トップ
>
滑
>
なめらか
ふりがな文庫
“
滑
(
なめらか
)” の例文
自分は茫々たる大海原の水の色のみ大西洋とは驚く程
異
(
ちが
)
つた紺色を呈し、
天鵞絨
(
びろうど
)
のやうに
滑
(
なめらか
)
に輝いて居るのを認めるばかりであつた。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
馬車あまた火山の
坑
(
あな
)
より熔け出でし石を敷きたる街を
馳
(
は
)
せ
交
(
か
)
ひて、間〻馬のその石面の
滑
(
なめらか
)
なるがために
躓
(
つまづ
)
くを見る。小なる雙輪車あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
それから一年に近い間、この小さい為事は
滑
(
なめらか
)
に
為遂
(
しと
)
げられて来たのだが、今日はすず子に堪へられない悪感を与へるのであつた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
七宝
(
しっぽう
)
の
夫婦釦
(
めおとボタン
)
は
滑
(
なめらか
)
な
淡紅色
(
ときいろ
)
を緑の上に浮かして、
華奢
(
きゃしゃ
)
な金縁のなかに暖かく包まれている。
背広
(
せびろ
)
の地は
品
(
ひん
)
の好い
英吉利織
(
イギリスおり
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの
大川
(
おほかは
)
は、いく
野
(
の
)
の
銀山
(
ぎんざん
)
を
源
(
みなもと
)
に、
八千八谷
(
はつせんやたに
)
を
練
(
ね
)
りに
練
(
ね
)
つて
流
(
なが
)
れるので、
水
(
みづ
)
は
類
(
たぐひ
)
なく
柔
(
やはら
)
かに
滑
(
なめらか
)
だ、と
又
(
また
)
按摩
(
あんま
)
どのが
今度
(
こんど
)
は
聲
(
こゑ
)
を
沈
(
しづ
)
めて
話
(
はな
)
した。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
暗い地下の深所から湧き出した温泉は、人の肌を心地よく温め
滑
(
なめらか
)
にすべって、役目を果したように徐ろに浴槽外へ溢れて行く。
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
相手は飽くまでも
滑
(
なめらか
)
な舌を弄しながら気軽く
楡
(
にれ
)
の根がたを立ち上った。若者はやはり
黙念
(
もくねん
)
と、煮え切らない考えに沈んでいた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
身を
滑
(
なめらか
)
ならしむる獸のごとくしば/\頭を背にめぐらして
舐
(
ねぶ
)
りつゝ草と花とを分けてかの禍ひの
紐
(
ひも
)
は
來
(
き
)
ぬ 一〇〇—一〇二
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
極端に言へば、
鰻
(
うなぎ
)
のやうに
滑
(
なめらか
)
で抑へどころのないといふ趣がある。度々逢つても打解けるといふやうな事はないやうだ。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
湖水にうつる雲の影はしずかにうごき、
雑魚
(
ざこ
)
の群は吹きかわった新鮮の気を吸うように
滑
(
なめらか
)
な水面に泡をたてる。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
徒歩競走の選手だっただけあって、女にしては長く、生れつき色の白い
滑
(
なめらか
)
な皮膚に薄青く静脈の透いて見える二本の足は、澤の目の前に
艶
(
なま
)
めかしく並んでいた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
滑
(
なめらか
)
に温められた流し場の板敷の上へ行儀よく坐って、後ろ首に白粉をのばす婆やの手の重みに少し前かがみになると、かやの眼の前には向き合って居る婆やの細長く垂れた
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
玉子の黄身を前のスープへ入れるのはザラザラするのを
滑
(
なめらか
)
にするためで隠元は仏蘭西豆ほどザラザラしませんから玉子を入れないでもいいのです。しかし入れても構いません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
塔
(
たう
)
は
高
(
たか
)
さ三
尺
(
じやく
)
五
寸
(
すん
)
、
三尖方形
(
さんせんほうけい
)
の
大理石
(
だいりせき
)
で、
其
(
その
)
滑
(
なめらか
)
なる
表面
(
ひやうめん
)
には「
大日本帝國新領地朝日島
(
だいにつぽんていこくしんりようちあさひとう
)
」なる十一
字
(
じ
)
が
深
(
ふか
)
く
刻
(
きざ
)
まれて、
塔
(
たふ
)
の
裏面
(
うら
)
には、
發見
(
はつけん
)
の
時日
(
じじつ
)
と、
發見者
(
はつけんしや
)
櫻木海軍大佐
(
さくらぎかいぐんたいさ
)
の
名
(
な
)
とが
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そしておづ/\と、
滑
(
なめらか
)
に光つてゐる床の方へ、夫人と一緒に出て行つて向ひ合つた。
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
お峯は
苦笑
(
にがわらひ
)
しつ。
明
(
あきらか
)
なる障子の
日脚
(
ひざし
