屡々しば/\)” の例文
長崎は淫風の極めて太甚はなはだしき地なり。襄の彼地に在るや屡々しば/\遊里に誘はれたりき。今日と雖も娼閣の壁上往々其旧題を見るといへり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
ことに屡々しば/\この「アミユレツト」に関して犯罪の行はるゝことなどが探偵小説に書かれてあるから特に一言注意を促した訳である。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
屡々しば/\速射砲等そくしやほうとうをもつて反對はんたい撃沈げきちんされるほどで、とても、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ破天荒はてんくわうなる、この海底戰鬪艇かいていせんとうていとは比較ひかくすること出來できぬのである。
水車が休んでゐる時は松はひとりでさびしくかなでた。その声が屡々しば/\のこと私を、父と松林の中の道を通つて田舎ゐなかから出て来た日に連れ戻した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
因業で几帳面な人間ほど、肉親愛が強い——と言つた例を、平次は屡々しば/\見せつけられますが、これもまた一つのよい例でした。
が、丁度その頃から、彼と彼の父との間に、金銭上の事で何かごたごたした不機嫌な会話が屡々しば/\取交とりかはされるやうになつた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
して梅五郎のもとへは沢山たくさん尋ねて来る人が有たのか女「はい有ッても極極ごく/\わずかです其うちで屡々しば/\来るのが甥の藻西太郎さんで、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
勿論もちろんそれは彼の思ひ過ぎでもあつた。これまでも屡々しば/\あつたことだ。こんな気持の時は足がおのづからステーションや波止場の方へ向くのであつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
奉「フム、由其の方は存じて居ろうが、龜甲屋の元の宅は根岸であったによって、坂本の経師職桃山が出入ゆえ、幸兵衛が屡々しば/\仕事にまいったであろう」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しながら此處彼處ここかしこかこひ者をなし其上屡々しば/\女郎買にもゆきうちの下女には手を付て懷妊くわいにんさせて金を取られいやはや女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わが気力の著じるく衰へ来りしより以来このかた、彼の馬十の顔を見る毎に、怪しく疑ひ深き瞋恚しんにの心、しきりに燃え立ちさかりて今は斯様かうよと片膝立つる事屡々しば/\なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今の人は讓歩と云ふことの眞意義を知らない。けれども姑息こそくの妥協は、政治、經濟の上では勿論、學問の上にも屡々しば/\行はれて、それで大きな勃發もなしに流轉して行く。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
日本につぽんでもむかしから百姓ひやくしよう土地とちたがやしたり、やまくづれたりしたとき、ひょっこり石器せつき發見はつけんされたことが屡々しば/\ありましたが、むかしはそれらの石器せつき人間にんげんつくつたものとはおもはないで
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
えら婦人ふじん傳記以外でんきいぐわいに、屡々しば/\婦人ふじん讀物よみものとして推奬すゐしやうされるのは、婦人ふじんいた書物しよもつである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うまことつてら!』とてゝはとふたゝ落着おちつきました、あいちやんはくびえだからえだからみさうなので、出來できるだけもりなかかゞんでゐましたが、あるときには屡々しば/\あしめて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
私はその書物のなかのその話を耳にいれたとき、私もまた何かさういふ罪を犯したことがあるやうな気がしてならなかつた。病身がちな私は、屡々しば/\真蒼まつさをになつて、母に抱きついた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
久しく忘れてゐた詞だ。少年の頃よくおさない詩を作つた折に屡々しば/\使つた詞だ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
ゆきなん——荷擔夫にかつぎふ郵便配達いうびんはいたつひとたち、むかし數多あまた旅客りよかくも——これからさしかゝつてえようとする峠路たうげみちで、屡々しば/\いのちおとしたのでありますから、いづれれいまつつたのであらう、と大空おほぞらくも
