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渦巻
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うずま
ふりがな文庫
“
渦巻
(
うずま
)” の例文
旧字:
渦卷
奥筋の方から
渦巻
(
うずま
)
き流れて来る木曾川の水は青緑の色に光って、
乾
(
かわ
)
いたりぬれたりしている無数の白い
花崗石
(
みかげいし
)
の間におどっていた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
単調な船旅にあき果てて、したたか刺激に飢えた男の群れは、この
二人
(
ふたり
)
の女性を中心にして知らず知らず
渦巻
(
うずま
)
きのようにめぐっていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
おり
悪
(
あ
)
しく、その
晩
(
ばん
)
に、ひどいあらしが
吹
(
ふ
)
いて、
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
は、さながら
渦巻
(
うずま
)
きかえるように
見
(
み
)
られたのでした。
家族
(
かぞく
)
のものは
心配
(
しんぱい
)
しました。
一本の銀の針
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
日中には、何千となき白い
蝶
(
ちょう
)
がそこに逃げ込んできた、そしてこの生ある夏の雪が木陰に
翩々
(
へんぺん
)
と
渦巻
(
うずま
)
くのは、いかにも
聖
(
きよ
)
い光景であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
重ね重ねの不思議に姫は全く狐に
憑
(
つま
)
まれた形で、ぼんやりと突立って見ていると、その内に又もや風が一しきり
渦巻
(
うずま
)
き
起
(
た
)
って
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
▼ もっと見る
彼は
這
(
は
)
いながら岩の上に降りて来ると、
弓杖
(
ゆんづえ
)
ついて
崩
(
くず
)
れた
角髪
(
みずら
)
をかき上げながら、
渦巻
(
うずま
)
く
蔓
(
つる
)
の
刺青
(
ほりもの
)
を描いた唇を泉につけた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
現存の
正倉院
(
しょうそういん
)
御物と万葉集と仏教美術を想起しただけでも驚くべきであろう。そこにはあらゆる美と荘厳と、また悪徳の
深淵
(
しんえん
)
が
渦巻
(
うずま
)
いていた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
お前は
渦巻
(
うずま
)
きつつ落ちて行く者どもを恐れと
憐
(
あわ
)
れみとをもって
眺
(
なが
)
めながら、自分も思い切って飛込もうか、どうしようかと
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しているのだな。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
草も木も
昆虫
(
こんちゅう
)
も、多数の生物は、空中に
渦巻
(
うずま
)
きのぼる生命の大火炎のひらめく言葉であった。すべてが喜びに叫んでいた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その文句を見た
瞬間
(
しゅんかん
)
、次郎は、眼のまえに
炎
(
ほのお
)
が
渦巻
(
うずま
)
くような気がして、しばらくはつぎの文字を見ることができなかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
すさまじい
電光
(
でんこう
)
と
雷鳴
(
らいめい
)
と黒雲との
渦巻
(
うずま
)
いた中に、金の日の丸がぴかりと光っただけで、後は何にもわかりませんでした。
雷神の珠
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
小舟は空を突くかと波の小山の頂上へ乗り上げ、次の瞬間には、暗闇の地獄の底へと
逆落
(
さかおと
)
しだ。小山の中腹に突入すれば、上下左右ただ
渦巻
(
うずま
)
く水であった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
眉
(
まゆ
)
を
焦
(
こが
)
す火のごとく思い出した。
狂
(
くる
)
う風と
渦巻
(
うずま
)
く
浪
(
なみ
)
に
弄
(
もてあそ
)
ばれつつある彼らの宿が想像の眼にありありと浮んだ。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは今にもほとばしり出ようとする
勢力
(
エネルギー
)
が内部に
渦巻
(
うずま
)
いている事を感じさせる。突然火花の放出が始まる。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
或
(
あるい
)
は動いているために、一層光が強いのだと云ってもよい。其処が海の中心であって、其処から潮が
渦巻
(
うずま
)
き上るために、海が一面に膨れ出すのかも知れない。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一度に
狺々
(
ぎんぎん
)
の声をあげながら、見る間に彼を、その生きて動く、なまぐさい毛皮の
渦巻
(
うずま
)
きの中へ巻きこんだ。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
当
(
あて
)
たる如くに狭く堅く引締められ下の方に行くに従ひて次第に
寛
(
ゆる
)
く足元に至りて水の如くに流れ
渦巻
(
うずま
)
きたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それでいながら、
例
(
たと
)
えば、
舷側
(
げんそく
)
に
沸
(
わ
)
きあがり、
渦巻
(
うずま
)
き、泡だっては消えてゆく、太平洋の水の
