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物凄
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ものすご
ふりがな文庫
“
物凄
(
ものすご
)” の例文
正面より見れば
生
(
う
)
まれ
立
(
た
)
ての馬の子ほどに見ゆ。
後
(
うしろ
)
から見れば
存外
(
ぞんがい
)
小さしといえり。御犬のうなる声ほど
物凄
(
ものすご
)
く恐ろしきものはなし。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
さあ、こうなると、がッがあッと、昼夜に三度ずつ、峠の上まで湯気が渦まいて上ります、総湯の沸きます音が
物凄
(
ものすご
)
うなりましたわ。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と振袖を顔に当て、
潜々
(
さめ/″\
)
と泣く様子は、美しくもあり又
物凄
(
ものすご
)
くもなるから、新三郎は何も云わず、
只
(
た
)
だ
南無阿弥陀仏
(
なむあみだぶつ
)
、南無阿弥陀仏。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
熊笹は人の身の丈を没すという深さ、暗い林の遠くには気味の悪い鳥の声がして、
谿川
(
たにがわ
)
の音は
物凄
(
ものすご
)
いように
樹立
(
こだち
)
の間に
唱
(
うた
)
っている。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
それがしばらくするうちに二十四か所ぐらいにふえた。
蔵前
(
くらまえ
)
の高工からは
物凄
(
ものすご
)
い火の柱が立ち、十二階はてっぺんから火を吹いた。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
▼ もっと見る
その時である、私は川下の方の空に、
恰度
(
ちょうど
)
川の中ほどにあたって、
物凄
(
ものすご
)
い透明な空気の層が揺れながら移動して来るのに気づいた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
他の一隊は、今や帝都の上に
垂
(
た
)
れ
下
(
さが
)
ろうとする毒瓦斯の
煙幕
(
えんまく
)
よりは、更に風上に、
薄紅
(
うすあか
)
い
虹
(
にじ
)
のような瓦斯を
物凄
(
ものすご
)
くまきちらして行った。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
物凄
(
ものすご
)
い生の渦巻の中で
喘
(
あえ
)
いでいる連中が、案外、はたで見るほど不幸ではない(少なくとも懐疑的な傍観者より何倍もしあわせだ)
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
海岸へ散歩にでると、その日は
物凄
(
ものすご
)
い荒れ海だった。女は
跣足
(
はだし
)
になり、波のひくまを潜って貝殻をひろっている。女は大胆で敏活だった。
私は海をだきしめていたい
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の迫っている
崖端
(
がけはな
)
の道には、人の影さえ見えなかった。
瀕死
(
ひんし
)
の負傷者を見守る信一郎は、ヒシ/\と、身に迫る
物凄
(
ものすご
)
い
寂寥
(
せきりょう
)
を感じた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
剃刀を持ったまゝわな/\ふるえているお久には、河内介の
叱咜
(
しった
)
の声もおそろしかったが、それ以上に道阿弥の顔つきの方が
物凄
(
ものすご
)
かった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それと同時に、ルピック夫人が、しかもあのすばやい耳で、唇のへんに微笑を浮かべながら、塀の
後
(
うし
)
ろから、
物凄
(
ものすご
)
い顔を出した。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
富岡老人
釣竿
(
つりざお
)
を
投出
(
なげだ
)
してぬッくと
起上
(
たちあ
)
がった。
屹度
(
きっと
)
三人の方を
白眼
(
にらん
)
で「大馬鹿者!」と大声に
一喝
(
いっかつ
)
した。この
物凄
(
ものすご
)
い声が
川面
(
かわづら
)
に鳴り響いた。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
剃刀一挺を得物の
死物狂
(
しにものぐる
)
い、髪が乱れ逆立って、半裸体で荒れ狂う有様、
物凄
(
ものすご
)
いばかり。しかし、いくら気が
焦
(
あせ
)
っても多勢の男に一人の女。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
運命の
縄
(
なわ
)
はこの青年を遠き、暗き、
物凄
(
ものすご
)
き北の国まで引くが
故
(
ゆえ
)
に、ある日、ある月、ある年の
因果
(
いんが
)
に、この青年と
絡
(
から
)
みつけられたる
吾
(
われ
)
らは
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嵐
(
あらし
)
の暗雲を
孕
(
はら
)
んで
物凄
(
ものすご
)
いまでに沈滞した前田鉄工場! それに対していかなる手段を取るべきか? 彼はその対策に迷った。
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
野獣は口から
泡
(
あわ
)
を吹いて怒り狂っていた。
物凄
(
ものすご
)
い
唸
(
うな
)
り声さえも聞こえてきた。彼は
餌食
(
えじき
)
をズタズタにしないではおかぬのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
