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褄
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つま
ふりがな文庫
“
褄
(
つま
)” の例文
南朝の暦応三年も秋ふけて、女の笠の
褄
(
つま
)
をすべる夕日のうすい影が、かれの長い袂にまつわる
芒
(
すすき
)
の白い穂を冷たそうに照らしていた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
謙譲の
褄
(
つま
)
はずれは、
倨傲
(
きょごう
)
の襟より品を備えて、尋常な
姿容
(
すがたかたち
)
は調って、焼地に
焦
(
い
)
りつく影も、水で描いたように涼しくも
清爽
(
さわやか
)
であった。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お駒ちゃんは手ぬぐいを吹き流しにかぶって、
褄
(
つま
)
をとるようにしていた。派手な着物の柄が、やみの底にふんわり浮いて見えていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
文女は
肉置
(
ししお
)
きのいい大柄なひとで、坐りはじめたら、
褄
(
つま
)
もうごかさずに何時間でも坐っているという、どっしりとした風格だった。
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
差櫛
(
くし
)
や
珊瑚珠
(
たま
)
のついた
鼈甲
(
べっこう
)
の簪を懐紙につつんで帯の間へ大事そうにしまいこみ、
褄
(
つま
)
さきを帯止めにはさんで、お
尻
(
しり
)
をはしょった。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
『
春告鳥
(
はるつげどり
)
』の中で「入り
来
(
きた
)
る
婀娜者
(
あだもの
)
」は「
褄
(
つま
)
をとつて白き足を見せ」ている。浮世絵師も種々の方法によって
脛
(
はぎ
)
を露出させている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
「あら、もう消えちまつた。暗い空の中にひらめく稲妻のやうだつたわ。」そして彼女は立上り乍らやゝ乱れてゐる
褄
(
つま
)
をそろへた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
褄
(
つま
)
を掴んでたくし上げた。だらーッと下がった緋の長襦袢の、合わせ目が開いて女の
脛
(
はぎ
)
とは見えない、細っこい
毛臑
(
けずね
)
がニョッキリ出た。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここでいよいよ
切破
(
せっぱ
)
つまって、泣きの涙でお君を手放す。お君は須賀町の周旋屋から芳町の房花家へ小園と名乗って二度とる
褄
(
つま
)
。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
保
(
たもつ
)
さんの記憶している
五百
(
いお
)
の話によるに、枳園はお
召縮緬
(
めしちりめん
)
の
衣
(
きもの
)
を着て、
海老鞘
(
えびざや
)
の
脇指
(
わきざし
)
を差し、歩くに
褄
(
つま
)
を取って、
剥身絞
(
むきみしぼり
)
の
褌
(
ふんどし
)
を見せていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
褄
(
つま
)
を取って、白い素足が、ひらひらと五、六人も跳び乗ってしまった。大きく揺れる屋形の周りで、
芸妓
(
おんな
)
たちはキャッキャッと、はしゃいだ。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、妙子は傘を床に置いて、
褄
(
つま
)
を取りながらゆっくりゆっくりと長椅子の側へ歩み寄って、貞之助に並んで掛けた。そして
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども、結局にはそれが禍いとなって、あろうことか正室
薄雪
(
うすゆき
)
の
方
(
かた
)
が、
上方
(
かみがた
)
役者里虹と道ならぬ
褄
(
つま
)
を重ねたのである。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何
(
なに
)
とはなしに
針
(
はり
)
をも
取
(
と
)
られぬ、
未
(
ま
)
だ
幼
(
いとけ
)
なくて
伯母
(
をば
)
なる
人
(
ひと
)
に
縫物
(
ぬひもの
)
ならひつる
頃
(
ころ
)
、
衽先
(
おくみさき
)
、
褄
(
つま
)
の
形
(
なり
)
など六づかしう
言
(
い
)
はれし
雨の夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
左右から
突
(
つッ
)
ついたりなにかいたします。
左様
(
そう
)
されるとされるほど嬉しいもので、つッと
起
(
た
)
ちまして
裲襠
(
しかけ
)
の
褄
(
つま
)
をとるところを、
後
(
うしろ
)
から
臀
(
いしき
)
をたゝきます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
華麗な気の放たれることは昔にましたお姿であると思った源氏は前後も忘却して、そっと静かに帳台へ伝って行き、宮のお召し物の
褄
(
つま
)
先を手で引いた。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
さみだれが煙るように降る夕方、老妓は傘をさして、玄関横の
柴折戸
(
しおりど
)
から庭へ入って来た。渋い座敷着を着て、座敷へ上ってから、