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
る淡青さに、生命も
要
(
い
)
らぬ、と思う、はかない気持もあった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そこには、小さなすきとおる
渦巻
(
うずま
)
きのようなものが、ついついと、のぼったりおりたりしているのでした。タネリは、また口のなかで、きゅうくつそうに云いました。
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
濁流の
渦巻
(
うずま
)
く政界から次第に孤立して終にピューリタニックの使命に
潜
(
かく
)
れるようになったは
畢竟
(
ひっきょう
)
この潔癖のためであった。が、ドウしてYに対してのみ寛大であったろう。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこでその
明
(
あ
)
くる日は、
朝早
(
あさはや
)
くから
起
(
お
)
きて、また川へ出てみますと、まあどうでしょう、じつにりっぱな
橋
(
はし
)
が、
何丈
(
なんじょう
)
という
高
(
たか
)
さに、
水
(
みず
)
が
渦巻
(
うずま
)
き
逆巻
(
さかま
)
き
流
(
なが
)
れている
大川
(
おおかわ
)
の上に
鬼六
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
辰弥は浴室にと宿の
浴衣
(
ゆかた
)
に
着更
(
きか
)
え、広き
母屋
(
おもや
)
の廊下に立ち出でたる向うより、湯気の
渦巻
(
うずま
)
く
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
に、玉を延べたる首筋を拭いながら、階段のもとへと行違いに帰る人あり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
わが身はすぐ後にひたと寄添ってすすみ
渦巻
(
うずま
)
く激流を乗り切って、難儀の末にようやく岸ちかくなり少しく
安堵
(
あんど
)
せし折も折、丹三郎いささかの横浪をかぶって馬の
鞍
(
くら
)
覆
(
くつが
)
えり
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
なぜなら、私にもその頃何かしらわけのわからぬものへの
憧
(
あこが
)
れが
渦巻
(
うずま
)
いていたからだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
マデレンのくろずんだ巨大な
寺院
(
じいん
)
を背景として一日中自動車の
洪水
(
こうずい
)
が
渦巻
(
うずま
)
いているプラス・ド・マデレンの
一隅
(
かたすみ
)
にクラシックな品位を保って
慎
(
つつ
)
ましく存在するレストラン・ラルウ
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
冬の曲となれば、雪空に白鳥の群れ
渦巻
(
うずま
)
き、
霰
(
あられ
)
はぱらぱらと、
嬉々
(
きき
)
として枝を打つ。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
風邪気
(
かぜけ
)
で熱のある頭の重たさに悩んでいたのだが、そんな気持は消えてしまって、はげしく
動悸
(
どうき
)
のする胸を押えて
佇
(
たたず
)
んでいた。彼の頭には、下敷になった二人の事ばかりが
渦巻
(
うずま
)
いていた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
日ごとに
渦巻
(
うずま
)
く戦乱騒ぎの
流言
(
りゅうげん
)
と不安に動揺していたが、しかし、まだまだ江戸の子女の胸には、長い伝統と教養が育てた旗本公子という名前が、ひそやかなあこがれとなっていたとみえて
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
頭巾
(
ずきん
)
黒く、
外套
(
がいとう
)
黒く、
面
(
おもて
)
を
蔽
(
おお
)
ひ、
身躰
(
からだ
)
を包みて、長靴を
穿
(
うが
)
ちたるが、
纔
(
わずか
)
に
頭
(
こうべ
)
を動かして、
屹
(
きっ
)
とその感謝状に眼を注ぎつ。
濃
(
こまや
)
かなる
一脈
(
いちみゃく
)
の煙は
渠
(
かれ
)
の
唇辺
(
くちびる
)
を
籠
(
こ
)
めて
渦巻
(
うずま
)
きつつ
葉巻
(
はまき
)
の
薫
(
かおり
)
高かりけり。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
半蔵は腕を組んでしまって、
渦巻
(
うずま
)
く世相を夢のようにながめながら、照りのつよい日のあたった南向きの障子のわきにすわりつづけた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて、
落
(
お
)
ち
葉
(
ば
)
は、その
火
(
ひ
)
の
周囲
(
まわり
)
に
渦巻
(
うずま
)
いていました。しかし、すわっている
人
(
ひと
)
は、じっとして
動
(
うご
)
きませんでした。
幸福のはさみ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それは薄れゆく霧を突き破って真直ぐに立ち昇り、
渦巻
(
うずま
)
きながら円を開いて拡げた
翼
(
つばさ
)
のようにだんだんと空を領している煙であった。彼女は立ち上った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
パリーは実にすべてをのみつくす大きな渦巻きで、一度そこに陥ればすべてのものが、海の渦巻きに吸わるるごとく世の
渦巻
(
うずま
)
きの中に姿を消してしまう。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
たとえようのない事件が彼女を中心にして
渦巻
(
うずま
)
き起って、遂に今度のような物凄い破局に陥ったのであった。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いつもならば
