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漸
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ようや
ふりがな文庫
“
漸
(
ようや
)” の例文
私は、その青春時代を顧みると、ちょうど日本に、西欧のロマンチシズムの流れが、その頃、
漸
(
ようや
)
く入って来たのでないかと思われる。
婦人の過去と将来の予期
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
金眸は朝より
洞
(
ほら
)
に
籠
(
こも
)
りて、
独
(
ひと
)
り
蹲
(
うずく
)
まりゐる処へ、
兼
(
かね
)
てより
称心
(
きにいり
)
の、
聴水
(
ちょうすい
)
といふ
古狐
(
ふるぎつね
)
、
岨
(
そば
)
伝ひに雪踏み
分
(
わげ
)
て、
漸
(
ようや
)
く洞の入口まで来たり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
能く心して
生活
(
なりわい
)
の道を治めよ、と
苦
(
ねんご
)
ろに説き示しければ、弟はこれを
口惜
(
くちおし
)
く思ひてその
後
(
のち
)
生活の道に心を用ひ、
漸
(
ようや
)
く富を
致
(
いた
)
しけるが
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
なんでも私達がいま道で、馬を曳いて往った自分の
娵
(
よめ
)
に往き遭ったろうが、どの位先きへ往ったかを知りたいらしい事が
漸
(
ようや
)
く分った。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
歩いては休み、トロトロとして寒くなっては歩き、
漸
(
ようや
)
く東の白むのを見た時は、当ての無い山中乍ら、さすがにホッとした心持です。
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
数年来
鬱積
(
うっせき
)
沈滞せる者
頃日
(
けいじつ
)
漸
(
ようや
)
く出口を得たる事とて、
前後
(
ぜんご
)
錯雑
(
さくざつ
)
序次
(
じょじ
)
倫
(
りん
)
なく
大言
(
たいげん
)
疾呼
(
しっこ
)
、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
と
漸
(
ようや
)
く
身上
(
みのうえ
)
の相談をして、お照は宅へ帰って、得心の上武田重二郎を養子にした処が、お照は振って/\振りぬいて
同衾
(
ひとつね
)
をしません。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
またもやスタコラ走って
漸
(
ようや
)
く雲巌寺の山門に着いてみると、先着の面々は丸裸となり、山門前を流るる渓流で水泳などをやっている。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
何故ならば、夜も
漸
(
ようや
)
く更けて来たし、それにかの血色の薄絹を通して、流込む光の赤さが、いよいよ不気味に冴えて来たからである。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかしてこの新しき仏蘭西の美術の
漸
(
ようや
)
く転じて日本現代の画界を襲ふの時、北斎の本国においては
最早
(
もは
)
や
一人
(
いちにん
)
の北斎を
顧
(
かえりみ
)
るものなし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お勢
母子
(
ぼし
)
の者の出向いた
後
(
のち
)
、文三は
漸
(
ようや
)
く
些
(
すこ
)
し
沈着
(
おちつい
)
て、
徒然
(
つくねん
)
と机の
辺
(
ほとり
)
に
蹲踞
(
うずくま
)
ッたまま腕を
拱
(
く
)
み
顋
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
に埋めて
懊悩
(
おうのう
)
たる物思いに沈んだ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
すると此春になって長塚君が突然尋ねて来て、
漸
(
ようや
)
く本屋が「土」を引受ける事になったから、序を書いて
呉
(
く
)
れまいかという依頼である。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は
漸
(
ようや
)
くほっとした心もちになって、
巻煙草
(
まきたばこ
)
に火をつけながら、始めて
懶
(
ものう
)
い
睚
(
まぶた
)
をあげて、前の席に腰を下していた小娘の顔を一
瞥
(
べつ
)
した。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そしてはるかの谷にはすでに陰暗な夜の物影がしずかにはいずっていた。自分たちはそのころ
漸
(
ようや
)
く岩小屋にかえりついたのだった。
涸沢の岩小屋のある夜のこと
(新字新仮名)
/
大島亮吉
(著)
しかし、
袖子
(
そでこ
)
はまだ
漸
(
ようや
)
く
高等小学
(
こうとうしょうがく
)
の一
学年
(
がくねん
)
を
終
(
お
)
わるか
終
(
お
)
わらないぐらいの
年頃
(
としごろ
)
であった。
彼女
(
かのじょ
)
とても
何
(
なに
)
かなしにはいられなかった。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そうして作者の心理状態が寂しい内にも
漸
(
ようや
)
く落ちついた処に僅かな余裕も
窺
(
