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一際
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ひときわ
ふりがな文庫
“
一際
(
ひときわ
)” の例文
そして、大砲の命中を祝福する花火がドカンとうち上げられ、バリバリと雲間に音がして、五色の雪が、
一際
(
ひときわ
)
烈しく降りしきった。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
書記官は
一際
(
ひときわ
)
妙な声でいわれますには「そのマナサルワ湖に着くまでに経た道はどこであるか」と猫の鼠を追うがごとくに問い
詰
(
つ
)
めた。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
家には
老婢
(
ろうひ
)
が一人遠く離れた勝手に寝ているばかりなので
人気
(
ひとけ
)
のない家の内は古寺の如く障子
襖
(
ふすま
)
や壁畳から
湧
(
わ
)
く湿気が
一際
(
ひときわ
)
鋭く鼻を
撲
(
う
)
つ。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すると
舳
(
じく
)
に突当る水の音が
一際
(
ひときわ
)
あざやかに、船はさながら一つの
大白魚
(
たいはくぎょ
)
が一群の子供を背負うて浪の中に突入するように見えた。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
と心中に神々を祈りながら熊に
尾
(
つ
)
いてまいります。やがて
半道
(
はんみち
)
も来たかと思いますと、少し小高き処に
一際
(
ひときわ
)
繁りました
樹蔭
(
こかげ
)
がありまする。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
磔柱
(
はりつけばしら
)
は周囲の
竹矢来
(
たけやらい
)
の上に、
一際
(
ひときわ
)
高く十字を描いていた。彼は天を仰ぎながら、何度も高々と祈祷を唱えて、恐れげもなく
非人
(
ひにん
)
の
槍
(
やり
)
を受けた。
じゅりあの・吉助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さる噂、
一際
(
ひときわ
)
高まりたる折節に候へば
大抵
(
およそ
)
の家の者は
暇
(
いとま
)
を請ひ去り、永年召し使ひたる者も、妾を見候てため息を仕るのみ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一見子供子供した全身に、どうにでも勝手にしろという図太さが、
一際
(
ひときわ
)
露骨に表れていた。私がひやりとしているうちに
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
橘は、野の明るさの中では
一際
(
ひときわ
)
まばゆいような
眼鼻立
(
めはなだち
)
を見せていて、これが自分の娘であろうかと思われる位、見なれぬ美しさを表わしていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼は、生え伸びた髪を無造作に
藁
(
わら
)
で束ねた。六尺豊かの身体は、鬼のような土人と比べてさえ、
一際
(
ひときわ
)
立ち
勝
(
まさ
)
って見えた。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今、早速に、其方が鍛ちにかかっている山寺源太夫様の御下命の品にせよ、ここで
一際
(
ひときわ
)
、
優
(
すぐ
)
れた
刀
(
もの
)
を
鍛
(
う
)
ち上げねば、名折れの上の名折れになろうと
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卍巴
(
まんじどもえ
)
とその前でひっくり返ると、てれてんつくと、ヒューヒューヒャラヒャラが、
一際
(
ひときわ
)
賑やかな景気をつけました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると、唯でさえチンマリとしたお筆の身体が、
一際
(
ひときわ
)
小さく見えて、はては奇絶な盆石か、無細工な木の根人形としか思われなくなってしまうのだった。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
って
一際
(
ひときわ
)
高くなった、早川の水の音が、純一が頭の中の乱れた
情緒
(
じょうしょ
)
の伴奏をして、昼間感じたよりは強い寂しさが、虚に乗ずるように襲って来る。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
縁側から外を
窺
(
うかが
)
うと、奇麗な空が、高い色を失いかけて、隣の
梧桐
(
ごとう
)
の
一際
(
ひときわ
)
濃く見える上に、薄い月が出ていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宿の裏門を出て
土堤
(
どて
)
へ上り、右に折れると松原のはずれに
一際
(
ひときわ
)
大きい黒松が、潮風に吹き曲げられた梢を垂れて、土堤下の藁屋根に幾歳の落葉を積んでいる。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
若
(
も
)
しそれが夜中だったら、差程には思うまい。真昼間の初夏の雨の日だったから、
一際
(
ひときわ
)
凄く感じている。
怪談
(新字新仮名)
/
平山蘆江
(著)
折からの
一際
(
ひときわ
)
冴えた月の明りに、少女は一寸地蔵眉をよせると、萩の小枝を二本、頭の上に
翳
(
かざ
)
して、「萩の花はおきらひ?」と尋ねかけた。心持首をかしげてゐる。
挿頭花
(新字新仮名)
/
津村信夫
(著)
舞踊にも
秀
(
ひい
)
で、容貌は立並んで
一際
(
ひときわ
)
美事