)
はその
面
(
おもて
)
の
小皺
(
こじわ
)
の読まれぬは無きまでに照しぬ。髪は薄けれど、
櫛
(
くし
)
の歯通りて、
一髪
(
いつぱつ
)
を乱さず
円髷
(
まるわげ
)
に結ひて顔の色は赤き
方
(
かた
)
なれど、いと好く
磨
(
みが
)
きて
清
(
きよら
)
に
滑
(
なめらか
)
なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それから一年に近い間、この小さい爲事は
滑
(
なめらか
)
に爲遂げられて來たのだが、今日はすず子に堪へられない
惡感
(
をかん
)
を與へるのであつた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
石工
(
いしや
)
が入って、
鑿
(
のみ
)
で
滑
(
なめらか
)
にして、
狡鼠
(
わるねずみ
)
を防ぐには、何より、石の扉をしめて祭りました。海で拾い上げたのが
巳
(
み
)
の日だった処から、巳の日様。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だから彼女の
華奢
(
きやしや
)
な薔薇色の踊り靴は、物珍しさうな相手の視線が折々足もとへ落ちる度に、一層身軽く
滑
(
なめらか
)
な床の上を
辷
(
すべ
)
つて行くのであつた。
舞踏会
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
滑
(
なめらか
)
なる大理石の床は、蝋燭の光を反射し、鐵の格子を
繞
(
めぐ
)
らしたる火鉢(スカルヂノ)は、程好き
煖
(
あたゝか
)
さを一間の内に
頒
(
わか
)
てり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
木が無ければとても通れぬ所がある。黒味を帯びた岩壁も水に洗われる所までは、白く研磨されて
滑
(
なめらか
)
に光っている。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
然るに二十年後の今日に到っては日本全国ビーヤホールの名を掲げて酒を
估
(
う
)
る店は一軒もなく、
傖父
(
そうふ
)
も
滑
(
なめらか
)
に Café の発音をなし得るようになった。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
塔の壁は不規則な石を畳み上げて厚く造ってあるから表面は決して
滑
(
なめらか
)
ではない。所々に
蔦
(
つた
)
がからんでいる。高い所に窓が見える。建物の大きいせいか下から見るとはなはだ小さい。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
少年の舌は
滑
(
なめらか
)
に動いた。
貝殻追放:013 先生の忠告
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
婦人は、つつましく両手を膝の上に重ねながら、ちよいと
語
(
ことば
)
を切つて、それから、静にかう云つた。やはり、落着いた、
滑
(
なめらか
)
な調子で云つたのである。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
車は
滑
(
なめらか
)
に、音も立てず、道路の人を左右によけつつすべるやうに走る。愛子が身じろぐごとにさやさやと
衣
(
きぬ
)
ずれがして、香料の薫りが快く俺の官能をそそる。
畜生道
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
池は小さくて、武蔵野の
埴生
(
はにゅう
)
の小屋が今あらば、その
潦
(
にわたずみ
)
ばかりだけれども、
深翠
(
ふかみどり
)
に
萌黄
(
もえぎ
)
を
累
(
かさ
)
ねた、水の古さに藻が暗く、取廻わした石垣も、草は枯れつつ
苔
(
こけ
)
滑
(
なめらか
)
。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
水は右岸の岩壁の裾を横なぐりに深く
刳
(
えぐ
)
っているので、
滑
(
なめらか
)
な壁面の上部は円天井のように狭い河身を掩うている。まるで片側の上の方が途切れた長い洞穴を見るようだ。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ドメニカは歸路に我にいふやう。我目の明きたるうちに、おん身と此野道行かんこと、今日を限なるべし。ドメニカなどの知らぬ、
滑
(
なめらか
)
なる床、華やかなる
氈
(
かも
)
をや、おん身が足は踏むならん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
葉桜の上に輝きそめた夕月の光がいかにも涼しい。
滑
(
なめらか
)
な満潮の水は「お前どこ行く」と
流行唄
(
はやりうた
)
にもあるようにいかにも
投遣
(
なげや
)
った
風
(
ふう
)
に心持よく流れている。宗匠は目をつぶって
独
(
ひとり
)
で鼻唄をうたった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おれの死骸は沼の底の
滑
(
なめらか
)
な泥に
横
(
よこた
)
はつてゐる。死骸の周囲にはどこを見ても、まつ
青
(
さを
)
な水があるばかりであつた。
沼
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
印
(
しるし
)
の
石
(
いし
)
も
青
(
あを
)
きあり、
白
(
しろ
)
きあり、
質
(
しつ
)
滑
(
なめらか
)
にして
斑
(
ふ
)
のあるあり。あるが
中
(
なか
)
に
神婢
