トップ
>
守
>
かみ
ふりがな文庫
“
守
(
かみ
)” の例文
丁度これと同じ時刻、男は遠い
常陸
(
ひたち
)
の国の屋形に、新しい妻と酒を
斟
(
く
)
んでゐた。妻は父の目がねにかなつた、この国の
守
(
かみ
)
の娘だつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「その通りだよ、親分、自分の本当の娘でないから、閑斎の海坊主
奴
(
め
)
、お澪を大旗本の何とかの
守
(
かみ
)
の
妾
(
めかけ
)
に差出すことを承知したんだ」
銭形平次捕物控:095 南蛮仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大工の
守
(
かみ
)
利武なんぞに懸け合われる筋もないことだ。申し分があれば、月番まで申して出い。掏摸の後押しをしたり、お妾の尻押しを
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「その中に、
緋縅
(
ひをどし
)
の
鎧
(
よろひ
)
着たる武者三人、
網代
(
あじろ
)
に流れて浮きぬ沈みぬゆられけるを——何とかの
守
(
かみ
)
見給ひて、かくぞ詠じ給ひける。」
武者窓日記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
この年、平太清盛は、ふたたび昇って、
安芸守
(
あきのかみ
)
に任官した。父忠盛は、前からの
播磨守
(
はりまのかみ
)
だが、いまは、父子そろっての、
守
(
かみ
)
である。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
上総
(
かずさ
)
の
守
(
かみ
)
だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに
東
(
あずま
)
に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だった。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
むつの
守
(
かみ
)
綱宗公は、おと
年
(
とし
)
、万治元年九月に家督されてから、まる二年にもならぬのに、早くも御隠居ときめられたのですよ
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
守
(
かみ
)
の本宅のほうにも隠して住ませておくことはできたのであるが、そうしたみじめな
起居
(
おきふし
)
はさせたくないとして別居をさせ始めたのであって
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この二人は、
侯爵
(
こうしゃく
)
津の
守
(
かみ
)
が、参宮の、仮の
館
(
やかた
)
に催された、一調の番組を勤め済まして、あとを膝栗毛で帰る途中であった。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大抵
(
たいてい
)
の
喧嘩
(
けんか
)
は加藤しゃもじの
守
(
かみ
)
から発生する、しゃもじがなぐられて巌に報告すると巌は
復讐
(
ふくしゅう
)
してくれるのである。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
家が今の信濃町の近所にあつて、学校から帰ると、
津
(
つ
)
の
守
(
かみ
)
坂の横にある「乳屋の原」というのへ遊びにいつた。
時 処 人:――年頭雑感――
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
田口益人
(
たぐちのますひと
)
が和銅元年
上野国司
(
かみつけぬのくにのつかさ
)
となって
赴任
(
ふにん
)
の途上
駿河
(
するが
)
国
浄見
(
きよみ
)
埼を通って来た時の歌である。国司は
守
(
かみ
)
・
介
(
すけ
)
・
掾
(
じょう
)
・
目
(
さかん
)
ともに通じていうが、ここは国守である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
よくやしなへとおほせによりて
苗
(
なへ
)
のころにいたり心をつくして
植
(
うゑ
)
つけけるに、鶴があたへしにかはらずよく
生
(
お
)
ひいでければ、
国
(
くに
)
の
守
(
かみ
)
へも奉りしとかたれり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
役所に遠いのを
仮托
(
かこつけ
)
に、
猿楽町
(
さるがくちょう
)
の親の家を離れて
四谷
(
よつや
)
の
津
(
つ
)
の
守
(
かみ
)
の女の写真屋の二階に下宿した事もあった。神田の
皆川町
(
みながわちょう
)
の
桶屋
(
おけや
)
の二階に同居した事もあった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いろいろの式があつたあとで、
山野
(
やまの
)
紀伊
(
きい
)
の
守
(
かみ
)
の家老を務めてゐたといふ
髯
(
ひげ
)
の白い老人が、殿様の代理で
硯箱と時計
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
しかも、これらの貴族豪族は、多くは前国司の位置にあつた
守
(
かみ
)
とか、
介
(
すけ
)
とか
掾
(
じよう
)
などで、その任国に土着したもので、人望も厚く、各地に強力なる武士団を形成したのである。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
諸国の
介
(
すけ
)
や
守
(
かみ
)
や
掾
(
じよう
)
やは、騒乱を鎮める為に
戮力
(
りくりよく
)
せねばならぬのであるが、元来が私闘で、其の情実を考へれば、
強
(
あなが
)
