“唾:つばき” の例文
“唾:つばき”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂3
吉川英治3
泉鏡花2
萩原朔太郎2
薄田泣菫2
“唾:つばき”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 経済 > 経済学・経済思想28.6%
歴史 > 伝記 > 日本8.3%
文学 > フランス文学 > 小説 物語3.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
單に私が無職であり、もしくは變人であるといふ理由をもつて、あはれな詩人を嘲辱し、私の背後うしろからつばきをかけた。
純情小曲集 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
体の生理状態ばかりでなく、さんざん、蹴られたり撲られたり、つばきされたりした頭も、いつもの彼の常軌ではないのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒吉は、又そこでも受付の時と同じように口のつばきが枯れてしまうのではないか、と思われるほど哀願しなければならなかった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「あてか、さよか、よろしい。」と、自称美術家のパトロン、M老人、つるりとつばきに筆のさき、薄墨で蚯蚓きゅういん流。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それでも彼は相不変あいかわらず悠々と手につばきなど吐きながら、さっきのよりさらに一嵩ひとかさ大きい巌石の側へ歩み寄った。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私は小児こどもの時だったから、つばきをつけて、こう引返すと、台なしによごすと云っていやがったっけ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何よりも本質的なる、詩的精神そのものが冒涜ぼうとくされ、一切の意味で「詩」という言葉が、不潔につばきかけられているのである。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「そんなに、人を嘲るもんじゃないよ。天につばきして、自分で自分の顔を、汚すことになるかも知れんけんな」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
六十に近い七兵衛老爺じじいが手につばきして奮然とつを見ては、若い者共も黙ってはられぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さういふと、ねえやは両手の内側につばきをつけ、足裏にも唾をつけて、太い柿の木の幹にかゝへつきました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「先刻から見て居ると、ひたひつばきを附けたり、足の親指を曲げたり、色々細工をして居るやうだが、行儀をよくするのも樂ぢやないね」
一時は、っとして、門につばきして去ろうとまで思ったが、武蔵は、そう解釈して、寝ころんでいた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊王賤覇なおなり、彼らのある者は遂に幕府を倒して、王政に復古せんと欲し、手につばきして動乱の風雲を飛ばさんと試みたるものすらありき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
と云ったは云ったが、流石さすがに老練なアナウンサーも、これから放送しようとする事項の重大性を考えて、そこでゴクリとつばきみこんだ。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この養子つばきはくごとに金を吐く、老人その金を国王に呈し、王女を養子にめあわさんと願う。
後向うしろむつばきして颯々さっさつ足早あしばやにかけ出したのは今でも覚えて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ことに彼は不幸なる弱者が無慈悲なる強者のために非道の圧制に苦しむを見る時は、憤然としておのれがおもてつばきせられたるがごとくに嚇怒する。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
『だが先刻せんこく確實たしか救助きゆうじよもとむる難破船なんぱせん信號しんがうえましたか。』とまゆつばきした。
三輪の万七のニヤリとする顔を見ると、ガラッ八はそっぽを向いてペッとつばきを吐きました。
どうでございましょう。これがき近所の車夫の看板から、今しがた煙草を吸って、酒粘さけねばりのつばきを吐いた火の着いていたやつじゃございますまいか。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことに彼は、不幸なる弱者が無慈悲なる強者のために無道の圧制に苦しむを見る時は、憤然としておのれがおもてつばきせられたるがごとくに嚇怒かくどする。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
口のなかは先刻さつきの働きでつばきがから/\に乾いてゐたので、少し苦しかつた。
「何をしなさるんだ。ひとの顔につばきをしかけるなんて、余りぢやごわせんか。」
自分につばきしたいような忌々いまいましさから、さも忌々しげな忍び泣きを洩らして大地へ伏していた。日輪へ対して顔を上げ得ないようにいつまでもそうしていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は首をふると、ちょうどまん中にいた趙司晨の顔の上につばきがはねかかった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかれども、いかなる勁敵けいてきたりとも、ごうも恐るるに足らざることなれば、これより手につばきして、唯物論者のとるところの無心論を退治してやりましょう。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
宮は男のつばき口移くちうつしからくものどうるほして、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
四百億円あれば、朝鮮、支那、満洲、手につばきして取るべしと云うのだ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから婆あさんは指をつばきで濡らして、蝋燭の心を切つた。
中には、ぺっと彼の顔に、つばきをしてののしるのもいた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、その機会を、手につばきして待っていることは知れている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ」と卯平うへいはいつてつばきをぐつとんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
