黄金おうごん)” の例文
勘八は驚きあきれて、取蓄えてあった食物と獲物をそっくり提供すると、この連中はよろこんで、勘八に黄金おうごん二枚を与えて行きました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこには握りが黄金おうごんで出来ている長い杖をついている紳士もいます。レースの帽子をコロネット型の櫛で留めている婦人たちもいます。
あるいはまた名高い給孤独長者きゅうこどくちょうじゃ祇園精舎ぎおんしょうじゃを造るために祇陀童子ぎだどうじ園苑えんえんを買った時には黄金おうごんを地にいたと言うことだけである。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このしあわせなキスには、黄金おうごんが、心の黄金がありました。口に黄金、地に黄金、朝の空にも黄金! ほら、これが、わたしのお話ですよ
そしてこの水仙すいせんの花を、中国人は金盞銀台きんさんぎんだいと呼んでいる。すなわち銀白色の花の中に、黄金おうごんさかずきっているとの形容である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
猿田は月世界つきのせかい黄金おうごん目あてに是非この探険隊に加わりたくて、羽沢さんを殺したんですわ。そして何喰わぬ顔をして、参加を申し出たのよ。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「マア、非常に綺麗な腕環が入って居る」と、夜光珠ダイヤモンドや真珠のちりばめてある、一個の光輝燦爛こうきさんらんたる黄金おうごんの腕環を取出した。
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
何枚かの黄金おうごんにかえた右馬の頭は路用もできたから、七日には立ちたまえ、壺装束つぼしょうぞくも明日はとどけてくれるからといったが、生絹は泣いていった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「この三箱の黄金おうごんをかれにわたさずして、まんまと、武田伊那丸たけだいなまる龍巻たつまきの手よりうばい取ってごらんに入れますが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
極端に云えば、黄金おうごんの光りから愛その物が生れるとまで信ずる事のできる彼には、どうかしてお延の手前を取繕とりつくろわなければならないという不安があった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
銀のかごを国王から作ってもらい、その中に香木こうぼくくずで作った巣を入れ巣の中に黄金おうごんたまごを置いておきました。そして朝と晩とには必ず中をのぞいてみました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あ、あの仏像ぶつぞうですかい。地金じがね黄金おうごんですか、なんでできていますか。」と、隣村となりむら金持かねもちはきました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
サファイアをちりばめた黄金おうごんの手箱などから、日本のまがたま、中国の白玉しらたまの美しいさいくものなど、まるで、きらめく星にかこまれたようなちんれつ室でした。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
将軍家からの救いの手として、愚楽老人はその部下の甲賀者を使い、一夜のうちに埋ずめておいた黄金おうごん
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのかわり明瞭に実際に自分の言行を支配する力があれば、いかなる卑見ひけん黄金おうごんあたいを有するにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしはあなたを遠い島へお連れ申します。あなたは、銀の屋根の建物の下で、大きい黄金おうごんの寝台の上で、わたしのふところで寝られます。わたしはあなたを愛しております。
朝寝はしたし、ものにまぎれた。ひるの庭に、くまなき五月の日の光を浴びて、黄金おうごんの如く、銀の如く、飛石の上から、柿の幹、躑躅つつじ、山吹の上下うえしたを、二羽縦横じゅうおうに飛んで舞っている。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、利休の指の指した者は頑鉄がんてつ黄金おうごんとなったのである。点鉄成金は仙術の事だが、利休は実に霊術を有する天仙の臨凡りんぼんしたのであったのである。一世は利休に追随したのである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なんぢおきなよ、そちはすこしばかりのいことをしたので、それをたすけるために片時かたときあひだひめくだして、たくさんの黄金おうごんまうけさせるようにしてやつたが、いまひめつみえたのでむかへにた。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
日は黄金おうごんまるがせになって、その音も聞えるか、と思うほど鋭く廻った。雲の底から立ち昇る青い光りの風——、姫は、じっと見つめて居た。やがて、あらゆる光りは薄れて、雲はれた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この時もいたく胸騒むなさわぎして、平生へいぜい魔除まよけとして危急ききゅうの時のために用意したる黄金おうごんたまを取り出し、これによもぎを巻きつけて打ち放したれど、鹿はなお動かず、あまり怪しければ近よりて見るに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
とこの間と、くろがきの大黒柱を境にしてならんでいる仏壇の奥に、金色きんしょく燦然さんぜんたる阿弥陀如来あみだにょらいが静まりかえって、これも黄金おうごん蓮台れんだいのうえに、坐禅を組んでいる。その下に、朱塗りの袋戸棚がある。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
分けても笛と鼓とはだな、黄金おうごんの気を感じ易い。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
みづりうごく揺曳ようえい黄金おうごん、真珠、青玉せいぎよくの色。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
