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嫉
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ねた
ふりがな文庫
“
嫉
(
ねた
)” の例文
聞いてみれば、父の重左衛門は同じ家中の師範役、成瀬権蔵、大川八右衛門、広瀬軍蔵というものの
嫉
(
ねた
)
みを受けて殺されてしまった。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
男教員の述懐、女教員の蔭口、其他時間割と月給とに関する
五月蠅
(
うるさい
)
ほどの
嫉
(
ねた
)
みと争ひとは、
是処
(
こゝ
)
に居て手に取るやうに解るのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼はひがんだり
嫉
(
ねた
)
んだりすねたり考えたりすることが嫌いでした。山の獣や樹や川や鳥はうるさくはなかったがな、と彼は思いました。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
専
(
もっぱ
)
ら当代の
在五中将
(
ざいごちゅうじょう
)
と言ふ
風説
(
うわさ
)
がある——いや大島守、また相当の色男がりぢやによつて、一つは其
嫉
(
ねた
)
みぢや……負けまい気ぢや。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これを羨むのあまりにはただこれを
嫉
(
ねた
)
むのみ。朋輩を嫉み、主人を怨望するに
忙
(
いそが
)
わしければ、なんぞお家のおんためを思うに
遑
(
いとま
)
あらん。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
そんなことがある訳がない、みんなが私の幸福を
嫉
(
ねた
)
んでいるのだ、……蝶々さんはいじらしい真実の愛を抱いて待っていました。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
兄の気持を察すると、弟の童貞で魅惑的な肉体を、自分が心を寄せかけてゐる若い娘に見られることは
嫉
(
ねた
)
ましく
厭
(
いと
)
はしかつた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そんな風に、お前の行状は世間の眼にあまるくらいだったから、成金根性への
嫉
(
ねた
)
みも手伝って、やがて「川那子メジシンの裏面を
曝露
(
ばくろ
)
する」
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
さすがに、彼女がここの雑仕女から玉の
枢
(
とぼそ
)
へ入って、六条の義朝に愛されていた盛りには、
嫉
(
ねた
)
みそねみの陰口に暮していた院の
朋輩
(
ほうばい
)
たちも
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同じ時に生れたあの若様はお
幸福
(
しあわせ
)
で、あんなにお立派に育っていらっしゃるのに、私の息子は——、と思うと羨しいやら、
嫉
(
ねた
)
ましいやら——
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
七兵衛は憎さげに
顧
(
みかえ
)
った。冬子も
嫉
(
ねた
)
げに顧った。この四つの眼に睨まれたお葉は、相変らず落葉を枕にして、死んだ者のように
横
(
よこた
)
わっていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
恋は特別に悪魔に
嫉
(
ねた
)
まれます。悪魔はそのなかに
陥穽
(
かんせい
)
をつくります。そしてもはや二人の間に平和や明るい喜びはなくなってしまうものです。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
母親と
乙女
(
おとめ
)
との心をそなえてひそかに恋に燃えている、
嫉
(
ねた
)
み深いまたやさしいキャスルウッド夫人は、彼女にとっては姉妹のように思われた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
斯
(
か
)
う
考
(
かんが
)
へると、
實
(
じつ
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
で/\
堪
(
たま
)
らぬ、
今
(
いま
)
や
吾等
(
われら
)
の
眼
(
まなこ
)
には、たゞ
希望
(
きぼう
)
の
光
(
ひかり
)
の
輝
(
かゞや
)
くのみで、
誰
(
たれ
)
か
人間
(
にんげん
)
の
幸福
(
さひはひ
)
を
嫉
(
ねた
)
む
惡魔
(
あくま
)
の
手
(
て
)
が
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
若手揃いだから、近い将来に彼等がするであろうところの仕事(Arbeiten)に関して、汝を
嫉
(
ねた
)
む(beneiden)というのである。
回顧と展望
(新字新仮名)
/
高木貞治
(著)
あらぬ思いに胸を焦がして、罪もない人を
嫉
(
ねた
)
んだり、また
悪
(
にく
)
しんだりしたことのあさましさを私はつくづく情なく思うた。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
子家鴨
(
こあひる
)
はあのきれいな
鳥達
(
とりたち
)
を
嫉
(
ねた
)
ましく
思
(
おも
)
ったのではありませんでしたけれども、
自分
(
じぶん
)
もあんなに
可愛
(
かわい
)
らしかったらなあとは、しきりに
考
(
かんが
)
えました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
セエラさんが
嫉
(
ねた
)
ましいのなら嫉ましいで、もう少し上品に、嫉ましさを表したらいいでしょう。さ、皆さんは何でも好きなことをしてお遊びなさい。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
殊に私の大好きなお召や
縮緬
(
ちりめん
)
を、世間
憚
(
はばか
)
らず、
恣
(
ほしいまま
)
に着飾ることの出来る女の境遇を、
嫉
(
ねた
)
ましく思うことさえあった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