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人夫中の一人喜作なるもの両三日前より屡々しば/\病の為めにくるしみ、一行も大に憂慮いうりよせしが、文珠岩を発見はつけんするやいなただちに再拝してめし一椀、鰹節一本とを捧呈ほうていし、祈祷きとうときうつおはりてかたじけく其飯をきつ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
己は屡々しば/\う云って
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あまりの事に、平次も八五郎も默つて聽く外はありません、江戸時代に屡々しば/\行はれた寺社の開帳には、當れば斯んな賑ひは隨分あつたものです。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
彼れが我身に覚えも無き事を易々やす/\と白状して殆ど裁判を誤らしめんとするに至りし其不心得を痛く叱るに彼れ屡々しば/\こうべを垂れ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まゐらするなり何も御座らぬつかみ料理澤山おあがりくだされよと亭主の愛想あいさうに人々は大いに悦び盃盞さかづき屡々しば/\巡るうち時分を計り傳吉は小用に行く體して叔母女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くわふるに橄欖島かんらんたう附近ふきんには、始終しじう有名いうめいなる海賊船かいぞくせん横行わうかうし、また屡々しば/\歐洲をうしう諸國しよこく軍艦ぐんかん巡航じゆんかうしてますから、其邊そのへん海底戰鬪艇かいていせんとうてい機關きくわん活動くわつどううしなつて
父がそれ等の乱暴な俥夫の横理屈に対してあくまで自分をおさへて彼等の機嫌を取つてゐるのを私は屡々しば/\見た。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
吾人は又屡々しば/\愛国及び基督教てふ声を聞き政府及び教会てふ声を聞き、社会問題及び教会てふ声を聞く。
信仰個条なかるべからず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
希臘神話の中に出て来る魔法使ひの女サーシーはこのマンドレークを最も屡々しば/\使用したといはれて居る。この迷信は余程久しい間行はれ、沙翁さをうの劇の中にも度々たび/\引用せられてゐる。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
わたし審問しんもんをはりに「傍聽人ばうちやうにん喝釆かつさいしやうとして、たゞちに數多あまた廷丁てい/\どもに制止とめられた」とふことを、屡々しば/\新聞しんぶんんではましたが、それが意味いみだかわかりませんでした。』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
肌触はだざはりに荒い感じがあつて、何うかするとひどい恐い目をするのだつたが、晴代に失恋の悩みを聴いてもらつたところから、親しみが生じて、料理を特別に一皿作つてくれることも屡々しば/\あつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
名物の白梅の老木は、塀の上から悉く見上げられ、大枝に掛けて居るといふ白衣長髮の梅の精も、月の良い晩は、屡々しば/\外から映し繪のやうに見られたことでせう。
二種ふたいろくはゆるゆゑ如何程おも癲癇てんかんなりともたゞ一二服を服用すれば忽地たちまち全快なさんことしも沸湯にえゆを注ぐに等き世にも怪有けうなる奇劑きざいなるは是迄夥多あまたの人に用ゐ屡々しば/\功驗こうけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
か言出さんとする如く唇屡々しば/\動きたるもようやくに我心を推鎮おししずめ「え、え」と悔しげなる声を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ひろやうでもせまいのは滊船きせん航路かうろで、千島艦ちしまかんとラーヴエンナがう事件じけん實例じつれいまでもなく、すこしく舵機かぢ取方とりかたあやまつても、屡々しば/\驚怖きやうふすべき衝突しようとつかもすのに、底事なにごとぞ、あやしふね海蛇丸かいだまる
ちやうど電車通りを越えた高台のところに、其の口入屋があつたので、そこへ還つてゐるあひだ、屡々しば/\圭子の家を覗きに来たり何かして、一晩でも泊めると、もうそこに淡い愛着が出て来るのが
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それは小肥りの立派な殿樣振りで、噂で聽いた、冷酷無殘な樣子はなく、反つて幾分の甘さと寛大さと、身分のある者に屡々しば/\見受けられる、打ち解け過ぎた頭の惡さを感じさせるのでした。
従ッて又隣近所で目を醒すに違い無い、其所だテ隣近所で目を醒してもアヽ又例の喧嘩かと別に気にもとめずに居る様な所が何所にか有るだろう(大)夫では屡々しば/\大喧嘩の有る家かネ(谷)爾サ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)