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宛
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あ
ふりがな文庫
“
宛
(
あ
)” の例文
この小説は、「健康道場」と称する
或
(
あ
)
る療養所で病いと闘っている二十歳の男の子から、その親友に
宛
(
あ
)
てた手紙の形式になっている。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
窓外は
勿論
(
もちろん
)
何にも見えなかった。鷲尾はやがて手帳を出して、二三枚ちぎりながら別れてきた末弟へ
宛
(
あ
)
てて、手紙を書き始めた——。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
あくる朝俊夫君は、
昨夜
(
ゆうべ
)
、叔父さん
宛
(
あ
)
てに書いたという手紙を投函してくると言って出かけたまま、
正午
(
ひる
)
頃まで帰ってきませんでした。
紅色ダイヤ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
故川田
甕江
(
おうこう
)
先生は、
白石
(
はくせき
)
が
鳩巣
(
きゅうそう
)
に
宛
(
あ
)
てた
書翰
(
しょかん
)
と『
折焚柴
(
おりたくしば
)
の記』に浪人越前某の伝を同事異文で記したのを馬遷班固の文以上に
讃
(
ほ
)
めたが
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私
(
わたくし
)
の顔を見ると、「ちょっと手をお
貸
(
か
)
し」といったまま、自分は席に着いた。私は兄に代って、
油紙
(
あぶらがみ
)
を父の
尻
(
しり
)
の下に
宛
(
あ
)
てがったりした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
澪標の語は『延喜式』に
難波津
(
なにわづ
)
の
頭
(
ほとり
)
、海中に澪標を立つとあるのが初めで『万葉』には水咫衝石の字を
宛
(
あ
)
つと『
和訓栞
(
わくんのしおり
)
』に言ってある。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この手紙は僕に
宛
(
あ
)
てたもので、犯人を誰とも書いてないけれども、僕に宛てたところをみると、僕を犯人に当てているのかも知れないね。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
五時間目には
菊池
(
きくち
)
先生がうちへ
宛
(
あ
)
てた手紙を
渡
(
わた
)
して、またいろいろ話された。武田先生と菊池先生がついて行かれるのだそうだ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
東国の逆乱もすみやかな
静謐
(
せいひつ
)
を見、相共によろこばしい。さっそく将士の軍功の
施与
(
せよ
)
は、
綸旨
(
りんじ
)
の下に、朝廷で
宛
(
あ
)
て
行
(
おこな
)
うであろう。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甥のことを頼んで置いて、自分の家へ引返してから、三吉は
不取敢
(
とりあえず
)
正太へ
宛
(
あ
)
てて書いた。その時は姪のお延と二人ぎりであった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その明くる日、ナオミは私から二百円
貰
(
もら
)
って、一人で三越へ行き、私は会社で
午
(
ひる
)
の休みに、母親へ
宛
(
あ
)
てて始めて無心状を書いたものです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その文学士河野に
宛
(
あ
)
てたは。——英吉君……島山夫人が、才と色とをもって、君の為に早瀬を
擒
(
とりこ
)
にしようとしたのは事実である。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
トいいさして文三は顔に手を
宛
(
あ
)
てて黙ッてしまう。
意
(
こころ
)
を
注
(
とど
)
めて
能
(
よ
)
く見れば、壁に写ッた影法師が、
慄然
(
ぶるぶる
)
とばかり震えている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『
私
(
わたし
)
は
未
(
ま
)
だそれを
開
(
ひら
)
きません』と
云
(
い
)
つて
白兎
(
しろうさぎ
)
は、『だが、それは
手紙
(
てがみ
)
のやうです、
囚人
(
しうじん
)
の
手
(
て
)
になつた、——
何者
(
なにもの
)
かに
宛
(
あ
)
てた』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
善作さんの家に厄介になつてゐることを知らせてやつた。父からはあらためて善作さんに
宛
(
あ
)
てて何分頼むと云ふ手紙が来た。私にも別封で来た。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
簿記台のなかから、手紙を取り出してみると、それは加世子から均平に
宛
(
あ
)
てたもので、富士見の
青嵐荘
(
せいらんそう
)
にてとしてあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
手紙は重吉といねに
宛
(
あ
)
てたもので、病身でも充分に気をつけるから八重と結婚をしたいという、坂田の若者らしい熱情で
綴
(
つづ
)
られたものであった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