褄
(
つま
)
を下ろして坐った。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
春が、若葉を
翳
(
かざ
)
して裾野を嶺を指して行くのだ。
褄
(
つま
)
のあたりを小紋模様に、染め分けて微かに見えるのは、細井や小坂子の山村の数々か、それとも松林か。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
闇
(
あん
)
に知ッていたので、いわゆる虫が知ッていたので,——その
飄
(
ひるが
)
えるふりの
袂
(
たもと
)
、その
蹴返
(
けかえ
)
す
衣
(
きぬ
)
の
褄
(
つま
)
、そのたおやかな姿、その美しい貌、そのやさしい声が
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
四人の芸妓がすらりと
褄
(
つま
)
をとり、いい立姿を見せて階段をのぼるのに引きずられるように、はじめは入ることを渋っていたもの共も一斉に二階にあがった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
乱れた
褄
(
つま
)
をきっと直して、いい音をさせて、きゅうきゅうと帯をしめ直したが、その気配に薄目もあけず、だんだんいびきを高める島抜け法印を見下ろして
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
つぶやきと一しょにミネはショールを頭からかぶり直し、
褄
(
つま
)
からげをした。思案しながら一足一足を
交
(
かわ
)
さねばならぬ。しかも思案の一足は決して安全ではない。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
白無垢の
褄
(
つま
)
をさばいた下からチラリと長襦袢の
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
が燃えて、桃色珊瑚を並べたような爪先が、雪の上にキチンと揃った美しさは、何に讐えようもありません。
猟色の果
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これも
亦
(
また
)
、
招
(
よ
)
ばれて行く
妓
(
こ
)
と見え、箱屋一人連れ、
褄
(
つま
)
高く取つて、いそ/\と二人の前を通過ぎた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
尽
(
ことごと
)
く
窓帷
(
カアテン
)
を引きたる十畳の
間
(
ま
)
は
寸隙
(
すんげき
)
もあらず
裹
(
つつ
)
まれて、火気の
漸
(
やうや
)
く春を蒸すところに、宮は
体
(
たい
)
を
胖
(
ゆたか
)
に
友禅縮緬
(
ゆうぜんちりめん
)
の
長襦袢
(
ながじゆばん
)
の
褄
(
つま
)
を
蹈披
(
ふみひら
)
きて、
緋
(
ひ
)
の
紋緞子
(
もんどんす
)
張の
楽椅子
(
らくいす
)
に
凭
(
よ
)
りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
錦の
縁
(
へり
)
のある
御簾
(
みす
)
と申し、あるいはまた御簾際になまめかしくうち出した、
萩
(
はぎ
)
、
桔梗
(
ききょう
)
、
女郎花
(
おみなえし
)
などの
褄
(
つま
)
や袖口の彩りと申し、うららかな日の光を浴びた、
境内
(
けいだい
)
一面の美しさは
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また
褄
(
つま
)
でも
袖
(
そで
)
口でも
袂
(
たもと
)
まわしでも、ところどころのきまりは面倒をいとわず、きちんきちんと、するところまでするという気でなければ、きれいに縫いあがるはずはありません。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
お文と源太郎とは、人込みの中を抜けて、
褄
(
つま
)
を取つて行く
紅白粉
(
べにおしろい
)
の濃い女や、
萌黄
(
もえぎ
)
の風呂敷に箱らしい四角なものを包んだのを掲げた女やに
摩
(
す
)
れ違ひながら、
千日前
(
せんにちまへ
)
の方へ曲つた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
答えがないので、為さんはそっと
紙門
(
からかみ
)
を開けて座敷を覗くと、お光は不断着を
被
(
はお
)
ったまままだ帯も結ばず、真白な足首
現
(
あら
)
わに
褄
(
つま
)
は開いて、片手に
衣紋
(
えもん
)
を抱えながらじっと立っている。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
おくみはその間井戸ばたへ出て、
褄
(
つま
)
をからげて傘をさしかけてゐてお上げした。山羊はじと/\と水を吸うた
檻
(
をり
)
の板屋根の下に小暗く引つ込んで、人のけはひを恋しがるやうにみい/\啼いた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
お化粧をしていた
面
(
おもて
)
は絵に見るもののように美しくありました。裲襠の肩が外れて、着物の
褄
(
つま
)
も裾もハラハラと乱れていました。見れば真白な素足に、
冷々
(
ひやひや
)
する露の下りた橋板の上を踏んでいます。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
じみな色の縞の着物で、胸だかに帯をしめ、
褄
(
つま
)
を取っていた。紫色の
縮緬
(
ちりめん
)
の頭巾をかぶっているので、顔かたちはよくわからないが、高い鼻と、きれいに澄んだ賢そうな眼が、万三郎の注意をひいた。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
