トップ
>
猶
>
なお
ふりがな文庫
“
猶
(
なお
)” の例文
その代り空の月の色は前よりも
猶
(
なお
)
白くなって、休みない往来の人通りの上には、もう気の早い
蝙蝠
(
こうもり
)
が二三匹ひらひら舞っていました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
十歳を越えて
猶
(
なお
)
、
夜中
(
やちゅう
)
一人で、
厠
(
かわや
)
に行く事の出来なかったのは、その時代に育てられた人の
児
(
こ
)
の、敢て私ばかりと云うではあるまい。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
現在の生活事情の中でも
猶
(
なお
)
音楽を忘られず、その希望で体も癒す努力をしているとすれば、やや本ものなのかもしれぬと思われます。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と、「逃げたら
猶
(
なお
)
悪い」と、心の奥に何かが力ある命令を発して彼を留まらせた。
動悸
(
どうき
)
が
早鐘
(
はやがね
)
の様に打って頭の上まで響いて行った。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
しかも巍の誠を尽し志を致す、其意と其
言
(
げん
)
と、忠孝
敦厚
(
とんこう
)
の人たるに
負
(
そむ
)
かず。数百歳の後、
猶
(
なお
)
読む者をして
愴然
(
そうぜん
)
として感ずるあらしむ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
『師匠。……すみません。これから、自分の愚鈍へも
鑢
(
やすり
)
をかけて、
猶
(
なお
)
、一生懸命にやりますから、どうか、もっと叱って下さいまし』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は云い知れぬ一種の愉快を感じて、
猶
(
なお
)
も雲の行方を睨んでいると、黒い悪魔の手は
漸次
(
しだい
)
に拡がって、今や重太郎の頭の上を過ぎた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
猶
(
なお
)
此の池の一部ミズゴケ叢生地に、姫石楠花一名日光石楠花なども発見せられたので、本年矢沢師範学校長と河野師範学校教頭と
女子霧ヶ峰登山記
(新字新仮名)
/
島木赤彦
(著)
「露国の名誉ある貴族たる閣下に、御遺失なされ候物品を返上致す機会を
得
(
え
)
候
(
そうろう
)
は、拙者の最も光栄とする所に
有之
(
これあり
)
候
(
そうろう
)
。
猶
(
なお
)
将来共
(
しょうらいとも
)
。」
襟
(新字新仮名)
/
オシップ・ディモフ
(著)
だが、何うにか抜けてひた走りに、一刻でも早くお新に、それからお俊に——そう思ってもう大丈夫と信じていても
猶
(
なお
)
走っていた。
新訂雲母阪
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
然
(
しか
)
も
猶
(
なお
)
これは
真直
(
まっすぐ
)
に真四角に
切
(
きっ
)
たもので、およそ
恁
(
かか
)
る
角
(
かく
)
の材木を得ようというには、
杣
(
そま
)
が八人五日あまりも懸らねばならぬと聞く。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつも時平の
腰巾着
(
こしぎんちゃく
)
を勤める
末社
(
まっしゃ
)
どもの顔ぶれを始め、
殿上人
(
てんじょうびと
)
や
上達部
(
かんだちめ
)
が
猶
(
なお
)
相当に
扈従
(
こしょう
)
していて、平中も
亦
(
また
)
その中に加わっていた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しばらくしてから、
姉
(
ねえ
)
さんと云った。梅子はその深い調子に驚ろかされて、改ためて代助の顔を見た。代助は同じ調子で
猶
(
なお
)
云った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
猶
(
なお
)
、新時代の先駆者たりし北村君に就いては、話したいと思うことは多くあるが、ここにはその短い生涯の
一瞥
(
いちべつ
)
にとどめておく。
北村透谷の短き一生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
薩軍やや元気を恢復したものの、
猶
(
なお
)
危倶の念が去らないので、村田の姿を見ると、「退却で御座いますか」と問うた者がある。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
根賀地が横手の
扉
(
ドア
)
をいちはやく開いて身体を車外にのり出すと
怪漢
(
かいかん
)
は
猶
(
なお
)
も二三発、撃ち出した。かまわずスピードを出そうとする運転手に
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして、「まさか……冗談でしょう」といいたげな彼の気持を、十分に感じた私は、
猶
(
なお
)
も眼をつぶった儘、二三度頭を振って
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「お梅さんどうかしたのですか」と
驚惶
(
あわただ
)
しく
訊
(
たず
)
ねた。梅子は
猶
(
なお
)
も
頭
(
かしら
)
を垂れたまま運ばす針を
凝視
(
みつめ
)
て黙っている。この時次の
室
(
ま
)
で
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
