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大蛇
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おろち
ふりがな文庫
“
大蛇
(
おろち
)” の例文
「疑いぶかいなあ。いないっていってるのに。——ぼやぼやしてると、虎か
大蛇
(
おろち
)
の
餌食
(
えじき
)
にされちまうぜ。はやくお帰りよ、おじさん」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は
大蛇
(
おろち
)
のように息もつかずに飲んだ。そばに観ているお花は、だんだんに蒼ざめてゆく彼女の顔色に少しく不安を
懐
(
いだ
)
いて来た。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何故息を
吐
(
つ
)
いたかといふと、こんな式位で噂に聞いた
大蛇
(
おろち
)
の祟りが無事に
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けられるものか、
何
(
ど
)
うか疑はしかつたからである。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
甚兵衛もそれには
困
(
こま
)
りました。なにしろ
相手
(
あいて
)
は
大蛇
(
おろち
)
ですもの、へたなことをやれば、こちらが
一呑
(
ひとの
)
みにされてしまうばかりです。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
木の上に
住
(
す
)
んでいた
大蛇
(
おろち
)
が、
夜中
(
よなか
)
に、りょうしをのもうと
思
(
おも
)
って出て
来
(
き
)
たのを、
賢
(
かしこ
)
い
犬
(
いぬ
)
が
見
(
み
)
つけて、
主人
(
しゅじん
)
を
起
(
お
)
こして
助
(
たす
)
けようとしたのです。
忠義な犬
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
しかも、その壁に押しつけられたところは、
大蛇
(
おろち
)
が兎を捕えたように、可憐の獲物を抱きすくめて、放すまじと、それにわだかまっている。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「おそらくご存知ではございますまい、江戸は両国の女太夫、
大蛇
(
おろち
)
使いの組紐のお仙、宗三郎様の後を追い、
御岳
(
おんたけ
)
へ来たものでございます」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
見たこともない
氷柱
(
つらら
)
の
簾
(
すだれ
)
が
檐
(
のき
)
に下がっており、銀の
大蛇
(
おろち
)
のように朝の光線に輝いているのが、想像もしなかった偉観であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と
梟
(
ふくろ
)
のような声を発した。
面
(
つら
)
赭黒
(
あかぐろ
)
く、
牙
(
きば
)
白く、両の頬に
胡桃
(
くるみ
)
を
噛
(
か
)
み
破
(
わ
)
り、
眼
(
まなこ
)
は
大蛇
(
おろち
)
の穴のごとく、額の幅約一尺にして、眉は
栄螺
(
さざえ
)
を並べたよう。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ところを尊が救うて妻とした「その跡で稲田
大蛇
(
おろち
)
を丸で呑み」さて産み出した子孫だから世々蛇を族霊としたはずである。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この海をわたるときユリは
大蛇
(
おろち
)
よ、こわいでしょう。太ったゆっくりした大蛇を思うと、凄味がなくて笑えるばかりね。
獄中への手紙:12 一九四五年(昭和二十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ふり仰ぐと、乏しい灯の中に、断たれた綱はダラリと下がって
大蛇
(
おろち
)
のように土間を這い、与三郎がそれを引摺って片付けようとしているのでした。
銭形平次捕物控:213 一と目千両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
高志
(
こし
)
の
八俣
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
の話も火山からふき出す
熔岩流
(
ようがんりゅう
)
の光景を連想させるものである。「年ごとに来て
喫
(
く
)
うなる」というのは、噴火の
間歇性
(
かんけつせい
)
を暗示する。
神話と地球物理学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
思いをとげたい一心を欺かれた
怨
(
うら
)
みから、清姫というようよう十四になった小娘が生きながら魔性の
大蛇
(
おろち
)
になって、この山へ男のあとを追って来たのだ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
いまは、ささやかなお宮ですが、その昔は非常に大きい神社だったそうで、なんだか、
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
の話に似ているようなところもあるではございませんか。
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
むきだしの痩せた身体を、いっぱいに埋めつくしていた、
般若
(
はんにゃ
)
と
大蛇
(
おろち
)
の彫青に、見おぼえがある。四十年配だ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
勅
(
みことのり
)
のままに奉ると申しければこのおとめを
湯津
(
ゆづ
)
のつま
櫛
(
くし
)
に取りなし、みずらにさし
八醞
(
やみおり
)
の酒を八つの
槽
(
ふね
)
にもりて待ちたもうに、はたしてかの
大蛇
(
おろち
)
