“におい”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
35.6%
25.6%
15.5%
臭気8.7%
6.4%
香気3.4%
芳香1.8%
異臭0.7%
0.2%
体臭0.2%
匂足0.2%
0.2%
脂気0.2%
臭味0.2%
0.2%
芳芬0.2%
0.2%
香霧0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
学校へ行く時、母上が襟巻えりまきをなさいとて、箪笥たんす曳出ひきだしを引開けた。冷えた広い座敷の空気に、樟脳しょうのうにおいが身に浸渡るように匂った。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
一瞬ののち、蜂は紅い庚申薔薇の底に、嘴を伸ばしたままよこたわっていた。翅も脚もことごとく、においの高い花粉にまぶされながら、…………
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
亮二は、アセチレンの火は青くてきれいだけれどもどうも大蛇だいじゃのような悪いにおいがある、などと思いながら、そこを通り抜けました。
祭の晩 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
五日、七日なぬか二夜ふたよ、三夜、観音様の前にじっとしていますうちに、そういえば、今時、天狗てんぐ※々ひひも居まいし、第一けもの臭気においがしません。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
監獄にいた時どうだとか云うことを幾度いくども云って、息張いばるかと思えば、泣言を言っている。酒のにおいが胸の悪い程するのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
番茶をほうじるらしい、いゝ香気においが、真夜中とも思ふ頃ぷんとしたので、うと/\としたやうだつたさわは、はつきりと目が覚めた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
科学者に云わせると分子の運動とか何だとか理窟りくつを附けるがよく考えれば不思議なもので確かに怪物ばけものである、庭に咲いている菊の花をいでみるといい芳香においがする、この花がまた怪物ばけものである
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
折角油の異臭においに慣れたところに、肥料こやしのにおいなんか押し付けられちゃ、たまらない……なぞと我儘を突張つっぱった。無理にも亭主に運転手稼業を止めさせまいとした。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
タマニヨの声は、カルーソーに比べて遙かに清澄で、引き緊った美しいにおいを持ったものであった。表情も極めて豊かであり、近代の大テナーと言われるになんの不思議もない。
ゲルハルトの声は緻密で、深くて、言うに言われぬ高貴なにおいと光とがある。
それと一緒に黄臭きなくさい煙草のにおいと、何ともいえない黒ん坊のアノ甘ったるい体臭においとがムウーと袋の中へ流れ込んで来たようなの。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
云うな。ふうむ。小丸気味の地蔵帽子で、匂足においが深くって……打掛疵うちかけきずが二つ在るのは珍らしい。よほど人を斬った刀だな。先ず新藤五しんとうごの上作と行くかな……どうだい
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もうもうと四面まわりの壁のにおいを吸って昇るのが草いきれに包まれながら、性の知れない、魔ものの胴中どうなかを、くり抜きに、うろついている心地がするので、たださえ心臓の苦しいのが
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引切ひっきりの無い人通りも、およそ途中で立停たちどまって、芸者の形を見物するのは、鰻屋うなぎやの前に脂気においぐ、奥州のお婆さんと同じ恥辱だ、という心得から、誰も知らぬ顔で行違う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第三に、この兇行は元来、計劃的のものらしい臭味においがして仕様がない。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
村に一人の男があって梨をまちに売りに往ったが、すこぶる甘いうえににおいもいいのでたかい値で売れた。破れた頭巾をかむり、破れた綿入をきた一人の道士がって、その梨を積んでいる車の前へ来て
種梨 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
はらわたまで芳芬においに染まっていないかとおもう。
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
えりの掛った少し地味な銘仙めいせん繻子しゅすの帯、三十近い身柄ですが、美しさや声のにおいから言うと、せいぜい十九か二十歳はたちでしょう。
その新生面はどんな光彩いろどりを放っているか、どんな香霧においを漂わしているか。