(
みごと
)
であったため、若いうちに大橋氏の夫人として入れられた。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と呼ぶ声、
谺
(
こだま
)
に響けり。眼をあくればあたり静まり返りて、たそがれの色また
一際
(
ひときわ
)
襲い
来
(
きた
)
れり。
大
(
おおい
)
なる樹のすくすくとならべるが
朦朧
(
もうろう
)
としてうすぐらきなかに隠れむとす。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
籠に飼われた
鶉
(
うずら
)
が
一際
(
ひときわ
)
声を張って鳴く時に、足に力を入れる、というだけのことである。「張声」といい「力足」といい、言葉の上にもいささか前後照応するものがある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そうして、妻の
焦躁
(
しょうそう
)
は無言の時、
一際
(
ひときわ
)
はっきりと彼の方へ反映して来るようであった。その高い額の押黙って電灯に
晒
(
さら
)
されている姿が、今も何となく彼には堪えがたくなる。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
隅田川
(
すみだがわ
)
での恋人、「さくら」が、一足先きに
艇庫
(
ていこ
)
に納まり、各国の競艇のなかに、
一際
(
ひときわ
)
、
優美
(
エレガント
)
な
肢体
(
したい
)
を
艶
(
つや
)
やかに光らせているのをみたときは、なんともいえぬ、
嬉
(
うれ
)
しさで、彼女のお腹を
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
是
(
こ
)
れまで御話し申した通り、私の言行は
有心故造
(
ゆうしんこぞう
)
態
(
わざ
)
と敵を求める
訳
(
わ
)
けでは
固
(
もと
)
よりないが、鎖国風の日本に居て
一際
(
ひときわ
)
目立つ
様
(
よう
)
に開国文明論を主張すれば、自然に敵の出来るのも仕方がない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その半額を本人にやったりして、私自身の素志に
叶
(
かな
)
うよう心掛けたことで、弟子の中にても
一際
(
ひときわ
)
目立って腕の出来ていた米原氏に対しては、仕事の上から、一層心を配っていたのでありますが
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
白虎
(
びゃっこ
)
池の
菖蒲
(
しょうぶ
)
の生えた
汀
(
みぎわ
)
を行くところ、
蒼竜
(
そうりゅう
)
池の
臥竜橋
(
がりょうきょう
)
の石の上を、水面に影を落して渡るところ、
栖鳳
(
せいほう
)
池の西側の小松山から通路へ枝をひろげている
一際
(
ひときわ
)
見事な花の下に並んだところ、など
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると、
一際
(
ひときわ
)
強く光ってる星がわしの眼にとまった。しばらくすると、その星がすーっと流れて、
瞬
(
またた
)
くまに消え失せてしまった。ちょうどその時に、家の中から、お前の
産声
(
うぶごえ
)
が聞こえてきたのだ。
彗星の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
また
彼方
(
かなた
)
では、
一團
(
いちだん
)
の
水兵
(
すいへい
)
がワイ/\と
騷
(
さわ
)
いで
居
(
を
)
るので、
何事
(
なにごと
)
ぞと
眺
(
なが
)
めると、
其處
(
そこ
)
は
小高
(
こだか
)
い
丘
(
をか
)
の
麓
(
ふもと
)
で、
椰子
(
やし
)
や
橄欖
(
かんらん
)
の
葉
(
は
)
が
青々
(
あほ/\
)
と
茂
(
しげ
)
り、
四邊
(
あたり
)
の
風景
(
けしき
)
も
一際
(
ひときわ
)
美
(
うる
)
はしいので、
今夜
(
こんや
)
は
此處
(
こゝ
)
に
陣屋
(
ぢんや
)
を
構
(
かま
)
へて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
その両の目は心中にある得意の情のために
一際
(
ひときわ
)
大きく輝いていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
途端に税関吏の太い濁った声が、
一際
(
ひときわ
)
高く耳を打ってきた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
箪笥の上にも何一ツこまごました物も載せられていないので、二階中はいかにもがらんとして古畳と
鼠壁
(
ねずみかべ
)
のよごれが
一際
(
ひときわ
)
目に立つばかり。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それらの陳列棚の中に、
一際
(
ひときわ
)
目立つ大きなガラス箱があった。上部と四方とを全面ガラス張りとした長方形の陳列台である。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、藤十郎は、前よりも
一際
(
ひときわ
)
、苦りきったままであった。彼は今心の裡で、
僅
(
わず
)
か三日の後に迫った初日を控えて、芸の苦心に肝胆を砕いていたのである。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と
一際
(
ひときわ
)
蕭然
(
ひっそり
)
とする。時に隣座敷は
武士体
(
さむらいてい
)
のお客、降込められて遅くなって藤屋へ着き、是から湯にでも入ろうとする処を、廊下では二人で
窃
(
そっ
)
と
覗
(
のぞ
)
いて居る。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
