小口こぐち)” の例文
皆和本で、それぞれの書名が小口こぐちに綺麗に書かれたのが積重ねてあって、表紙の色はそれぞれ違いましたが、どれも皆無地でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
沢山な閲覧者のなかには、書物からいろんな毒を吸ひ取つて帰る代りに、書物の小口こぐちに目に見えない病毒を残してくのがある。
んなかみぢや、またすぐやぶけますね」とひながら、小六ころくいた小口こぐちを一しやくほどかして、二三力任ちからまかせにらした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何処どこから取付とりついいか実にけが分らない。しかし年月をれば何か英書を読むと云う小口こぐちが立つに違いないが、今の処では何とも仕方がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とても仕事場へ運んで屋根の下で仕事をすることは出来ませんので、庭の野天で、残暑の中に汗みずくとなり、まず小口こぐちからこなし初めました。
すかし見れば彼の十七屋となやのの飛脚に相違なしよつて重四郎は得たりとしりひつからげて待つほどに定飛脚ぢやうひきやくかきたりし小田原挑灯を荷物にもつ小口こぐち縊付くゝりつけ三度がさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
イザ食べようという時小口こぐちからく薄く切って芥子からしを添えるのだ。一つ試してみ給え、一番軽便けいべんの豚料理だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのほか、岩崎山、青塚、小口こぐち曼陀羅寺まんだらじなどの陣々をあわせて、ざっと総兵力約八万八千ととなえられている。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三つには、真の意味の批評の一向出て来ないことである。まず三番目の理由から、話の小口こぐちをほぐしてゆく。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
切り小口こぐちの神経の筋が縮んで、肉の中に引っり込んで行く時なんぞは、特別にキンキン痛いのですが、それが実際に在りもしない膝っ小僧だの、足の裏だのに響くのです
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
このたびのは、一昨日をとゝひあさからかゝつた仕事しごとで、ハヤそのなかばいた。たけ間半けんはん小口こぐちじやくまはり四角しかくくすのき眞二まつぷたつにらうとするので、與吉よきちは十七の小腕こうでだけれども、このわざにはけてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
紀伊東牟婁ひがしむろ郡高田村西高田の京等木平きょうらぎたいら山は、同郡小口こぐち村大字東との境上で、『続風土記』にはこの辺きわめての深山にて至る者なしとある。京良谷という地名はほかの地方にも多い。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さてこれから船見ふなみ峠、大雲取おほくもとりを越えて小口こぐち宿しゆくまで行かうとするのであるが、僕に行けるかどうかといふ懸念があるくらゐであつた。那智権現ごんげんに参拝し、今度の行程について祈願をした。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
若旦那わかだんなのおともといえば、つねいちどんと朋輩ほうばいからされるならわしは、ときにかけ蕎麦そばの一ぱいくらいにはりつけるものの、市松いちまつっては、むし見世みせすわって、かみ小口こぐちをそろえているほう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
峯「ふざけちゃアいけねえじゃアねえか、此処まで来て、此処じゃア立場もえ、下沢渡へ別れ道の小口こぐちまできねえな、彼処あすこけば又一人や二人帰り車も居るだろうから、此処じゃア何うもしようがねえやな」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かべに掛けたのばかりでも大小あはせると余程になる。額縁がくぶちけない下画したゑといふ様なものは、かさねていたはじが、くづれて、小口こぐちをしだらなくあらはした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
膝や肩の丸味は三角の所へ弓をやって形を作り、印を結んだ手は片面で、四分板しぶいたを切り抜いて、細丸太を切って小口こぐちから二つ割りにして指の形を作る。
そこでブリスケが煮えたのですから一旦いったん出して小口こぐちから薄く切って野菜とともに皿へ盛って今の煮た汁を裏漉うらごしにしてかけて出すとなかなか美味しい御馳走が出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
拙僧せつそうも立身の小口こぐちに先生も御隨身ごずゐしんの思召あらば拙僧せつそう御吹擧ごすゐきよおよぶべしといふ伊賀亮は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてこれから船見峠ふなみとうげ大雲取おおくもとりを越えて小口こぐち宿しゅくまで行こうとするのであるが、僕に行けるかどうかという懸念があるくらいであった。那智権現なちごんげんに参拝し、今度の行程について祈願をした。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
手際てぎはなもので、あふうちに、じり/\と團子だんごいろづくのを、十四五本じふしごほんすくりに、一掴ひとつかみ、小口こぐちからくしつて、かたはら醤油したぢどんぶりへ、どぶりとけて、さつさばいて、すらりと七輪しちりんまたげる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
壁にかけたのばかりでも大小合わせるとよほどになる。額縁がくぶちをつけない下絵というようなものは、重ねて巻いたはしが、巻きくずれて、小口こぐちをしだらなくあらわした。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このたびのは、一昨日おとといの朝からかかった仕事で、ハヤそのなかばを挽いた。たけけんはん小口こぐちじゃくまわり四角なくすのき真二まっぷたつに割ろうとするので、与吉は十七の小腕こうでだけれども、このわざにはけて居た。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巻きおわった時今の紙で巻き目をよく押えておくと太い棒になりますからそれを小口こぐちに切りますとカステラの渦巻のようなものが出来ます。これはジャムロールといってなかなか美味しいお菓子です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
三四郎は手をして、帳面を受取つた。真中まんなか小口こぐち当座預金あづかりきん通帳とあつて、横に里見美禰子殿と書いてある。三四郎は帳面と印形を持つた儘、女の顔を見て立つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すなはち、一錢銅貨いつせんどうくわ五十餘枚ごじふよまいを、ざらりと一側ひとかはならびに、ほそい、あをい、ちひさい蝦蟇口がまぐち用意よういして、小口こぐちから、「さあ、さあ、お剩錢つりを。」——これは、以來いらい、九九九くわい常備じやうび共通きようつうつて
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
縁側えんがはて、たかひさしあふぐと、くろかはら小口こぐちだけそろつて、ながく一れつえるそとに、おだやかなそらが、あをひかりをわがそこはうしづめつゝ、自分じぶんうすくなつてところであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
祖母としよりが、ト目をこすった帰途かえりみち。本を持った織次の手は、氷のように冷めたかった。そこで、小さな懐中ふところ小口こぐちを半分差込さしこんで、おさえるようにおとがいをつけて、悄然しょんぼりとすると、つじ浪花節なにわぶしが語った……
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祖母としより莞爾にっこりして、嫁の記念かたみを取返す、二度目の外出そとではいそいそするのに、手をかれて、キチンと小口こぐちを揃えて置いた、あと三冊の兄弟を、父の膝許ひざもとに残しながら、出しなに、台所をそっのぞくと
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
好加減いゝかげん髮剃かみそり小口こぐちおとして仕舞しまこともあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)