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塞
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ふさが
ふりがな文庫
“
塞
(
ふさが
)” の例文
うど——ん、という声を続けるところで急に
咽喉
(
のど
)
が
塞
(
ふさが
)
ってしまったらしいから、せっかくの
余韻
(
よいん
)
が
圧殺
(
おしころ
)
されたような具合であります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夢徳寺
(
むとくじ
)
から
弥勒菩薩
(
みろくぼさつ
)
の金像を背負って出で来た貫一の行手に、またもや縞馬姿の刑事が立ち
塞
(
ふさが
)
ったのには、さすがの貫一もぞっとした。
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
魑魅魍魎
(
ちみもうりょう
)
隊をなして、前途に
塞
(
ふさが
)
るとも覚しきに、
慾
(
よく
)
にも一歩を移し得で、あわれ
立竦
(
たちすくみ
)
になりける時、二点の蛍光
此方
(
こなた
)
を見向き、一喝して
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて寺の門の空には、
這
(
は
)
い
塞
(
ふさが
)
った雲の間に、
疎
(
まばら
)
な星影がちらつき出した。けれども甚太夫は塀に身を寄せて、
執念
(
しゅうね
)
く兵衛を待ち続けた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まばゆく電燈の
点
(
つ
)
いた二等室の食堂に集って、皆から
離別
(
わかれ
)
を惜まれて見ると、遠い前途の思いが旅慣れない岸本の胸に
塞
(
ふさが
)
った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
見よわれらの都のその
周圍
(
まはり
)
いかばかり廣きやを、見よわれらの席の
塞
(
ふさが
)
りて、この後こゝに待たるゝ民いかばかり數少きやを 一三〇—一三二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その本堂を外から見ると四方形で中は全く
塞
(
ふさが
)
って居るように見えるですが、中には空間があって中庭から光線を導くようになって居るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
... さすがの僕もその時ばかりははっと息の穴が
塞
(
ふさが
)
ったかと思ったよ」「もう御やめになさいよ。
気味
(
きび
)
の悪るい」と細君しきりに
怖
(
こわ
)
がっている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おかみさんから立退きを迫られて、宿さがしをしてみたが、周旋屋の紹介状を持って尋ねた先では、どの家でも既に
塞
(
ふさが
)
ったようなことを云った。
早春
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「よし、我は兄に代って彼らを赦すであろう。」と反絵はいって遣戸の方へ出ようとすると、反耶は彼の前へ
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさが
)
った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
先生の情的方面のことは多くこんな調子であった、こういうことを思いつづけると今でも胸の
塞
(
ふさが
)
るような心持になる。
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
払ひ退けようとすればするほど、眼の前に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさが
)
る幻影を、今度は、ぢつと睨み据ゑた。そして、心の中で叫んだ。
花問答
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
然
(
しか
)
るところ、もう八方
塞
(
ふさが
)
つて
遣繰
(
やりくり
)
は付きませず、いよいよ主人には知れますので、
苦紛
(
くるしまぎ
)
れに相場に手を出したのが
怪我
(
けが
)
の元で、ちよろりと取られますと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
このみち今は草木に
塞
(
ふさが
)
れてもとめがたしといへり。
絶頂
(
ぜつてう
)
にも石に
刻
(
こく
)
して
苗場大権現
(
なへばだいごんげん
)
とあり、案内者は此石人作にあらず、天然の物といへり。俗伝なるべし。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
金と引換ならまだしも、
無償
(
ただ
)
で、おれが金をかけて買つたものを取られてしまふのだ。彼は、
息
(
いき
)
が
塞
(
ふさが
)
りかけたと感じた。そして、すこし、あわてたと思つた。
四人
(新字旧仮名)
/
芥川多加志
(著)
鳶頭の辰藏は、吊臺の上に掛けた
油單
(
ゆたん
)
を引つ張つて、一生懸命、千兩箱を隱すと、番頭の源助はその前に立ち
塞
(
ふさが
)
つて、精一杯外から見通されるのを防ぎました。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そんなものが行く手に立ち
塞
(
ふさが
)
って、六人を待ちかまえていることに、まるっきり気をつかっていなかった。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ああ是れ皆此の身、此の横笛の
爲
(
な
)
せし
業
(
わざ
)
、
刃
(
やいば
)
こそ當てね、
可惜
(
あたら
)
武士を手に掛けしも同じ事。——思へば思ふほど、
乙女心
(
をとめごゝろ