意地悪く、
嫉
(
ねた
)
み深く、一
旦
(
たん
)
我物にした女だからというので、無理に引き
摺
(
ず
)
って連れて行く人の姿が見えたのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
嫉
(
ねた
)
ましさに、
掻
(
か
)
き
挘
(
むし
)
ってもやりたいようなお今に、しゃぶりついて泣きたいような気もしたのであったが、やはり自分を取り乱すことが出来なかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
世間ではそれを
嫉
(
ねた
)
んで色いろ蔭口をきくんだ、けれど幾ら蔭口をきいたって村松の出世をどうすることもできやしない、みんな無能な奴等の嫉みなんだ
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
実際生活を
暗指
(
あんじ
)
しつつ
恋愛情緒
(
れんあいじょうしょ
)
を具体的にいって、少しもみだらな感を
伴
(
ともな
)
わず、
嫉
(
ねた
)
ましい感をも伴わないのは、全体が
邪気
(
じゃき
)
なく
快
(
こころよ
)
いものだからであろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
嗚呼其時になつたら、お八重さんは
甚麽
(
どんな
)
に美しく見えるだらうと思ふと、其お八重の、今日目を輝かして熱心に語つた美しい顏が、
怎
(
どう
)
やら
嫉
(
ねた
)
ましくもなる。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それ己より一切の
嫉
(
ねた
)
みを
卻
(
しりぞ
)
くる神の善は、己が中に燃えつゝ、光を放ちてその
永遠
(
とこしへ
)
の美をあらはす 六四—六六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
大喝采
(
だいかっさい
)
を受けたことは歌にも歴史にも記してある通りであるが、またその後においてただちに彼の名誉を傷つけんとしたり、彼を
怨
(
うら
)
み
嫉
(
ねた
)
んだ者から見れば
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私は、女が、淡い、
無邪気
(
むじゃき
)
な恋をしたこともあったかと思ったが、私は、それを
嫉
(
ねた
)
ましいとは想えなかった。
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
しかし、こんな風に自分にも戯談が云へたらと、多少熊岡を
嫉
(
ねた
)
ましく思ひ、やけに草の葉をちぎつて投げた。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
忠太郎 親のねえ子は人一倍、赤の
他人
(
たにん
)
の親子を見ると、羨ましいやら
嫉
(
ねた
)
ましいやら。おさらばでござんす。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
また中にはガリレイの名声の高いのを
嫉
(
ねた
)
む人々の策謀などもそれに混って来て、遂には大僧正の命令で地動説を
称
(
とな
)
えてはならないということを警告されました。
ガリレオ・ガリレイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
稲富伊賀(
祐直
(
すけなほ
)
)と口論致され候よし、伊賀は砲術の上手につき、他家にも弟子の衆少からず、何かと評判よろしく候まま、少斎石見などは
嫉
(
ねた
)
きことに思はれ
糸女覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すぐ側に親類が並んでると、よけりゃよし、悪けりゃ悪しで、
嫉
(
ねた
)
んだりけなしたりし合って
煩
(
うる
)
さいものじゃ
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
沢山な馬鹿の人の居る中に立派な人が一人居ると、かえって邪魔になって仕方がないから、そういう立派な人が出ると他から必ず
嫉
(
ねた
)
まれて放り出されてしまう。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
恋人でなくても、相手の冷淡は
嫉
(
ねた
)
ましいものだ。僕は心にもない音信の
途絶
(
とだ
)
えを済まない事に思った。と云って、何もそれだからこの手紙を書き出したのではない。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「増屋の主人は、徳之助の正直をよく見拔いていらつしやる。奉公人達には
嫉
(
ねた
)
みもひがみもあるだらうが、主人の信用さへ變らなきや、少しも驚くことはない——」
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜分に人の家の火が笑語の声とともに、戸の
隙間
(
すきま
)
から
洩
(
も
)
れるのを見ると、
嫉
(
ねた
)
ましくさえなるものだ。無邪気な山の人々もこの光に引きつけられてくるのかも知らぬ。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自分が信じていた幸福が、全部
虚妄
(
きょもう
)
になったのに、猿沢佐介の方はいっこう不幸にもならず、楽しそうに暮している。それが漠然と憎らしく、また
嫉
(
ねた
)
ましいのでした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
他へかしずきしを
嫉
(
ねた
)
んで、あるまじき横道しかけましたを、はからずも主水之介、目にかけまして力となったが治右には目ざわり、あろうことかあるまいことか、上
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私は見ている
中
(
うち
)
に
嫉
(
ねた
)
ましい程羨ましくなったのを覚えている。家にはこれと同じ物が三十冊もあると言われて、全く茫然としてしまった。笈の重量は九貫目あると言う。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
利を好み人を
嫉
(
ねた
)
むこと、漢人と
胡人
(
こじん
)
といずれかはなはだしき? 色に
耽
(
ふけ
)
り財を
貪
(
むさぼ
)
ること、またいずれかはなはだしき?
