たい)” の例文
旧字:
たいして出歩くに相違ねえから、そこでそれ、雲竜相ひいて、おれとそいつと必ず出会する。その時だ、今から貴公の助力を求めるのは
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何故なぜかともうすに、いわうえから見渡みわたす一たい景色けしきが、どうても昔馴染むかしなじみ三浦みうら西海岸にしかいがん何所どこやら似通にかよってるのでございますから……。
恵林寺えりんじほのおのなかからのがれたときいて、とおくは、飛騨ひだ信濃しなのの山中から、この富士ふじ裾野すそのたいまで、足にかけてさがしぬいていたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、十和田わだたいは、すべて男性的だんせいてきである。脂粉しふんすくなところだから、あを燈籠とうろうたづさふるのは、腰元こしもとでない、をんなでない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
がつ一日ついたち大地震おおじしんのために、東京とうきょう横浜よこはま、この二つのおおきな都市としをはじめ、関東かんとうたい建物たてものは、あるいはこわれたり、あるいはけたりしてしまいました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かりにも武士の魂とも云う大切の物、手前達は何か武士が腰にたいして居る物は人斬庖丁ひときりぼうちょうなどゝ悪口あっこうをいうのは手前の様な者だろうが、人を無暗むやみに斬る刀でないわ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斉彬の意をたいして、久光の後見をしてくれたなら、当家は、三百諸侯の中で、矢張り、ただ今の如く、重きを置かれるであろう——斉彬は、よく士を愛するが、国許に
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
第六、上士族は大抵たいてい婢僕ひぼくを使用す。たといこれなきも、主人は勿論もちろん、子弟たりとも、みずから町にゆきて物を買う者なし。町の銭湯せんとうる者なし。戸外にいずればはかまけて双刀をたいす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その雑銘を読めば、かんたいより、すい[#「箠」は底本では「※」]、あんれんしゃ等に至る、各物一々にとう日新にっしんの銘にのっとりて、語を下し文をす、反省修養の意、看取すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
このへんたいが病院です
「つい、私事の余談のみ先に申しあげましたが、今日は、信長の一家臣木下藤吉郎、実はひそかにわが君の上意をたいしてこれへ参りました」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、安永中の続奥の細道には——故将堂女体、甲冑をたいしたる姿、いと珍し、古き像にて、彩色のげて、下地なる胡粉ごふんの白く見えたるは
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さむかんずるのはやまふかいからではない。ここはもうそろそろ天狗界てんぐかいちかいので、一たい空気くうきおのずとちがってたのじゃ。
もつまじきは因縁の名刀……しみじみとそんな気がこみあげてきて、弥生がボンヤリとまず夜泣きの両剣を腰間にたいしてみようとした——その一刹那!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
このかわのふちは、一たい貧民窟ひんみんくつんでいて、いろいろの工場こうじょうがありました。どの工場こうじょうまどあかくなって、そのなかからは機械きかいおとなくこえてきました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほかの飼犬にも致せ、其の方陪臣の身をもっ夜中やちゅう大小をたいし、御寝所近い処へ忍び入ったるは怪しい事であるぞ、さ何者にか其の方頼まれたので有ろう、白状いたせ、拙者屹度きっと調しらべるぞ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男子は手拭てぬぐいを以て頬冠ほおかむりし、双刀をたいする者あり、或は一刀なる者あり。或は昼にても、近処きんじょの歩行なれば双刀はたいすれどもはかまけず、隣家の往来などには丸腰まるごし(無刀のこと)なるもあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たちどころに、王は麻酔におち、柴進は王の着ていた錦袍きんぽうたい、剣、はかま、たび、そして花冠はなかんむりまですっかり自分の体に着け換えてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、安永中あんえいちう続奥ぞくおく細道ほそみちには、——故将堂女体こしやうだうによたい甲胄かつちうたいしたる姿すがた、いとめづらし、ふるざうにて、彩色さいしきげて、下地したぢなる胡粉ごふんしろえたるは。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはめったにないくらいおおきな時化しけで、一三浦みうら三崎みさきたい人家じんか全滅ぜんめつしそうにおもわれたそうでございます。
と、こう思うと左膳降りしきる雪に足を早め、坤竜丸をたいして本所をさして急いだが。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ある、ちょうは、いつか、みつばちのいったことをもわすれて、野原のはらはなれて、あちらのそらひとりでんでゆきました。これは、いい天気てんきで、そらいろは、四ほうたいれていました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
手前何処どこの者か知らんけれども、人の前を通る時に挨拶して通れ、ことにコレ武士の腰にたいして歩く腰の物の柄前に足をかけて、麁忽そこつでござると一言ひとこと謝言わびごとも致さず、無暗むやみに参ることが有るか
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
南蛮寺なんばんじ屋根やねてんおかたい、さらに四方の山川まで、たちまち箱庭はこにわを見るように、すぐ目の下へ展開てんかいされて、それが、ゆるい渦巻うずまきのように巻いてながれる……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
申合わせて三人とも、青と白と綯交ないまぜの糸の、あたかも片襷かただすきのごときものを、紋附の胸へ顕著にたいした。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すげの深い三度笠をかぶりまして、半合羽はんがっぱ柄袋つかぶくろのかゝった大小をたいし、脚半甲きゃはんこうがけ草鞋穿わらじばきで、いかにも旅馴れて居りまする扮装いでたち行李こうりを肩にかけ急いで松倉町から、う細い横町へ曲りに掛ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その八風斎がこの裾野すそのを作ったところをみると、さては、野心のふかい柴田勝家、はやくも天下をこころざす足がかりに、この一たいへ目をつけたものだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幅広と胸に掛けた青白の糸は、すなわち、青天と白雲を心にたいした、意気衝天しょうてんの表現なのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「われらは、新田殿の家臣にて、鎌倉大捷の吉報を、みかどへお聞えに上ぐべく、上奏の御書をたいして西へ急ぐ、長井六郎、大和田小四郎と申す者にござりまする」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そも、何の御用じゃの。は朝廷の重臣、かつは聖旨せいしたいした参詣の途中での」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自然、親房の声望は一ばい高く、彼みずからは法衣の宰相で剣もたいしていないが、つねに鬢頬びんづらに花をかざした大童子を左右にめしつれ、宮中の出入にはてぐるまを用い、日夜、軍議のていにみえる。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに柴進その人は、巻毛の白馬に覆輪ふくりんの鞍をすえてまたがり、かしらにはしゃ簇花巾ぞっかきんほう(上着)はむらさき地に花の丸紋、宝石入りのたい、みどりじま短袴たんこ朱革しゅがわの馬上靴といういでたち。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お返し下さる以上は、将門始め、弟共も、終生、それは御恩に感じ、また、叔父御たちのお家に、一朝、変乱のあるときには、いつでも、弓矢をたいして、まッ先に駈けつけようというものです。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)