うかがわ
)
れる。その自然の動きの現われてるのが、
溜
(
たま
)
らなく嘻しい。
歌の潤い
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
やっと出て来たので番号を告げると、言下に「
御
(
お
)
話中」と断られる。同じようなことを二、三回繰り返して、
漸
(
ようや
)
くのことに通ずる。
硝子を破る者
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
或
(
ある
)
者は商家に嫁ぎ、ある者は良人に従って海を越えた遠い国へ移住し、
或
(
あるい
)
は又
漸
(
ようや
)
くその日を送るだけの
糧
(
かて
)
を得る為に営々と働いていた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
静岡の仕入れ元から到着した
錫張
(
すずば
)
りの小箱の積んであるのをあれやこれやと探し廻つて
漸
(
ようや
)
く見付け出し、それから
量
(
はか
)
つて売つて
呉
(
く
)
れる。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
測定者・木戸——とサインされてある
此
(
こ
)
の貴重な三つの曲線の意味は、
漸
(
ようや
)
く助手の丘数夫の頭脳に
朧気
(
おぼろげ
)
ながら理解されるに至った。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だがまだまだ、新鋭的尖端が
漸
(
ようや
)
く
旧
(
ふる
)
き古色と雅味を追い出そうとする折から、新日本の新尖端的滋味雅趣を求める事は無理だろう。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
長い苦難を経て、魂の
憩
(
いこ
)
いは
漸
(
ようや
)
く
飛鳥
(
あすか
)
の野にも訪れたかに思わるる、そういう
仄
(
ほの
)
かな
黎明
(
れいめい
)
時代を太子は築かれつつあったのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
私は長い間の教養によって、真の美を認識する力を得ようと努めてきました。私は
漸
(
ようや
)
く私の直覚を信じていいようになったのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
大磯の海水浴の
漸
(
ようや
)
く盛りになった最中、奴の海水着の姿はいつでも其処に見られ、彼女の有名な
水練
(
すいれん
)
は、この海でおぼえたのであった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
将軍
家慶
(
いえよし
)
は、
漸
(
ようや
)
くその政を
親
(
みず
)
からするを得たり。彼が家慶における関係は、あたかもチルゴーが
路易
(
ルイ
)
十六世におけるが如き関係なりし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
平馬は、隠居の赧ら顔が、自分の方へ向けられたので、
漸
(
ようや
)
くほっとして、険のある目元に、急に、
諛
(
へ
)
つらいに似た、微笑さえ浮かべて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それが
漸
(
ようや
)
く世間に認められて、誰が言い出したともなしに、女団洲という異名を呼ばれるようになった。その得意思うべしである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
西洋の写実主義的なる芸術家等が、
漸
(
ようや
)
くこの秘密に触れ、表現の山頂的な意味を知り始めたのは、実に尚最近のことに属している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
漸
(
ようや
)
く晴に向わんとする梅雨の空から来る風が、
頻
(
しきり
)
に紗の羽織を吹く。「吹もどす」の一語に惜別の情が含まれていることは勿論である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
足利
(
あしかが
)
時代からあったお城は御維新のあとでお
取崩
(
とりくず
)
しになって、今じゃ
塀
(
へい
)
や
築地
(
ついじ
)
の破れを
蔦桂
(
つたかづら
)
が
漸
(
ようや
)
く着物を着せてる位ですけれど
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
初めて
其
(
そ
)
の
耦
(
ぐう
)
を
喪
(
うしの
)
うて
鰥居無聊
(
かんきょむりょう
)
、
復
(
また
)
出
(
い
)
でて遊ばず、
但
(
ただ
)
門に
倚
(
よ
)
つて
佇立
(
ちょりつ
)
するのみ。十五
夜
(
や
)
三
更
(
こう
)
尽きて
遊人
(
ゆうじん
)
漸
(
ようや
)
く
稀
(
まれ
)
なり。
丫鬟
(
あかん
)
を見る。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それと同時に、
宿酔
(
ふつかよい
)
に
縺
(
もつ
)
れた中田の頭も、今日一日の目茶目茶な行動から、
漸
(
ようや
)
く加わって来た寒気と共に、現実的な問題に近寄って来た。
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ノラは一階のマーケットで彼女のエロチシズムと薄鼠色の
蠱惑
(
こわく
)
で商品を粉飾した。だが、
漸
(
ようや
)
く彼女の生活には貧困が訪れてきた。
新種族ノラ