来たれり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
すると意外にも、ここにいる、
櫛名田姫
(
くしなだひめ
)
と云う一人娘を、
高志
(
こし
)
の
大蛇
(
おろち
)
の
犠
(
いけにえ
)
にしなければ、部落全体が
一月
(
ひとつき
)
の内に、死に絶えるであろうと云う
託宣
(
たくせん
)
があった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もとは八人の
娘
(
むすめ
)
がおりましたのでございますが、その娘たちを、
八俣
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
と申します
怖
(
おそ
)
ろしい大じゃが、毎年出てきて、一人ずつ食べて行ってしまいまして
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
森の中の木々に
大濤
(
おおなみ
)
の渦を捲いて、ガサガサひどい音をさせる、遠くから見ると、
大蛇
(
おろち
)
が
爬
(
は
)
っているのかとおもう、かくて青々と心まで澄んだ水の傍まで来ては
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
維新史研究家だつた勝山孫弥といふ人の出してゐた「海国少年」といふ雑誌の短歌欄に投稿したもので「出雲なる
簸
(
ひ
)
の川上はそのむかし
八頭
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
住みけるところ」
老境なるかな
(新字旧仮名)
/
吉井勇
(著)
と、早速老人を洞窟へ案内して、食べ残しの蝮蛇の頭五つに、毒除けの
大蛇
(
おろち
)
の血を塗って与えると
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
これなるは、
安房
(
あわ
)
の国は
鋸
(
のこぎり
)
山に年ひさしく棲みなして作物を害し人畜をおびやかしたる
大蛇
(
おろち
)
。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鳥海
(
ちようかい
)
又
(
また
)
は
阿蘇
(
あそ
)
の
噴火
(
ふんか
)
に
大蛇
(
おろち
)
が
屡
(
しば/\
)
現
(
あらは
)
れるのも、
迷信
(
めいしん
)
から
起
(
おこ
)
つた
幻影
(
げんえい
)
に
外
(
ほか
)
ならないのである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
刈るも物うき雜草のしげみをたどりて裏手にめぐれば幾抱への松か枝
大蛇
(
おろち
)
の中にのぞめる如くうねりて、下枝はぬるゝ古池のふかさいくばくぞ、むかしは東屋のたてりし處とて
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
山百合のマルタゴン、
何
(
なん
)
百となく頭を
上
(
あ
)
げて、強い
薫
(
かをり
)
を放つ
怪物
(
くわいぶつ
)
、
淺藍色
(
うすあゐいろ
)
の
多頭
(
たとう
)
の
大蛇
(
おろち
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
素戔嗚の尊が稲田姫を
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
から救つた話はどこの国にもありさうな伝説である。
大へび小へび
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
田地が銅毒に侵されてからの一家の零落、肉身の離散を老人や婦人が田舎の飾なき言葉で語る。翁は例の
大蛇
(
おろち
)
の如き眼球を
瞋
(
いか
)
らして、『畜生野郎。泥棒野郎』と、
破鐘
(
われがね
)
の如くに絶叫した。
大野人
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『主ツて、お前、太い、太い、四斗樽のやうな
大蛇
(
おろち
)
サ……』
花束
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
八俣
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
そして、後に疑いを残さぬように、朽木を流れの中へ突き落すと、パッと白い水煙をあげて、その丸木が
大蛇
(
おろち
)
のように浮かんでゆく。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大蛇
(
おろち
)
の怪異という
角書
(
つのがき
)
をつけて「児雷也豪傑
譚
(
ものがたり
)
」という草双紙を芝神明前の
和泉
(
いずみ
)
屋から出すと、これが果して大当りに当った。
自来也の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大蛇
(
おろち
)
は人形を見ると、それを生きた人間と思ったのでしょう、いきなり大きな
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて、
恐
(
おそ
)
ろしい
勢
(
いきおい
)
で
寄
(
よ
)
ってきました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
胆吹の山には昔から、
大蛇
(
おろち
)
がすんでいやはるさかい、毒気に触れるとどもならんによって、この大根おろしよばれると毒下しになりまんがな。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
よくも、悪くも、背中に
大蛇
(
おろち
)
の
刺青
(
ほりもの
)
があって、白木屋で万引という題を出すと、同氏御裏方、御後室、いずれも鴨川家集の読人だから堪らない。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
少くとも左様やって呼吸を封じて、突立っている瞬間だけは、人間を変じて木石とも為し、又、鼠とも
大蛇
(
おろち
)
とも蛛蜘とも為ることが出来るのです。
赤格子九郎右衛門
