トップ
>
臭気
>
におい
ふりがな文庫
“
臭気
(
におい
)” の例文
大な
鋤
(
すき
)
を打込んで、身を横にして
仆
(
たお
)
れるばかりに土の塊を鋤起す。気の遠くなるような黒土の
臭気
(
におい
)
は
紛
(
ぷん
)
として、鼻を衝くのでした。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
五日、
七日
(
なぬか
)
、
二夜
(
ふたよ
)
、三夜、観音様の前に
静
(
じっ
)
としていますうちに、そういえば、今時、
天狗
(
てんぐ
)
も
※々
(
ひひ
)
も居まいし、第一
獣
(
けもの
)
の
臭気
(
におい
)
がしません。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女はたちまち帰り来りしが、
前掛
(
まえかけ
)
の下より現われて膳に
上
(
のぼ
)
せし
小鉢
(
こばち
)
には
蜜漬
(
みつづけ
)
の
辣薑
(
らっきょう
)
少し
盛
(
も
)
られて、その
臭気
(
におい
)
烈
(
はげ
)
しく
立
(
た
)
ち
渡
(
わた
)
れり。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
笹村も、一度経験したことのある、お産の時のあの甘酸ッぱいような
血腥
(
ちなまぐさ
)
いような
臭気
(
におい
)
が、時々鼻を
衝
(
つ
)
いて来るように思えてならなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
……ああ何という凄惨な、冷血な、あくどい執念深い
闘争
(
たたかい
)
であろう。……魂から
滴
(
したた
)
り落ちる血と汗の
臭気
(
におい
)
がわかるような……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
囲炉裏の
縁
(
ふち
)
へ乗せて、ぴちりと親指の爪で
圧
(
お
)
し
潰
(
つぶ
)
したら、云うに云われぬ青臭い虫であった。この青臭い
臭気
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぐと、何となく好い心持になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの
臭気
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぎますと、
身体
(
からだ
)
が
痩
(
や
)
せるように思いますので、とうとう身体を悪くしてしまって、帰って来ております
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
早い話がすべての人が彼に取っては種々な品物の
臭気
(
におい
)
に過ぎなかった、親分の藤吉は
柚子味噌
(
ゆずみそ
)
、兄分の勘弁勘次は佐倉炭、角の海老床の親方が
日向
(
ひなた
)
の
油紙
(
ゆし
)
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
縁端
(
えんがわ
)
から、台所に出て真闇の中をそっと
覗
(
のぞ
)
くと、
臭気
(
におい
)
のある冷たい空気が気味悪く顔を
掠
(
かす
)
めた。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
てっぺんから孔のあいたお釜帽子に、煤いろの
襤褸
(
ぼろ
)
の腐れ
鰊
(
にしん
)
の
臭気
(
におい
)
でも放ちそうなのに、縄帯をだらしなく前結びにして、それも
画
(
か
)
きちらした髯むじゃの黒い胸をはだけ、手も足も
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
何だろう、何の
臭気
(
におい
)
だろう。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
かくして
後
(
のち
)
、思い思いに敵を見立てて渡合う。例の
口汚
(
くちぎたな
)
の女房は、若手の令嬢組の
店頭
(
みせさき
)
に
押立
(
おった
)
ち、口中
得
(
え
)
ならぬ
臭気
(
におい
)
を吐きて
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頻りに鼻をヒコ付かせて、その
臭気
(
におい
)
のする方向へ近附いて行くうちに味噌の
臭気
(
におい
)
がだんだんハッキリとなって来た。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
何か、身に合う仕事はないものかなど私はいいますと、重吉は、「あの
臭気
(
におい
)
を嗅がない仕事なら何んでもします。もう二度と花川戸へ帰る気もしません」
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
気の遠くなるような黒土の
臭気
(
におい
)
は
紛
(
ぷん
)
として、鼻を
衝
(
つ
)
くのでした……板橋村を離れて、旅人の群にも逢いました。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
下
(
しも
)
の方からは厭な
臭気
(
におい
)
が立って、
爪
(
つめ
)
や唇に血の色がなかった。腹膜、心臓、そんなような余病も加わって来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
厩
(
うまや
)
のように、馬と同居しているのですから、ムッとした
臭気
(
におい
)
が鼻をおそう。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
とちょうど寄合わせた時、少し
口惜
(
くやし
)
いようにも思って、
突懸
(
つっかか
)
って言った、が、胸を
圧
(
おさ
)
えた。
可厭
(
いや
)
なその
臭気
(
におい
)
