)” の例文
フランスの兵がし官許を得て通るのなら、前以て外国事務係前宇和島藩主伊達伊予守宗城だていよのかみむねきから通知がある筈であるに、それが無い。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
し地球が熱病を患ったのだとすれば、その熱病の病源菌は、喜多川治良右衛門とその周囲の悪友共であったとも云い得たであろう。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
し彼女に手紙を出すことを許されなかったら、そして時々彼女が手紙をくれなかったら、私はパリのこの地獄の中で死ぬだろう」
し鴉片の煙の匂に近い匂を求めるとすれば、それは人気のない墓地の隅に寺男か何かの掃き集めたしきみの葉を焚いてゐる匂であらう。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しくはまた苔の下に咽んでいた清水の滴りが岩間に走り出て、忽ち潺湲せんかんの響を立てながら一道の迅流となって駆け下りて行くように
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しこの歌が止んだなら全く浮世と繋がる一筋の糸も断ち切られてしまうので、にくむべき敵ながら、その歌う歌の調子に涙ぐまれた。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
然し人一倍義侠心の強い彼は、し京太郎にとって悪い奴なら、自分がなんとかあしらってやろうと考え、そのまま浜の方へけだした。
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……しも落第をしようものなら、一年前に入學してゐる朋輩に對しても、家の者や村の者に對しても、おめ/\顏は合はされない。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
しも人々が国家の大祭日に当りて、肉体の休養と精神の慰安とに心を用いるなら、凡そ天下にそれほどよきものはないのであろう。
し勧進の職を承るならば、劇務万端のために修行念仏の本意に背くことになりますから、どうぞこの儀は御免を願い度うございます
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其の時院のけしきかはらせ給ひ、汝聞け、帝位は人のきはみなり。人道にんだうかみより乱すときは、天のめいに応じ、たみのぞみしたがうて是をつ。
「鰻? 鰻ですか。フフフフフ、いや、鰻でも悪い。ピアノは鰻を置く処じゃない。んなにおどかしてし病気になったら如何どうします」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
虚偽うそツ、し其れならば、姉さん、貴嬢あなたの苦悶を私に打ち明けて下すつてもいぢやありませんか、秘密は即ち不信用の証拠です」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
し、同じやうな意味で選まれたとすると、その男が飛んだ目に逢つたやうに、僕も何時かは、飛んだ目に逢ひさうです。はゝゝゝ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それにしても、文字もんじが彫ってあると云うのはすこぶる面白い問題で、文字もんじの解釈ができたら、𤢖の正体はいよいよ確実に判りましょう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神の現前しくは内住若しくは自我の高挙、光耀等の意識につきては、事に触れ境に接して、予がこれまで屡〻しば/\みづから経たる所なりしが
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
もつとも、あれでしどつちかが斷然だんぜんつよくでもなつたとしたら、おそらくすゝまぬ方は憤然ふんぜん町内をつてつたかも知れない。くは原、くは原!
し其処のが負傷者ておいなら、この叫声わめきごえを聴いてよもや気の付かぬ事はあるまい。してみれば、これは死骸だ。味方のかしら、敵のかしら。
そして勧善懲悪の名のもとに一篇の結末に至つて此等の人物が惨殺しくは所刑せられるのに対して、英雄的悲壮美を経験するのである。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
三日過ぎたら大抵その縄張りを出て行くのであるが、しもっと永くそこに留まろうとすれば、それ以後の費用は勿論甲の自弁である。
それでしやお宅で何かの物音をおききになったか、或は衣川の姿でもご覧になりはしなかったかと思って、それを伺いに来たのです。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
自分じぶん同年齡おないどし自分じぶんつてる子供こどものこらずかたぱしからかんがはじめました、しも自分じぶん其中そのかなだれかとへられたのではないかとおもつて。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
まへ内外ないがい火山かざん巡見じゆんけんした場合ばあひ記事きじかゝげていたが、諸君しよくん兩方りようほう比較ひかくせられたならば、國内こくない火山作用かざんさようがいしておだやかであつて
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
源「黙れ左様な無礼な事を申して、し用があったらどう致す、イヤサ御主人がお留守でも用の足りる仔細しさいがあったらうする積りだ」
ヂュリ 誓言せいごんにはおよびませぬ。また誓言せいごんなさるなら、わたしが神樣かみさまともおもふおまへをおけなされ、すればお言葉ことばしんじませう。
し熱のためでないとすれば、それはこの天気のせゐだ。このひどい風のせゐだ。と彼は思つた。全くその日はひどい風であつた。
しもあなたのようなさしい御方おかた最初さいしょからお世話せわをしてくださったら、どんなにか心強こころづよいことであったでございましたろう……。
