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いや
ふりがな文庫
“
嫌
(
いや
)” の例文
グラチアの友の女は年若くて快い人柄ではあったが、それといっしょなのが彼には
嫌
(
いや
)
だった。そしてその日もだめになってしまった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「それ御覧な。そんなに、見たがるくせにして。それを、おいらが会いに行こうといえば、痩せ我慢して、
嫌
(
いや
)
に気取ってみたりして」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のような九尺二間のあばら
家
(
や
)
へ相応の家から来てくれてがあろうとも思わず、よしまた、あると仮定して
上
(
うわ
)
っ
冠
(
かぶ
)
りするのはなお
嫌
(
いや
)
。
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「しかし前の部屋よりは、広くもあるし
居心
(
いごころ
)
も
好
(
い
)
いし、不足を云う理由はないんだから、——それとも何か
嫌
(
いや
)
な事があるのかい?」
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
終列車が着いてから間もなく、いつものように作業服の姿で来る彼を待っていた彼女には、それが何かしら
嫌
(
いや
)
な予感を投げつけた。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
「明るいうちから、御用聞が乘込んぢや、俵屋の旦那が
嫌
(
いや
)
がるのも無理はない、今晩、暗くなつてから、そつと覗いて見るとしようか」
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
弟の彼も鎌を持たされたり、苗を運ばされたりしたが、吾儘で気薄な彼は直ぐ
嫌
(
いや
)
になり、
疳癪
(
かんしゃく
)
を起してやめてしまうが例であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それに気が付いた時に妾がどんなに勢よく暴れ出したか……アラ又……笑っちゃ
嫌
(
いや
)
って云うのに……ソレどころじゃなかったわよ
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
取柄
(
とりえ
)
は利慾が
交
(
まじ
)
らぬと云う点に
存
(
そん
)
するかも知れぬが、交らぬだけにその他の
情緒
(
じょうしょ
)
は常よりは余計に活動するだろう。それが
嫌
(
いや
)
だ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わたし
)
が
児心
(
こどもごゝろ
)
にも、アレ
先生
(
せんせい
)
が
嫌
(
いや
)
な
顔
(
かほ
)
をしたなト
斯
(
か
)
う
思
(
おも
)
つて
取
(
と
)
つたのは、まだモ
少
(
すこ
)
し
種々
(
いろん
)
なことをいひあつてからそれから
後
(
あと
)
の
事
(
こと
)
で。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
毛氈の上へぐったり
嫌
(
いや
)
らしく寝崩れた儘、残り惜しそうに絢爛な着物の色を眺めたり、袖口をちゃらちゃらと振って見たりした。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
嫌
(
いや
)
ですねえ、江戸で生れた者がこんな処に這入って、実に夫婦の情でいましたけれども、
斯
(
こ
)
うなって見ると寂しくっていられませぬもの
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
父は
嫌
(
いや
)
な顔をしていることもあるが、どうかするとすっかり馬鹿にでも成ったように自分を見ている時もあると書いてよこした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
さるゝも
嫌
(
いや
)
さに
默止
(
もだし
)
居
(
ゐ
)
れば
駕籠舁
(
かごかき
)
共は夫婦に向ひもし旦那
戻
(
もどり
)
駕籠ゆゑ
御安直
(
おやすく
)
參りやす
何卒
(
どうぞ
)
お
乘
(
のり
)
なされといひけるに浪人夫婦は是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ほんとに
嫌
(
いや
)
な人だっちゃない。あら、お前の
頸
(
くび
)
のところに細長い
痣
(
あざ
)
がついているよ。いつ
打
(
ぶ
)
たれたのだい、痛そうだねえ。」
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
酒呑
(
さけの
)
みを
十把
(
じっぱ
)
一とからげに
嫌
(
いや
)
がっていた閑子をミネは思い出し、野村がそんな点でも窮屈だったのではないかと思ったりした。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ハヾトフは
折々
(
をり/\
)
病氣
(
びやうき
)
の
同僚
(
どうれう
)
を
訪問
(
はうもん
)
するのは、
自分
(
じぶん
)
の
義務
(
ぎむ
)
で
有
(
あ
)
るかのやうに、
彼
(
かれ
)
の
所
(
ところ
)
に
蒼蠅
(
うるさ
