トップ
>
生温
>
なまぬる
ふりがな文庫
“
生温
(
なまぬる
)” の例文
水道の水は
生温
(
なまぬる
)
いというので、掘井戸の水を売ったので、荷の前には、白玉と
三盆
(
さんぼん
)
白砂糖とを出してある。今の氷屋のような荷です。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
ちらと乾雲の刃を見ると、人を斬らずにはいられなくなる左膳、このごろでは彼は、夜
生温
(
なまぬる
)
い血しぶきを浴びることによってのみ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
薄どんよりと曇り掛けた空と、その下にある
磯
(
いそ
)
と海が、同じ灰色を浴びて、
物憂
(
ものう
)
く見える中を、妙に
生温
(
なまぬる
)
い風が
磯臭
(
いそくさ
)
く吹いて来ました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ちょうど人の来ない時分で、お湯が
生温
(
なまぬる
)
かったので、二人はいい気持になって、お湯の中でコクリコクリと居ねむりを初めた。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
何んだか
生温
(
なまぬる
)
い湯にでも入ツてゐるやうな
心地
(
こゝち
)
……、
幻
(
うつゝ
)
から幻へと幻がはてしなく續いて、
種々
(
さま/\
)
な影が眼前を過ぎる、……
只
(
と
)
見
(
み
)
ると、自分は
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
一座は
固唾
(
かたず
)
を呑みました。夕づく陽は縁側に
這
(
は
)
って、棺の前の
灯
(
あかし
)
が次第に明るくなると、
生温
(
なまぬる
)
い風がサッと吹いて過ぎます。
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ああほんとうに、あの
鬼猪殃々
(
おにやえもぐら
)
の原から、
生温
(
なまぬる
)
い風が裾に入りますと、それが憶い出されて、
慄然
(
ぞっ
)
とするような
顫
(
ふる
)
えを覚えるのでございます。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
主人と妻と
女児
(
むすめ
)
と、田の
畔
(
くろ
)
の
鬼芝
(
おにしば
)
に腰を下ろして、
持参
(
じさん
)
の
林檎
(
りんご
)
を
噛
(
かじ
)
った。
背後
(
うしろ
)
には
生温
(
なまぬる
)
い
田川
(
たがわ
)
の水がちょろ/\流れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
生温
(
なまぬる
)
い
茶
(
ちや
)
をがぶ/″\と
遣
(
や
)
つて、
爺
(
ぢい
)
がはさみ
出
(
だ
)
してくれる
焚落
(
たきおと
)
しで、
立
(
た
)
て
續
(
つゞ
)
けに
煙草
(
たばこ
)
を
飮
(
の
)
んで、
大
(
おほい
)
に
人心地
(
ひとごこち
)
も
着
(
つ
)
いた
元二
(
げんじ
)
。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
すっかり
生温
(
なまぬる
)
になっていることが
解
(
わか
)
ったが、温まろうと思い、しばらくじっとしているうちに、身内がぞくぞくして来た。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
品川宿から高輪へかかると、海の風も
生温
(
なまぬる
)
く感じられてくる。街道は白く
旱
(
かわ
)
き上って、牛馬や荷駄馬の通るたびに、
蠅
(
はえ
)
が
胡麻
(
ごま
)
のように
埃
(
ほこり
)
を追う。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俺の心は白け
生温
(
なまぬる
)
くなり、人を殺すには最も不適当な状態になってしまッた。俺は懐手をしながら苦い顔をしていたが
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
先刻
(
せんこく
)
瀧
(
たき
)
のやうに
降注
(
ふりそゝ
)
いだ
雨水
(
あめみづ
)
は、
艇底
(
ていてい
)
に
一面
(
いちめん
)
に
溜
(
たま
)
つて
居
(
を
)
る、
隨分
(
ずいぶん
)
生温
(
なまぬる
)
い、
厭
(
いや
)
な
味
(
あぢ
)
だが、
其樣事
(
そんなこと
)
は云つて
居
(
を
)
られぬ。
兩手
(
りようて
)
に
掬
(
すく
)
つて、
牛
(
うし
)
のやうに
飮
(
の
)
んだ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「まつたくだ。今に見給へ、また例の泥臭い
生温
(
なまぬる
)
の湯を持つて來るぜ。今
大周章
(
おほうろたへ
)
で井戸に驅け出して行つたから。」
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
山の手の深い堀井戸の水を浴びようとかいうので、夏は水道の水の
生温
(
なまぬる
)
きを
喞
(
かこ
)
つ下町の女たち二、三人づれで目黒の
大黒屋
(
だいこくや
)
へ遊びに行く途中であった。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
赤錆の出たブリキ屋根の上には、
