)” の例文
あらはすと、くわくおほい、翡翠ひすゐとかいてね、おまへたち……たちぢやあ他樣ほかさま失禮しつれいだ……おまへなぞがしがるたまとおんなじだ。」
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「しかしそれは以前が元気過ぎたからでしょう? 初老になって丁度この頃の私達と同様なんですから、っとも心配ありませんや」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『好い月!』う富江が言つた。信吾は自ら嘲る樣な笑ひを浮べて、と空を仰いだが別に興を催した風もない。ハヽヽと輕く笑つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、ダーター、フアブラをらないか」と云ふと、「今日けふ不可いけない」と答へたが、すぐ横を向いて、隣りの男と話を始めた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これで先ず死人の身許みもとは判ったが、かれが何者に連れ出されて、どうして殺されたかということはっとも想像が付かなかった。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
実はネお前さんのお嫁の事についちゃアイと良人うちでも考えてる事があるんだから、これから先き母親さんがどんな事を言ッておよこしでも
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一時いちじに思い詰るのは尤もだが、気の晴れることはッともないんざますよ、まア正孝はん上んなましよ、彼処あすこに立ってる人は何
そして奥の間で「っと失礼します。」といって蒲団ふとんを米の横へ持って出て来てから、楕円形の提灯ちょうちんに火をけた。蝋燭ろうそくは四すんほどもあった。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
「第一、勿体もつたいないやね。こんな上等な土地を玩具おもちやにするなんて、全くよくないこつた! それにはつと広過ぎるよ。」
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
世人の唱ふる所、何が文明やら、何が野蠻やらとも分らぬぞ。予嘗て或人と議論せしこと有り、西洋は野蠻ぢやと云ひしかば、否な文明ぞと爭ふ。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
なんだか今夜は変なんだ。っとも落着おちつかない。後から絶えず追いかけられているような気持だ。前にもこんな気持を
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
殺風景も念入ねんいりの殺風景で、決して誉めた話でない。畢竟ひっきょう少年の時から種々様々の事情にわれてコンな事に成行き、生涯これで終るのでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こいつはっとも役に立たない車だと思い、上からがたがた揺ぶってみたが、ついにこの高貴な手押車は泌尿科の医師の眼にはとうとう触れなかった。
うちの中よりは戸外おもての方が未だ可いので、もうと歩いてゐる中にはをさまりますよ。ああ、此方こちらがお宅ですか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『あんな神様かみさま駄目だめだ……いくたのんだってつともきはしない……。』そんなことって挨拶あいさつにもないのです。それがまたよくこちらにつうじますので……。
「いや、つとも。」彼は反對に私が思ひ出を悉く尊重して呉れたと云つた。だが本當に彼は私がさほど氣にするにも當らぬことを氣にするのをおそれてゐた。
と叫んだのは、大袈裟おおげさだったので、真っ先に笑い出したのは、通称つうしょう源助町げんすけちょうの丹ちゃんこと鏡丹波だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
意思の弱い人のことを「彼奴も善い男だが、っとばかりエクート・シル・プルーだね」などという。
雨の日 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
食物たべものもとめてにくけたがよい。……(行きかけて藥瓶を見て)どくではない興奮劑きつけぐすりよ、さア一しょに、ヂュリエットのはかい、あそこでそち使つかはにゃならぬ。
『……鶴さん、っとも未練残さねえで、えれえ働きをしてね、人に笑われねえで下せえよ。』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
あいちやんは自分じぶんまた、三にん園丁えんていのやうに平伏ひれふさなければならないかうかは疑問ぎもんでしたが、かつ行列ぎやうれつ出逢であつた場合ばあひ、かうした規則きそくのあることをきませんでした
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
承知致さぬうちと敵の名前は申されぬ善惡共ぜんあくとも御承知下されたる言御挨拶あいさつの上御話申べしといふに重四郎成程御道理もつともの儀武士たる者は義を見てざるはゆうきなりと云詞をたうと拙者それがし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
踊子のようなのや——この近所の人達の内職にしてもとどうも様子が変だと思っていると、その女たちが、卓子テーブルと卓子のあいだの細い通路をすり抜けるようにして酒を配って歩く。
「え、何んで遊ぶよ。教へてくれよ、俺はつとは人並に遊んで見たいから。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
『いやにはあるいてるのだ。』と、アンドレイ、エヒミチは怖々おど/\する。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
