“磯臭”の読み方と例文
読み方割合
いそくさ100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
薄どんよりと曇り掛けた空と、その下にあるいそと海が、同じ灰色を浴びて、物憂ものうく見える中を、妙に生温なまぬるい風が磯臭いそくさく吹いて来ました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕は昔は渡し舟へ乗ると、——いや、時には橋を渡る時さへ、磯臭いそくさにほひのしたことを思ひ出した。しかし今日こんにちの大川の水はなんの匀も持つてゐない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その晩、磯臭いそくさい空気のこもった部屋へやの中で、まくらにつきながら、陥穽おとしあなにかかった獣のようないらだたしさを感じて、まぶたを合わす事ができなかったと君は私に告白した。そうだったろう。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)