生温
(
なまぬる
)
い日の光も当らない。
鈍色
(
にびいろ
)
を放った雲が、その上を見下ろしながら過ぎた。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして私は、魔薬のお蔭で、浅くはありましたが、
日向
(
ひなた
)
水のように
生温
(
なまぬる
)
い、後味の悪い眠りではありましたが、どうやら続けて行くことが出来たのでした。
歪んだ夢
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
たとえ自分の内に、この要求のなお
生温
(
なまぬる
)
くまた深刻でないことを罵る声が絶えないにしても、自分は前よりは一歩深く生活にはいって行ったように感ずる。
自己の肯定と否定と
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
生温
(
なまぬる
)
い四国弁などでぐずぐずいうと頭から
鉄拳
(
てっけん
)
でも食わされそうな心持もするし、それにまだその頃は九州鉄道も貫通していなかった頃で交通も不便だし
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
巨椋の池の水がどんよりと
生温
(
なまぬる
)
く光つて、日がチカチカと照り返す土手の路を、私は揉み上げから襟の周りへじつとり油汗を掻きながら揺られて行つたが
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
どの人もどの人もちゃんと自分を忘れないで、いいかげんに
怒
(
おこ
)
ったり、いいかげんに泣いたりしているんですからねえ。なんだってこう
生温
(
なまぬる
)
いんでしょう。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これに反して『其面影』の描写は婉曲に
生温
(
なまぬる
)
く、花やかな情味に富んでる代りに新らしい生気を欠いていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
烘
(
や
)
く如き熱、腐りたる蒸氣の中にありて、我血は湧きかへらんとす。沼は涸れたり。テヱエルの黄なる水は
生温
(
なまぬる
)
くなりて、眠たげに流れたり。西瓜の汁も温し。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
続けざまに起る救助を求むるの声、なんてまた
生温
(
なまぬる
)
さだろう、男一匹が生きるか死ぬかの際に、こういう声を出すくらいなら、黙って死んでしまった方がいい。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鴎
(
かもめ
)
が七八羽、いつの間にか飛んで来て、岬の端に
啼
(
な
)
きながら群れ飛んでいました。ずっと沖の方が
黝
(
くろず
)
んで来ました。
生温
(
なまぬる
)
い風が一陣さっと為吉の顔をなでました。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
ソロドフニコフはパンと麹との匂のする
生温
(
なまぬる
)
い水を飲んだ。その時歯が茶碗に
障
(
さは
)
つてがちがちと鳴つた。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
私はこの
生温
(
なまぬる
)
き生き方が苦しくてならなかった。私は実際この問題をどうにかせねばならないと思った。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「ざんげが、したい」——髪の毛の下かげで次第に濃くなってゆく
生温
(
なまぬる
)
い血を、横目で見やりながら、そろそろ顫えのつきはじめた彼は、一そうかすかな声で言った。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
気がつくと、私は
黴
(
かび
)
のにおいのする暗い地面に倒れていた。土臭い風が
生温
(
なまぬる
)
く顔に吹きつけていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
春の日の吹く風
生温
(
なまぬる
)
く、人の気も変になろうとする真っ昼間、机の上の絵の具がスーッと消えて、井戸の中に血のごとく溶けていたり、化粧瓶がひとりでに走り出したり
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
幸福といわずして幸福を楽んでいたころは家内全体に
生温
(
なまぬる
)
い春風が吹渡ッたように、総て
穏
(
おだやか
)
に、和いで、
沈着
(
おちつ
)
いて、見る事聞く事が
尽
(
ことごと
)
く自然に
適
(
かな
)
ッていたように思われた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ふと、彼は、彼をみつめている一つの
眼眸
(
まなざし
)
に気づいた。
生温
(
なまぬる
)
くなった
珈琲
(
コーヒー
)
にゆっくりと手をのばして、彼は、同じ窓ぎわの、五、六メートル先きのテーブルのその女をみた。
十三年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
飲んだわ飲んだわ! 水は
生温
(
なまぬる
)
かったけれど、腐敗しては居なかったし、それに沢山に有る。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
春
(
はる
)
の
野路
(
のぢ
)