私は座敷に落付くや否や
其処
(
そこ
)
の
硯
(
すずり
)
を取り寄せて一本の手紙を書いた。それは少し以前から此の地に来ているはずの漱石氏に
宛
(
あ
)
てたものであった。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
若浪は若草を抱き上げ、湯呑を口に
宛
(
あ
)
てがうとゴックリと一口水を飲み、フー/\という息遣いでございます。暫くして
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おぼつかない
宛
(
あ
)
てではあったけれど、ほかに宛てのない彼女としては、そんなことでも宛てにして、良人をさがさなければならないのであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は
涸
(
かわ
)
いた唇をなめてあたりを見まわした。大沼喜三郎を
宛
(
あ
)
てるつもりでいた。彼はそれを阿賀妻に連れて行かれていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
わたしの船室にはわたし
宛
(
あ
)
てに十数個の小包が届いていた。なかには、一度ぐらいより会ったことのないような人からまで記念品を贈られていた。
謎の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
優善が家を出た日に書いたもので、一は
五百
(
いお
)
に
宛
(
あ
)
て、一は成善に宛ててある。
並
(
ならび
)
に
訣別
(
けつべつ
)
の書で、
所々
(
しょしょ
)
涙痕
(
るいこん
)
を
印
(
いん
)
している。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし、セントラル・ニュース社に
宛
(
あ
)
てた通信を犯人から出たものと仮定すれば、このロシア渡来の狂医師説はただちに粉砕されなければならない。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
それからソフィヤ・セミョーノヴナがすっかり安心するように、三人が丁年に達するまで、一人あたま千五百ルーブリずつ
宛
(
あ
)
てといてやりましょう。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それで、クリストフへ
宛
(
あ
)
てられた招待の
相伴
(
しょうばん
)
を受けた。そしてひそかにクリストフを監視するためについて行った。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
妻君「鯖の船場煮とはどうしたお料理です」お登和嬢「鯖の船場煮は誠にさっぱりしたお料理で先ず生鯖の
鮮
(
あたら
)
しいのへ一塩
宛
(
あ
)
てて二、三時間置きます。 ...
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
袋だたきに
逢
(
あ
)
わされまいものでもないから——
金子
(
きんす
)
だけを送ってやることに初めから心には定めていたので、すぐ吉弥
宛
(
あ
)
てで電報がわせをふり出した。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
女はちょっと途方に暮れて立っていたが、
忽
(
たちま
)
ち思い
附
(
つ
)
いた事があるらしく、一人
頷
(
うなず
)
いて郵便局へ
駈
(
か
)
けて行った。医学士に
宛
(
あ
)
てた電報を打ったのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
但し条件附であった。掃除をよくすること、本座敷は滅多に使わぬこと——。それゆえ、鼈四郎夫妻は次の間の六畳を常の住いに
宛
(
あ
)
てているのであった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
B
僕
(
ぼく
)
は
政治上
(
せいぢじやう
)
の
事
(
こと
)
に
趣味
(
しゆみ
)
がないから
委
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は
知
(
し
)
らないが、
何
(
なん
)
でも
請願
(
せいぐわん
)
の
代
(
かは
)
りに、
多數
(
たすう
)
の
人民
(
じんみん
)
から
衆議院議長
(
しうぎゐんぎちやう
)
に
宛
(
あ
)
てゝ
葉書
(
はがき
)
を
出
(
だ
)
さうと
云
(
い
)
ふのださうな。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
二十三年の間、洗濯婦をやり、手のかたちを
歪
(
いびつ
)
にしていささかの貯えを残し、その貯金のためにランドリュに惨殺された五十一歳のギラン夫人に
宛
(
あ
)
てた恋文は
青髯二百八十三人の妻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ともかくも大きい水車があるために、ここの家も火薬製造所に
宛
(
あ
)
てられていました処が、このお話の安政元年、六月十一日の明け六ツ過ぎに突然爆発しました。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
を言っている時に、与力同心の部屋に
宛
(
あ
)
てられたところで
哄
(
どっ
)
と人の笑う声がしました。それと共に
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
母
(
はは
)
などは、
他
(
ほか
)
の
多
(
おお
)
くの
人達
(
ひとたち
)
と
同
(
おな
)
じく、こちらに
参
(
まい
)
