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い
ふりがな文庫
“
往
(
い
)” の例文
けれども帽子を
被
(
かぶ
)
らない男はもうどこからも出て来なかった。彼は器械のようにまた義務のように何時もの道を
往
(
い
)
ったり来たりした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
井戸辺
(
いどばた
)
に出ていたのを、女中が
屋後
(
うら
)
に干物に
往
(
い
)
ったぽっちりの
間
(
ま
)
に
盗
(
や
)
られたのだとサ。
矢張
(
やっぱり
)
木戸が少しばかし
開
(
あ
)
いていたのだとサ」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
郡教育会、愛国婦人会、其他一切の公的性質を帯びた団体加入の勧誘は絶対的に拒絶する。村の小さな耶蘇教会にすらも
殆
(
ほとん
)
ど
往
(
い
)
かぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それが大きな船の多人数でなく、また
暫
(
しば
)
らく島人の中に住んでいて、やがて
還
(
かえ
)
って
往
(
い
)
ったという話も一、二ではなかったように思う。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
時々
私
(
わっち
)
が
合口
(
あいくち
)
だもんだから、長次
往
(
い
)
こうと仰しゃってお供で来るけれども、何うかすると
日暮
(
ひく
)
れ方から来て
戌刻前
(
よつめえ
)
に
帰
(
けえ
)
る事もあるし
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
先年或る高等官が大病に
罹
(
かか
)
った時、私の友人の学者連が二、三人で病気見舞に
往
(
い
)
ってその帰りにここへ寄った。その時の話しに驚く。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「そない言はんと、せめて秋まで延ばしなはらんかいな。そのうち
千日
(
せんにち
)
へでも
往
(
い
)
て、おもろい
奇術
(
てづま
)
を見てからにでもしたら
何
(
ど
)
うや。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかし泉太も繁もこの下宿へ移って来たことをめずらしそうにして、離座敷から
母屋
(
おもや
)
の方へ通う廊下をしきりに
往
(
い
)
ったり来たりした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それで諸君が東京の
牛
(
うし
)
の
御前
(
ごぜ
)
に
往
(
い
)
ってごらんなさると立派な
花崗石
(
かこうせき
)
で伊藤博文さんが書いた「天下之糸平」という碑が建っております。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
踊を見に
往
(
い
)
っても好いかと、お母様に聞くと、早く戻るなら、往っても好いということであった。そこで草履を
穿
(
は
)
いて駈け出した。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そこへ
往
(
い
)
て、
昏
(
くら
)
まぬ
目
(
め
)
で、
予
(
わし
)
が
見
(
み
)
する
或
(
ある
)
顏
(
かほ
)
とローザラインのとをお
見比
(
みくら
)
べあったら、
白鳥
(
はくてう
)
と
思
(
おも
)
うてござったのが
鴉
(
からす
)
のやうにも
見
(
み
)
えうぞ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
吹雪のときは日中でさえ、善く知っている道に出ながら、どっちに
往
(
い
)
ったら村に出られるやら見当がつかないことがしばしばある。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
我かならず
三二
万歳を
諷
(
うた
)
ふべしと、
往
(
い
)
きて香央に説けば、
彼方
(
かなた
)
にもよろこびつつ、妻なるものにもかたらふに、妻もいさみていふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
がシカシ君の
事
(
こっ
)
たから今更
直付
(
じかづ
)
けに
往
(
い
)
き
難
(
にく
)
いとでも思うなら、我輩一
臂
(
ぴ
)
の力を仮しても宜しい、
橋渡
(
はしわたし
)
をしても宜しいが、どうだお
思食
(
ぼしめし
)
は
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
人樣に
辛抱人
(
しんばうにん
)
と
譽
(
ほめ
)
たのが今となりては
面目
(
めんぼく
)
ない二階へなりと
往
(
い
)
きくされ
面
(
つら
)
を
見
(
みる
)
のも
忌々
(
いま/\
)
しいと口では言ど心では何か
容子
(
ようす
)
の有事やと手を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼はいつも子供の
宿
(
とま
)
ったときに限ってするように、また今日も五号の部屋の前を
往
(
い
)
ったり来たりし始めた。次には小さな声で歌を唄った。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
