方の墓が残ってあります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
たりみんなみ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
てて御覧。」
人の心を以て畜生の心を測るのやすからぬは、荘子と恵子が馬をての問答にもいえる通りで、正しく判断してるはすこぶる難い。
平次は独り言のようにつぶやきました。この男の毒気にてられて、さすが、探索の意気込みもくじけたのでしょう。