あが)” の例文
油煙ゆえんがぼうつとあがるカンテラのひかりがさういふすべてをすゞしくせてる。ことつた西瓜すゐくわあかきれちひさなみせだい一のかざりである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見て居ると、其おびただしい明光あかりが、さす息引く息であるかの様にびたり縮んだりする。其明りの中から時々いなずまの様なひかりがぴかりとあがる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
紀元二千六百年の今日、祝典は氾濫する。熱閙ねつたうは光とあがる。進め一億、とどろく皇禮砲のもとより進め。大政翼贊の大行進を始め。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
どこでは米の相場があがっているから、早く積み出してゆけというたぐいで、それが一々適中するために、その家は大いに工面くめんがよくなった。
そこで豐後ぶんごのウサにおいでになりました時に、その國の人のウサツ彦・ウサツ姫という二人が足一つあがりの宮を作つて、御馳走を致しました。
そしてそれと覚しいほとりには、白い処々黄まだらな煙りが濛々とあがつた、その煙りの中を黒い人影が隠見してゐた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
人に知られず、効果に現れずとも、たしなみの深い人には、奥床しさがほのぼのと立あがるものであります。気配というものは正直なものであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
。さるれえの脳髄とお勢とは何の関係も無さそうだが、この時突然お勢の事が、噴水のほとばしる如くに、胸を突いてあがる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それともいきほひに駆られ情に激して、水は静かなれども風之を狂はせば巨浪怒つてあがつて天をつに至つたのだらうか。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
今までは、どうか、こうか、人並に調子を取って来たのが汽車が留まるや否や、世間は急に陽気になって上へあがる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
軍事予算というものを、無法にどんどん出しましたから、それで、お金の値打ちが下って、物と金の釣合いがとれなくなって、物価は二十五倍にあがった。
幸福について (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
押問答が正午まで続いた末、始めの言い値が三百両という法外ほうがいなところまであがって行って、とどのつまり隠居がしぶしぶながら首を縦に振ったのだった。
そのとき、また一閃して、こんどはドッとあがった火焔が、一本の松の木に移って、パチパチと烈しく燃えだした。そしてなかなか消える模様がなかった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
壮志蹉跎さた行われずといえども、護国的精神、敵愾てきがい的気象は、沸々として時勢の児の血管中に煮えあがれり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
生温るい水蒸気が脚もとから舞いあがるので、大きな風呂場に這入ったような感じがする。左手は前と同じ屏風の続きであるが、岩が見えないのは雪の深い為であろう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかしながら今日こんにち金解禁きんかいきんによつて爲替相場かはせさいばすで頂上ちやうじやうまで騰貴とうきをしたのであるから、爲替相場かはせさうばあがため經濟界けいざいかい不景氣ふけいきすで過去くわこ事實じじつになつたとてよろしいのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
あの烟の渦卷きあがさまを見よ、今宵は興ある遊となるべきぞと云ひしに、博士かうべりて、かばかりの烟は物の數ならず、紀元七十九年の噴火の時を想ひ見給へと云ひぬ。
この手間賃もなかなか馬鹿には出来ないので、もとは一貫匁で二銭程度であったのが、現在では十二三銭にまであがっているという友太に、としゑはいろいろと訊きはじめた。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
百姓はわりに合はん仕事やちうことは、ようかつてるが、そいでも地價がズン/\あがるさかい、知らん身代しんだいが三ぞう倍にも五層倍にもなつたアるちうて、みな喜んではつたが
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
日支の事変が初まってから当然物価はあがり初めた、然し暴利取締りが相当行届いてるせいか、その割に暴騰までには立到って居ない、特に農産物等はほとんど価格の値上りを見ない
あの遠く一塊の白い雲の下にあたる真白いのが立山たてやまである事、遥かな西方に淡く浮びあがったのが加賀の白山はくさんである事や、長い尾根続きの端に飛びあがったような嶺が笠ヶ岳である事や
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
『古事記』は次に記して曰く、次に国ワカ浮脂ウキアブラの如くにして、海月なす漂える時に、葦牙アシカビの如く、あがれる物に因て、成りませる神の名は、宇麻志葦牙彦遅ウマシアシカビヒコヂ神、次に天之常立アメノトコタチ神。
比較神話学 (新字新仮名) / 高木敏雄(著)
物の値段は青楼ちややの主人には相談なしにあがつて来た。十銭の煙草は十二銭になつた。
天井知らずにあがっている米価が、ずうんと下るは必定——その上、施米せまいなぞもいたすつもりで、お上役向、名高い御寺の上人さまにも、御相談申しておれば、おかげで、広海屋の名は
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
火は既に全屋に及んで、その火の子の高くあがるさまの凄じさと言つたら、無い。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「お駒さん、余計な事は言わない、此境内からたった一ト足出て、此節このせつの江戸の街を見てくれ、両に二斗の米(米価は此時百文に二合八勺まであがりました)が食えるものか食えねえものか」