舞台の下手まで来て「あゝ、
草臥
(
くたびれ
)
た/\」と腰を伸し、空を見上げて「まだ日が高けえや、一服
遣
(
や
)
つて
往
(
い
)
かう」と下手の
床几
(
しょうぎ
)
に腰を掛け
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
沛然
(
はいぜん
)
として金銀の色に落ちて来た、と同時に例の
嫁入
(
よめいり
)
行列の影は
何町
(
なんちょう
)
を
往
(
い
)
ったか、姿は一団の霧に隠れて
更
(
さ
)
らに
透
(
すか
)
すも見えない。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
彼はベッドの
傍
(
そば
)
を
往
(
い
)
ったり来たりしながら、葉子を
詰
(
なじ
)
った。葉子はそれについては、弁解がましいただの一言も口にしなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
庄造は
興
(
きょう
)
あることに思って、
家
(
うち
)
の中から食物を持って来て投げてやった。と、狸は
旨
(
うま
)
そうにそれを食ってから
往
(
い
)
ってしまった。
狸と俳人
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それから思うと
彼得堡
(
ペテルブルグ
)
、たいしたもんだ! うそとおもうなら
往
(
い
)
ッてみるがいい、お前たちが夢に見たこともないけっこうなものばかりだ。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
監視課の事務所の前を来たり
往
(
い
)
ったりする人数は
絡繹
(
らくえき
)
として絶えなかったが、その中に事務長らしい姿はさらに見えなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「おとぼけなすっちゃいけません。
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
のない
女護
(
にょご
)
ヶ
島
(
しま
)
、ここから
根岸
(
ねぎし
)
を
抜
(
ぬ
)
けさえすりゃァ、
眼
(
め
)
をつぶっても
往
(
い
)
けやさァね」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
僕は
妣
(
はは
)
の國に
往
(
い
)
なむとおもひて哭くとまをししかば、ここに大御神
汝
(
みまし
)
はこの國にな
住
(
とど
)
まりそと詔りたまひて、
神逐
(
かむやら
)
ひ逐ひ賜ふ。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
すると、
紆余曲折
(
うよきょくせつ
)
しばらく
往
(
い
)
ったところに右手の埋れ木にきざんだ文字と地図。あっと、ロイスが胸をおどらせてみれば……。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「しかしその人はどこに居るか」と言ったところが「ナムサイリン(兄の別宅)というところに
往
(
い
)
って居る」という返事です。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
で船を出る時、船頭に
向
(
むかっ
)
て三人分の賃金を払って今僕の外に二人ほど友人が乗り込んでいたから……といって岸に上って
往
(
い
)
ったと書いている。
イエスキリストの友誼
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
鍋
(
なべ
)
から鍋へと
往
(
い
)
ったり来たりして、味をみ、意見を述べ、確信ある調子で料理の法を説明していた。
普通
(
なみ
)
の料理女はそれを
畏
(
かしこま
)
って聞いていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
イエスはただちに弟子たちに向かって、先にベッサイダに
往
(
い
)
っているよう命じ給うて、御自分は一人で群衆を返されました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
ところの名はわからないが、その部落までは
往
(
い
)
き帰り十日ほどの距離だという。残った二人はなお砂金を採りながら待った。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
学校の
往
(
い
)
き
復
(
かい
)
りなぞに
出遭
(
であ
)
うことありましても、何や気イさして、前みたいに顔しげしげと見守ること出来しませなんだ。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
貧乏な、しかしさっぱりした、品の
好
(
よ
)
い
鼬
(
いたち
)
先生。ちょこちょこと、道の上を
往
(
い
)
ったり来たり、溝から溝へ、また穴から穴へ、時間ぎめの出張教授。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
が、二分
経
(
た
)
っても、五分過ぎても、冷凍船
虎丸
(
タイガーまる
)
の火薬庫は爆発しそうにもなく、本船は悠々潮流に乗って、
可成
(
かな
)
りの速さで、僕等を遠ざかって
往
(
い
)
く。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
