飽迄あくまで)” の例文
わたくしは因縁こそ実にとうとくそれを飽迄あくまでも大切にすべきものだと信じてります。其処そこに優しい深切しんせつな愛情が当然おこるのであります。
空は飽迄あくまで灰色であった、三尺ばかり上は灰色の厚い布で張詰られているような気がした。外へ出たが誰をたずねて見ようという考えは別になかった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宗助そうすけ過去くわこいて、こと成行なりゆきぎやくながかへしては、この淡泊たんぱく挨拶あいさつが、如何いか自分等じぶんら歴史れきしいろどつたかを、むねなか飽迄あくまであぢはひつゝ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
文筆生活に這入はいってから、氏は年をけみしていない。で氏は飽迄あくまでも自分自身を、アマチュアを以て任じて居られる。で氏は時々云われるのである。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
然るに氏は飽迄あくまでも芸術の人として進みたいのであるから、それ等には頓着せず、ポルト・サン・マルタン座へ首席俳優としてはひる事に決めて仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一体誰が言出したんだか知らないが、し世間に其様な風評が立つやうなら、飽迄あくまでも僕は弁護して遣らなけりやならん。だつて、君、考へて見給へ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
りながら何の御禮に及びませうぞそれ其處そこ水溜みづたまり此處には石がころげ有りと飽迄あくまでお安に安心させ何處どこ連行つれゆきばらさんかと心の内に目算しつゝ麹町をもとくすぎて初夜のかね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この辺り、家康大に寛仁の度を示して、飽迄あくまで幸村の心を関東にかんものと試みたのかも知れない。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、それ丈に又、同時代の屑々せつせつたる作者輩に対しては、傲慢がうまんであると共に飽迄あくまでも不遜である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
父といふ人は、強慾がうよくで、そして我執がしふの念の強い、飽迄あくまでも物質よくさかんな人物であツたらしい。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ロミオ お乳母うばどの、おぬしのおひいさんへ慇懃ねんごろつたへてくだされ。わし飽迄あくまでうておく……
勿論もちろんこの問題もんだい專門家せんもんかよつ飽迄あくまで研究けんきうされねばならぬのであるが。我輩わがはいは、こゝにはふか哲學的議論てつがくてきぎろんにはらないで、きはめて通俗的つうぞくてきこれくわんする感想かんさうの一たんべてよう。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あゝ、てん飽迄あくまで我等われらたゝるのかと、こゝろ焦立いらだて、藻掻もがいたが、如何いかんとも詮方せんかたい。
聞けばこの母親娘がある屋敷やしき奥向おくむき奉公中ほうこうちう臨時りんじ頂戴物てうだいものもある事なればと不用分ふようぶんの給料を送りくれたる味の忘られず父親のお人よしなるに附込つけこみて飽迄あくまで不法ふはふちんじたるものゝよしそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
彼はとっくに既うこうして謝罪りたかったのであったが、流石さすがに女の前では出来難できにくかった間に、ずんずんと女に引摺ひきずられて嘘許り云ったのであった。其処へ持って来て巡査は飽迄あくまで彼を追窮した。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
当局に於いては虚心平気で実地の真情をつぶさに調査報告し、改良すべき点ありと認むれば、飽迄あくまでも之が改善を命ずるのである、腹蔵なく述るがよい、世評が嘘伝うそであって欲しいと思うと述べた。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
一は曰く飽迄あくまで従前の如く水中をさかのぼらん、一は曰く山にのぼり山脈を通過つうくわして水源の上にでん、ことに人夫中冬猟の経験けいけんありて雪中せつちう此辺にきたりしもの、皆曰く是より前途はけんさらに嶮にしていう更に幽
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
仕方がないから、例の某大家にすがって書生に置いて貰おうとすると、先生は相変らずグズリグズリと煮切らなかったが、奥さんが飽迄あくまで不承知で、先生を差措さしおいて、御自分の口から断然きっぱり断られた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
僕にはだ翁の近年の作の妙味が十分得せられないが飽迄あくまで若若わかわかしいこの翁の心境は例の真夏の花を嗅ぐ様な豊艶多肉な女をむ色もなく描いて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
はじめて私は幾十尺上って来たかと驚いた。右を見るとまたしても、太い、高い、黒い二本の烟突が目につく。私は飽迄あくまでこの烟突に圧迫せられているかんじがする。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえば今日泳がなくても主人の免許を受けたことは飽迄あくまでも事実であるのに、浅はかな人達よ。何とでも思うが好い。と私はぐっと、息を詰めて堪えて居た。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
つよはげしいいのちきたと證劵しようけん飽迄あくまでにぎりたかつたかれには、きた現在げんざいと、これからうまれやうとする未來みらいが、當面たうめん問題もんだいであつたけれども、えかゝる過去くわこ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左様さういふ気心の知れた人なら双方の好都合。委敷くはしいことは出京の上で。と飽迄あくまでも言ひ張る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
乳母 飽迄あくまでうてく、とおッしゃったとや、それが立派りっぱなお言傳手ことづてぢゃがな。
我を東天皇と云い彼を西皇帝と称し飽迄あくまでも対等の礼を以って押通された。
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すきこそ物の上手じやうずなれとたとへの通り飽迄あくまで公事向くじむきに手なれし長助が思ひ通りの訴状御取上に成りしかばお光のよろこび一方ならず然るに三四日過て御呼出よびだしに相成越前守殿願ひ人お光清右衞門長助の三人へ申渡されけるは此訴訟のおもむきにては先年同役たる中山出雲守の係りにて裁許さいきよ相濟あひすみたる事件ことがら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
飽迄あくまでも良心のまゝに疑わなければならない。今、私達の文壇の弊は、この最も正直に、疑わなければならないものを、疑わざるところに存するのでなかろうか。
何を作品に求むべきか (新字新仮名) / 小川未明(著)
其処そこ多勢おほぜいの義士が誘ひに来て散散さんざんに辱めた上飽迄あくまでも躊躇して居るキニゼイに告別して行つて仕舞しまふと、キニゼイ先生もつひに決心して許嫁いひなづけ突除つきのけ同志のあとを追つてく。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
受出さんとの御事おんこと承知仕つり候へ共一品にても拔差ぬきさしは手前にて迷惑めいわくに候間殘らず御受なさるゝなら格別かくべつ其方そなたの勝手に大小ばかり請樣うけやうなどと仰られても其儀は出來申さずと云ければ文右衞門きゝて夫は御道理ごもつともの事なり今殘らず請出すあひだ元利ぐわんり何程なにほどか勘定して下されといふゆゑ番頭久兵衞は飽迄あくまで見込みこみちがひになりしかば心の中にては
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)