細君は
猶
(
なお
)
語り
続
(
つ
)
いだ。「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みたいなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
遠方からの手紙の遣り取りによって、二人の間が
猶
(
なお
)
一層接近するであろうことを予想しながら、野本氏は東京をあとにした。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『北越雪譜』の中の雪中の虫のところに「
金中
(
かねのなか
)
猶
(
なお
)
虫あり、
雪中
(
ゆきのなか
)
虫
無
(
なから
)
んや」というのがありますね」という話をしてくれた。
語呂の論理
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
足袋の
紐
(
ひも
)
を結び直してくれ、緩んだへこ帯を締直してくれ、そうして自分がめんどうがって出ようとするのを、
猶
(
なお
)
抑えて居って鼻をかんでくれた。
守の家
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
女姿の者は
唸
(
うな
)
り声をだしたが、それ以外には何も云わなかった。六郎は曲物が
斃
(
たお
)
れるだろうと思ったが、曲者は斃れないで
猶
(
なお
)
も逃げ走ろうとした。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この父子の
他
(
ほか
)
、俳優にして香以の雨露に浴したものには、
猶
(
なお
)
市川小団次、中村
鴻蔵
(
こうぞう
)
、市川米五郎、松本国五郎等がある。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
『
本朝世事談綺
(
ほんちょうせじだんぎ
)
』に「
合羽
(
かっぱ
)
は中古のもの也、上古は蓑を用ゆ、軍用には
猶
(
なお
)
蓑也、今蓑箱といふあり、蓑を
納
(
おさむ
)
る具也」。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
また「
高皇産霊神
(
たかみむすびのかみ
)
は
大物主神
(
おおものぬしのかみ
)
に向ひ、
汝若
(
いましも
)
し国つ神を
以
(
も
)
て妻とせば、
吾
(
われ
)
は
猶
(
なお
)
汝
疎
(
うと
)
き心
有
(
あ
)
りとおもはん」と仰せられた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それを今も
猶
(
なお
)
まことにして守るのは愚かしい。どうじゃな、古くからの村の定法、今は何んの役にも立たぬ事を、そなた、打破って見たらどうじゃな。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
一片の短文三度稿をかへて
而
(
しか
)
して世の評を仰がんとするも、
空
(
むな
)
しく紙筆のつひへに終らば、
猶
(
なお
)
天命と観ぜんのみ。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
日本第一の水道であったところのこの玉川上水は弥之助の少年時代は両岸から昼
猶
(
なお
)
暗いところの樹木がかぶさって居たり、危うげな橋が渡されて居たり
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
他人
(
ひと
)
の物は
己
(
おれ
)
の物と思って
他人
(
たにん
)
を欺くような人だから此の者を切るの突くのと仰しゃる
気遣
(
きづかい
)
は有るまいが、
猶
(
なお
)
念のため申す、
愈々
(
いよ/\
)
此の者をお許しなさるか
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
時に彼三十一歳、その臨終の
遺偈
(
いげ
)
は、まことにりっぱなものであります。「四大
元
(
もと
)
主なし。五
陰
(
おん
)
本来空。
首
(
こうべ
)
を
以
(
もっ
)
て白刃に臨めば、
猶
(
なお
)
し春風を
斬
(
き
)
るが如し」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
去
(
さ
)
れど目科は妻ある身に不似合なる不規則
千万
(
せんばん
)
の身持にて或時は朝
猶
(
なお
)
暗き内に家を
出
(
いず
)
るかと思えば或時は夜通し帰り
来
(
きた
)
らず又人の皆
寝鎮
(
ねしずま
)
りたる
後
(
のち
)
に
至
(
いた
)
り細君を
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
英人ヲ見ルコト
猶
(
なお
)
他国人ヲ待遇スルノ如クシテ、戦ニハ之ヲ敵トシ、太平ニハ之ヲ友トスベシト決意シタリ。
アメリカ独立宣言
(新字旧仮名)
/
トマス・ジェファーソン
(著)
談
(
だん
)
、
刻
(
こく
)
を移して、
予
(
よ
)
、
暇
(
いとま
)
を告げて去らんとすれば、先生
猶
(
なお
)
しばしと
引留
(
ひきとめ
)
られしが、やがて
玄関
(
げんかん
)
まで送り出られたるぞ、
豈
(
あに
)
知
(
し
)
らんや、これ
一生
(
いっしょう
)
の
永訣
(
えいけつ
)
ならんとは。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
「ははあ横浜だな」呟いて、
猶
(
なお
)