こんな山の中で休むより、畑へ
往
(
い
)
ってから休もうというので、今度は民子を先に僕が後になって急ぐ。八時少し過ぎと思う時分に大長柵の畑へ着いた。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
江戸から京大阪を通り越して芸州の広島まで、一日のうちに
往
(
い
)
って戻ることができる——こういう説明が、見物のすべての魂を飛ばしてしまいました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
妻美代は臨月に近かったので長女恒と共に
留
(
とどま
)
って芝口奥平家の邸内なる生家川田氏の
許
(
もと
)
に寄寓し、十一歳になる男文豹のみが父に
随
(
したが
)
って尾張に
往
(
い
)
った。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私
(
わたし
)
は
今朝
(
けさ
)
急患
(
きゅうかん
)
があつて
往診
(
おうしん
)
に
出
(
で
)
かけました。ところが
往
(
い
)
きにも
帰
(
かえ
)
りにも、
老人
(
ろうじん
)
の
家
(
うち
)
の
門
(
もん
)
が五
寸
(
すん
)
ほど
開
(
ひら
)
きかかつていたから、へんなことだと
思
(
おも
)
つたのです。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
村で一番の金持らしい大きな
家
(
うち
)
の庭に、幕を張りまはして、祭壇をこさへて、そして村人たちはみな
晴着
(
はれぎ
)
をきて、忙しさうに
往
(
い
)
つたり来たりしてゐます。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
俺
(
おら
)
は
直
(
ぢ
)
きこの
附近
(
あたり
)
に住まふものぢや。われら家に
往
(
い
)
て持つて来るものがおぢやるわ。
少時
(
しばし
)
がほどここに待たれよ。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
市に接した山村に捜索に
往
(
い
)
って、渓流の
畔
(
ほとり
)
に転がっていたものを見つけ出したというのである。鶴見に取って庭師の自慢話は実はどうでも好いのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
当日は自分は手習いが済むと八ツ半から
鎗
(
やり
)
の
稽古
(
けいこ
)
に
往
(
い
)
ッたが、妙なもので、気も魂も弓には入らずただ心の中で,「もウ来たろうか?」と繰り返していた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
人間が魚をとらなければ海が魚で
埋
(
う
)
まってしまうという
勘定
(
かんじょう
)
さえあるがそんなめのこ勘定で
往
(
い
)
くもんじゃない。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼は線路に付いて三間ばかり
往
(
い
)
って、東の方のレールを枕に
仰向
(
あおむ
)
けになって次の汽車の来るのを今か今かと待ちつつ、雲間を漏れる星の光りを見詰めていた。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
往
(
い
)
く時も帰る時も、なりたけお前さんの
傍
(
そば
)
に引っ付いているようにしたのだわ。なんでもお前さんを敵にすると大変だと思ったので、わたし友達になったのよ。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
どこまで
往
(
い
)
ってもおたがいに全然無関係な散歩者の列が、排他的に散歩のために散歩し、ピカデリイでは
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「馬鹿!」忽ち恥かしさうに顏を赤くしてにらみ付け、坐りもしないで、「馬鹿!——早う
往
(
い
)
んで呉れ!」
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
小君は源氏に同情して、眠がらずに
往
(
い
)
ったり来たりしているのを、女は人が怪しまないかと気にしていた。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私は旅行をしても何時も大名旅行をするから年中
往
(
い
)
くことが出来ぬが、共に行く時には一緒に演説者になって何時でも御手伝いをしよう。どうか私の歎願である。
〔憲政本党〕総理退任の辞
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
此女房目をさまし、
肝
(
きも
)
のつぶれた顔して、あたりへ我をつきのけ、起きかへつて、コレ気ちがひ、
爰
(
ここ
)
を内ぢやと思ひやるか、
夜
(
よ
)
の
更
(
ふ
)
けぬ先に
往
(
い
)
にや/\と云ふに
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「わしらはあんたが
往
(
い
)
んなんしたあと、いつまでもあんたの事ばかり話していたんぞ」とにこにこする。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
“往”を含む語句
往来
往復
往々
往還
往來
往時
往返
往生
往昔
往古
往年
往日
往反
既往
往事
右往左往
立往生
大往生
往来中
往通
...