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賽
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さい
ふりがな文庫
“
賽
(
さい
)” の例文
與助 大屋さんの話では、左官の勘太郎といふ奴は不斷から身持のよくない男で、本職の
鏝
(
こて
)
よりも
賽
(
さい
)
ころを持つ方を商賣にしてゐる。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と云うのは、奥の
長櫃
(
キャビネット
)
の上で、津多子夫人は生死を四人の
賽
(
さい
)
の目に賭けて、両手を胸の上で組み、長々と横たわっているのであった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
とも
角
(
かく
)
、明日のパンに困っては、売る
当
(
あて
)
もない原稿を書いて、運の
賽
(
さい
)
の目が
此方
(
こっち
)
へ廻って来るのを待っているわけにも参りません。
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
おれが
博奕場
(
ばくちば
)
へ出入りするようになったのは、そのあとのことだった。それまでは
花札
(
はなふだ
)
にも
賽
(
さい
)
ころにも、手を触れたことさえなかった。
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三時、私たちはもと来し方へと引きかえした。
賽
(
さい
)
の
河原
(
かわら
)
で
蜜柑
(
みかん
)
をたべて、降り路をぐんぐんおりた。いつか落葉松おうるあたりまできた。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
▼ もっと見る
半年もたたぬうちに、いかさま
賽
(
さい
)
のつかいかたも覚えれば、そそり節の調子も出せ、朝酒の、
腸
(
はらわた
)
にしみわたるような味も覚えた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
賽
(
さい
)
はカラリと壺に落ちたか落ちないか、その瞬間、左の手は早くも壺の縁に飛んで、壺は天地返し——カッパと盆の上へ伏せられたものです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それでさんざんに調べた最後には、つまりいいかげんに、
賽
(
さい
)
でも投げると同じような偶然な機縁によって目的の地をどうにかきめるほかはない。
案内者
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この一年程以前からあの傳造の
賽
(
さい
)
の目の出が急にわるくなつて、瞬く間に財産の大半をば
減
(
す
)
つてしまつたとかいふことで
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
賽
(
さい
)
は投げられたんです、わたし舞台に立ちます。あしたはもう、ここにはいません。父のところを出て、一切をすてて、新しい生活を始めます。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
モナコの
賽
(
さい
)
の目に現れた不吉が、佐野を行方不明にしてしまい、妾は傷の
癒
(
い
)
えるまでニースの赤十字病院にロダンさんの手厚い看護を受けました。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
甥
(
おい
)
の兵庫助とが、遊女のうちの美人を賭けて
双六
(
すごろく
)
をやり、
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
の論争から、ついに叔父甥で刃を抜き、双方、ひん死の重傷を負ったのみならず
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかに小さな家と細い
小路
(
こうじ
)
のために、
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
のように区切られて、名も知らない都会人士の巣を形づくっているうちに
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その努力というものは非常なものであります。ちょうど
賽
(
さい
)
の川原で石を積んでいて、これでよいと思っていると壊れる。それでまたそれを建て直す。
生活と一枚の宗教
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
征服した方もされた方も、博奕に出た
賽
(
さい
)
の目を信じただけだ。それ以外の何ものでもないのだからな。化体なものさ。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そのまま店から下りそうなるを、びったりと
背
(
せな
)
でおさえて、愛吉は土間一杯に身構えながら、
件
(
くだん
)
の
賽
(
さい
)
の目のごとき足並の人立に向って、かすれた声
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのソップを製へる爲に生の牛肉を細かく
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
に切つて、口の長い大きな
徳利
(
とくり
)
へ入れる。是がまた一役で、氣の長いものでなければ勤まらなかつた。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
愛玉只は、黄色味を帯びた寒天様のもので、
台湾
(
たいわん
)
の
無花果
(
いちじゅく
)
の実をつぶして作るのだそうだが、それを
賽
(
さい
)
の目に切ったのの上に砂糖水、氷をかけて食う。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
さつま芋の
賽
(
