トップ
>
闇夜
>
やみよ
ふりがな文庫
“
闇夜
(
やみよ
)” の例文
大体が、臆病者揃いの公卿たちは、
闇夜
(
やみよ
)
にひらめく
一閃
(
いっせん
)
のすさまじさに、かえって生きた心地もなく、
呆然
(
ぼうぜん
)
と見ていただけだった。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
しかしある時、ヘルンが案内して連れ出した所は、暗い
闇夜
(
やみよ
)
の野道の中に、小高い丘があるばかりで、周囲は一面の
稲田
(
いなだ
)
であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
すべてのものがいっしょになって、
闇夜
(
やみよ
)
の中の沼みたいな奇怪な夢の世界をこしらえていて、そこから希望の
眩
(
まぶ
)
しい光が
迸
(
ほとばし
)
り出ていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
闇夜
(
やみよ
)
だった。まだ
宵
(
よい
)
の口だ。開墾地に散在している移住者の、木造の小屋からは、皆一様に
夜業
(
よなべ
)
の淡い
灯火
(
あかり
)
の余光が洩れていた。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「なあ奥様、こんな
闇夜
(
やみよ
)
に男の人いててくれはれしまへなんだら、
恐
(
こお
)
うて歩かれしまへんなあ」と、用もないのんに私
掴
(
つか
)
まえて
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
「えゝから、よきげ
嘗
(
な
)
めさせろ」
勘次
(
かんじ
)
はおつぎを
制
(
せい
)
した。三
人
(
にん
)
は
他人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
が
開
(
あ
)
いてない
闇夜
(
やみよ
)
の
小徑
(
こみち
)
を
恁
(
か
)
うして
自分
(
じぶん
)
の
庭
(
には
)
へ
戻
(
もど
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「
伊那丸
(
いなまる
)
と
徳川勢
(
とくがわぜい
)
との
勝敗
(
しょうはい
)
はどうなったな。かすかに、矢さけびは聞えてくるが、この
闇夜
(
やみよ
)
ゆえさらにいくさのもようが知れぬ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何しろ、その夜は、何時間も続けざまに
息
(
いき
)
を殺し、それから長い低い溜息を一つ吐いて、また息を殺すと言われるあの
闇夜
(
やみよ
)
なのであったから。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
冬の
闇夜
(
やみよ
)
に悪病を負う
辻君
(
つじぎみ
)
が人を呼ぶ声の
傷
(
いたま
)
しさは、直ちにこれ、罪障深き人類の
止
(
や
)
みがたき
真正
(
まこと
)
の嘆きではあるまいか。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
せっかく、飛び出した男が持て余している時に、柳橋の角から、星明りの
闇夜
(
やみよ
)
に現われた人影が一つ、
蹌々踉々
(
そうそうろうろう
)
として
此方
(
こなた
)
に向いて歩いて来ます。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
(扇を
笏
(
しゃく
)
に)それ、山伏と言っぱ山伏なり。
兜巾
(
ときん
)
と云っぱ兜巾なり。お腰元と言っぱ美人なり。恋路と言っぱ
闇夜
(
やみよ
)
なり。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
襲撃軍は死者と負傷者とを遺棄したまま、列を乱し混乱して街路の先端に退却し、再び
闇夜
(
やみよ
)
のうちに見えなくなってしまった。先を争う
潰走
(
かいそう
)
だった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「おらんこと小説に書いたって」どんな
闇夜
(
やみよ
)
でも黒く見えるという、石炭のような黒い顔に、てれくさそうな
羞
(
はにか
)
み笑いをうかべながら留さんは云った
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
闇夜
(
やみよ
)
に明るい月がのぼったみたいなものだわ。……ぼうっとなって、無我夢中になるのも無理はない。現にこのあたしだって、幾分のぼせ気味らしいもの。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
または
闇夜
(
やみよ
)
に灯火もなく歩くとしましょう。歩行はたちまち平凡ではなくなるのです。一歩一歩意識して歩かねばならぬ不自由と困難とを
嘗
(
な
)
めるでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
夫の帰らぬそのうちと
櫛笄
(
くしこうがい
)
も手ばしこく小箱に
纏
(
まと
)
めて、さてそれを無残や
余所
(
よそ
)
の
蔵
(
くら
)
に
籠
(
こも
)
らせ、幾らかの金
懐中
(
ふところ
)
に浅黄の頭巾
小提灯
(
こぢょうちん
)
、
闇夜
(
やみよ
)
も恐れず鋭次が家に。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして永続し得る唯一の幸福は、たがいに理解しあい愛しあうこと——知力に愛——生の前と後との二つの
深淵
(
しんえん
)
の間でわれわれの
闇夜
(
やみよ
)
をてらしてくれる唯一の光明だ。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