をガタ
馬車
(
ばしや
)
が
走
(
はし
)
る、
野
(
の
)
は
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
き
亂
(
みだ
)
れて
居
(
ゐ
)
る、フワリ/\と
生温
(
なまぬる
)
い
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
ゐて
花
(
はな
)
の
香
(
かほり
)
が
狹
(
せま
)
い
窓
(
まど
)
から
人
(
ひと
)
の
面
(
おもて
)
を
掠
(
かす
)
める、
此時
(
このとき
)
御者
(
ぎよしや
)
が
陽氣
(
やうき
)
な
調子
(
てうし
)
で
喇叭
(
らつぱ
)
を
吹
(
ふ
)
きたてる。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
裁判長がいけないのだ! 裁判長があんな
生温
(
なまぬる
)
い訊問の仕方をするから何にもならないのだ。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
二、三分、狭い監房の中を行ったり来たりしていたが、それから
生温
(
なまぬる
)
い水にひたした手ぬぐいを額にのせてぐったりと横になり、彼は暁方までとろとろと夢を見ながら眠った。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
昼は焦げ付くように暑くて、夜は人を誘惑するように
生温
(
なまぬる
)
い。きょうの昼もきのうの昼のようで、きょうの夜もきのうの夜のようである。丁度時間が静止しているかと思われる。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
しかしその言葉をハッキリと裏切り、季節違いの
生温
(
なまぬる
)
い風が、北の方から吹いて来た。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ピストルを左手に握っているんだ……銃身をこう
顳顬
(
こめかみ
)
へあてる……この感じは決してわるいものじゃない……少し
冷
(
ひや
)
りとするだけだ……が、鋼鉄は肌の温もりで
生温
(
なまぬる
)
くなって来る……
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そこで霧が
生温
(
なまぬる
)
い湯のやうになったのです。可愛らしい女の子が達二を呼びました。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
柔惰な享楽主義の
生温
(
なまぬる
)
い
枕
(
まくら
)
をし、皮肉できわめて
軽捷
(
けいしょう
)
でかなり好奇的で根本は驚くばかり冷淡な才知の生温い枕をして、暖かい木陰にうとうとと居眠るのはいかにも快いことである。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
二人はただ身軽に
扮装
(
いでた
)
つだけのことにして、
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
を過ぎる頃から城下の村へ忍んで行くと、お
誂
(
あつら
)
えむきの暗い夜で、今にも雨を運んで来そうな
生温
(
なまぬる
)
い南風が彼らの頬をなでて通った。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それが
生温
(
なまぬる
)
ければ、婦人ばかりの示威運動をやることも必要だと思います。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
機械こそは近代の人間がその頭脳の働きを
悉
(
ことごと
)
くここに集めて、人間の要求を極端にまで結晶せしめた一つの大建築でもある。それは
生温
(
なまぬる
)
い趣味とか、遊戯によって造り出された
玩具
(
おもちゃ
)
ではない。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
生温
(
なまぬる
)
い訓誡や、説法ではやむべくもあらざれば、すべからくこれに禁止税を掛くるべく、うるさく附け
纒
(
まと
)
われて程の知れぬ口留め料を警官や新聞に取らるるより、一と思いに取ってくださる
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
慌ててマッチを探ろうとする手を、
生温
(
なまぬる
)
い女の手がギュッと握った。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
綾小路は
生温
(
なまぬる
)
い香茶をぐっと飲んで、決然と言い放った。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
キザだの厭味だのという
生温
(
なまぬる
)
い問題ではないのです。
オカアサン
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
生温
(
なまぬる
)
い
乳
(
ちち
)
が涌いて、人や羊の子の飲物になる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
雨もよいの
生温
(
なまぬる
)
い風が吹いている。
だだら団兵衛
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
“生”で始まる語句
生
生命
生憎
生活
生涯
生々
生垣
生物
生死
生計