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
棲家
(
すみか
)
の無くなつた
大蛇
(
おろち
)
は、自然人間の胸に巣を組まねばならなくなつた。それからといふもの、和江村には
従来
(
これまで
)
無かつた精神病者がどん/\出来出した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それが
主人
(
しゅじん
)
に
分
(
わ
)
からなくって、かわいそうに
殺
(
ころ
)
されてしまいましたが、
主人
(
しゅじん
)
のためを
思
(
おも
)
う
一念
(
いちねん
)
が
首
(
くび
)
に
残
(
のこ
)
って、
飛
(
と
)
んでいって、
大蛇
(
おろち
)
をかみ
殺
(
ころ
)
してしまったのです。
忠義な犬
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
物の本にある狐狸の業か、それとも、
獺
(
かわうそ
)
か
大蛇
(
おろち
)
の怪か、いずれにしても、
正面
(
まとも
)
の人間とは思われません。
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
北欧の
大蛇
(
おろち
)
も、東方南方の大蛇と性質同じく罪悪の主、隠財の守護にして、人が好物を獲るを遮る。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この少女はわが子なり
奇稲田姫
(
くしいなだひめ
)
という。さきに
八箇
(
やたり
)
の少女あり年ごとに
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
のために呑まれて今このおとめまた呑まれんとすと申しければ、尊われにくれんやと
宣
(
のたま
)
う。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「その
高志
(
こし
)
の
大蛇
(
おろち
)
と云うのは、一体どんな怪物なのです。」「人の
噂
(
うわさ
)
を聞きますと、
頭
(
かしら
)
と尾とが八つある、八つの谷にも
亘
(
わたる
)
るくらい、大きな
蛇
(
くちなわ
)
だとか申す事でございます。」
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
痩せさらばえた身体の全面に、
彫青
(
いれずみ
)
をほどこしている。胴巻と褌一つになってしまったのに、まるで青黒いシャツでも着ているように見えた。そして、その彫青は
般若
(
はんにゃ
)
と
大蛇
(
おろち
)
。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
ハワイ
島
(
とう
)
の
火山
(
かざん
)
キラウエアからは
女神
(
めがみ
)
ペレーの
涙
(
なみだ
)
や
毛髮
(
もうはつ
)
が
採集
(
さいしゆう
)
せられ、
鳥海山
(
ちようかいさん
)
は
石
(
いし
)
の
矢尻
(
やじり
)
を
噴出
(
ふんしゆつ
)
したといはれてゐる。
神話
(
しんわ
)
にある
八股
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
の
如
(
ごと
)
きも
亦
(
また
)
噴火
(
ふんか
)
に
關係
(
かんけい
)
あるものかも
知
(
し
)
れぬ。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
命は、それを聞いて、じっと待ちかまえていらっしゃいますと、まもなく、二人が言ったように、大きな大きな
八俣
(
やまた
)
の
大蛇
(
おろち
)
が、大きなまっかな目をぎらぎら光らして、のそのそと出て来ました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
ところが人形には、
薄
(
うす
)
い
着物
(
きもの
)
の下に
釘
(
くぎ
)
がいっぱい、
尖
(
とが
)
った
先
(
さき
)
を外に
向
(
む
)
けてつまっているのです。いくら
大蛇
(
おろち
)
でもたまりません。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
お杉は無言で蝋燭を
翳
(
かざ
)
すと、深い岩穴の中腹かとも思われる所に、さながら
大蛇
(
おろち
)
の眼の如き
金色
(
こんじき
)
爛々の光を放つものが見えた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
火を
噴
(
ふ
)
く山から天に舞い上る
大蛇
(
おろち
)
のような煙。高い山の雪の日に輝く銀の塔を磨いたような色。浅緑の深い色の空気。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのおそろしい
剛力
(
ごうりき
)
に、空井戸の車はわれて、すさまじく飛び、ふとい
棕梠縄
(
しゅろなわ
)
は
大蛇
(
おろち
)
のごとく
蜿
(
うね
)
って血へどを
吐
(
は
)
いた影武者のからだにからみついた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尾
(
を
)
と
頭
(
あたま
)
を
以
(
も
)
つて
撃
(
う
)
つた
炎
(
ほのほ
)
の
大蛇
(
おろち
)
は、
黒蛇
(
くろへび
)
に
變
(
へん
)
じて
剩
(
あまつさ
)
へ
胴中
(
どうなか
)
を
蜿
(
うね
)
らして
家々
(
いへ/\
)
を
卷
(
ま
)
きはじめたのである。それから
更
(
さら
)
に
燃
(
も
)
え
續
(
つゞ
)
け、
焚
(
や
)
け
擴
(
ひろ
)
がりつゝ
舐
(
な
)
め
近
(
ちか
)
づく。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“大蛇”の意味
《名詞》
大 蛇(だいじゃ, おろち)
(だいじゃ) 大きい蛇。
(おろち) 非常に大きな蛇。
(出典:Wiktionary)
大
常用漢字
小1
部首:⼤
3画
蛇
常用漢字
中学
部首:⾍
11画
“大蛇”で始まる語句
大蛇退治
大蛇灘
大蛇丸
大蛇位
大蛇目
大蛇対治
大蛇嶽闇右衛門