ってから、
産土神様
(
うぶすなのかみさま
)
のお
手元
(
てもと
)
で、ある一
室
(
しつ
)
を
宛
(
あ
)
てがわれ、そこで
静
(
しず
)
かに
修行
(
しゅぎょう
)
をつづけているだけなのです……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
『
冬柏
(
とうはく
)
』の昭和五年十月号の消息欄に、
賀古鶴所
(
かこつるど
)
氏が
与謝野
(
よさの
)
氏に
宛
(
あ
)
てた、次のような手紙が出ています。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
何か国に
宛
(
あ
)
てて書くべき急な手紙の用事のあることを見てとつたので、臨時に受持を替へたのである。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
愛宕さんの祭には
花踊
(
はなをどり
)
があつた。ある年の祭に町の若い
衆
(
しう
)
だけでは踊り子が足りなくて、
他所者
(
たしよもん
)
の
小池
(
こいけ
)
までが
徴發
(
ちようはつ
)
されて、
薙刀振
(
なぎなたふ
)
りの役を
宛
(
あ
)
てられたことがあつた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
誰に
宛
(
あ
)
てるという遺書ではなかった。次第に腹が立って来た。私は立ち上って、それを破り捨てた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ベンヺ カピューレットの一
族
(
ぞく
)
のチッバルトが、ロミオが
父者
(
てゝぢゃ
)
へ
宛
(
あ
)
てゝ、
書面
(
しょめん
)
をば
送
(
おく
)
ったさうな。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
さきに
一旦
(
いったん
)
の感情に駆られて、葉石に
宛
(
あ
)
てたりし永別の書が、
端
(
はし
)
なくも世に発表せられしことを思いてわれながら面目なく、また葉石に対し何となく気の毒なる情も起り
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
三万両からの金を
遺
(
のこ
)
して、その場所を誰にも教えずに死んでしまいましたが、手文庫の中の倅に
宛
(
あ
)
てた遺言状らしい手紙に、日比魚とたった三字だけ書いてあったそうです。
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私には躊躇はなかったのです。その日友人に
宛
(
あ
)
て、「上人は幕末における最大の彫刻家だ」と書かないわけにはゆきませんでした。それほど上人は私の眼を覚まさせました。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
赤穂の元浅野家
菩提所
(
ぼだいしょ
)
華岳寺の住職
恵光
(
えこう
)
、同新浜正福寺の住職良雪、自家の菩提所
周世
(
すせ
)
村の神護寺住職三人に
宛
(
あ
)
てたもので、自分が江戸へ下ってからの一党の情況を報じて
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
忌々
(
いまいま
)
しくてならないので、帰ると直ぐ「鴎外を訪うて会わず」という短文を書いて、その頃在籍していた国民新聞社へ
宛
(
あ
)
ててポストへ入れに運動かたがた自分で持って出掛けた。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
しかし単に状態の上から
宛
(
あ
)
て
嵌
(
は
)
めた名とすれば、さしたる不都合はなかろうと思われる。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
手紙は簡単に「トニカク、クワシイ事ヲオ話シマショウ。明日八時、石切山ノ下デマッテイマス。」——書くなと云った通り、自分の名前も、
宛
(
あ
)
てた森本の名も書いてなかった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
お浜の一家からは、その後、到着を報じたくちゃくちゃの葉書が、年内に一通と、年が明けて十日も経ったころ、次郎に
宛
(
あ
)
てたお鶴の年賀状が来たきり、何の音沙汰もなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そして聞くところによると、泣き出しさえしたそうである。あの、わたしの父がである! 発作の起る日の朝のこと、父はわたしに
宛
(
あ
)
てて、フランス語の手紙を書き始めていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
税関附
(
ぜいくわんづき
)
の
官吏
(
くわんり
)
が
来
(
き
)
て、
大蔵省
(
おほくらしやう
)
から
桑港税関長
(
さうかうぜいくわんちやう
)
へ
宛
(
あ
)
てた
書面
(
しよめん
)
の
写
(
うつし
)
を
呉
(
く
)
れる。
見
(
み
)
ると、一
周会員
(
しうくわいいん
)
の
荷物
(
にもつ
)
は
東京駐剳大使
(
とうきやうちうさつたいし
)
の
照会
(
せうくわい
)
があつたので、一々
検査
(
けんさ
)
を
加
(
くは
)
ふるに
及
(
およ
)
ばぬとの
内訓
(
ないくん
)
である。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
宛
常用漢字
中学
部首:⼧
8画
“宛”を含む語句
宛然
宛行
宛転
宛名
名宛
宛嵌
宛如
押宛
宛所
宛城
宛字
手宛
大宛
人宛
目宛
引宛
宛転滑脱
宛込
宛転悠揚
幸子宛
...