非常ひじょう)” の例文
そして、黒いみちが、にわかに消えてしまいました。あたりがほんのしばらくしいんとなりました。それから非常ひじょうに強い風がいて来ました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
主人はこの話を非常ひじょう興味きょうみをもって聞いた。今後こんご花前の上になんらかの変化へんかをきたすこともやと思わないわけにはいかなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もし今後こんご中央公論ちゅうおうこうろん編輯へんしゅうたれかにゆずってひまときるとしたら、それらの追憶録ついおくろくかれると非常ひじょう面白おもしろいとおもっていました。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けれどもたいへん下手へたですから、見物人けんぶつにんがさっぱりありませんで、非常ひじょうこまりました。「甚兵衛の人形は馬鹿ばか人形」と町の人々はいっていました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
何時間なんじかんかじっとすわって様子ようすていましたが、それからあたりを丁寧ていねいにもう一ぺん見廻みまわしたのちやっとあがって、今度こんど非常ひじょうはやさでしました。
と、或朝あるあさはや非常ひじょう興奮こうふんした様子ようすで、真赤まっかかおをし、かみ茫々ぼうぼうとして宿やどかえってた。そうしてなに独語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今年十八さいであったが、頭が非常ひじょうによくって、寺子屋てらこやで教わる読み書きそろばんはいつも一番であった。何を考えても何をしても人よりずばぬけていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
はっと心臓しんぞうされたようにびっくりしたときは、非常ひじょう爆音ばくおんとともに、もうかれつつんでいました。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのほかさまざまのことがありますが、就中なかんづく良人おっと非常ひじょうおどろきましたのはわたくし竜宮行りゅうぐうゆき物語ものがたりでした。
へびとブラントおよびブルークの三人が、最初からすがたを見せなかったのを非常ひじょうに怪しんだが、重傷じゅうしょうのドノバンを捨てて、かれらをさがすべきでないから、ゴルドンのことばに賛成して
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
またその反対はんたいの例をしるせば、生麦事件なまむぎじけんにつき英人の挙動きょどう如何いかんというに、損害要求そんがいようきゅうのためとて軍艦を品川に乗入のりいれ、時間をかぎりて幕府に決答けっとううながしたるその時の意気込いきごみは非常ひじょうのものにして
とにかく、若君わかぎみは、はじめておおらかな正義せいぎの天地を自由に馳駆ちくするときがきたと、非常ひじょうなおよろこびで、以後いご武田残党たけだざんとうの名をすてて、われわれ一党名とうめいも、天馬侠党てんまきょうとうとよぶことにきまったのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この子が何か答えるときは学者のアラムハラドはどこか非常ひじょうに遠くの方のこおったようにしずかな蒼黒あおぐろい空をかんずるのでした。
つれてきた若衆わかしゅうの話によると、ちちしぼりは非常ひじょうにじょうずで朝おきるにも、とけいさえまかしておけば、一年にも二年にも一朝ひとあさ時間をたがえるようなことはない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
プシキンはさきだって非常ひじょう苦痛くつうかんじ、不幸ふこうなるハイネは数年間すうねんかん中風ちゅうぶかかってしていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あのおおきな身体からだひと非常ひじょうせてちいさくなってかおにかすかな赤味あかみがあるくらいでした。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天狗てんぐ本来ほんらい中性ちゅうせいではありますが、しかし性質せいしつからいえば、非常ひじょうおとこらしく武張ぶばったのと、また非常ひじょうおんならしくさしいのとの区別くべつがあり、ばけ姿すがたもそれにじゅんじて、あるいおとこになったり
さるおにの中からでてきて、甚兵衛と二人で、こわれた人形をいて、非常ひじょうかなしみました。けれども、いくらかなしんでもいまさら仕方しかたはありません。二人はこわれた人形をって、田舎いなかの町へかえりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ロセツはこれがために非常ひじょうに利したりという。
この時は日がかんかんとって土は非常ひじょうにあつく、竜はくるしさにばたばたしながら水のあるところへ行こうとしました。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分のからだにだけは非常ひじょう潔癖けっぺきであって、シャツとか前掛まえかけとかいうものは毎日あらっている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
『そうしてよくみ、よくったものだ。また非常ひじょう自由主義じゆうしゅぎ人間にんげんなどもあったッけ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
本線ほんせんのシグナルは、今夜もねむられませんでした。非常ひじょうなはんもんでした。けれどもそれはシグナルばかりではありません。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いつ何時なんどきどんなところで無残むざんななくなりようをすることやらと、つねづねそればかりをんでたのだから、まことにいい終わりようでありましたとげられて非常ひじょうによろこんだ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
力が非常ひじょうに強く、かたちも大層たいそうおそろしく、それにはげしいどくをもっていましたので、あらゆるいきものがこの竜にえば、弱いものは目に見ただけで気をうしなってたお
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おまえたちはみなこれから人生という非常ひじょうなけわしいみちをあるかなければならない。たとえばそれは葱嶺パミールこおり辛度しんどながれや流沙るさの火やでいっぱいなようなものだ。
お前たちね、今日はここへ非常ひじょうなえらいお方がらっしゃるんだから此処ここてはいけないよ。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
月のあかりはどこかぼんやりありましたが、きり非常ひじょうふかかったのです。ところがボートは左舷さげんの方半分はんぶんはもうだめになっていましたから、とてもみんなはり切らないのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大王は非常ひじょう感動かんどうされ、すぐにその女のところに歩いて行って申されました。
手紙 二 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それは長さが二すんぐらい、はばが一寸ぐらい、非常ひじょうに細長くとがった形でしたので、はじめは私どもは上のおも地層ちそうし潰されたのだろうとも思いましたが、たてに埋まっているのもありましたし
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
千倍ぐらいになりますと、下のレンズの直径ちょっけい非常ひじょうに小さくなり、したがって視野しやに光があまりはいらなくなりますので、下のレンズをあぶらひたしてなるべく多くの光を入れてものが見えるようにします。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)