月の光の
射
(
さ
)
した
岩角
(
いわかど
)
を
躍
(
おど
)
り越えてやって来る猛獣の姿は
物凄
(
ものすご
)
かったが、彼等は皆猫のようにおとなしかった。仙人達は皆その頭を
撫
(
な
)
でてやった。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
死にかけてゐる父親の
胡麻鹽
(
ごましほ
)
の
髻
(
たぶさ
)
を取つて、ゆすぶり加減にグワツと睨んだ、金之助の顏は、男姿ながら、鬼女そのまゝの
物凄
(
ものすご
)
さだつたのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
きょうよりは明日と
物凄
(
ものすご
)
い加速度を以て、ほとんど半狂乱みたいな
獅子奮迅
(
ししふんじん
)
をつづけ、いよいよ切り換えの騒ぎも、きょうでおしまいという日に
トカトントン
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
父は為吉の問に応じて、その難破船の乗組員を救助した時の壮烈な、そして
物凄
(
ものすご
)
い光景を思い出し話して聞かせました。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
然
(
さ
)
うして
龕燈
(
がんどう
)
を
持
(
も
)
つ
手
(
て
)
を
横穴
(
よこあな
)
に
突出
(
つきだ
)
して、
内部
(
ないぶ
)
を
照
(
て
)
らして
見
(
み
)
やうとしたが、
其
(
その
)
光
(
ひかり
)
の
當
(
あた
)
る
部分
(
ぶぶん
)
は、
白氣
(
はくき
)
濛々
(
もう/\
)
として
物凄
(
ものすご
)
く、
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やら
少
(
すこ
)
しも
分
(
わか
)
らぬ。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
底知れぬ谷間をさまよう魚の群。大地のいしずえにひそまりかえる異形な怪物。漁夫や船乗りたちの話をいやがうえにも
物凄
(
ものすご
)
くする奇怪なまぼろし。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それのみならず、今度は、その後退した火先は、西風に
煽
(
あお
)
られて
物凄
(
ものすご
)
い勢いをもって広小路へ押し出して来たのです。
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
天井を縦断している二条のレールをワイヤー・プレーをギリ/\と吊したグレーンが、皆の働いている頭のすぐ上を
物凄
(
ものすご
)
い音を立てゝ渡って行った。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
が、もう一方の夢は、そんな鮮明な色は無い。何とも云えず
物凄
(
ものすご
)
いような色で一様に塗り
潰
(
つぶ
)
されているばかりである。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
驚いて
後
(
うしろ
)
を振り返つてみますと、そこはもう水ばかりで、白い
浪
(
なみ
)
が
物凄
(
ものすご
)
いやうに
吼
(
ほ
)
えたり、
噛
(
か
)
み合つたりして、岸の方へ押掛て行くのが見えました。
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
知らずのお絃は——お絃流の、なに、そんなものはないが、とにかく、喧嘩の
真中
(
まんなか
)
へ割り込んで、
婉
(
えん
)
然にっこり名たんかを切ろうという
物凄
(
ものすご
)
い
姐御
(
あねご
)
。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
飯田や高遠で
成長
(
ひととな
)
ったとはどうしても思われぬ
物凄
(
ものすご
)
い野性! で、気の毒とは思いましたが私の門弟に加えますことを、断わったことがございました
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
が、
内容
(
なかみ
)
からいえば、それは
現世
(
げんせ
)
ではとても
思
(
おも
)
いもよらぬような、
不思議
(
ふしぎ
)
な、そして
物凄
(
ものすご
)
い
光景
(
こうけい
)
なのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
平右衛門は手早くなげしから
薙刀
(
なぎなた
)
をおろし、さやを払い
物凄
(
ものすご
)
い抜身をふり廻しましたので一人のお客さまはあぶなく赤いはなを切られようとしました。
とっこべとら子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そして気味わるく
物凄
(
ものすご
)
い顔をした、雲助のような男たちに
脅
(
おび
)
やかされたり、
黒塚
(
くろづか
)
の
一軒家
(
いっけんや
)
のような家に
泊
(
とま
)
って、
白髪
(
しらが
)
の
恐
(
おそ
)
ろしい
老婆
(
ろうば
)
に
睨
(
にら
)
まれたりした。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
物凄
(
ものすご
)
い
爆笑
(
ばくしょう
)
が、家の中と家の外で起った。そして、ふだんの云いたい事を、一人一人、口を
極
(
きわ
)
めて、云いちらした。
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕は、おどろいて振かえると、いつのまにか、僕の背後に、白衣の白髪の怪老人が立っていて、右の人差指を突付け、
物凄
(
ものすご
)
