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臭
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におい
ふりがな文庫
“
臭
(
におい
)” の例文
一種、眼の
眩
(
くら
)
みそうな
臭
(
におい
)
が室内に
漲
(
みなぎ
)
って、周蔵は起上って坐っていたが、私の入って来ると同時にまたごろりと
眠
(
ね
)
ころんでしまった。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
亮二は、アセチレンの火は青くてきれいだけれどもどうも
大蛇
(
だいじゃ
)
のような悪い
臭
(
におい
)
がある、などと思いながら、そこを通り抜けました。
祭の晩
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
またぼうとなって、
居心
(
いごころ
)
が
据
(
すわ
)
らず、四畳半を
燈火
(
ともしび
)
の
前後
(
まえうしろ
)
、障子に
凭懸
(
よりかか
)
ると、透間からふっと蛇の
臭
(
におい
)
が来そうで、驚いて
摺
(
ず
)
って出る。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小夜子はまた
口籠
(
くちごも
)
る。東京が好いか悪いかは、目の前に、西洋の
臭
(
におい
)
のする煙草を
燻
(
くゆ
)
らしている青年の心掛一つできまる問題である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その音が煮えくり返るような周囲の騒ぎの中に、恐しくかんと
冴
(
さ
)
え渡って、磨いた鉄の冷かな
臭
(
におい
)
を、一度に鋭く鼻の孔の中へ送りこんだ。
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
「うん、ガスの音もかなわんけど、ガスの
臭
(
におい
)
はいやだな。プロペラがまわらなくなったので、あの悪臭が頭の上から遠慮なくおりてくる」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
家の中にはいると、湿った
臭
(
におい
)
の沁みたような気が顔を打つ。S君はそこにいる若い男に頻りと挨拶をして、室の中にはいった。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
そして、二人が
血腥
(
ちなまぐさ
)
い手をアルコールで消毒し、
臭
(
におい
)
のついた着物を脱いで寝間着に着換え、これから寝床へ這入ろうとしている時であった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
猿などが出ていたずらをしますから、新聞紙を沢山もっていってマッチでそれを燃しておふりなさい。あいつはあの
臭
(
におい
)
をいやがりますからな。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
寺田は、もう一遍読みなおすと、すぐ決心をきめて蒼みどろの
臭
(
におい
)
のする藤棚の下を離れ、六区を抜けて、電車通りに急いだ。
魔像
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼
(
かれ
)
はどっかり
坐
(
すわ
)
った、
横
(
よこ
)
になったがまた
起直
(
おきなお
)
る。そうして
袖
(
そで
)
で
額
(
ひたい
)
に
流
(
なが
)
れる
冷汗
(
ひやあせ
)
を
拭
(
ふ
)
いたが
顔中
(
かおじゅう
)
焼魚
(
やきざかな
)
の
腥膻
(
なまぐさ
)
い
臭
(
におい
)
がして
来
(
き
)
た。
彼
(
かれ
)
はまた
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
す。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
やがて碁をうって居た旭川の客が帰って往ったので、表二階の方に移った。硫黄の
臭
(
におい
)
がする鉱泉に入って、二階にくつろぐ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
慶三は独りで往来を歩いている時または店で働いている時も、絶えずお千代の肌の
臭
(
におい
)
がもやもや身に
付纏
(
つきまと
)
っているような心持がしてならなかった。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これと同時に
厨
(
くりや
)
にては
田楽
(
でんがく
)
を焼き初む。味噌の
臭
(
におい
)
に鬼は逃ぐとぞいふなる。撒きたる豆はそを
蒲団
(
ふとん
)
の下に敷きて
寐
(
いぬ
)
れば腫物出づとて必ず拾ふ事なり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
だが、あの男に死なれると、山のような死体から発する
臭
(
におい
)
がたまらない、その悪い臭は、国中に伝染病をひろげることになるだろう、と説くものもありました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
奥様は御慣れなさらないことでもあり、御嫌いでもあり、蚕の
臭
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
げば胸が悪くなると
仰
(
おっしゃ
)
る位でした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
桟橋
(
さんばし
)
は
即
(
すなわ
)
ち魚市場の荷上所で、魚形水雷みたいな
鰹
(
かつお
)
だとか、
腸
(
はらわた
)
の飛び出した、腐りかかった
鮫
(
さめ
)
だとかが、ゴロゴロと
転
(
ころが
)
り、磯の
香
(
か
)