)
く
來
(
く
)
る。
彼
(
かれ
)
はハヾトフが
嫌
(
いや
)
でならぬ。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
惰
(
なま
)
けものの美術家に縁づいて、若い盛りを
嫌
(
いや
)
な借金取りのいいわけに過して来た話を、お庄は時々この女の口から聞かされた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
スヴィドリガイロフは明らかに、人に見られるのを
嫌
(
いや
)
がっているらしかった。彼は唇からパイプを離して、あわや今にも姿を隠そうとした。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
官吏はどうかと云った人もあったが、役人と云うものは始めから
嫌
(
いや
)
だった。訳もわからないで
無暗
(
むやみ
)
に威張り散らすのが御役人だと思っていた。
枯菊の影
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
反抗が
嫌
(
いや
)
なら嫌で、もっと
落
(
お
)
ち
著
(
つ
)
いていればよかったろうと思われたに違いない。暴風も一過すれば必ず収まるものである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
けれどもそのときにピーボディーは旅籠屋の亭主に向って「
無銭
(
ただ
)
で泊まることは
嫌
(
いや
)
だ、何かさしてくれるならば泊まりたい」
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
仮
(
か
)
りにお堂の下で踏んだものとしたら、そして和尚さんがお堂の下を見られるのを
嫌
(
いや
)
がっているとしたら、大いに怪しくなって来るじゃないか
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
やっと別れた帰り路に、「〆八は
愛嬌
(
あいきょう
)
があって、評判がいいのだよ」とお母様はおっしゃいましたが、私は何だか
嫌
(
いや
)
でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その時代は人知の最も進まぬときである。ちょっと聞いて自分の心にはなはだ
嫌
(
いや
)
に思う説でも、一応は聞くだけの度量を
養
(
やしな
)
うことを
力
(
つと
)
めたい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
はっと思って、「あら、私、
嫌
(
いや
)
よ、留針を落としてよ」と友達に言うでもなく言って、そのまま、ばたばたとかけ出した。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
それでなくても私が気に
喰
(
く
)
わんから一所に居たくても為方なしに別居して
嫌
(
いや
)
な下宿屋までしているんだって言いふらしておいでになるんですから
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
甲田は黙つてそれを見てゐて、もう此学生と話してるのが
嫌
(
いや
)
になつた。
斯
(
か
)
うしてるうちに福富が帰つて了ふかも知れぬと思つた。すると学生は
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「あの客は渡り者ですよ、いつも餌屋の河岸にいて、何処の船でも空いたのをよって乗る
嫌
(
いや
)
な客です」といって喜ばない。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
芸術家として成功しているとは、旨く人形を
列
(
なら
)
べて、踊らせているような処を言うのではあるまいか。その成功が
嫌
(
いや
)
だ。
纏
(
まと
)
まっているのが嫌だ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして吾ながら何といふ立派な英語を使つたものだらうと、
独
(
ひとり
)
で感心してゐたが、ふとそれが電車の掲示に似てゐるのを思つて
嫌
(
いや
)
な気持がした。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
わたし一人で、
嫌
(
いや
)
だったから断ると、無理に、そりゃしつこく
誘
(
さそ
)
うのでしょ。内田さんがいてくれたら、気が強いんですけれど、心細いのにね。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
モウそれはさん/″\な乱暴な話をして、大言壮語、至らざる所なしと云う中にも、
嫌
(
いや
)
らしい汚ない話と云うことは
一寸
(
ちょい
)
とでも
為
(
し
)
たことがない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それに、あの人の歌は、どこまでが芸術で、どこまでが生活なのか——あの生活が
嫌
(
いや
)
なのだとはどうしても思われない。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
特殊民の一部族に
夙
(
しゅく
)
の者というのがあります。これはハチヤとか、
茶筅
(
ちゃせん
)
とか、
簓
(
ささら
)
とか、産所とかいう類のもので、比較的世間から
嫌
(
いや
)