ち将門を片手落に対治すべき理があるやうにも思へぬから
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
坂井
(
さかゐ
)
は
道具屋
(
だうぐや
)
の
素性
(
すじやう
)
を
能
(
よ
)
く
知
(
し
)
つてゐた。
出入
(
でいり
)
の
八百屋
(
やほや
)
の
阿爺
(
おやぢ
)
の
話
(
はなし
)
によると、
坂井
(
さかゐ
)
の
家
(
いへ
)
は
舊幕
(
きうばく
)
の
頃
(
ころ
)
何
(
なん
)
とかの
守
(
かみ
)
と
名乘
(
なの
)
つたもので、
此
(
この
)
界隈
(
かいわい
)
では
一番
(
いちばん
)
古
(
ふる
)
い
門閥家
(
もんばつか
)
なのださうである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
太郎は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めて、「この国の
守
(
かみ
)
の下司に、県の何某と云う人を聞かず、我家
保正
(
おさ
)
なればさる人の亡くなり給いしを聞えぬ事あらじを」と云って
彼
(
か
)
の太刀を
精
(
くわ
)
しく見て驚いた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
水野
筑後
(
ちくご
)
の
守
(
かみ
)
——あの人は二千石の
知行
(
ちぎょう
)
取りだそうだが、きょうの御通行は十万石の格式だぜ。非常に破格な待遇さね。一足飛びに十万石の格式なんて、今まで聞いたこともない。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私の主人なんの
守
(
かみ
)
という大名が
登城
(
とじょう
)
の途中に、
貴方
(
あなた
)
の馬に乗ってゆかれる姿勢を見、西洋の
鞍
(
くら
)
が面白い、まだ見たことがないから、どうか拝見したい、また
乗人
(
のりて
)
も見事に乗っている
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
父君の前をもよきにいひなし給へといふ。太郎
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めて、あやし、此の国の
守
(
かみ
)
の
下司
(
したづかさ
)
に
県
(
あがた
)
の
何某
(
なにがし
)
と云ふ人を聞かず。我が家
一六〇
保正
(
をさ
)
なればさる人の
亡
(
なくな
)
り給ひしを聞えぬ事あらじを。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
思
(
おも
)
ひ
立
(
た
)
たせ
給
(
たま
)
へとて、
紀
(
き
)
の
守
(
かみ
)
が
迷惑氣
(
めいわくげ
)
にも
見
(
み
)
えず
誘
(
いざな
)
ふにぞ、
夫
(
それ
)
好
(
よ
)
からんとて
夏
(
なつ
)
のさし
入
(
い
)
りより、
別室
(
はなれざしき
)
を
仮住
(
かりずみ
)
に
三月
(
みつき
)
ばかりの
日
(
ひ
)
を
消
(
け
)
しゝが、
歸邸
(
きてい
)
の
今日
(
けふ
)
の
今
(
いま
)
も
猶
(
なほ
)
殘
(
のこ
)
る
記臆
(
きおく
)
のもの二ツ
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
商館長のカロンの
守
(
かみ
)
は、気味の悪いくらい達者な日本語で
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
国司
(
こくし
)
でも、
郡司
(
ぐんじ
)
でも、おれのまねは、よも出来まい。——その下の、
守
(
かみ
)
でも、
介
(
すけ
)
でも、
掾
(
じょう
)
でも、
目
(
さかん
)
でも、みんなおれにお世辞をいってくるではないか
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弓が上手で、のちにお城に、もののけがあって、国の
守
(
かみ
)
が
可恐
(
おそろし
)
い
変化
(
へんげ
)
に悩まされた時、自から進んで出て、奥庭の大椿に向っていきなり矢を
番
(
つが
)
えた。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
初めはあの姫君の婿にと定められていたのに、
守
(
かみ
)
の娘をもらってかばってもらおうという腹で、女にもでき上がっていない子供を細君にしたのですよ。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
父が或秋の
除目
(
じもく
)
に
常陸
(
ひたち
)
の
守
(
かみ
)
に任ぜられた時には、
女
(
むすめ
)
はいつか二十になっていた。女はこん度は母と共に京に居残って、父だけが任国に下ることになった。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
よくやしなへとおほせによりて
苗
(
なへ
)
のころにいたり心をつくして
植
(
うゑ
)
つけけるに、鶴があたへしにかはらずよく
生
(
お
)
ひいでければ、
国
(
くに
)
の
守
(
かみ
)
へも奉りしとかたれり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
武家も武家、なんとかの
守
(
かみ
)
の
御留守居
(
おるすい
)
で、一時は大名のような暮しもしたと、お滝は
威張
(
いば
)
っていましたよ。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男の父は今度の
除目
(
ぢもく
)
に、
陸奥
(
むつ
)
の
守
(
かみ
)