さい
)
の目に切つたものが、菜味としてふんだんに入つてゐる。狸はどこにゐるやと、なほ丹念に掻きまはしたが、狸肉らしいものがでゝこない。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
なおごく初期の双六の
賽
(
さい
)
は、一から六までの数字でなくて、貪・瞋・痴・戒・定・恵の六字のが名目双六用に、南・無・分・身・諸・仏のが浄土双六用に
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
盗賊
禦
(
ふせ
)
ぎに許されて設けた僧兵が、鴨川の水、
双六
(
すごろく
)
の
賽
(
さい
)
ほど法皇を悩ませたり、貿易のために立てた商会がインドを英国へ取ってしまう大機関となったり
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
剣が峰を左手に仰いで池の岸から
賽
(
さい
)
の河原という所を通る。一面の石原、大小千個ともなき焼石の原である。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
津軽侯の浪人司馬又助——などという
輩
(
やから
)
と押し廻り、
賭場
(
とば
)
へ行っては
賽
(
さい
)
をころがし、女郎屋や小料理屋へ出かけて行っては、
強請
(
ゆすり
)
がましく只で遊んだりした。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は
細
(
こまか
)
く切ったその紙片を、
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
なりに筋をひいて紙のうえに
駢
(
なら
)
べていながら、
振顧
(
ふりむ
)
きもしないで応えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
戸
(
と
)
も
障子
(
しやうじ
)
もない
煤
(
すゝ
)
け
切
(
き
)
つた
佛壇
(
ぶつだん
)
はおつぎを
使
(
つか
)
つて
佛器
(
ぶつき
)
や
其
(
その
)
他
(
た
)
の
掃除
(
さうぢ
)
をして、
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
に
刻
(
きざ
)
んだ
茄子
(
なす
)
を
盛
(
も
)
つた
芋
(
いも
)
の
葉
(
は
)
と、
寂
(
さび
)
しいみそ
萩
(
はぎ
)
の
短
(
みじか
)
い
小
(
ちひ
)
さな
花束
(
はなたば
)
とを
供
(
そな
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
檢査處
(
しらべるところ
)
賣歩行
(
うりあるく
)
荷物
(
にもつ
)
一ツもなくして家内にはめくり札
賽
(
さい
)
は
數多
(
あまた
)
ありしなり此返答は
何
(
どう
)
ぢやと
問詰
(
とひつめ
)
られしに勘太郎一言の返答も出來兼ねたり越前守殿コレ勘太郎汝は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ひょろひょろ
転
(
ころ
)
げかけるところを
無手
(
むず
)
と私の
襟
(
えり
)
をひっ
捉
(
つか
)
まえて、まるで
賽
(
さい
)
の
磧
(
かわら
)
の子供が鬼にふん
捉
(
づか
)
まえられて行くような具合に、柵外へ
掴
(
つか
)
み出されてしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
この辺の、のでん賭博というのは、数人寄って
賽
(
さい
)
を転がしている
鼻
(
はな
)
ッ
張
(
ぱり
)
が、田舎者を釣りよせては巻き上げるのですが、賭博場の景物には、皆春画を並べてある。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
いろいろな話題になって明石の人たちがうらやまれ、幸福な人のことを明石の尼君という言葉もはやった。太政大臣家の
近江
(
おうみ
)
の君は
双六
(
すごろく
)
の勝負の
賽
(
さい
)
を振る前には
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
実際その何分かの間は、当人同志は云うまでもなく、平常は元気の好い泰さんさえ、いよいよ運命の
賽
(
さい
)
を投げて、
丁
(
ちょう
)
か
半
(
はん
)
かをきめる時が来たような気がしたのでしょう。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なんだか初めてらしくて、
賽
(
さい
)
の目も、張りかたも、よく知らなかったそうですが、
半方
(
はんかた
)
の
定張
(
じょうば
)
りで、一度もくずれず、勝ちっぱなし、玄人連の度胆を抜いたといいます。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
運は
賽
(
さい
)
の眼の
出所
(
でどころ
)
分らぬ者にてお辰の
叔父
(
おじ
)
ぶんなげの
七
(
しち
)
と
諢名
(
あだな
)
取りし
蕩楽者
(
どうらくもの
)
、男は
好
(
よ
)
けれど根性図太く
誰
(
たれ
)
にも彼にも
疎
(
うと
)
まれて大の字に寝たとて一坪には足らぬ小さき身を
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それに「運命」という奴が気紛れもので、若い、大胆な無法者の陰謀家は、いつ富籤から黄金を、あるいはいうにいわれぬ
賽
(
さい
)
の逆転を、抽き当てるかわかったものではない。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
願
(
ねげ
)
の
賽
(
さい
)
の河原に接して大野亀という亀の形をした孤丘が海に突出している。船路の目標でもあれば、帆前船の変り目にもなるために、しばしば船方の唄の中に歌われている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