)
の
胸
(
むね
)
塞
(
ふさが
)
りて
泣
(
な
)
くより外にせん
術
(
すべ
)
もなし。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
県道筋に沿うたまばらな人家には点々と灯がみえ始めて、もう
足許
(
あしもと
)
も暗かった。野づら一めんを
轟轟
(
ごうごう
)
と
唸
(
うな
)
っている風をまともに浴びると、
呼吸
(
いき
)
が
塞
(
ふさが
)
りそうだった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
入
(
いれ
)
利足
(
りそく
)
は
何程
(
なにほど
)
にても出し申さんと云へば彦兵衞も氣の毒に思ひ我等も問屋の方
塞
(
ふさが
)
り
不都合
(
ふつがふ
)
なれども
此譯
(
このわけ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
吹く風は荒れ
狂
(
くる
)
い、息が
塞
(
ふさが
)
りそうであった。菱波立っている水の上には、大きい星が出ていた。河へ降りてゆく
凸凹
(
でこぼこ
)
の石道には、両側の雑草が
叩
(
たた
)
きつけられている。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
且つ眼も小虫の為めに
塞
(
ふさが
)
り、十分に見る事能わざるを以て、小虫の此群集の内を脱せんとして、疾行して諸方に歩を転ずるも、其小虫の群集の内を脱する事能わず。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
こう独り言をいうと、急に胸が
塞
(
ふさが
)
って、熱い涙がぱらぱらと湧いた。太吉は心のうちでこう叫んだ。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と
慄声
(
ふるえごえ
)
で申しましたが、
嬉涙
(
うれしなみだ
)
に声
塞
(
ふさが
)
り
後
(
あと
)
は物をも云われず、さめ/″\とし
襦袢
(
じゅばん
)
の袖で涙を拭いて居ります。想えば思わるゝで、重二郎も心嬉しく、せわ/\しながら。
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「おれ様や! おやまア、こりゃ何ちゅう煙たいこっちゃいの、
咽喉
(
のど
)
ア
塞
(
ふさが
)
って了うがいの。」
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
それが途方もない塊のような泪で、喉がいっぺんに
塞
(
ふさが
)
って、身体も折れ崩れるようであった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「よろしゅうございます。じゃ、こちらの部屋をお貸しいたしましょう」と
更
(
あらた
)
めて決心でもした様子でそれと背中合せの、さっき
塞
(
ふさが
)
っているといった奥の河沿いの部屋へ連れて行った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「まあ誰ぞいの」と機を織っていた女が
甲走
(
かんばし
)
った声を立てる。藁の男が入口に立ち
塞
(
ふさが
)
って、自分を見て笑いながら、じりじりとあとしざりをして、背中の藁を中へ押しこめているのである。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
一夜の暴風雪に家々の軒のまったく
塞
(
ふさが
)
った
様
(
さま
)
も見た。広く寒い港内にはどこからともなく流氷が集ってきて、何日も何日も、船も動かず波も立たぬ日があった。私は生れて初めて酒を飲んだ。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
甲板
(
かんぱん
)
に出ても、これまで
群青
(
ぐんじょう
)
に、
輝
(
かがや
)
いていた
穏
(
おだ
)
やかな海が、いまは暗緑色に
膨
(
ふく
)
れあがり、いちめんの白波が
奔馬
(
ほんば
)
の
霞
(
かすみ
)
のように、
飛沫
(
しぶき
)
をあげ、荒れ
狂
(
くる
)
うのをみるのは、なにか、胸
塞
(
ふさが
)
る思いでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
事あれば主人の馬前に立ち
塞
(
ふさが
)
って身命を
擲
(
なげう
)
って戦い、平時には主人保護の下にわずかの田畑を作って、
五穀成就
(
ごこくじょうじゅ
)
を楽しんで、徹頭徹尾利害を共同にしていたから、たとい微々たる小名であっても
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
われは
大統領
(
ドオジエ
)
の
館
(
たち
)
の
輪奐
(
りんくわん
)
の美を
討
(
たづ
)
ねて、その華麗を極めたる
空
(
むな
)
しき殿堂を
經𢌞
(
へめぐ
)
り、おそろしき
活
(
いき
)
地獄の圖ある
鞠問所
(
きくもんじよ
)
を觀き。われは彼四面皆
塞
(
ふさが
)
りたる橋の、小舟通ふ溝渠の上に架せられたるを渡りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「八
方
(
ぽう
)
塞
(
ふさが
)
りだね」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そこに立ってただ一人
視
(
なが
)
めていた婆さんがあった、その顔を見ると、
塞
(
ふさが
)
ったようになった細い目で、おや! といった。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余の車は両君の間に介在して操縦すでに自由ならず、ただ前へ出られるばかりと思いたまえ、しかるに出られべき一方口が突然
塞
(
ふさが
)
ったと思いたまえ
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