に任ぜられた。男もその為に雪の深い奥へ、一しよに下らねばならなかつた。勿論姫君と別れるのは、何よりも男には悲しかつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たしか明治二十四年頃であった、二葉亭は
四谷
(
よつや
)
の
津
(
つ
)
の
守
(
かみ
)
の女の写真屋の二階に下宿した事があった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
坂井は道具屋の
素性
(
すじょう
)
をよく知っていた。
出入
(
でいり
)
の八百屋の
阿爺
(
おやじ
)
の話によると、坂井の家は旧幕の頃何とかの
守
(
かみ
)
と名乗ったもので、この
界隈
(
かいわい
)
では一番古い
門閥家
(
もんばつか
)
なのだそうである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「同じく二十七日、安芸さまは妻木彦右衛門方へ出頭し、藩内仕置の件で、むつの
守
(
かみ
)
お為筋に関する覚書を差出された。大井新右衛門は異議をとなえたが、島田出雲が受理したという」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
法話の第二部は、昔の飯山の城主、松平遠江守の事蹟を
材
(
たね
)
に取つた。そも/\飯山が仏教の地と成つたは、斯の先祖の時代からである。火のやうな
守
(
かみ
)
の宗教心は未だ年若な頃からして燃えた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
近来
(
ちかごろ
)
都の
大臣殿
(
おほいどの
)
の
一六一
御願
(
ごぐわん
)
の事みたしめ給ひて、
一六二
権現
(
ごんげん
)
におほくの宝を奉り給ふ。さるに此の
神宝
(
かんだから
)
ども、
一六三
御宝蔵
(
みたからぐら
)
の中にて
頓
(
とみ
)
に
失
(
う
)
せしとて、
一六四
大宮司
(
だいぐじ
)
より国の
守
(
かみ
)
に
訴
(
うつた
)
へ出で給ふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「知つてゐます。
山野
(
やまの
)
紀伊
(
きい
)
の
守
(
かみ
)
です。」
硯箱と時計
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
少将がくつろいでいる昼ごろに今では
守
(
かみ
)
の愛嬢の
居室
(
いま
)
に使われている西座敷へ来て夫人は
物蔭
(
ものかげ
)
からのぞいた。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
惟
(
おも
)
うに、太平の世の国の
守
(
かみ
)
が、隠れて民間に微行するのは、
政
(
まつりごと
)
を聞く時より、どんなにか得意であろう。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その日の夕ぐれ、丘の上にあるその館では、
守
(
かみ
)
は郡司たちを相手にして酒を酌みかわしていた。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
貧しくても、さきには、地方の
守
(
かみ
)
まで勤め、院の武者所をも預けられていた忠盛である。食うや食わずも承知のうえで、なお、仕えている家の子郎党は、つねに二、三十人はいた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武士らこれをとりもたせて、怪しかりつる事どもを
詳
(
つばら
)
に訴ふ。助も大宮司も
妖怪
(
もののけ
)
のなせる事をさとりて、豊雄を
責
(
さいな
)
む事をゆるくす。されど
二〇九
当罪
(
おもてつみ
)
免
(
まぬが
)
れず、
守
(
かみ
)
の
舘
(
みたち
)
にわたされて
牢裏
(
らうり
)
に
繋
(
つな
)
がる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
惟
(
おも
)
ふに、太平の世の国の
守
(
かみ
)
が、隠れて民間に
微行
(
びこう
)
するのは、
政
(
まつりごと
)
を聞く時より、どんなにか得意であらう。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
女が、前の
下野
(
しもつけ
)
の
守
(
かみ
)
だった、二十も年上の男の後妻となったのは、それから程経ての事だった。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「
真実
(
ほんとう
)
は
守
(
かみ
)
(時方は
出雲権守
(
いずものごんのかみ
)
でもあった)さんの手紙を女房へ渡しに来るのさ」
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あらたに通い出していた
伊予
(
いよ
)
の
守
(
かみ
)
の女の家で、懇ろに世話をせられていると、心のまめやかな男だっただけ、彼等を裏切らないためにも、男はつとめて前の妻のところからは遠ざかり
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
守
(
かみ
)
は、すこし
微醺
(
びくん
)
を帯びたまま、
郡司
(
ぐんじ
)
が雪深い
越
(
こし
)
に下っている息子の自慢話などをしているのをききながら、
折敷
(
おしき
)
や菓子などを運んでくる男女の
下衆
(
げす
)
たちのなかに、一人の小がらな女に目をとめて
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
守
常用漢字
小3
部首:⼧
6画
“守”を含む語句
見守
守護
子守
鎮守
守銭奴
国守
守衛
遠江守
留守中
守人
守札
御守
太守
目守
看守
宮守
上泉伊勢守
河内守
牢守
守子
...