挿頭花かざし
戸隠の月夜は九月に這入ると、幾晩もつづいてゐた——。 昔、寺侍が住んでゐた長屋、そして一棟の長細い渡り廊下のやうな納屋の壁にそつて、鶏頭の花が咲いて、もう気の早い冬支度か、うづ高く薪が積まれてゐた。 古いイメージのやうな破風の藁屋根の影を踏 …