(
しんぴ
)
と
書
(
か
)
いたるなにがしの
女
(
ぢよ
)
が
耶蘇教徒
(
やそけうと
)
の
十字形
(
じふじがた
)
の
塚
(
つか
)
は、
法
(
のり
)
の
路
(
みち
)
に
迷
(
まよ
)
ひやせむ、
異國
(
いこく
)
の
人
(
ひと
)
の、
友
(
とも
)
なきかと
哀
(
あはれ
)
深
(
ふか
)
し。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
左右が少しく開けて、木は繁っているが明るい感じのする所だ。暗緑に沈んだ水は音も立てずするすると
辷
(
すべ
)
って行く。岩の肌には水苔が
滑
(
なめらか
)
に生えて、其上を歩くと人までがよく辷る。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
葉桜
(
はざくら
)
の上に輝きそめた
夕月
(
ゆふづき
)
の光がいかにも
凉
(
すゞ
)
しい。
滑
(
なめらか
)
な満潮の水は「お前どこ
行
(
ゆ
)
く」と
流行唄
(
はやりうた
)
にもあるやうにいかにも
投遣
(
なげや
)
つた
風
(
ふう
)
に
心持
(
こゝろもち
)
よく流れてゐる。
宗匠
(
そうしやう
)
は目をつぶつて
独
(
ひとり
)
で
鼻唄
(
はなうた
)
をうたつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
内蔵助は、いつに似合わない、
滑
(
なめらか
)
な調子で、こう云った。幾分か乱されはしたものの、まだ彼の胸底には、さっきの満足の情が、暖く流れていたからであろう。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……歯が鳴り、舌が
滑
(
なめらか
)
に赤くなって、
滔々
(
とうとう
)
として弁舌鋭く、不思議に魔界の消息を
洩
(
もら
)
す——これを聞いたものは、親たちも、
祖父祖母
(
おおじおおば
)
も、その
児
(
こ
)
、孫などには、決して話さなかった。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
燈火の赤い色が其のまゝ反映するかと思ふ
滑
(
なめらか
)
な陶器の水入には、何時さしたのか、紫色した西洋の草花がもう萎れてゐた。私は片肱ついて、片手を
懷中
(
ふところ
)
にして、ぼんやり絶えざる雨の音を聽いた。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
そうして、その
滑
(
なめらか
)
な水面を、陽気な太鼓の音、笛の
音
(
ね
)
、三味線の音が
虱
(
しらみ
)
のようにむず
痒
(
かゆ
)
く刺している。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
着崩れた
二子織
(
ふたこ
)
の胸は、血を包んで、羽二重よりも
滑
(
なめらか
)
である。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが皆話しをしたり、唄をうたつたりしてゐるまはりには、人間の脂を
溶
(
とか
)
した、
滑
(
なめらか
)
な湯の
面
(
おもて
)
が、柘榴口からさす濁つた光に反射して、退屈さうにたぶたぶと動いてゐる。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その白さがまた、
凝脂
(
ぎょうし
)
のような柔らかみのある、
滑
(
なめらか
)
な色の白さで、山腹のなだらかなくぼみでさえ、丁度雪にさす月の光のような、かすかに青い影を
湛
(
たた
)
えているだけである。
女体
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
客は、襖があくと共に、
滑
(
なめらか
)
な調子でかう云ひながら、
恭
(
うやうや
)
しく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い
金瓶梅
(
きんぺいばい
)
の版元を引受けてゐた、和泉屋
市兵衛
(
いちべゑ
)
と云ふ本屋である。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は親のような心もちで、修理の
逆上
(
ぎゃくじょう
)
をいたわった。修理もまた、彼にだけは、比較的従順に振舞ったらしい。そこで、主従の関係は、林右衛門のいた時から見ると、遥に
滑
(
なめらか
)
になって来た。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
殊に前景の土のごときは、そこを踏む時の足の心もちまでもまざまざと感じさせるほど、それほど的確に
描
(
か
)
いてあった。踏むとぶすりと音をさせて
踝
(
くるぶし
)
が隠れるような、
滑
(
なめらか
)
な
淤泥
(
おでい
)
の心もちである。
沼地
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は勿論、
滑
(
なめらか
)
な、
寧
(
むしろ
)
つめたい皮膚の手ざはりと、柔かい、しかも力のある筋肉の抵抗とを感じた。しかし、それらは、結局今までの経験の反復にすぎない。同じ刺戟は、回数と共に力を減じて来る。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
滑
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
“滑”を含む語句
滑稽
滑々
滑車
滑川
上滑
滑石
円滑
滑走
滑稽談
滑脱
潤滑油
滑稽感
狡滑
地滑
氷滑
滑稽雑談
滑稽納所
滑稽劇
滑落
滑稽的
...