がられませぬ。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
じぶんが
嫌
(
いや
)
で今にも出ようとしているところを、人に、しかも同胞のひとりに、紹介推薦するということは、論理にも合わなければ、気も咎める。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「あなたは、仲々仮面を取りはずさないみたいよ。だから、私まで女史を意識しなきゃいけないみたいで
嫌
(
いや
)
。(早く生の彼を発見したいものだわ)」
華々しき瞬間
(新字新仮名)
/
久坂葉子
(著)
暑い日の海水浴は水の美しき誘惑には敵しがたいけれど、そのあとの皮膚の感触位
嫌
(
いや
)
なものはない。私は真夏でも熱い茶と熱い珈琲と温浴を愛する。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
自分はふらふらと立ち上ってその妓の背後から肩を両手で抱くようにして、
嫌
(
いや
)
がるのを無理に頬辺へ
接吻
(
せっぷん
)
してやった。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
従って私は小学校を卒業して活版屋の小僧になると、なおさら気まずい村の青年達とは一緒に行動をするのが
嫌
(
いや
)
で、市内の工場労働者達の群にいた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「もう、そんな堅くるしいことは、お
互
(
たがい
)
によしましょう、私はこうした一人者のお婆さんですから、お
嫌
(
いや
)
でなけりゃこれからお
朋友
(
ともだち
)
になりましょう」
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
あゝ
嫌
(
いや
)
だ/\と
道端
(
みちばた
)
の
立木
(
たちき
)
へ
夢中
(
むちう
)
に
寄
(
より
)
かゝつて
暫時
(
しばらく
)
そこに
立
(
たち
)
どまれば、
渡
(
わた
)
るにや
怕
(
こわ
)
し
渡
(
わた
)
らねばと
自分
(
じぶん
)
の
謳
(
うた
)
ひし
聲
(
こゑ
)
を
其
(
その
)
まゝ
何處
(
どこ
)
ともなく
響
(
ひゞ
)
いて
來
(
く
)
るに
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
一匹、二匹、三匹と数えていって、十匹まで数えたが、それからあとは
嫌
(
いや
)
になった。十匹以上、まだワンワンと居た。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
実は悠々たる行路の人なのです。しかしヂックは「
己
(
おれ
)
は牧師ではない」というのが
嫌
(
いや
)
なのです。ヂックは非常な仁人とか義士とかに見えるでしょう。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
お祖父さんに、散々
苛
(
いじ
)
められて世の中の男が、
嫌
(
いや
)
になった私は、そう云う舞台の上に出て来る、昔の美しい男達を恋していたのかも分らなかったのよ。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
正直
(
しやうぢき
)
の
頭
(
かうべ
)
に
神
(
かみ
)
宿
(
やど
)
る——
嫌
(
いや
)
な思をして
稼
(
かせ
)
ぐよりは
真
(
ま
)
ツ
正直
(
しやうぢき
)
に
遊
(
あそ
)
んで
暮
(
くら
)
すが
人間
(
にんげん
)
の
自然
(
しぜん
)
にして
祈
(
いの
)
らずとても
神
(
かみ
)
や
守
(
まも
)
らん。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
何處からと無く
腥
(
なまぐさ
)
いやうな
溝
(
どぶ
)
泥臭
(
どろくさ
)
いやうな一種
嫌
(
いや
)
な臭が通ツて來て
微
(
かすか
)
に鼻を
撲
(
う
)
つ……風早學士は、此の臭を人間の生活が
醗酵
(
はつかう
)
する惡臭だと謂ツてゐた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
誰だつて泥棒は
嫌
(
きらひ
)
だけれども、それは泥棒が物を持つてゆくからといふのではない。誰もゐないときを
狙
(
ねら
)
つて、黙つてはいつて来るから
嫌
(
いや
)
なのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
で私はその
二方
(
ふたかた
)
がれいれいと
并
(
なら
)
べて
祀
(
まつ
)
ってあるということについて、実に言うに言われぬ
嫌
(
いや
)
な感じがいたしました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
しかし多分あなたは、その言葉を誤解して
嫌
(
いや
)
な氣持になつたでせう。僕の意味は、人間的な愛情や同情が、あなたを最も強く支配するといふことです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
嫌
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
“嫌”を含む語句
大嫌
上機嫌
御嫌
御機嫌伺
嫌疑
嫌厭
嫌忌
嫌気
気嫌
忌嫌
毛嫌
負嫌
去嫌
機嫌伺
好嫌
機嫌
嫌悪
御機嫌
不機嫌
嫌々
...