夕凪
(
ゆうなぎ
)
の蒸暑く重苦しい時刻であるが、今夜は妙に湿っぽい冷たい風が、一しきり二しきり堤下の桑畑から
渦巻
(
うずま
)
いては、暗い床の間の掛物をあおる。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鬼の国から吹き上げる風が石の壁の
破
(
わ
)
れ
目
(
め
)
を通って
小
(
ささ
)
やかなカンテラを
煽
(
あお
)
るからたださえ暗い
室
(
へや
)
の天井も
四隅
(
よすみ
)
も
煤色
(
すすいろ
)
の
油煙
(
ゆえん
)
で
渦巻
(
うずま
)
いて動いているように見える。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
電灯の光も見えないほどに頭の中が暗い
渦巻
(
うずま
)
きでいっぱいになった。えゝ、いっその事死んでくれ。この血祭りで倉地が自分にはっきりつながれてしまわないとだれがいえよう。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
たとえばアンドロメダにもオリオンにも
猟犬座
(
りょうけんざ
)
にもみんなあります。猟犬座のは
渦巻
(
うずま
)
きです。それから
環状星雲
(
リングネビュラ
)
というのもあります。魚の口の形ですから
魚口星雲
(
フィッシュマウスネビュラ
)
とも云いますね。
土神ときつね
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その間に住吉川の
氾濫
(
はんらん
)
の状況がやや伝わって来て、国道の田中から以西は全部大河のようになって濁流が
渦巻
(
うずま
)
いていること、従って野寄、横屋、
青木
(
おおぎ
)
等が最も悲惨であるらしいこと
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭の中にはあらゆるものが
渦巻
(
うずま
)
いていた。宗教、道徳、芸術、全生命、すべてを彼は一時に吟味していた。かくあらゆるものに思想を分散させるのに、なんらの秩序もなくなんらの様式もなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それに荷担した大名有司らが謹慎や
蟄居
(
ちっきょ
)
を命ぜられたばかりでなく、強い圧迫は京都を中心に
渦巻
(
うずま
)
き始めた新興勢力の
苗床
(
なえどこ
)
にまで及んで行った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
太陽
(
たいよう
)
は、
赤
(
あか
)
く、
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
になると
海
(
うみ
)
のかなたに
沈
(
しず
)
みました。そのとき、
炎
(
ほのお
)
のように
見
(
み
)
える
雲
(
くも
)
が
地平線
(
ちへいせん
)
に
渦巻
(
うずま
)
いていました。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
恐ろしい風の強い日で空にはちぎれた雲が飛んでいるので、仰いで見ているとこの神像が空を駆けるように見えました。辻の広場には
塵
(
ちり
)
や紙切れが
渦巻
(
うずま
)
いていました。
先生への通信
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
教会堂でしかつめらしくしてるのもよいが、
弥撒
(
みさ
)
がすんだら、新婦のまわりに夢の
渦巻
(
うずま
)
きを起こさしてやるがいい。結婚は堂々としていてしかも
放恣
(
ほうし
)
でなくちゃいかん。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「今に落としてやる」と圭さんは薄黒く
渦巻
(
うずま
)
く煙りを仰いで、
草鞋足
(
わらじあし
)
をうんと
踏張
(
ふんば
)
った。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不思議な感情の
渦巻
(
うずま
)
きの中に心を浸していたが、木村が
一人
(
ひとり
)
ではいって来たのに気づくと、始めて弱々しく横向きに寝なおって、二の腕まで
袖口
(
そでぐち
)
のまくれたまっ白な手をさし延べて
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その時、対岸の芒の中から、逃げ込んだ耶馬台の兵の一団が、再び勢いを盛り返して進んで来た。と、三方から包まれた奴国の密集団は
渦巻
(
うずま
)
きながら、耶馬台の軍の右翼となった大団の中へ殺倒した。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ゆけないこともあるまいが、なにしろ
遠
(
とお
)
い。その
島
(
しま
)
へ
渡
(
わた
)
るまでには
怖
(
おそ
)
ろしい
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
いているところがある。また、
大波
(
おおなみ
)
の
渦巻
(
うずま
)
いているところがある。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
早い朝のことで、大江戸はまだ眠りからさめきらないかのようである。ちょうど、
渦巻
(
うずま
)
き流れて来る隅田川の水に乗って、川上の方角から橋の下へ
降
(
くだ
)
って来る川船があった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一日大雨がふって霧が
渦巻
(
うずま
)
き、仕事も何もできないので、みんな小屋にこもって寝ていた時、藤野の手帳が自分のそばに落ちていたのをなんの気なしに取り上げて開いて見たら
花物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
渦
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
巻
常用漢字
小6
部首:⼰
9画
“渦巻”で始まる語句
渦巻毛
渦巻気流式