春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
五日の朝となっても西風は依然として烈しく、咫尺を弁ぜぬ濃霧なので、どうにも方法がないからまた滞在と極める。九時頃雨が止んだが晴れそうな様子はない。
東山時代における一縉紳の生活 (新字新仮名) / 原勝郎(著)
見る見るうちに、脚の迅い雲が、向うの谷からこの谷へ疾駆して来る。天候が変った。少し急ごう。いつの間にか我らも雲中の人になって、殆ど咫尺を弁ぜぬ濃霧だ。
霊訓 (新字新仮名) / ウィリアム・ステイントン・モーゼス(著)
今眼前咫尺に、この偉観に接した自分は、一種の魔力に魅せられてか、覚えずあっとしたまま、暫時言葉も出なかった。此処が東穂高の絶嶂、天狗岩とでも名づけよう。
即興詩人 (旧字旧仮名) / ハンス・クリスチャン・アンデルセン(著)
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う (新字新仮名) / 木村芥舟(著)
眼前咫尺を弁せず、日光を見ざること五日以上に至ることも珍しからず、従って寒気甚しく、寒暖計は水銀柱が萎縮して下部のガラス球の中にその姿を没してしまうという有様である。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦 (旧字旧仮名) / 押川春浪(著)
或時は寒流から押しよせて来る濃霧のために、眼前咫尺を弁じない事もあるが、今日のように、あの美しいタマルパイの姿をくっきり見せてくれる事もある。なるほど私は船長だ。パイロットだ!
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間) (新字新仮名) / 野中至(著)
「ああ、ああ、何たる幸福ではありましょう。咫尺の間に殿下の尊顔を拝しますることは、申そうに真実夢のようでありまする。このようなことはあまり御寛大にすぎると申上ぐべきでありましょう」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)