長順 (夢中に老いたる侍の後を追ひゆきて)お侍、と待たれい。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
お茶を飲んで、素麪そうめんを食ったのはと怪しい——と考えた。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
殺すとはと受取憎いから色々考えて見ますと
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
もつと衣服きものいでわたるほどの大事おほごとなのではないが、本街道ほんかいだうには難儀なんぎぎて、なか/\うまなどが歩行あるかれるわけのものではないので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「警察へ自分の操行点を問合せに出頭するのかい? 坊ちゃんが笑っている。妙なことになって来た。これはっと天王寺行てんのうじゆきだね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とんと手前てまい商いのことは知りません、家来がやると申すので始めましたのだけれども、やすう売るのを咎めるのはおかしいように心得ます
先生今日けふ一日いちにち御勉強ですな。どうです、と御散歩になりませんか。今夜こんや寅毘沙とらびしやですぜ。演芸館で支那人ちやんの留学生が芝居をつてます。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その日は朝から急に涼風すずかぜが立つて、日が暮れるともう単衣ひとへものでは冷々ひやひやするくらゐでしたが、不思議なことにはその晩つともお客が無いんです。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「人が笑うわ、九つもなってるくせに一人で寝んなんて。」そして母はっと黙っていたが、「お前の頭はほんとうにええ格好や。」とつぶやいた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
徹夜よどほし三人で一斗五升飲んだといふ翌朝あくるあさでも、物言ひが舌蕩したたるく聞える許りで、挙動ものごしから歩き振りから、確然しつかりとしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ナニネ、先刻さっき我輩が明治年代の丹治と云ッたのが御気色みけしきに障ッたと云ッて、この通り顔色まで変えて御立腹だ。貴嬢あなた情夫いろにしちゃアと野暮天すぎるネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
何も解りもしないきみが、こすり附けたり噛みついたりしていても、それでっとも羞かしい気がしないのは、きみがらくなことをらくに愉しんでいるからなんだ。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「ああ、降る降る、面白い。かう云ふ日は寄鍋よせなべで飲むんだね。寄鍋を取つてもらはう、寄鍋が好い。それから珈琲カフヒイを一つこしらへてくれ、コニャックをと余計に入れて」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その筆法は常に婦人の気を引き立つるの勢いを催して、男子の方に筆のほこさきの向かわざりしはと不都合にして、これをたとえば、ここに高きものと低きものと二様ありて
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よくまァ御無事ごぶじで……ッともひいさまは往時むかしとおかわりがございませぬ。おなつかしうぞんじます……。
また、上役にびる番士一同が、それといっしょになって新参の喬之助を嘲笑するのも、自然であり、決して珍しいことではない。が、この元日の場合だけは、が過ぎたようだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
初めて私を見た人の務めでもなければ、私の性格をつとも知らない人の務めでもないことは無論である。そして私のハンカチをパンの代りに受け取らうとしなかつた女に就いてはどうか。
そして又と酒が廻つて来ると湯村の手を握つて
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
のぞいて見たいものぢや。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
銀杏返の方は、そんなでもなく、少し桃色がさして、顔もふっくりと、中肉……が小肥こぶとりして、と肩幅もあり、較べて背が低い。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お母さん、この頃は私立も官立も同じことです。っとも差異かわりありません。しかし二郎は官立の型にまらない頭ですからね」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
で、今迄言ったような訳だから、文学は男子一生の事業とするに足らぬとか云う人が出て来ても、っとも驚くことはない。
買つてくれとはれないやうにきず見出みいだして、をしことにはうもぢくににゆうがりますとつてにゆうなぞを見出みいださなくツちやアいかねえ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おれも気がかなかった。いや、それよりも……。(考える。)あんなおとなしい人が人殺しのお尋ね者とは、今までっとも気がかなかった。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし、直ぐ金剛石のことを思い出すと裏へ廻って行って、夕闇ゆうやみの迫った葉蘭はらんの傍へうずくまって、昼間描いておいた小さい円の上を指でっとおさえてみた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)