く、歯のない口をあけて笑った。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
立て下りけり
跡
(
あと
)
には彼の十歳ばかりなる三吉小僧のみ
彌々
(
いよ/\
)
一人殘され
其上
(
そのうへ
)
早
(
はや
)
日
(
ひ
)
は
暮
(
くれ
)
て白洲へは
灯
(
あか
)
りがつき
四邊
(
あたり
)
森々
(
しん/\
)
として
何
(
なに
)
とやら
物凄
(
ものすご
)
く成しかば三吉は聲を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
目に金が入れてあり、上手な作と見えて、
物凄
(
ものすご
)
い様でした。どちらも黄楊らしく、よい
艶
(
つや
)
に光っていました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
こは大なる
古刹
(
ふるでら
)
にして、今は住む人もなきにや、
床
(
ゆか
)
は落ち柱斜めに、破れたる壁は
蔓蘿
(
つたかずら
)
に縫はれ、朽ちたる軒は
蜘蛛
(
くも
)
の
網
(
す
)
に張られて、
物凄
(
ものすご
)
きまでに荒れたるが。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
夏から秋へかけての
暴風雨
(
あらし
)
の特徴として、戸内の空気は息詰まるように蒸し暑かった。その蒸し暑さは一層人の神経をいらだたせて、暴風雨の
物凄
(
ものすご
)
さを拡大した。
死体蝋燭
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
川鳴
(
かわなり
)
の音だろう、何だか
物凄
(
ものすご
)
い不明の音がしている。庭の方へ廻ったようだと思ったが、建物を少し離れると、なるほどもう水が来ている。足の裏が馬鹿に
冷
(
つめた
)
い。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
赤ん坊がおっこち頭を割って死んだとか、そんな話もきかされていたのですが、自分が実際乗ってみると、そんな
嘘
(
うそ
)
のような話も真実におもわれる
物凄
(
ものすご
)
さでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
前にも云った通り、窓は南に向いているので、路地を通っている私は丁度その窓から出た女の顔と斜めに向き合った。女の歯の白いのがまず眼について
物凄
(
ものすご
)
かった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう五時頃であろうか、様々な人達の
物凄
(
ものすご
)
い寝息と、蚊にせめられて、夜中私は眠れなかった。私はそっと上甲板に出ると、
吻
(
ほっ
)
と息をついた。美しい夜あけである。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私はやっと
吻
(
ほ
)
っとしましたが、こんなところで、こんな
物凄
(
ものすご
)
い犬に襲われようとも思わなければ、馬に乗ったこんな
綺麗
(
きれい
)
な女に
出逢
(
であ
)
おうなぞとは、夢にも思いません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
灰色の天地に灰色の心で、冷たい、
物凄
(
ものすご
)
い、
荒
(
すさ
)
んだ生を送って行くのが人生の本旨かとも思って見る。けれども今日までの私はまだどうもそれだけの思いきりもつかぬ。
序に代えて人生観上の自然主義を論ず
(新字新仮名)
/
島村抱月
(著)
物凄
(
ものすご
)
いほど水が増して
轟々
(
ごうごう
)
と濁水が
漲
(
みなぎ
)
り流れておるその
堤
(
つつみ
)
に沢山の家もあることか、小さい
藁葺
(
わらぶき
)
の小家が唯二軒あるばかりだというので、その川の壮大な力強い感じと
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
やがて日暮るるほどにはらはらと時雨のふり来る音に
怪
(
あやし
)
みて
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
を見ればただ
物凄
(
ものすご
)
く出でたる十日ごろの片われ月、覚えず身振ひして誰も美はここなりと
合点
(
がてん
)
すべし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それはただ、自分が一生けんめい
薄闇
(
うすやみ
)
の中で見きわめようと
空
(
むな
)
しい努力をしている、見知らぬ、美しい、しかも
物凄
(
ものすご
)
い顔のように、わたしをおびえさせるだけであった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
ひしひしと迫って来る
物凄
(
ものすご
)
い海上の
闇
(
やみ
)
にまぎれて進んで行く船の中で、
何時
(
いつ
)
襲いかかるかも知れない敵を待受けるような不安な
念慮
(
おもい
)
は、おちおち岸本を眠らせなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
呉羽之介は決心して、
物凄
(
ものすご
)
い眼をギラリと光らせ、気抜けのしたような露月の油断を見すまして、腰の小刀をソッと抜き、後ろから脊筋の脇を切先深くズバと突きました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
突然、
物凄
(
ものすご
)
い電光と同時に、天地の揺らぐような雷鳴。……あたりはみるみるうちに暗くなった。
烈
(
はげ
)
しい
豪雨
(
ごうう
)
が降り出した。男女の群集、恐怖の声を上げて、消え失せる。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
凄
常用漢字
中学
部首:⼎
10画
“物凄”で始まる語句
物凄じい