置去おきざびとや海賊や埋められた黄金おうごん
自分の身替みがわりに、牛丸君が誘拐されたのではないかと気がついたからである。やっぱり、黄金おうごんメダル探しが目的なんだろう。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、秀吉はそんな小さな皮肉のために、黄金おうごん千枚をんで買いもとめたわけでもなく、また決して、御旗みはた楯無たてなし所有慾しょゆうよくにそそられたものでもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯舟からあがると再び黄金おうごんをみがくように五体のすみずみまで、洗いそそいで山本さんがいてもそれには関係なく、ぶるんぶるんも遂行するそうであった。
黄金おうごんたっときも知る。木屑きくずのごとく取り扱わるる吾身わがみのはかなくて、浮世の苦しみの骨に食い入る夕々ゆうべゆうべを知る。下宿のさいの憐れにしていもばかりなるはもとより知る。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花は真紅しんく衣蓋きぬがさ黄金おうごん流蘇ふさを垂らしたようである。実は——実もまた大きいのはいうを待たない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして銅貨や小石をとりよせては、皮袋にいれて、みな黄金おうごんにしてしまいました。くたびれてくると、大臣をよびました。つぎには、ごてんじゅうの役人をよびました。
銀の笛と金の毛皮 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
背皮に黄金おうごんの文字をした洋綴ようとじ書籍ほんが、ぎしりと並んで、さんとしてあおき光を放つ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのあひだ相變あひかはらずたけつては、黄金おうごんれましたので、つひにはたいした身代しんだいになつて、家屋敷いへやしきおほきくかまへ、使つかひなどもたくさんいて、世間せけんからもうやまはれるようになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
伯爵は三人の娘の顔を打眺うちながめ、黄金おうごん腕環うでわを再び自分の手に取って
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
嗚呼ああ爛壊らんえせる黄金おうごんの毒にあたりし大都会
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
黄金おうごんバットかな。」
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
黄金おうごんの塔
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その夜、戸倉老人は、春木少年から黄金おうごんメダルに関するこれまでの話を聞き、少年が思いがけない苦労をしたことに深い同情のことばをかけた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
愛はまよいである。またさとりである。愛は天地万有ばんゆうをそのうちに吸収して刻下こっかに異様の生命を与える。ゆえに迷である。愛のまなこを放つとき、大千世界だいせんせかいはことごとく黄金おうごんである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のみならず翁は蒐集家しゅうしゅうかです。しかし家蔵の墨妙のうちでも、黄金おうごん二十いつに換えたという、李営丘りえいきゅう山陰泛雪図さんいんはんせつずでさえ、秋山図の神趣に比べると、遜色そんしょくのあるのをまぬかれません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただ一つ、大きな黄金おうごんたまご形のものが転がってるきりでした。皆はあっけにとられました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
黄金おうごんくさりむねにたらした銀色ぎんいろの十、それが、朝陽あさひをうけて、ギラギラ光っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いと白くたをやかなる五指ごしをひらきて黄金おうごん目貫めぬきキラキラとうつくしきさやぬりの輝きたる小さき守刀まもりがたなをしかと持つともなくのあたりに落してゑたる、鼻たかき顔のあをむきたる
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このことがあつてからも、おきなはやはりたけつて、その/\をおくつてゐましたが、奇妙きみようなことには、おほくのたけるうちにふしふしとのあひだに、黄金おうごんがはひつてゐるたけつけることが度々たび/\ありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
黄金おうごんの、浦安のたへなるふうに。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「おい戸倉。きさまが、しぶといから、こんな悶着もんちゃくが起る。早く隠し場所をいってしまえ。この黄金おうごんメダルの半分の方はどこに隠して持っている」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや、それよりも大事なのは、去年この「さん・ふらんしすこ」の御寺みてらへ、おん母「まりや」の爪を収めた、黄金おうごん舎利塔しゃりとうを献じているのも、やはり甚内と云う信徒だった筈です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
七つの部屋にいっぱいの黄金おうごんの山をみて、どうしていいかわからなくなってきました。
銀の笛と金の毛皮 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
無言は黄金おうごんである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金貨が出てきて、刑事達はにわかに緊張した。銀座の金塊盗難事件以来というものは、黄金おうごんを探して歩いた二人だ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)