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
長府小倉こくらあたりの米を買取らせ、二割か三割の手付金を売っておけば、よし不要になったところで米価は必定あがるのだから、俵当り十もんめ二十匁の徳になっても万々損にはならぬであろうこと。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
その水平線より少し上の岩の間に穴があってその穴から火が出るのですが、その火が水の上をって上にあがるのです。愚民がこれを見ると全く水の中から火が燃えて出るように見えるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
たいすくい込み、どんと、次の部屋まで投げつけると、その脚か手が、炉の上の自在鉤じざいかぎへぶつかったのであろう。朽ち竹の折れる響きと共に、炉の口から、火山のような白い灰があがった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、砂山越しに汽笛が鳴つて、煤烟がむく/\とあがり、汽車の音がする。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
漸次その勢いを増して今日は昨日より明日はまた今日よりもあがるというふうで、株式も土地も各種材料も買えば必ず儲かるのであったから、日頃着実な地方の農家までが競って思惑株に手を出し
生業なりはひは奪はれ、税金は高くなり、諸式はあがり、増えるのは小供許り。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
価格はあがり、差損は減少する。
あがれるゆげには
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
その後も彼はつづけて各劇場に出勤していたが、芸の評判はますますあがった。どの役もほとんど不評というのはなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
如何に愛宕あたごの申子なればとて、飯綱愛宕の魔法を修行し、女人禁制の苦を甘ない、経陀羅尼きょうだらにじゅして、印を結びじゅを保ち、身を虚空にあがらせようなどと
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次に國わかく、かべるあぶらの如くして水母くらげなすただよへる時に、葦牙あしかびのごとあがる物に因りて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遲うましあしかびひこぢの神。次にあめ常立とこたちの神
かれけぶりあがたびくぼんだ黄色きいろしがめるやうにして、こゝろづいたやう吸殼すひがらひらくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その折は十丈も煮えあがる湯煙りのすさまじき光景が、しばらくはやわらいで安慰の念を余が頭に与えた。すべての対照は大抵この二つの結果よりほかには何も生ぜぬ者である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この四月以来紙代や印刷代があがって写真の多い雑誌の経営は逼迫して来ているのであった。
築地河岸 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
爲替相場かはせさうばあがることは日本にほん通貨つうくわ對外價値たいぐわいかちあがることであるから外國ぐわいこくから直接ちよくせつ輸入ゆにふせらるゝものはこと/″\値段ねだんやすくなる、一ヤール五ゑん羅紗ラシヤが五ゑん五十五せんであつたものが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
若駒の馳せ狂ひて、後脚とももて水を蹴るときは、飛沫高くほとばしり上れり。そのはやき運動を、畫かく人に見せばやとぞ覺ゆる。左の方なる原中に一道の烟の大なる柱の如くあがれるあり。
繭はやすいし、たとえ繭の値が急にあがったのにしろ、蚕を飼う桑が一定の桑畑しかない土地からそう余計に求められるものではない以上、掃き立てる枚数をいきなり多く増せるものではない。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
汪洋おうようたる木曾川の水、雨後の、濁って凄まじく増水した日本ライン、噴きあがる乱雲の層は南から西へ、重畳ちょうじょうして、何か底光そこひかりのする、むしむしと紫に曇った奇怪な一脈の連峰をさえ現出している
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ボタン一つ押すと紫電しでん一閃いっせん。太い二本の光の柱です。一本は真直に空中を飛び上る。もう一本は敵陣の中につっこむ。するとパッと黄煙こうえんあがると見る間に、ふねも敵兵も瞬間に煙となって空中に飛散する。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
其処そこに泊つて居る船も五六艘はあつた。朝炊あさげけぶりが紫に細くあがつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
天皇この歌を聞かして、軍を興して、りたまはむとす。ここに速總別の王、女鳥の王、共に逃れ退きて、倉椅山くらはしやまあがりましき。ここに速總別の王歌ひたまひしく
青年の賃金の低さは婦人の賃金があがる時でなければ決して騰らないし、民法の上で女が独立の権利を持たないうちは、一家の中で長男だけが持っている特権と負担とは解決しない。
青年の生きる道 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
代助は家を出る前に、昨夕ゆうべ着た肌着も単衣ひとえことごとく改めて気をあらたにした。外は寒暖計の度盛の日をうてあがる頃であった。歩いていると、湿っぽい梅雨つゆかえって待ち遠しい程さかんに日が照った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この辺がまだ畑地交りであった時分やすい地代ですこし広く買い取って家を建てたのがいつか町中になってしまってうるさくはあるが地価はあがった。当惑と恭悦を一緒にしたような住居の様子だ。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)