と腐肉の
臭
(
におい
)
がムッと鼻をついた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
安心して椅子の上で寝ている。余りコロロホルムの
臭
(
におい
)
がして
可厭
(
いや
)
な心持だから、乃公は帰って来た。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「このにおいは、御飯のにおいと、
葱
(
ねぎ
)
と豆腐のおみおつけの
臭
(
におい
)
だが、一体どこから来るのだろう」
豚吉とヒョロ子
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
三鳥山人
(著)
みんなで飯を食っていると、しきりに、石油の
臭
(
におい
)
がした。父がやっと発見したら、ランプの油壺に
亀裂
(
ひび
)
が入って、そこから石油が、しずくになって
洩
(
も
)
れていたのだった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「私はこんな土百姓と一しょに御飯はいただけません。この汗の
臭
(
におい
)
ったらがまんが出来ません。」
イワンの馬鹿
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「
師曠
(
しこう
)
の聡」あるも聴くべからず、「
離婁
(
りろう
)
の明」あるもみるべからず、「
公輸子
(
こうしゅし
)
の巧」あるもさぐるべからず、声もなく
臭
(
におい
)
もなく、実に妖怪の精微、かつ至大なるものなり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
舟の方へ下りて来ると
芬
(
ぷん
)
と酒の
臭
(
におい
)
がして、真先に女しかも女郎の肩に手をかけてぐでんぐでんに酔って、赤い眼をとろとろさせて、千鳥足に下りて来るのを見ると、此は驚いた
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
例えば猟夫
間
(
ひま
)
に乗じその子供を取りて馬を替えて極力
馳
(
は
)
せ去るも、父虎もとより一向子の世話を焼かず。母虎巣に帰って変を覚ると直ちに
臭
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
いで跡を尋ね箭のごとく走り追う。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
竜の紋様を施した、古い石の階段を上って、上級生達は三造を、その崇政殿の
後
(
うしろ
)
に連れて行った。青くさい
臭
(
におい
)
が急に鼻を衝いた。石垣を隠すほどに、黒々と夏の雑草が生えていた。
プウルの傍で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
巡査は更に
四辺
(
あたり
)
を見廻すと、
鮮血
(
なまち
)
の
臭
(
におい
)
の
漲
(
みなぎ
)
る家の隅に、
猶
(
なお
)
一人
(
いちにん
)
の若い女が倒れていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すべての習慣には何等かデカダンスの
臭
(
におい
)
が感じられないであろうか。習慣によって我々が死ぬるというのは、習慣がデカダンスになるためであって、習慣が静止であるためではない。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
だから
無暗
(
むやみ
)
と鼻をぴくぴくさして
牛
(
うし
)
の
焦
(
こげ
)
る
臭
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
いで
行
(
ある
)
く、その
醜体
(
ざま
)
ったらない!
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
荘田は、血の
臭
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
いだ食人鬼のように、満足そうな微笑を浮べながら、
肯
(
うなず
)
いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
草を
茵
(
しとね
)
とし石を
卓
(
たく
)
として、
谿流
(
けいりゅう
)
の
縈回
(
えいかい
)
せる、
雲烟
(
うんえん
)
の変化するを見ながら食うもよし、かつ価も
廉
(
れん
)
にして妙なりなぞとよろこびながら、
仰
(
あお
)
いで口中に卵を受くるに、
臭
(
におい
)
鼻を
突
(
つ
)
き味舌を
刺
(
さ
)
す。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
室の中はもちろん、廊下も何も、火薬の煙と
臭
(
におい
)
で一ぱいで、室の窓はたしかに閉められて、内側からは掛け金もかけられてあったと。二人の女どもはこの点については、とてもよくはっきりしていた。
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
アルボースの
臭
(
におい
)
に
交
(
まじ
)
って臭い
臭気
(
しゅうき
)
が鼻と目とをうった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
硫黄
(
いおう
)
の
臭
(
におい
)
もせず、
蒼
(
あお
)
い火も吹出さず、
大釜
(
おおがま
)
に湯玉の散るのも聞えはしないが、こんな山には、ともすると地獄谷というのがあって
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余は余の周囲に何事が起りつつあるかを自覚した。同時にその自覚が
窈窕
(
ようちょう
)
として地の
臭
(
におい
)
を帯びぬ一種特別のものであると云う事を知った。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漬
