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夫婦釦
白いカフスが
七宝の
夫婦釦と共にかしゃと鳴る。一寸に余る金が
空を
掠めて橋の
袂に落ちた。落ちた煙は
逆様に地から
這い
揚がる。
七宝の
夫婦釦は
滑な
淡紅色を緑の上に浮かして、
華奢な金縁のなかに暖かく包まれている。
背広の地は
品の好い
英吉利織である。
いざと云えば、
突っかい
棒に、尻を挙げるための、
膝頭に
揃えた両手は、雪のようなカフスに
甲まで
蔽われて、くすんだ
鼠縞の袖の下から、
七宝の
夫婦釦が、きらりと顔を出している。