ったら無いもの。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どうかすると、若い女の髪が蒸されるとも、
身体
(
からだ
)
が燃えるともつかないような、今まで気のつかなかった、
極
(
ご
)
く極く
幽
(
かす
)
かな
臭気
(
におい
)
が、彼の鼻の先へ匂って来る。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その中から放散する小便のような、腐った魚のようなあたたかい
臭気
(
におい
)
が夜具の中一パイに
籠
(
こ
)
もっています。
卵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鉄の錆のような
臭気
(
におい
)
に狭い家のなかは
咽
(
む
)
せ返るようだった。
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
雪隠で
詰腹
(
つめばら
)
を切る
体
(
てい
)
だね、誠にはやなんとも謂われねえ
臭気
(
におい
)
だぞ、豪傑に
支
(
つか
)
えたと見えてここらじとじとする。
薄汚
(
うすぎたね
)
え。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし飯山地方に古めかしい宗教的の
臭気
(
におい
)
が残っていて、二十何ヵ所の寺院が
仮令
(
たとえ
)
維持の方法に苦みながらも旧態を保存しているということは、偶然でない。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
当り前なら法律と
算盤
(
そろばん
)
の前には頭を下げる事にきめている吾輩だったが、あの時には、前の日に死んだ友吉おやじのヒネクレ根性が、爆薬の
臭気
(
におい
)
とゴッチャになって
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
摘み上げて嗅いでみたが、
臭気
(
におい
)
もしない。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
怪しき
臭気
(
におい
)
、
得
(
え
)
ならぬものを
蔽
(
おお
)
うた、
藁
(
わら
)
も
蓆
(
むしろ
)
も、早や
路傍
(
みちばた
)
に
露骨
(
あらわ
)
ながら、そこには
菫
(
すみれ
)
の濃いのが咲いて、
淡
(
うす
)
いのが草まじりに、はらはらと数に乱れる。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まだ一方には
鉋屑
(
かんなくず
)
の
臭気
(
におい
)
などがしていた。湯場は新開の畠に続いて、
硝子
(
ガラス
)
窓の外に
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の釣ったのが見えた。青黒く透明な鉱泉からは薄い湯気が立っていた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
座敷は両側とも雨戸を閉めて、
蚊帳
(
かや
)
が一パイに釣ってあるので、化物屋敷のように暗い上に、
黴臭
(
かびくさ
)
いような、小便臭いような
臭気
(
におい
)
が、足を踏み込むと同時にムッとした。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
抜いて持つた
釵
(
かんざし
)
、
鬢摺
(
びんず
)
れに髪に返さうとすると、
呀
(
や
)
、する
毎
(
ごと
)
に、手の
撓
(
しな
)
ふにさへ、
得
(
え
)
も言はれない、
異
(
い
)
な、変な、
悪臭
(
わるぐさ
)
い、
堪
(
たま
)
らない、
臭気
(
におい
)
がしたのであるから。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ともかくも吉左衛門は役目を果たしたが、同時に勘定所の役人たちがいやな
臭気
(
におい
)
をもかいで帰って来た。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
中には四五日前の通りに味噌桶が行列して、
黴臭
(
かびくさ
)
い味噌の
臭気
(
におい
)
がムンムンする程籠もっていた。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
抜いて持った
釵
(
かんざし
)
、
鬢
(
びん
)
摺
(
ず
)
れに髪に返そうとすると、や、するごとに、手の
撓
(
しな
)
うにさえ、得も言われない、異な、変な、悪臭い、
堪
(
たま
)
らない、
臭気
(
におい
)
がしたのであるから。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鼻を
衝
(
つ
)
くような惨酷な土の
臭気
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
いだその時の心の経験の記憶は、恐らく岸本に取って一生忘れることの出来ないものだ。過ぐる年月の間の恐ろしいたましいの動揺。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その頃までは日本人しか使わない麦味噌の
臭気
(
におい
)
がするとは……ハテ……面妖な……と思ったのが
大金儲
(
おおがねもうけ
)
の
緒
(
いとぐち
)
であったとは
流石
(
さすが
)
にカンのいい千六も、この時まだ気付かなかったであろう。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ぼんやりと小さく
蹲
(
しゃが
)
んで、ト目に着くと
可厭
(
いや
)
な
臭気
(
におい
)
がする、……
地
(
つち
)
へ
打坐
(
ぶっすわ
)
ってでもいるかぐらい、ぐしゃぐしゃと
挫
(
ひしゃ
)
げたように
揉潰
(
もみつぶ
