夫婦釦めおとボタン)” の例文
白いカフスが七宝しっぽう夫婦釦めおとボタンと共にかしゃと鳴る。一寸に余る金がくうかすめて橋のたもとに落ちた。落ちた煙は逆様さかさまに地からがる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七宝しっぽう夫婦釦めおとボタンなめらか淡紅色ときいろを緑の上に浮かして、華奢きゃしゃな金縁のなかに暖かく包まれている。背広せびろの地はひんの好い英吉利織イギリスおりである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いざと云えば、っかいぼうに、尻を挙げるための、膝頭ひざがしらそろえた両手は、雪のようなカフスにこうまでおおわれて、くすんだ鼠縞ねずみじまの袖の下から、七宝しっぽう夫婦釦めおとボタンが、きらりと顔を出している。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)