第四十六 コロトン はパンを
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
に切って油で揚げて豆や芋の濁ったスープへ混ぜます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
賽
(
さい
)
の河原は
哀
(
かな
)
しい而して真実な
俚伝
(
りでん
)
である。此世は賽の河原である。
大御親
(
おおみおや
)
の膝下から此世にやられた一切衆生は、皆賽の河原の子供である。子供は皆小石を積んで日を
過
(
すご
)
す。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
只今ではお
厳
(
やかま
)
しい事でございまして、中々隠れて致す事も出来んほどお厳しいかと思いますと、麗々と看板を掛けまして、何か火入れの
賽
(
さい
)
がぶら下って、
花牌
(
はなふだ
)
が並んで出ています
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ポーンと伏せてあけると、コロコロところがって、ピョコンと
賽
(
さい
)
が起き上がるのです。
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
腰に尺八の
伊達
(
だて
)
はなけれど、何とやら
厳
(
いか
)
めしき名の親分が
手下
(
てか
)
につきて、
揃
(
そろ
)
ひの手ぬぐひ
長提燈
(
ながでうちん
)
、
賽
(
さい
)
ころ振る事おぼえぬうちは
素見
(
ひやかし
)
の
格子先
(
かうしさき
)
に思ひ切つての
串談
(
じようだん
)
も言ひがたしとや
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
同じ十二銭の弁当であるが、この男の
菜
(
さい
)
だけは別に煮てある。悪い
博奕打
(
ばくちう
)
ちがいか物の
賽
(
さい
)
を使うように、まかないがこの男の弁当箱には秘密の印を附けているなぞと云うものがある。
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
話に聞く
賽
(
さい
)
ノ
河原
(
かわら
)
とは、こうもあろうかというようなあさましい風景であった。島
周
(
まわ
)
りは、一里ほどもあるふうだったが、断崖の入江にさえぎられて廻ってみることが出来なかった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
福岡の城下から中津の城下に移った彼は、二月に入った一日、宇佐八幡宮に
賽
(
さい
)
して、本懐の一日も早く達せられんことを祈念した。実之助は、参拝を終えてから境内の茶店に憩うた。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この警戒管制には、市民の生命が、
丁
(
ちょう
)
か
半
(
はん
)
かの
賽
(
さい
)
ころの目に懸けられているのだ!
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
裸足
(
はだし
)
の少年靴みがき団を筆頭に、花売り娘、
燐寸
(
マッチ
)
売子、いかさま
賽
(
さい
)
の行商人、魔窟の客引き——そう言えば、このポウト・サイドには、土人区域の市場を抜けて
回教堂
(
モスク
)
の裏へ出ると、白昼
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
亭主が勝つか、女房が勝つかで、柊か、
蔦
(
つた
)
か、いずれを飾るかの大争いがおこる。
賽
(
さい
)
ころとトランプの遊びで執事は
懐
(
ふところ
)
をこやす。そして、気の
利
(
き
)
いた料理人なら料理の味を見ながら腹をこやす
駅馬車
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
鼻糞
(
はなくそ
)
記事の軽重、大小を見分けるためには
鶏
(
とり
)
の
餌箱
(
えばこ
)
式の県予算、
賽
(
さい
)
の
河原
(
かわら
)
式土木事業の進行状態、
掃溜
(
はきだめ
)
式市政の一般、各市町村のシミッタレた政治分野、陣笠代議士、同じく県議、ワイワイ市議
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この勝負を試すには、決して目的を立ててはいけない。決して打算をしてはいけない。自分の一切を
賽
(
さい
)
にして、投げてみるだけだ。そこから本当に再び立ち上がれる大丈夫な命が見付かって来よう。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一望千里の田野を縫う
賽
(
さい
)
の目のような月水
濠
(
ぼり
)
は、すっぽんとともに優良などじょうを産する。ほかでは見られないまでに、持ち味すばらしく、かつ大量に産し、現に大阪市場にまで持ち込まれている。
一癖あるどじょう
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
少憩の後、コブクロ坂を越え、ややして、鶴ヶ岡八幡宮に
賽
(
さい
)
した。
滑川畔にて
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
悪所通
(
あくしょがよ
)
いのしたい
放題
(
ほうだい
)
はしたし、
普
(
なみ
)
の道楽者の十倍も余計に女の
肌
(
はだ
)
を知り
尽
(
つく
)
して来はしたものの、いまだ、ただの一度も
賽
(
さい
)
の
目
(
め
)
を争ったことはなし、まして人様の物を、
塵
(
ちり
)
ッ
端
(
ぱ
)
一本でも盗んだ覚えは
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
賽
漢検1級
部首:⾙
17画
“賽”を含む語句
賽銭箱
賽日
賽銭
賽錢
御賽銭
賽錢箱
報賽
賽河原
法利賽
賽磨
馬賽口
賽礼
賽神
賽粒
賽転
賽馬
一賽
賽目
賽取
賽児
...