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
而して、本校の邦語を以て専門の学科を教授し、
漸
(
ようや
)
く子弟講学の便を得せしめんと欲するが如き、
蓋
(
けだ
)
しその責を尽すの一ならん(拍手)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
商売運の目出たい笑名は女運にも果報があって、
老
(
おい
)
の
漸
(
ようや
)
く
来
(
きた
)
らんとするころとうとう一の
富
(
とみ
)
を突き当てて妙齢の美人を妻とした。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
漸
(
ようや
)
く小さな流れに出た。流れに
沿
(
そ
)
うて、腰硝子の障子など立てた
瀟洒
(
しょうしゃ
)
とした
草葺
(
くさぶき
)
の小家がある。ドウダンが美しく紅葉して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
けンど、
漸
(
ようや
)
くのことで、南の新地で時々遊ぶらしい事を嗅ぎ出して、馴染の
妓
(
こ
)
を尋ね当てゝ、客になってちょい/\呼びました。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
漸
(
ようや
)
く九時半頃にお春に云いつけて二階へ連れて行かせたが、間もなく表門のベルが鳴って、犬が
其方
(
そちら
)
へ走って行く足音を聞くと
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
機会
(
きかい
)
を
見
(
み
)
て
私
(
わたくし
)
はそう
切
(
き
)
り
出
(
だ
)
しました。すると
姫
(
ひめ
)
はしばらく
凝乎
(
じっ
)
と
考
(
かんが
)
え
込
(
こ
)
まれ、それから
漸
(
ようや
)
く
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
かれたのでございました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
若者等は刀を
抜
(
ぬい
)
て
追蒐
(
おっかけ
)
る、手塚は一生懸命に逃げたけれども逃切れずに、寒い時だが日比谷
外
(
そと
)
の濠の中へ飛込んで
漸
(
ようや
)
く助かった事もある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
が、段々家に近づくに従って、恐ろしい事実が、
漸
(
ようや
)
く分って来た。何だか見たことのある車台だと云う気がしたのも、無理ではなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
漸
(
ようや
)
く明治三十二年、彼が六十八歳で歿する僅か二年前であったということは、日本の社会の歴史のどういう特徴を語っているのであろうか。
三つの「女大学」
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それでも一郎は楽しかった。目の前に明るい顔をしている友達の妹の心を、この頃になって、
漸
(
ようや
)
くしっかりと捉えてしまった確信があった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
その技術も
漸
(
ようや
)
く進歩したからこのたび使節がワシントンに行くに付き、日本の軍艦もサンフランシスコまで航海とこういう訳で幕議一決……
咸臨丸その他
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
先刻
(
さっき
)
からまちあぐんでいた富士が、
漸
(
ようや
)
くいま雲から半身を表わしたのだ。昨夜の時雨で、山はもう完全にまっ白になっていた。
青年僧と叡山の老爺
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
結婚後は
子供
(
こども
)
が出来たり家政の事に追われたりしてなかなか思うように勉強も出来ないと段々説き付けて
漸
(
ようや
)
くお代先生の両親を納得させた。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
漸
(
ようや
)
く老境に入りかけたせいか近来は夏がなかなか苦しい、殊に暑さと
蚊
(
か
)
に攻められて著作をするというようなことは気が
焦
(
じ
)
れてたまらない
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
封を切ってみると枯淡な達筆で墨の色も鮮かに書かれてあるのが、却って小村には読辛かったが
漸
(
ようや
)
く辿り読むとこうであった。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
後から考えると、私はこの時から、この画家の人柄やその文章の真実性などに対し、
漸
(
ようや
)
く疑惑を
有
(
も
)
ち始めたもののようである。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
各国の為政家も、人民も、今や
漸
(
ようや
)
く覚醒せんとしつつある。思うに軍備制限を実現し得るの時期も決して遠くはないであろう。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
漸
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“漸”を含む語句
漸々
漸次
漸〻
佳人意漸疎
東漸
漸進
漸時
漸減
西漸
無漸
浸漸
漸進論
漸源
漸移
漸綻
漸蔵主
漸近線
漸進的
漸次強音
漸遅
...