にい)” の例文
にいさん、この金魚きんぎょは、ほんとうにつよ金魚きんぎょですこと。たった一つになっても、元気げんきよくあそんでいますのね。」と、いもうとがいいました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おれのおとうさんが少し出すには、お前のお父さんが澤山出す何倍の骨が折れたか知れないのだ。なる程お前のにいさんは博士ではない。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
にいさんはいつもむつかしいことをいうので、たいていぼくにはよくわからないのだが、この言葉ことば半分はんぶんぐらいはわかるようながした。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お前がいくら光るものをひねくったって、こっちは甲州筋で鳴らしたにいさんたち五人のお揃いだ、素直すなおに渡して鼻でも拭いて行きねえ
娘美代 (防毒マスクをつけた声で)にいさんのをちよつと借りたのよ。これをつけて、毒瓦斯の中へ飛び込んで行くんだわ。重いわよ。
きものは、そっと しておいてやってよ。にいさんたちが かもをころすのを、ぼく みちゃいられないよ。」と、いいました。
阿母さんは大原おほはら律師様りつしさまにお頼みしてにいさん達と同じやう何処どこかの御寺おてらへ遣つて、あたまを剃らせて結構な御経おきやうを習はせ度いと思ふの。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
木刀ぼくとうをもってたっているにいさんのあしもとに、おかあさんはきちんとすわって、あたまをたたみにすりつけんばかりにして、たのみました。
「さあ。事情次第だが。実はゆつくり君に相談して見様と思つてゐたんだが。うだらう、きみにいさんの会社の方にくちはあるまいか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まあにいさん、なにをするんです。そんなひどにあはせるなんて、われもひとも生きもんだ 、つてこともあるじやありませんか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「よくくおまえはなしでは、千きちとやらいうにいさんは、まる三ねん行方ゆくえれずになっていたとか。——それがまた、どうしてきゅうに。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あんなに詰めかけて来るとほかの者がひやひやするのですもの、巴里パリイにいさんもそれが案じられると云つてられるのですからね。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
学校がいやなら如何どうするつもりだと聞いたら、まアどうでせう、役者になるんだツてふんですよ。役者に。まア、どうでせう。にいさん。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
美「だからねにいさんは只可愛がりなすったのだよ、それで無くてあんなに可愛がる筈はありゃアしないね、知ってたから」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こいつ、見そこなやあがって、ざまあ見ろ。憚りながら江戸っ子だ。狐や狸に馬鹿にされるようなにいさんじゃあねえ」
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
北八きたはち心得こゝろえたるかほはすれども、さすがにどぎまぎしてはむとほつするところらず、おかみさんかへりにするよ。唯々はい/\。お邪魔じやまでしたとにいさんはうまいものなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忠太郎 (垣の内へ入り、かまどたてに往来から見えぬように位置し)ゆうべここの門口まで一緒に来た忠太郎という男の事を、にいさんは話さなかったか。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
『あんたのようによく物のわかった、親切な人はありゃしない。私は、あなたが私のにいさんのような気がする』
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ただ、にいさん、僕あ、君の庇護ひごに対して、それから、ねえさん、君の手厚い心尽こころづくしに対して、僕あお礼をいうよ
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
きみちやんや、かあさんがするからもういゝかげんにしておき、にいさんがはいれたさうだよ、よかつたねえ。』と、あとは自分自身じぶんじしんにいふやうに調子てうしおとして
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
その夜、おとっさんとおっかさんが大変まじめな顔をしてにいさんと何かこそこそ相談をしたようであった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かつ此麽こんなことをしたことはないのですが、にいさんの拉典語ラテンご文典ぶんてんに、『ねずみは——ねづみの——ねずみに—ねずみを——おゥねずちやん!』といてあつたのをおぼえてましたから
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
私はこの土地で生まれ、早く両親を失って、にいさんのおかげでそだち、ロンドンへまで学問にやってもらって、どうやら、一人前の医者になって帰ってきました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
つかれたるままにしまろびて足をひねりなどするに身動きにつれてぎしぎしと床のゆるぎたる心もとなき心地す。店の方には男の声にてにいさんは寐たりやと問う。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「おう、にいさんですか。」と、言いました。二人は、両方から抱き付くようにしてオイオイ泣きました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
レヴィウの幼い踊り子たちは、親しい男性を呼ぶ時、いかにも人なつこい調子で「おにいさん」と言う。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
両児ふたり嬉々ききとして、互いにもつれつ、からみつ、前になりあとになりて、室をで去りしが、やがて「万歳!」「にいさまあたしもよ」と叫ぶ声はるかに聞こえたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
にいさんの健ちゃんはびっくりした顔をして「だれかね。」と大きい声で返事をしました。すると、表の硝子戸をけて、見たこともない一人の男のひとが這入はいって来て
(新字新仮名) / 林芙美子(著)
平田さんが明日故郷くにへ行くッて、その前の晩ににい、に、に、西宮さんが平田さんを連れて来て下さッたことが……。小万さん、よく私に覚えていられるじゃアないかね。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
コレ、およしちゃん、このにいちゃんもねえちゃんも、おとうさんもおかあさんもないんですとさ。それを
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
耕一にいちやんも蓉子姉ちやんも、何か買つて来るんだよ。みんな手分けで買つて来ることに、昨夜ゆふべ、ちやんと決めたんだよ。ママ、知らないでしよ。ないしよなんだから。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
僕はM子さんの一家のことは何も知らないものの一人です。しかしいつか読んだ新聞記事によれば、この奥さんはM子さんやM子さんのにいさんをんだ人ではないはずです。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おいにいや、どうしてこんなとこへ来たんだいおかしいな、きつねつままれたんじゃあないの?」
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
翻えしみかえる限りあれも小春これも小春にいさまと呼ぶいもとの声までがあなたやとすこし甘たれたる小春の声と疑われ今は同伴の男をこちらからおいでおいでと新田足利勧請文にったあしかがかんじょうもん
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
大きい人たちは、つまりおにいさんたちなんですから、ってやればいいのに、エチエンヌの足にあわせてあるいてやればいいのにと思うでしょう。ところがそれは駄目だめなのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
伝三郎も兄と知って、にいやんと二十二の年に似合わぬ心細い声をあげて、眼に泪を浮べた。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
三人とも、三浦君を「にいちゃん」と呼んでいた。まず、今までは、そんな間柄なのだ。
律子と貞子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
にいさんは如何どうなさると尋ねると、真面目まじめに、「死に至るまで孝悌忠信とただ一言いちごんで、私は「ヘーイといった切りそのまゝになった事があるが、ず兄はソンナ人物で、又妙な処もある。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
家へもって帰って、おとうさんやねえさんやにいさんにも見せておくれ。そして、かわいそうな子供がいたら教えておくれ。おじさんはまたあした、同じところを同じ時刻じこくにあるくから……。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にいちやんも可愛そうで、ちかごろ俺、兄ちやんの顔見てるの、たまらねえんだ。
ぼたもち (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「ほらね、お母ちゃん。にいちゃんの顔、あんなに、泥んこだよ」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にいさん、さあ甘酒を飲んでおいで、おあしは要らないんだよ」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
にいさん、これでわたしだって元気があります」
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おわかれ申したかあ様と、にいねえ様お揃いで
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
にいさんは兄さんだけのことがあった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
にいさんひとつ頂戴ちやうだいよ」
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
にいさんは?」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
にいさん」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
ぼくも、にいさんからきいたので、まだ実験じっけんしてみないのだから、うまくできるか、どうかわからないのだ。ここに、っておいで。」
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)