表
(
うわ
)
べを
剥
(
は
)
ぎ去れば
畢竟
(
ひっきょう
)
なんらの違いはないはず。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
恨
(
うら
)
んでくれるな、
嫉
(
ねた
)
んで貰うまいと落ちて来る。だから大きな顔をして、不都合な事を立ちふるまうようになるでしょう。それでは御互が迷惑する。社会が
崩
(
くず
)
れて来る。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
此身が、段々なり
上
(
のぼ
)
ると、うま人までがおのずとやっこ心になり居って、いや
嫉
(
ねた
)
むの、そねむの。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
それを、浪路は、別の意味に——言わば、雪之丞の、
嫉
(
ねた
)
みの表現のように取ったに相違なかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
彼人々は余が
倶
(
とも
)
に
麦酒
(
ビイル
)
の杯をも挙げず、球突きの
棒
(
キユウ
)
をも取らぬを、かたくななる心と慾を制する力とに帰して、
且
(
かつ
)
は
嘲
(
あざけ
)
り且は
嫉
(
ねた
)
みたりけん。されどこは余を知らねばなり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
此の頃
俄
(
にはか
)
に其の影を見せぬは、必定
函根
(
はこね
)
の湯気
蒸
(
む
)
す所か、
大磯
(
おほいそ
)
の
濤音
(
なみおと
)
冴
(
さ
)
ゆる
辺
(
あたり
)
に
何某殿
(
なにがしどの
)
と不景気知らずの
冬籠
(
ふゆごも
)
り、
嫉
(
ねた
)
ましの御全盛やと思ひの外、
実
(
げ
)
に驚かるゝものは人心
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
たゞごとでないと思うと急に
嫉
(
ねた
)
ましいような心持が加わり、小歌のことか婢のことか、小歌のことらしくない、婢のことらしくない、それでも
何方
(
どっち
)
かのことだとして見ると
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
無盡藏
(
むじんざう
)
な
自然
(
しぜん
)
の
懷
(
ふところ
)
から
財貨
(
ざいくわ
)
が
百姓
(
ひやくしやう
)
の
手
(
て
)
に
必
(
かなら
)
ず一
度
(
ど
)
與
(
あた
)
へられる
秋
(
あき
)
の
季節
(
きせつ
)
に
成
(
な
)
れば、
其
(
そ
)
の
財貨
(
ざいくわ
)
を
保
(
たも
)
つた
田
(
た
)
や
畑
(
はたけ
)
の
穗先
(
ほさき
)
が
之
(
これ
)
を
嫉
(
ねた
)
む一
部
(
ぶ
)
の
自然現象
(
しぜんげんしやう
)
に
對
(
たい
)
して
常
(
つね
)
に
戰慄
(
せんりつ
)
しつゝ
且
(
かつ
)
泣
(
な
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その自己解消の能力が大チャンにあって、自分にはないということ、それが許せないのだ。……私は、あきらかに大チャンを嫉妬していた。その幸福を
嫉
(
ねた
)
み、彼を憎んでいた。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
そこがそれ情慾に迷って、思う儘欲しいまゝに貪り、憎いの
可愛
(
かあい
)
いの、
嫉
(
ねた
)
みだの
猜
(
そね
)
みだの、
詐
(
いつわ
)
り
僻
(
ひが
)
みなどと
仇
(
あだ
)
ならぬ人を仇にして、末には我から我身を捨てるような事になり
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
牡丹の盛りには蝶蜂の戯るゝを憎しとも思はねど、海棠の咲き乱れたるには色ある
禽
(
とり
)
の近づくをだに
嫉
(
ねた
)
しとぞおもふ。まことに花の美しくあはれなる、これに越えたるはあらじ。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
“嫉”の解説
嫉 (しつ)(sa: īrṣyā、イールシヤー)は、仏教が教える煩悩のひとつ。
嫉み。自分だけの利益や世間の評判(名聞利養)を希求し続けると、人の栄達等を見聞きすると深い嫉妬を起こすようになる。そのような心の状態を嫉という。妬み深い人はこの心を増長しやすい。
説一切有部の五位七十五法のうち、小煩悩地法の一つ。唯識派の『大乗百法明門論』によれば随煩悩位に分類され、そのうち小随煩悩である。
(出典:Wikipedia)
嫉
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
“嫉”を含む語句
嫉妬
嫉妬深
嫉妬心
嫉妬家
嫉視
媢嫉
大嫉妬
嫉妬焼
嫉悪
嫉妬男
嫉妬喧嘩
嫉刀
嫉刃
嫉妒
嫉刄
憎嫉
怨嫉
嬌嫉
憤嫉
嫉転
...