するうちだんだん
紫宸殿
(
ししいでん
)
のお
屋根
(
やね
)
の上が
暗
(
くら
)
くなって、大きな
黒
(
くろ
)
い
雲
(
くも
)
がのしかかって
来
(
き
)
たことが
闇夜
(
やみよ
)
にも
見分
(
みわ
)
けがつくようになりましたから、ここぞとねらいを
定
(
さだ
)
めて
鵺
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
私は
闇夜
(
やみよ
)
の中でとつぜん光明を失ったような気持になって、また決心がにぶり、茜にすすめられて、今日のような
不埓
(
ふらち
)
なまねをいたしましたが、でも、もう大丈夫です。
キャラコさん:03 蘆と木笛
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
車室の天井に下がっている明りには
布
(
きれ
)
が掛けてあるので、室内は鈍い緑色に照されている。窓の外は
闇夜
(
やみよ
)
である。丁度長い、長いトンネルを通って行くような気がする。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その唇のあいだから
覗
(
のぞ
)
いている野獣の
牙
(
きば
)
のような白歯、
皺
(
しわ
)
くちゃになった黒の背広、何から何までソックリそのままの人間
豹
(
ひょう
)
が、もう一匹、
闇夜
(
やみよ
)
の森の中に出現したのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
足さばきがどうのこうのと言って
稽古
(
けいこ
)
しているようですが、
塀
(
へい
)
を飛び越えずに門をくぐって行ったって
仔細
(
しさい
)
はないし、
闇夜
(
やみよ
)
には
提灯
(
ちょうちん
)
をもって静かに歩けば
溝
(
みぞ
)
へ落ちる心配もない。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
闇夜
(
やみよ
)
の発光文字のごとくに、必要な
途
(
みち
)
だけがハッキリ浮かび上がり、他は一切見えないのだ。我々
鈍根
(
どんこん
)
のものがいまだ
茫然
(
ぼうぜん
)
として考えも
纏
(
まと
)
まらないうちに、悟空はもう行動を始める。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
庭へ降りて見ると、夕暮から雲の多かった空は、すっかり密雲に閉されて月の所在さえわからなかった。しかし、人目を忍ぶものに、月夜よりも
闇夜
(
やみよ
)
がよいことは、昔も今も変りがない。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
一寸先
(
いっすんさき
)
見えぬ
闇夜
(
やみよ
)
、寺男は、
両足
(
りょうあし
)
が、がくがくふるえましたが、
勇気
(
ゆうき
)
をつけて、びわの
音
(
ね
)
のする
墓場
(
はかば
)
の中へはいっていきました。そして、ちょうちんの
灯
(
ひ
)
をたよりに、法師をさがしました。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
抑も
辻行灯
(
つじあんどう
)
廃
(
すた
)
れて
電気灯
(
でんきとう
)
の
光明
(
くわうみやう
)
赫灼
(
かくしやく
)
として
闇夜
(
やみよ
)
なき
明治
(
めいぢ
)
の
小説
(
せうせつ
)
が
社会
(
しやくわい
)
に於ける
影響
(
えいきやう
)
は
如何
(
いかん
)
。『
戯作
(
げさく
)
』と云へる
襤褸
(
ぼろ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ『
文学
(
ぶんがく
)
』といふ
冠
(
かむり
)
着
(
つ
)
けしだけにても其
効果
(
かうくわ
)
の
著
(
いちゞ
)
るしく
大
(
だい
)
なるは
知
(
し
)
らる。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
そんな人の悪い事は自分にはできない。自分はただ人間の研究者
否
(
いな
)
人間の異常なる
機関
(
からくり
)
が暗い
闇夜
(
やみよ
)
に運転する有様を、驚嘆の念をもって
眺
(
なが
)
めていたい。——こういうのが敬太郎の主意であった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
重い気が籠った
闇夜
(
やみよ
)
である。歩きながら逸作は言った。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「夜釣りは
闇夜
(
やみよ
)
に限ったのだったかな?」
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
夕立のあとの
闇夜
(
やみよ
)
の
小提灯
(
こぢょうちん
)
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
闇夜
(
やみよ
)
も風が身に
沁
(
し
)
まう。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
あはれ
闇夜
(
やみよ
)
。
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
クリストフには助力者がなかった。彼の手は
闇夜
(
やみよ
)
の中でだれの手にも出会わなかった。彼はもう白日の光の中へもどることができなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
黒犬の絵に
讃
(
さん
)
して
咏
(
よ
)
んだ句である。
闇夜
(
やみよ
)
