)” の例文
ハイカラなレッテルなどられ、ちゃんとしたびんでしたが、内容が濁っているのです。ウイスキイのドブロクとでも言いましょうか。
美男子と煙草 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何のまじないかあわてて煙草を丸め込みその火でまた吸いつけて長く吹くを傍らにおわします弗函どるばこの代表者顔へ紙幣さつった旦那殿はこれを
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
暦本れきほん頒布はんぷもまだ十分でなかった時代から、掛軸や壁にるような絵像えぞうだけは、需要があったと見えて遠い田舎までも配られていた。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
骸骨コツを渋紙でり固めてワニスで塗り上げたような黒光りする凸額おでこの奥に、硝子玉ガラスだまじみたギラギラする眼球めだま二個ふたつコビリ付いている。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右手に握りしめていた釘が、もぎ取られるように英夫の手をはなれ、りついたようにぺたんと機雷に吸い寄せられてしまったのだ。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
張交はりまぜふすまには南湖なんこだの鵬斎ぼうさいの書だの、すべて亡くなった人の趣味をしのばせる記念かたみと見るべきものさえもとの通りり付けてあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぐ同じような小箱を造り、油紙あぶらがみをかけ、縄でからげて、佐渡平の店から持って来たしるしつきの送り状へ、同じ宛名を書いてりつけた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せがれは、たび奉公ほうこうにやられて、女房にょうぼうは、主人しゅじん留守るすうちでいろいろな仕事しごとをしたり、手内職てないしょく封筒ふうとうったりしていたのでした。
お化けとまちがえた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アーク号の船内に、「船長の許可なくして入室を禁ず」とり紙をした部屋があった。中では、わあわあと、元気な人の声がしていた。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
後に「チャップリン黄金狂時代、近日上映」という広告がってあった。龍介はフト『巴里の女性』という活動写真を思いだした。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
てなわけなのであるが、十銭切手をると、世界中どこでも、郵便の行く時代であったから、私はこれを至るところへ飛ばせてくれた。
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
とにかく事情をもっと確かめるために廿日市駅へ行ってみた。駅の壁には共同新聞がり出され、それに被害情況が書いてあった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
思いつめたような彼の目は真向まっこうからぼくをみつめ、りついたようなほおの青白いかげりが、唇の赤さを際立たせてふだんよりも濃かった。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
薄暗いドアに紙をって、昨日きのうの日づけで、診療の都合により面会を謝絶いたし候——医局、とぴたりと貼ってある。いよいよおだやかでない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれはそれを四つにいて、醫者いしやがしたやうにしろ練藥ねりぐすりもゝうへでガーゼへつて、卯平うへい横頬よこほゝつた曝木綿さらしもめんでぐる/\といた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
建物全体をイルミネーションで包み、飾窓には、これから顔を見せにくるはずのシネマスターの大きな写真が何枚もり出されてあった。
或る嬰児殺しの動機 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
国吉はそう云って走ってゆき、まもなく戻って来ると、なにかの草の葉をあぶったような、べっとりした物をさわの指の患部にり着けた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これに似た事は、一夜中に紙をり詰めて営の白壁の速成を粧い、敵を驚かす謀計で、秀吉公は、美濃攻めにも小田原陣にもそうした由。
網戸をおろした広い窓へ、白いの群れがりついてゐた。食事を終つた頃、突然、前庭の方で、自動車のエンジンの音がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
白波をたてて荒れ狂う海の上、蠅取紙にとられた蠅のように、びっしりと人間がりついた帆柱が二本、あわれなようすで突き出ている。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一枚ぐらいはドコかにってありそうなもんだと、お堂の壁張かべばりを残るくまなく引剥ひきはがして見たが、とうとう一枚も発見されなかったそうだ。
と三吉が洋燈を持って案内したは、炉辺の次にある八畳の間で、高い天井、茶色の壁紙でった床の間などがお雪の眼についた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鎖は足に食い込んであの浅草紙でっただんぶくろのような足の皮は、そのために気味悪く引きつって醜いしわができていた。
解かれた象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おたねは、お札と母の手紙とを夫に見せて、「此家ここには神棚があるのに何にも祭るものがなかつたのだから、このお札をつときませう。」
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