も身を忍ばせていると、川崎あたりへきたころ、自動車は海岸の方へはいった。道が悪いので車は大波に揉まれるように揺れる。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
嗚呼
(
ああ
)
。諸君の両親と同じ悲惨な生活を、この上にも
猶
(
なお
)
、三十年も四十年も続けて行かなければならぬのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
燃えそうでいて燃えず、消えかかっていて、
猶
(
なお
)
、くすぶっている。今度も、ツツイラの西部で酋長等の間に小競合があったばかりだから、大した事はなかろう。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それはここでも好いし、どこか
外
(
ほか
)
へ行ったら、
猶
(
なお
)
好いでしょう。あなたのおばさんが
喧
(
やかま
)
しそうですから。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
高く釣りたる棚の上には植木鉢を置きたるに、
猶
(
なお
)
表側の
見付
(
みつき
)
を見れば入口の
庇
(
ひさし
)
、戸袋、板目なぞも狭き
処
(
ところ
)
を皆それぞれに
意匠
(
いしょう
)
して
網代
(
あじろ
)
、船板、洒竹などを用ゐ云々
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
彼等は病毒に染つた屍体の中に巣喰つてゐる。彼等の胃袋は腐つたもので一杯になつてゐる。
猶
(
なお
)
、他に、糞をさがして、その不潔なものを御馳走にするものがある。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
御礼
御序
(
おついで
)
に
御頼
(
おたのみ
)
申候。
猶
(
なお
)
あなたよりも御祝之品に預り痛み入候。いづれ
是
(
これ
)
より御礼
可申上
(
もうしあぐべく
)
候。扇子
丈
(
だけ
)
あり
合
(
あわせ
)
を
呈
(
ていし
)
候。御入手
可被下
(
くださるべく
)
候。御出張之先之事、御案も候半。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
しかもかれにとっては
猶
(
なお
)
充分な飲酒をも
貪
(
むさぼ
)
ることのできない貧しさのために、かれはかれの内部に於て、それ自らの快楽をさぐりあてなければならなかったのである。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
風は少し衰えたようだけれど、
猶
(
なお
)
行人の袖を吹いたり店の看板を鳴らした。その度に、銀杏並木は葉を何枚かずつ振り落し、それは夜店の品物の上にはらはらと流れた。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
尾花に残る
日影
(
ひかげ
)
は消え、
蒼々
(
そうそう
)
と暮れ行く空に山々の影も没して了うた。余は
猶
(
なお
)
窓に凭って眺める。突然白いものが目の前に
閃
(
ひら
)
めく。はっと思って見れば、
老木
(
ろうぼく
)
の
梢
(
こずえ
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
槍ヶ岳は背後より、穂高山は足の方より、大天井岳は頭を圧すばかりに、
儼然
(
げんぜん
)
と
聳立
(
しょうりつ
)
して、
威嚇
(
いかく
)
をしている、
僅
(
わずか
)
にその一個を存するとも、
猶
(
なお
)
以
(
もっ
)
て弱きを圧伏するに足るのに
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
昼
猶
(
なお
)
闇
(
くら
)
き杉の並木、羊腸の小径は苔
滑
(
なめら
)
か、一夫関に当るや万夫も開くなし、天下に旅する剛毅の
武夫
(
もののふ
)
、大刀腰に足駄がけ、八里の岩ね踏み鳴す、
斯
(
か
)
くこそありしか往時の武夫
箱根の山
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
八十七歳の今日
猶
(
なお
)
日夜研究にいそしまれる老科学者牧野富太郎先生、われわれは四月十八日当地の植物採集会に臨まれた先生からいろいろのお話を聴く機会を得たのである。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
更ニ之ヲ約併シテ、二字或ハ一字ニ帰納シ、其漢音ニ
吻合
(
ふんごう
)
スルヲ以テ、洋音ヲ発シ、看者ノ之ヲ視ル、
猶
(
なお
)
原語ヲ視ル如クナラシム、其漸次ニ約併セルハ、簡捷ヲ
尚
(
とうと
)
ブ所以ナリ。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
午後四時が退庁時間である。それまでは随意にしたらよかろう。だが、その後は断じて構内にいることは許されない。もしその時になっても
猶
(
なお
)
たち去らぬようなら、やむを得ず公力を
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
ところが、それでもきかずに、
猶
(
なお
)
幾度か化物の折檻をこころみている中に、雄吉君はつい誤って、小石を硝子枠にぶつっけてガチャン! と、大きな硝子を一枚破ってしまったのです。
四月馬鹿
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
猶
常用漢字
中学
部首:⽝
12画
“猶”を含む語句
猶太人
猶予
猶太
猶豫
猶且
猶更
猶々
猶子
御猶予
猶與
今猶
御猶子
猶太殿堂
猶又
猶悲
執行猶予
猶大
猶太教
猶太語
猶近
...