羽子板に似たりといはばおこられむやりはごすとて
褄
(
つま
)
とる人を
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と言って、
褄
(
つま
)
を取って下へおりた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
褄
(
つま
)
とりて
独
(
ひと
)
り
静
(
しずか
)
に
羽子
(
はね
)
をつく
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
褄
(
つま
)
はうばらにおほはれぬ
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
謙譲の
褄
(
つま
)
はづれは、
倨傲
(
きょごう
)
の
襟
(
えり
)
より
品
(
ひん
)
を備へて、
尋常
(
じんじょう
)
な
姿容
(
すがたかたち
)
は
調
(
ととの
)
つて、
焼地
(
やけち
)
に
焦
(
い
)
りつく影も、水で描いたやうに涼しくも
清爽
(
さわやか
)
であつた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あらもう消えちまった。暗い空の中にひらめく
稲妻
(
いなずま
)
のようだったわ。」そして彼女は立ち上がりながらやや乱れている
褄
(
つま
)
をそろえた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
權三の女房おかん、
河岸
(
かし
)
の女郎あがりにて廿六七歳、これも手拭にて頭をつゝみ、
襷
(
たすき
)
がけにて
浴衣
(
ゆかた
)
の
褄
(
つま
)
をからげ、三人に茶を出してゐる。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あたしの祖母がお
褄
(
つま
)
をとって来て、
巾着
(
きんちゃく
)
からお金を払い、お其にもやった。八百屋の親たちはしきりにおじぎをした。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
持っていた小次郎の片袖と美作の印籠とを夢中のように懐中へ押し入れると
褄
(
つま
)
を取り上げ、建物の一面に添いながら、鈴江は表門のほうへ走り出した。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さみだれが煙るように降る夕方、老妓は傘をさして、玄関横の
柴折戸
(
しおりど
)
から庭へ入って来た。渋い座敷着を着て、座敷へ上ってから、
褄
(
つま
)
を下ろして坐った。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その
一筋
(
ひとすじ
)
はすぐさま石段になって降り行くあたりから、その時静な
下駄
(
げた
)
の音と共に
褄
(
つま
)
を取った芸者の姿が現れた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
手をつないだ座敷着の
妓
(
おんな
)
たちが
褄
(
つま
)
を高くあげて彼の前を通りすぎた。万八楼の小提灯が、遅く
帰宅
(
かえ
)
る
料理番
(
いたまえ
)
の老人を、とぼとぼと
河岸
(
かし
)
づたいに送って行く。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と思わず
褄
(
つま
)
を取りまして、
其処
(
そこ
)
に有合せた庭草履を
穿
(
は
)
いて
彼
(
か
)
の生垣の処へ出て見ると、十間ばかり先の
草原
(
くさばら
)
に立って居りまして、頻りと招く様子ゆえお竹は
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
重ねて言われて、男衆が、それを、取り出すと、雪之丞は、手早く着更えて、手拭いを吹きながしに
冠
(
かぶ
)
ると、
褄
(
つま
)
をちょいとはしょって見て、姿見にうつしたが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
梅をせき立てて出して置いて、お玉は
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しく襷を掛け
褄
(
つま
)
を
端折
(
はしょ
)
って台所に出た。そしてさも面白い事をするように、梅が洗い掛けて置いた茶碗や皿を洗い始めた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
襟をそろへて
褄
(
つま
)
を重ねて、眺めつ眺めさせて喜ばんものを、邪魔ものゝ兄が見る目うるさく、早く出てゆけ
疾
(
と
)
く
去
(
い
)
ねと思ふ思ひは口にこそ出さねもち前の疳癪したに堪えがたく
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
何かごわ/\した
裲襠
(
うちかけ
)
めいた物を
纏
(
まと
)
って、
猫背
(
ねこぜ
)
の肩をかゞめて、引きずった裾が寝ている人に触らぬように、そして、衣ずれの音を少しでも殺すように、両手で
褄
(
つま
)
を取っていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
褄
(
つま
)
を乱して急ぎ去るお艶の影に、みだらな笑をたたえた源十郎は「お藤」とふり向いて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
褄
漢検1級
部首:⾐
13画
“褄”を含む語句
褄端折
片褄
前褄
袖褄
目褄
褄折笠
辻褄
小褄
左褄
褄先
気褄
褄捌
後褄
江戸褄
褄前
褄楊枝
蹴出褄
高褄
機嫌気褄
両褄
...