其事そのこと)” の例文
其間そのあひだかほあはせることがあつても、くちでは其事そのことんにもはない。そしてうちかへつてから葉書はがきす。チヨイト面白おもしろいものだよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
其事そのことこの虎髯ひげがおはなしもうすのが順當じゆんたうでせう。』と不意ふゐ室内しつない飛込とびこんでたのは、れい磊落らいらくなる虎髯大尉こぜんたいゐ本名ほんめい轟大尉とゞろきたいゐであつた。
やゝしばしありて雪子ゆきこいきしたきはめてはづかしげのひくこゑして、もう後生ごしやうねがひで御座ござりまする、其事そのことふてくださりますな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
申て見ればふたもなきわけ勘辨かんべんしていはずに居るが花なりどうか離縁状を出して下されと云に番頭久兵衞は空眠そらねぶりをして居たりしがいな其事そのことは前々より申通りおや亭主ていしゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其事そのこと彼事かのこと寂然じゃくねんと柱にもたれながら思ううち、まぶた自然とふさぐ時あり/\とお辰の姿、やれまてと手をのばしてすそとらえんとするを、果敢はかなや、幻の空に消えてのこるはうらみばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たきみづるにつけてもがたいのは其事そのことであつた、いや、冷汗ひやあせながれますて。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勿論もちろんこれ雜作ざふさことですが、れには別室べつしつ修繕しうぜんえうすると其事そのことです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「でも」とへんかほをするので、宗助そうすけ夫限それぎりけつして其事そのことさなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其事そのこと実なりや。又木村とはいかなるものぞ。汝それを家にかくし置きし事ありやと問ふ。は思掛けぬ事を承るものかな。執政の人々を傾け申さんにいかで大目付のなし得べき事に候はんや。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なに極楽ごくらくつていらつしやいましたが、近来このごろ極楽ごくらく疲弊ひへいましたから、勧化くわんげをおたのまれで、其事そのこと極楽ごくらくらしつたのでございませう。岩「極楽ごくらく勧化くわんげかえ、相変あひかはらず此方こつちてもおいそがしい。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おもふと、其事そのこと頭脳あたま惹入ひきいれられて、様々さま/″\空想くうさういてる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「いや、其事そのことですが……。」と、安行は市郎をみかえって
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さあ其事そのこと御座ござんすとて、ねふめたる懷中ふところまちがくすりくすりと嘩泣むづかるを、おゝと、ゆすぶつて言葉ことばえぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ其事そのこと! 貴方あなたはよくおぼえていらつしやいましたねえ。亞尼アンニー眞個ほんとうめうことをと、その時分じぶんすこしもこゝろめませんでしたが、のちにそれとおもあたりましたよ。
かけやうやく敵をうちて候と申立しかば大岡殿不審ふしんに思はれ其方敵の面體めんていかね見覺みおぼえ居たるや覺束おぼつかなしと有しに瀬川せがは其事そのことは上方のきやく三人半左衞門へ金四百兩あづけ候とて證文しようもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おのれじじいめ、えせ物知ものしりの恋の講釈、いとし女房をお辰めお辰めと呼捨よびすて片腹痛しとにらみながら、其事そのことの返辞はせず、昨日頼みおき胡粉ごふん出来て居るかと刷毛はけ諸共もろとも引𢪸ひきもぐように受取り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たのみにして今日けふまでもすごせしなりとひたけれどじようさまのこひこひにもあさふかさのあるべきならずれまだ其事そのこと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまくなつておな境遇きやうぐうに、なが月日つきひくらあひだには、何時いつ君等きみらまへに、其事そのこと表顯あらはれずにはをはるまい。
申し出すじきとも云難く然すれば御たがひの身にかゝはる事故何分なにぶんにも見遁して貰ふより外なし其手段しゆだんは金子なりと眞顏まがほに成て語りければ仁左衞門も其事そのことに至らば誠に身の大事なりと心に納め是非なく百兩工夫くふうして相渡しける故三吉は大によろここれまこといのちの親なりと押戴き其の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いよ/\まこと其事そのことあらばとおそろしき思案しあんをさへさだめて美尾みを影身かげみとつきごとまもりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちからあるにつよくおさへて、一兎角とかくまぎらはすことなり、をとこならでは甲斐かひのなきに、其事そのことあればといはず夜中よなかはず、やがて千葉ちばをば呼立よびたてゝ、そりかへるおさへさするに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)