あゝ、海賊船かいぞくせんか、海賊船かいぞくせんか、しもあのふね世界せかい名高なだか印度洋インドやう海賊船かいぞくせんならば、そのふねにらまれたるわが弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはや是迄これまでである。
「ではしや……」司令官は、何におどろいたのか、その場に、直立不動の姿勢をとり、湯河原中佐の憐愍れんびんを求めるかのように見えた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巴里パリイの小包は一日平均七千個だと云ふから、これし郵便局で配達するとすれば係員の多くを要し事務の繁雑な割に利する所はすくないが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しも浜田は、私と彼女とが既に完全な夫婦であると云われなかったら、進んで彼女を譲ってくれと云い出すつもりだったのでしょう。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お前をうらみますぞえ——お前が、何もかも悪いのじゃ——坊やが、しもいなくなってしまったら、どうしよう! どうしよう!
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
し私があなた方のような探偵小説作家だったら、之からお話しようとする事件を一篇の興味深い探偵小説に仕組んで発表するでしょう。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
けれど、しその一言の見当が外れて居たら、こちらの完全な失敗であるから、更に初めから事件をしらべなおさねばならない……
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
し両親にして自己の幸福を犠牲にしない時は自然はその法則によつて彼等の罪を子供に報ひ、以て彼等の義務の怠慢を罰するであらう。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
しそれが出来さえすれば、気筒を上下に立てておくことも必要でなくなり、これを横にしておいてピストンを左右に動かすこともでき
ジェームズ・ワット (新字新仮名) / 石原純(著)
し支那の如き族制に起りたる国に自由の精気をもとめ、英米の如き立憲国に忠孝の精気を求めなば、人は唯だ其愚を笑はんのみ。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「何事も隠さず云って頂きたい。そうでないと我々は貴君を氏名詐称と、しかすると、詐欺取材で告発しなければなりません」
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それが度重なつたところで、そんな神経がしあつたとしても、いつかえてしまつて、常習的に感じがなくなつてしまつたものだつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
うところの芸術家のみが創造をつかさどり、他はこれにあずからないものだとするなら、どうして芸術品が一般の人に訴えることが出来よう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
し何か危険にでも遇って、再び帰れないような場合には、荷物全部はグルンダー君をわずらわして、日本へ送ることに主人に依頼した。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
しきりに相撲宗平に手をこひて、し負くるものならば時弘が首を切られん。宗平負けば、又宗平が首を切らんなど申しけるを」
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
屋敷の中に穴をほって隠れて居ようか、ソレでは雨の降るときに困る。土蔵のえんの下に這入はいって居ようか、し大砲で撃れると困る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ゆるしてくれと謂ふのだらう。その外には、見なければ成らん用事の有る訳は無い。し有ると為れば、それは見る可からざる用事なのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
新らしい道は古き道を辿る人々しくは古き道を行き詰めた人々に未だ知られざる道である。又辿らうとする先導者にも初めての道である。
新らしき女の道 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
こういうとき、私は強い衝動に駆られて、し許さるるなら私は大声挙げて「タロー! タロー!」と野でも山でも叫び廻り度い気がする。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
し来客あれば、一々この魚を指し示して、そを釣り挙げし来歴を述べ立つるにぞ、客にして慢性欠伸症に罹らざるは稀なり。
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
「お爺さん。御免よ。し綱が切れて高い所から落っこちると、あたい死んじまうよ。よう。後生だから勘弁してお呉れよ。」
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
し彼等が結合を作つたなら、青年は恐らく凍死するの危険を冒さなければならなかつたかも知れないと私は気づかつてゐる。
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
『倅にそんなことがあるものか』という考えは何時いつの間にか消えてしまって、『しか事実だったら……』と、そればかりが気づかわれた。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)