(
つ
)
けた
玉菜
(
たまな
)
や、ランプの
燻
(
いぶり
)
や、
南京虫
(
なんきんむし
)
や、アンモニヤの
臭
(
におい
)
が
混
(
こん
)
じて、
入
(
はい
)
った
初
(
はじ
)
めの一
分時
(
ぷんじ
)
は、
動物園
(
どうぶつえん
)
にでも
行
(
い
)
ったかのような
感覚
(
かんかく
)
を
惹起
(
ひきおこ
)
すので。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ある時書院の雨戸をしめて居た妻がきゃっと
叫
(
さけ
)
んだ。南の戸袋に蛇が居たのである。雀が巣くう頃で、雀の
臭
(
におい
)
を追うて戸袋へ来て居たのであろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
動物が互の
臭
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぎ合うように鼻を寄せつけて
睨
(
にら
)
み合っていたが、間もなく双方から金網を越えて出入りし始めた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
従って無理に食べても消化も悪いのであります。
勿論
(
もちろん
)
菜食を一年以上もしますなれば仲々肉類は不愉快な
臭
(
におい
)
や何かありまして好ましくないのであります。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
今にもホスゲン瓦斯の
堆肥
(
たいひ
)
に似た
臭
(
におい
)
が鼻をつくかと心配されたが、四分たち、五分たっても、なんの変った臭もして来ず呼吸はふだんと変りなくたいへん楽であった。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
山の多い国を旅する者は、海に
従
(
つい
)
て行かねばならなかった。海に臨んだ処には村がある、町がある。其等の潮風の吹く町や、村に入って、魚の
臭
(
におい
)
、磯の香を嗅いで商いする。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
狐がお屋敷の
雞
(
とり
)
をとったんでげすって。御維新
此方
(
このかた
)
ア、物騒でげすよ。お稲荷様も
御扶持放
(
ごふちばな
)
れで、油揚の
臭
(
におい
)
一つかげねえもんだから、お屋敷へ迷込んだげす。
訳
(
わけ
)
ア
御
(
ご
)
わせん。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
旅舎
(
やどや
)
の二階へ戻って、山本さんは白い
鞄
(
かばん
)
を開けて見た。読もうと思って
彼地
(
むこう
)
から持って来た支那の小説が出て来た。名高い『紅楼夢』だ。
嗅
(
か
)
ぎ慣れた
臭
(
におい
)
はその唐本の中にもあった。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その死骸の
臭
(
におい
)
が今も残っているとは、何という深刻な自然の皮肉であろう。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
玄関へかかって案内を頼んでもその太鼓の音は
毫
(
ごう
)
もやまなかった。その代り
四辺
(
あたり
)
は
森閑
(
しんかん
)
として人の住んでいる
臭
(
におい
)
さえしなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
吐
(
ぬか
)
いて、附木を
持翳
(
もちかざ
)
すと、
火入
(
ひいれ
)
の
埋火
(
うずみび
)
を、口が燃えるように吹いて、緑青の炎をつけた、
芬
(
ぷん
)
と、
硫黄
(
いおう
)
の
臭
(
におい
)
がした時です。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雨の日などは
臭
(
におい
)
が一層強く
籠
(
こも
)
ってむッとするところへ持って来て、おもてのぬかるみを歩いたままで上って来るから、猫の脚あとが
此処彼処
(
ここかしこ
)
に点々とする。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は、勇敢にも時々防毒面と頭との間に指ですき間をつくり、瓦斯の
臭
(
におい
)
をかぎわけようとつとめた。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
初めは手術室から帰って来た患者の
側
(
そば
)
に居って看護をいたします事が一番恐ろしく、殊に
睡眠剤
(
すいみんざい
)
の
臭
(
におい
)
が鼻について自分が心地が悪くなりましたが、近頃は慣れて平気になりました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
慶三は
矢庭
(
やにわ
)
に掛蒲団を剥ぎのけた後、眼を皿のようにして白い
敷布
(
シイツ
)
の上から何物かを捜し出そうとするらしく
稍
(
やや
)
暫く
瞳子
(
ひとみ
)
を据えた後、
頻
(
しきり
)
に鼻を
摺付
(
すりつ
)
けて物の
臭
(
におい
)
でもかぐような挙動をした。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は若しも下から追われたなら、この鉄板の上を渡らなければならぬのだと心配した。また一段上った。やっと彼方の縁が三分ばかり見え出した。段々上るにつれて私は強烈な石油の
臭
(
におい
)
を嗅いだ。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
臭
常用漢字
中学
部首:⾃
9画
“臭”を含む語句
臭気
面倒臭
臭味
異臭
魚臭
臭氣
乳臭
惡臭
肥桶臭
水臭
脂臭
物臭
悪臭
体臭
汗臭
黴臭
胡散臭
生臭
乳臭児
土臭
...