目をこすつてゐる暇もなく、口にはつばきが湧くのです、
杉田さん、どうか老生を殴って下さい、と笑いながら頬を差出申候ところ、老画伯もさるもの、よし来た、と言い掌につばきして、ぐゎんと老生の左の頬を撃ちのめし、意気揚々と引上げ行き申候。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「私の故郷にですか。故郷には、夏になると楊梅が、秋になると柑子が熟しますよ。こんなことを話してるだけでも、口につばきが溜ろうという始末で……もしか自分でそれをちぎった日には……」
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
しきりにこの熱する つばきのごときものをのまんとす。
純情小曲集 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
「妾、今度のことで、妾の生活が全然破産したことを知ったのです。男性に向って吐いたつばきが、自分に飛び返って来たことを知ったのです。どうか、美奈さん。妾の懺悔ざんげを聴いて下さい。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこで槇君は、つばきをのみこんで、また続けました。
掃除当番 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
つばきを横ッ面へ吐ッ掛けてつかわしました
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
劣敗者の死屍しかばねは土足にかけられ、つばきせられても致方いたしかたがないように考えられているようであるが、しかし斯様かような人情の反覆の流行している現代は恥ずべき現代ではあるまいか。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「へへへへへ、華族で、金があれば、ばかでも嫁に行く、金がなけりゃどんなに慕ってもつばきもひッかけん、ね、これが当今いま姫御前ひめごぜです。へへへへ、浪子さんなンざそんな事はないですがね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
見せ物場の外へ出て、冷たい夕暮の空気に触れたので、己の腹の立つのが少し直つた。己はつばきを一つして、荒々しい声で辻馬車を呼んで、それに飛び乗つて内へ帰つた。そして直ぐに着物を脱いで床に這入つた。
「きたねえな。そこら中つばきだらけだ」
「フン、まだあるのか」と熊城は、つばきで濡れたたばことともに、吐き出すように云った。「もう角笛や鎖帷子かたびらは、先刻さっき人殺し鍛冶屋ヴェンヴェヌート・チェリニで終りかと思ったがね」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
つばきし はぎしりゆききする
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「おや。御免なさいましよ。大そうお早いじゃございませんか」くわえていた楊枝を急いで出して、つばきをバケツの中に吐いてこう云ったお玉の、少しのぼせたような笑顔が、末造の目にはこれまでになく美しく見えた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
特にその後に長く続いて人を馬鹿にしたようにごとごととぬるい速度で走り去る真黒な貨車を見ていると、老耄おいぼれた無能な醜い悪魔を見るような心地がして、私はいつもそれが通りすぎた線路の上にかっとつばきをした。
微笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この手紙に書いてある事は、どこからどこまで本当です。うそや、気休きやすめや、誇張は、一字もありません。もしそれを疑う人があるなら、私はその人をにくみます、軽蔑けいべつします、つばきを吐きかけます。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(葉ちゃんのつばきかな)
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
三人はつばきをした。
「元気のいい老人だったよ、どうも。酔うといつでも大肌おおはだぬぎになって、すわったままひとり角力ずもうを取って見せたものだったが、どうした癖か、唇を締めておいて、ぷっぷっとつばきを霧のように吹き出すのには閉口した」
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「こんな着物が着たさに淫売じごくをしているのだなあ」と思うとつばきを吐きかけてやりたい気になりながら、私は鳶衣とんびそでで和らかにお宮を抱くような格好をして顔をのぞいて、「おい、この下駄はだれの下駄?」と、男下駄を指さした。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
而も今度の出陣たるや、二三年来ひそかに秘策をめぐらしたのが図にあたって、豫期の如き風雲をはらみ、戦機が熟した結果であって、功名栄達、手につばきして取るべく、権力と恋愛とが眼前に待っているのであるから、公の得意やおもうべしである。
今日しも満天下の常識屋どものきもっ玉をデングリ返してくれんがために、突然の自殺を思いたったるそのついでに、古今無類の遺言書を発表して、これを読む奴と、書いた奴のドチラが馬鹿か、気違いか、真剣の勝負を決すべく、一筆見参仕るもの……吾と思わむ常識屋は、眉につばきしてで会い候え候え……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう思うと私は、カッとお宮の横着そうな面につばきを吐きかけて、横素頬よこずっぽうを三つ四つ張り飛ばして、そのまま思いきろうと咽喉のどまで出しかけた痰唾たんつばをぐっと押えてまたみ込み、いやいや今ここでお宮を怒らして喧嘩けんか別れにしてしまうとこれまでお宮にやっている手紙を取り戻すことが出来ない。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
よろしい! それから僕は卒業するや一年ばかり東京でマゴマゴしていたが、断然と北海道へ行ったその時の心持といったら無いね、何だかこう馬鹿野郎! というような心持がしてねエ、上野の停車場ステーションで汽車へ乗って、ピューッと汽笛が鳴って汽車が動きだすと僕は窓から頭を出して東京の方へ向いてつばきを吐きかけたもんだ。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お前たちは恥ずかしくないんですか。あの人がみんなやったんだと思わせたがったりしてさ! だれも見てる人がなかったとでもいうような顔をしてさ! 一生懸命になぐりつけた者は一人もいないようなふりをしてさ!……皆がなぐり合ってる最中に、一人でも腕組みをしてぼんやりしてる者があったとしたら、私はその顔につばきを吐きかけて、卑怯者、卑怯者、と言ってやったはずですよ……。