この二人は浅草公園を徘徊はいかいする不良ので、岩本は千束町に住んで活動写真の広告のビラをるのが商売、山西は馬道うまみち床屋とこやせがれであった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
殊に紅唐紙べにとうしれんった、ほこり臭い白壁しらかべの上に、束髪そくはつった芸者の写真が、ちゃんとびょうで止めてあるのは、滑稽でもあれば悲惨でもあった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一瞬間、ヴィタミンBの強いにおいが部屋じゅうに満ちた。雪子が絆創膏をった上からぴたぴたたたいて肉をんでやっていると
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おやア! 背中に紙がってあるぞ! 何だと……亡、者? ワッ! 亡者とある。ウム、確かにまた、喬之助の悪戯いたずら——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
坐右ざゆうの柱に半折はんせつに何やら書いてってあるのを、からかいに来た友達が読んでみると、「今はしのぶおか時鳥ほととぎすいつか雲井のよそに名のらむ」
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
日の照る日何枚もの板に白い紙をって立て掛けてある様は、農村の風情を一入ひとしお美しくします。乾かすには天日てんぴ板干いたぼしとにくはありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「泥棒龕燈ですよ。この中に小さい蝋燭らふそくを立てて、口のところに、切拔きのお化けをつたら、影法師が映りやしませんか」
つうの手紙がいこんできた。切手きってらないので、郵税ゆうぜい二ペンスの不足ふそくとなっている。透明人間からのものだ。消印けしんはヒントンディーンきょく
写真帖には肺病で死んだ、美しい夫人の小照が幾枚となくりこまれてあり、彼にとっては寸時もそばを離すことのできない愛妻の記念であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
清君もほお林檎りんごのように赤くして興奮した。机の上には『極秘』の赤紙がられた怪潜水艦『富士』の青写真が、ものものしくひろげられている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
元子がふりむくと、小母さんは、今あけたかごをさげてうろうろしている。気がつくと、大きな字で、御仏前と印刷した紙ぎれが、りついている。
日めくり (新字新仮名) / 壺井栄(著)
煙草は乾いた口に不味まずかった。いがらっぽく、すぐに吸口が唇にりつく。川から吹いて来る風は、泥のにおいがした。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
浮世絵画家の版下はんした絵にどれだけの紙がり重ねられて一本の線、一人の顔が描き改められているかを知る必要がある。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
彼は焦々いら/\した調子でかう言つて、束になつた葉書や手紙の中から、赤い印紙を二枚つた封の厚いのを取り出した。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
ある日この子は大きなとりの紙をどこからか買って来て、綺麗きれいにボール紙にりつけて、四十八に割った細いけい縦横たてよこに引いて、その一つ一つの目に
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
塵埃ちりが山のように積っていたが、ほうきをかけ雑巾ぞうきんをかけ、雨のしみの附いた破れた障子をり更えると、こうも変るものかと思われるほど明るくなって
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その一室には物忌ものいみという札がられ、だれも出入りをしなかった。常陸夫人も二、三日姫君に添ってそこにいた。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「おれも今それを見直そうと思っているところだ。あった、あった。その紙切れはここにりつけてあるよ。」
郵便切手を上着の裏にでもっておけば、それが通行証がわりになる、そういう秘密の取りきめがあったのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
ひどく東邦風なジャンクを模様にした切手を四枚もつて——北京ペキンから私のところへ小包が来た。差出人は満鉄公処秘書課塩崎龍夫、塩崎は私の旧友なのだ。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
背景は、神経質な電気の反射を避けるため、空も山も花も草も、それぞれの色の布をりつけたものを用う。
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
かかる「影像イマージュ」のうちにだけしか見いだし得ず、ジャーナリズムはまた、彼にファンテジストのレッテルをって、一回何行という短文をやたらに書かせた。
博物誌あとがき (新字新仮名) / 岸田国士(著)
事実、ジャックが、近づく馬車の音にあわてて、体を離れ、最寄もよりの暗い壁へでも身をりつけたとたんに、発見者の馬車がはいってきたものに相違ない。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
木之助があけようとして手をかけた入口の格子こうし硝子に「諸芸人、物貰ものもらい、押売り、強請ゆすり、一切おことわり、警察電話一五〇番」と書いた判紙はんしってあった。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「新聞の活字を彼方此方あっちこっちから切り集めてったんですよ。成功しましたね。だ電気が来なくて薄暗いから」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
阿片丁幾アヘンチンキ」というレッテルをったからのガラスびんがそのかたわらにあった。彼の呼吸は毒を飲んだことを示していた。彼はひと言もいわずに死んでしまった。