このみち今は草木に
塞
(
ふさが
)
れてもとめがたしといへり。
絶頂
(
ぜつてう
)
にも石に
刻
(
こく
)
して
苗場大権現
(
なへばだいごんげん
)
とあり、案内者は此石人作にあらず、天然の物といへり。俗伝なるべし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
何故、其
口唇
(
くちびる
)
は言ひたいことも言はないで、堅く
閉
(
と
)
ぢ
塞
(
ふさが
)
つて、
恐怖
(
おそれ
)
と
苦痛
(
くるしみ
)
とで慄へて居るのであらう。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
偖彦三郎は橋本町一丁目家主八右衞門と
尋
(
たづね
)
しに
早速
(
さつそく
)
知
(
し
)
れければ八右衞門の家に行き
對面
(
たいめん
)
致せしに八右衞門は彦兵衞の
悴
(
せがれ
)
彦三郎と
聞
(
きゝ
)
胸
(
むね
)
塞
(
ふさが
)
り
姑
(
しばし
)
言葉も出ざりしが漸々に
首
(
かうべ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そうして、使部の膝から訶和郎の死体を抱きとると、入口に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさが
)
った反絵の胸へ押しつけた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「来年はお前の運勢はよかぞな、今年はお前もお父さんも八方
塞
(
ふさが
)
りだからね……」
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
道無きに
困
(
くるし
)
める折、左右には水深く、崖高く、前には
攀
(
よ
)
づべからざる石の
塞
(
ふさが
)
りたるを、
攀
(
よ
)
ぢて
半
(
なかば
)
に到りて進退
谷
(
きはま
)
りつる、その石もこれなりけん、と肩は
自
(
おのづ
)
と
聳
(
そび
)
えて、久く
留
(
とどま
)
るに
堪
(
た
)
へず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それが黒い髪の毛を帽の下からはみ出させて、火の消えたパイプを
啣
(
くは
)
へながら、戸口に立ち
塞
(
ふさが
)
つてゐる有様は、どう見ても泥酔した通行人が戸まどひでもしたらしく思はれるのであつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お町は其の様子を知って居りますから、
暮方
(
くれがた
)
になると段々胸が
塞
(
ふさが
)
りまして、はら/\致し、文治郎の側に附いて居りました。
四
(
よ
)
つを打つと只今の十時でございますから、
何所
(
どこ
)
でも
退
(
ひ
)
けます。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
にゆッと顔を出したドテラの男が、いきなり、彼の前へ立ち
塞
(
ふさが
)
つて
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
露にそぼちてか、
布衣
(
ほい
)
の袖重げに見え、足の
運
(
はこび
)
さながら醉へるが如し。
今更
(
いまさら
)
思ひ
決
(
さだ
)
めし一念を吹きかへす世に秋風はなけれども、積り積りし浮世の義理に迫られ、胸は涙に
塞
(
ふさが
)
りて、月の光も
朧
(
おぼろ
)
なり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
立ち
塞
(
ふさが
)
つたのは、言ふ迄もなく錢形の平次です。
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
糠袋を
頬張
(
ほおば
)
って、それが
咽喉
(
のど
)
に
詰
(
つま
)
って、息が
塞
(
ふさが
)
って死んだのだ。どうやら手が届いて息を吹いたが。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
既に余裕ある小説を説明した以上は余裕なき小説も大概其意味が分った
筈
(
はず
)
であるが。一言にして云うとセッパ詰った小説を云うのである。息の
塞
(
ふさが
)
る様な小説を云うのである。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
取る事出來ずと云ふを
旁
(
かたはら
)
より一人が往手の道に立ち
塞
(
ふさが
)
り
否
(
いや
)
なら否で
宜事
(
いゝこと
)
なり
突
(
つか
)
れる
咎
(
とが
)
は少しもなし何でも荷物を
擔
(
かつが
)
せて
貰
(
もら
)
はにや成らぬとゆすり半分
喧嘩
(
けんくわ
)
仕懸
(
しかけ
)
に傳吉は何とか此場を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
かの
水面
(
すゐめん
)
に
積
(
つも
)
りたる雪
下
(
した
)
より
解
(
とけ
)
て
凍
(
こほ
)
りたる雪の力も水にちかきは
弱
(
よわ
)
くなり、
流
(
ながれ
)
は雪に
塞
(
ふさが
)
れて
狭
(
せま
)
くなりたるゆゑ
水勢
(
すゐせい
)
ます/\
烈
(
はげ
)
しく、
陽気
(
やうき
)
を
得
(
え
)
て雪の
軟
(
やはらか
)
なる下を
潜
(
くゞ
)
り、
堤
(
つゝみ
)
のきるゝがごとく
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
塞
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“塞”を含む語句
閉塞
塞外
逼塞
立塞
塞翁
優婆塞
城塞
馬耳塞
山塞
息塞
馬塞
娑婆塞
韻塞
口塞
荊与棘塞路
方塞
柬埔塞
栓塞
堰塞
馬塞耳
...