)
した形で、暗いから
判然
(
はっきり
)
せん。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
田圃側
(
たんぼわき
)
は、高瀬が行っては草を
藉
(
し
)
き、土の
臭気
(
におい
)
を嗅ぎ、百姓の仕事を眺め、畠の中で吸う
嬰児
(
あかんぼ
)
の乳の音を聞いたりなどして、暇さえあれば歩き廻るのを楽みとするところだ。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あとから
跟
(
つ
)
いて行くのは乞食
体
(
てい
)
の
不快
(
いや
)
な
臭気
(
におい
)
のする
老爺
(
じい
)
。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
壺には念入りに鉄漿を
充
(
みた
)
してあるので、
極熱
(
ごくねつ
)
の気に蒸れて、かびたような、すえたような
臭気
(
におい
)
が湧く。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ビッショリ汗をかきながら家へ戻って見ると、その年も畠に咲いた馬鈴薯の白い花がうなだれていた。雨に打たれる乾いた土の
臭気
(
におい
)
は新しい書籍を並べた彼の勉強部屋までも入って来た。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
堪
(
たま
)
らない。
幾日
(
いくか
)
経
(
た
)
ったんだか、べろべろに毛が
剥
(
は
)
げて、羽がぶらぶらとやっと
繋
(
つなが
)
って、
地
(
じ
)
へ
摺
(
す
)
れて下ってさ、頭なんざ
爛
(
ただ
)
れたようにべとべとしている、その
臭気
(
におい
)
だよ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生臭
(
なまぐさ
)
い血の
臭気
(
におい
)
はひしひしと迫って来る夜の空気にまじって一同の鼻をついた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……城の石垣に於て、
大蛇
(
おおへび
)
と
捏合
(
こねお
)
うた、あの
臭気
(
におい
)
が
脊筋
(
せすじ
)
から脇へ
纏
(
まと
)
うて、飛ぶほどに、
駈
(
か
)
けるほどに、段々
堪
(
たま
)
らぬ。よつて、此の
大盥
(
おおだらい
)
で、
一寸
(
ちょっと
)
行水
(
ぎょうずい
)
をばちや/\
遣
(
や
)
つた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いえ、そういうわけでもございませんが、
吾家
(
うち
)
のお袋なぞはもう驚いております。牛の
臭気
(
におい
)
がこもるのは困るなんて、しきりにそんなことを申しまして。この神奈川には、あなた、肉屋の前を
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
美女 潮風、
磯
(
いそ
)
の香、
海松
(
みる
)
、
海藻
(
かじめ
)
の、
咽喉
(
のど
)
を刺す
硫黄
(
いおう
)
の
臭気
(
におい
)
と思いのほか、ほんに、
清
(
すず
)
しい、
佳
(
い
)
い
薫
(
かおり
)
、(
柔
(
やわらか
)
に袖を動かす)……ですが、時々、
悚然
(
ぞっと
)
する、
腥
(
なまぐさ
)
い香のしますのは?……
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これはそう細いという方でもないが、
何処
(
どこ
)
か
成島柳北
(
なるしまりゅうほく
)
の感化を思わせる心の持方で、
放肆
(
ほしいまま
)
な
男女
(
おとこおんな
)
の
臭気
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぐような気のすることまで、包まず
掩
(
おお
)
わずに記しつけてある。思いあたる
事実
(
こと
)
もある。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其の事を
謂
(
い
)
ふ
毎
(
ごと
)
に、姉は
面
(
おもて
)
を
蔽
(
おお
)
ふ
習慣
(
ならい
)
、大方
其
(
そ
)
の
者
(
もの
)
等
(
ら
)
の
身体
(
からだ
)
から姉の顔を
掠
(
かす
)
めて、
暖簾
(
のれん
)
を
潜
(
くぐ
)
つて、
部屋
(
ここ
)
まで
飛込
(
とびこ
)
んで来たのであらう、……其よ、
謂
(
い
)
ひやうのない
厭
(
いや
)
な
臭気
(
におい
)
がするから。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とやっぱり
芬
(
ぷん
)
とする
懐中
(
ふところ
)
の物理書が、その途端に、松葉の
燻
(
いぶ
)
る
臭気
(
におい
)
がし出した。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
力なく引手に手をかけ、
裳
(
もすそ
)
を高く
掻
(
か
)
い取って、ドンと
圧
(
お
)
すと、我ながら、
蹴出
(
けだし
)
の
褄
(
つま
)
も、ああ、晴がましや、ただ一面に鼠の霧、湯花の
臭気
(
におい
)
面
(
おもて
)
を打って、目をも眉をも
打蔽
(
うちおお
)
う
土蜘蛛
(
つちぐも
)
の巣に異ならず。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“臭気”の意味
《名詞》
いやなにおい。くさいにおい。悪臭。
(出典:Wiktionary)
臭
常用漢字
中学
部首:⾃
9画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“臭”で始まる語句
臭
臭味
臭氣
臭剥
臭橘
臭骸
臭椿
臭名
臭肉
臭猫