信玄もすでに身を固めて、望楼に
床几
(
しょうぎ
)
をすえ、眼の下に揺れ合っている味方、遥かな妻女山の方へも、こよい
一際
(
ひときわ
)
、らんらんとしている眼をくばっていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また鶴の群も素晴らしい声を放っておもむろに歩んで居る。その
一際
(
ひときわ
)
洗ったような美しい景色は昨日の凄まじい景に比してまた一段の興味を感ぜられたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
中にも
一際
(
ひときわ
)
もの凄くも
亦
(
また
)
、憐れに見えますのは、
丈
(
たけ
)
なす黒髪を水々しく引きはえて、グッタリと瞑目している少女の顔に乱れ残った、厚化粧と口紅で御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
たがいの気合が
沸
(
わ
)
き返る、人は
繚乱
(
りょうらん
)
として飛ぶ、火花は散る、刃は
閃
(
ひらめ
)
く、飛び違い
走
(
は
)
せ違って、また
一際
(
ひときわ
)
納まった時、
寄手
(
よせて
)
の人の影はもう三つばかりに減っています。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのせいで形の好い彼女の
眉
(
まゆ
)
が
一際
(
ひときわ
)
引立って見えた。彼女はまた癖のようによくその眉を動かした。惜しい事に彼女の眼は細過ぎた。おまけに
愛嬌
(
あいきょう
)
のない
一重瞼
(
ひとえまぶち
)
であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と呼ぶ声、
谺
(
こだま
)
に響けり。眼をあくればあたり静まり返りて、たそがれの色また
一際
(
ひときわ
)
襲ひ
来
(
きた
)
れり。
大
(
おおい
)
なる樹のすくすくとならべるが
朦朧
(
もうろう
)
としてうすぐらきなかに隠れむとす。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると、「おーう」というほえるような声が一つ、森の唸り声の中から
一際
(
ひときわ
)
高く聞こえてきました。王子はもう命がけになって、その声の聞こえた方へ、
茨
(
いばら
)
や
葛
(
かずら
)
の中を踏み分けて進んでゆきました。
夢の卵
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
さて、客間につれ込まれた、小林少年が、林檎のような頬を、
一際
(
ひときわ
)
赤らめ、息をはずまして語った所によると、……
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しん深くこの恩義に感じてや、
先考
(
せんこう
)
館舎を
捐
(
す
)
てられし後は、
一際
(
ひときわ
)
まごころ籠めてわが家のために立ちはたらきぬ。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
とんだ
配合
(
うつり
)
が
好
(
よ
)
いと柳橋の芸者が七人とも之を着ましたが中にも
一際
(
ひときわ
)
目立って此のお村には似合いました処から、人之を
綽名
(
あだな
)
して市松のお村と申しました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ただ、
一際
(
ひときわ
)
高い中腹の林の上に、
前黄門公
(
さきのこうもんこう
)
のいる
櫓
(
やぐら
)
のように高い建物が
聳
(
そび
)
えているのが門の外からも仰がれる。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蕭殺
(
しょうさつ
)
たる
此
(
こ
)
の秋の風は、
宵
(
よい
)
は
一際
(
ひときわ
)
鋭かつた。
藍縞
(
あいじま
)
の
袷
(
あわせ
)
を着て、黒の
兵子帯
(
へこおび
)
を締めて、羽織も無い、沢の
少
(
わか
)
いが
痩
(
や
)
せた
身体
(
からだ
)
を、
背後
(
うしろ
)
から絞つて、長くもない
額髪
(
ひたいがみ
)
を
冷
(
つめた
)
く払つた。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
一際
(
ひときわ
)
強い
七色
(
スペクトル
)
光を放ちながら、依然として満月のように廻転しつつ、ゆっくりゆっくりと沈み込んで行く……と思うとそのあとから追っかけるように、またも一粒の真黒い
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そのうちに昼間見た土手の松並木だけが
一際
(
ひときわ
)
黒ずんで左右に長い帯を引き渡していた。その下に
浪
(
なみ
)
の砕けた白い泡が夜の中に絶間なく動揺するのが、比較的
刺戟強
(
しげきづよ
)
く見えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こちらから見ていると
一際
(
ひときわ
)
じっと静まり返って、しばらく天地が
森閑
(
しんかん
)
として
冴
(
さ
)
え渡ると
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今日
(
きょう
)
は殊にこの国に来たところの目的を達した訳ですから何となく喜びの感に堪えず、
巍々
(
ぎぎ
)
たる最高雪峰ゴーリサンガも
一際
(
ひときわ
)
妙光を満空に放ち洋々
乎
(
こ
)
として和楽するがごとくに見えて居ります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
際
常用漢字
小5
部首:⾩
14画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