に吠える黒犬は、自分が吠えているのか、闇夜の宇宙が吠えているのか、主客の認識実体が解らない。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
ほんまの蛍狩は絵のような訳には行かんねんなと、妙子は笑ったが、何しろ
闇夜
(
やみよ
)
程よいと云うのであるから、着る物に
都雅
(
みやび
)
を競う面白さはなかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
幸
(
さいわい
)
闇夜
(
やみよ
)
にて
人通
(
ひとどおり
)
なきこそ天の
佑
(
たすけ
)
と得念が
死骸
(
しがい
)
を池の中へ
蹴落
(
けおと
)
し、そつと同所を立去り
戸田様
(
とださま
)
御屋敷前を通り過ぎ、
麻布
(
あざぶ
)
今井谷
(
いまいだに
)
湖雲寺
(
こうんじ
)
門前に
出
(
い
)
で申候処
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女が現われたのは、あたかも道に迷った太陽の光が、自ら気づかないで突然
闇夜
(
やみよ
)
を
過
(
よ
)
ぎったがようなものだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
水らしい水とも思わぬこの
細流
(
せせらぎ
)
の
威力
(
ちから
)
を見よと、流れ廻り、
駈
(
か
)
け
繞
(
めぐ
)
って、
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ真の
闇夜
(
やみよ
)
を
縦
(
ほしいまま
)
に
蹂躪
(
ふみにじ
)
る。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
外は昨晩のように深い
靄
(
もや
)
はありませんでしたけれども、
闇夜
(
やみよ
)
であることは昨晩と少しも変りはありません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
闇夜
(
やみよ
)
だったので、空も暗く、そのものは闇の中から闇が抜け出したような感じで動いていた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
三十六号船の水夫である留さんは、年が三十四歳でお人
好
(
よ
)
しで、ひどく色が黒かった。「どんな
闇夜
(
やみよ
)
でも留さんの顔だけは黒く見える」と
云
(
い
)
われ、自分でもそれを認めていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
君たちの誤った進歩に引きずられて
闇夜
(
やみよ
)
の中に陥るのが、僕は恐ろしいのだ。君たちのあらゆる思い
諦
(
あきら
)
めの言葉の下には、
深淵
(
しんえん
)
が潜んでいる。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
何か、人間の世を離れた、
遥
(
はる
)
かな遥かな無窮の国を
想
(
おも
)
わせるような明るさである。その時の気持次第で、
闇夜
(
やみよ
)
とも月夜とも
孰方
(
どっち
)
とも考えられるような晩である。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そうした特異な部落を称して、この辺の人々は「憑き村」と呼び、一切の交際を避けて
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
った。「憑き村」の人々は、年に一度、月のない
闇夜
(
やみよ
)
を選んで祭礼をする。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
実際それは、汚水だめのうちから引き出してきた一種の
嫌悪
(
けんお
)
すべき
闇夜
(
やみよ
)
の獣かとも思われる。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
星をたよる
闇夜
(
やみよ
)
と同じことで、お君はそこを一生懸命で、順路はここから北へ
国安川
(
くにやすがわ
)
というのに沿うて行き、
掛川
(
かけがわ
)
の宿へ出て、東海道本道に合するということを聞いていましたから
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その夜
更
(
ふ
)
けて後、
俄然
(
がぜん
)
として暴風起り、
須臾
(
しゅゆ
)
のまに大方の提灯を吹き飛ばし、残らず
灯
(
ひ
)
きえて
真闇
(
まっくら
)
になり申し候。
闇夜
(
やみよ
)
のなかに、唯一ツ
凄
(
すさ
)
まじき音聞え候は、大木の吹折られたるに候よし。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それもよし、それもよし! おう
闇夜
(
やみよ
)
よ、太陽を
孵化
(
ふか
)
し出すものよ、われは汝を恐れない! 一つの星が消え
失
(
う
)
せても、他の無数の星が輝き出す。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
目に見え心にあるものは、ただ
闇夜
(
やみよ
)
に似た何か
沈鬱
(
ちんうつ
)
な底深いもののみであった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
師走の
闇夜
(
やみよ
)
に
白梅
(
しらうめ
)
の、
面
(
おもて
)
を
蝋
(
ろう
)
に照らされる。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“闇夜”の意味
《名詞》
光のない暗い夜。
(出典:Wiktionary)
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
“闇夜”で始まる語句
闇夜彷徨