“聳:そび” の例文
“聳:そび”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花40
吉川英治21
海野十三20
野村胡堂19
中里介山19
“聳:そび”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語7.4%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行7.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)2.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
実は椰子やしそびえたり、極楽鳥ごくらくちょうさえずったりする、美しい天然てんねん楽土らくどだった。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一夜明けて小田原城から見ると、石坦を築き、白壁をつけた堂々たる敵営がそびえて居るのだから、随分面喰っただろうと思う。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「響いたがどうしたい。」と、雪次郎は鸚鵡おうむがえしで、夜具にもたれて、両の肩をそびやかした。そして身構えた。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして庭の樹立の上にそびえた旧城の一角に測候所の赤い信号燈が見えると、それで故郷の夏の夕凪の詩が完成するのである。
夕凪と夕風 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
川を隔ててはるか彼方には石尊山白雲を帯びてそびえ、眼の前には釜伏山の一つづき屏風びょうぶなして立つらなれり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かさなる水のしじまって行く、こうべの上には、山城やましろ屏風びょうぶと囲う春の山がそびえている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこここに高くそびゆる宏大な建築物たてものは、壮麗で、斬新で、くすんだ従来の形式を圧倒して立つように見えた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
川向う一帯、直立三四百尺もあろうかと思わるゝ雑木山ぞうきやまが、水際から屏風びょうぶを立てた様にそびえて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そしてその風の吹く時には、きっと福浦岬から続いた海中に加賀かがの白山がくっきりとそびえ立っているのが見えるのでした。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
腰から下に、子供たちが群がったところを見ると、与八の巨躯きょくが、雲際うんさいはるかにそびえているもののようです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いと高しといふにあらねど一の山のそびゆるあり、かつて一の炬火たいまつこゝより下りていたくこの地方を荒しき 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
上手かみて四分の一がほどを占めて正面の石段により登りぬべき鐘楼そびえ立ち、その角を過れるみちはなお奥に上る。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
此方こなたの岸から水の真中へかけて、草も木もない黄色の禿山はげやまが、曇った空にそびえて眺望をさえぎっている。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところが、途中、そびえ立つ岩山の横をくり抜いた洞門のてまえまで来ると、張任の一手が上から岩石や矢をいちどに注ぎ落した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近代音楽史の上に、つつましやかながら、毅然きぜんとしてそびゆるセザール・フランクの姿はとうとくもなつかしい。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
親譲りの背広を着た男は、丸い眼をえて、へやの中にそびえる、うるしのような髪のあるじを見守った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
館の前をおおうようにそびえている蒼黒あおぐろい一本の松の木を右に見て、綺麗きれい小路こみちをのそのそ歩いた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日はようやく暮れかかる。図書館の横手にそびえる松の林が緑りの色をかすかに残して、しだいに黒い影に変って行く。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その涯の所に突然大きな建物が、解らないものの中で一番解らないものの象徴のように、巍然ぎぜんとしてそびえていた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
入交いれちがいになった向を直して、巡査は半身をるがごとく、肩をそびやかしてとまた角燈を突附けた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鉄道の開通という事は、単に少年の好奇心を刺戟したのみではない、地方一般の人心をそびえしめるものが少くはなかった。
とある河の橋畔に出ると大きなビルディングが両岸にそびえ立って、そのあるものには窓という窓に明るい光が映っている。
初冬の日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
権兵衛は其の眼を港の口の方へやった。其処には釜の形をした大きな岩礁が小山のようにそびえたっていたが、人夫の影はなかった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くもやゝうすつたが、天守てんしゆむねは、そびみねよりもそらおもい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年老いた椰子ヤシ樹の列が青い昼の光の中に亭々とそびえ立ち、その下に隠見する土人の小舎がひどく低く小さく見える。
白皚々はくがいがいたる御嶽山は、暮れ行く夕陽に照らされて、薄紅の瑪瑙めのうのように深碧しんぺきの空にそびえている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もう大円蓋えんがいは目に入らず、ただその寒ざむとした胴の灰色の壁だけが、のしかかるやうにそびえてゐるのでした。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
見よ! 前方遥かに遠く、甲板上から遠望した、あの雪をまとう大高山がそびえ立ち中腹には白雲が悠々と流れている。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
笠を持ち直して急ぐ先に、間もなく、この木曾街道第一の難所、大妻籠おおつまごの姿が孔雀石をもりあげたようにそびえている。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俳画に描くとすれば、窓に垂れた瓢箪の蔓を比較的大きく画いて、その向うに雲の峯の白くそびえているところを現すのであろうか。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
休屋やすみややまに一かつそびえて巌山いはやま鎮座ちんざする十和田わだ神社じんじやまう
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昨夜の風雨は今朝なごりなく晴れ、日うららかに昇りぬ。屋後の丘に立ちて望めば富士山真白ろに連山の上にそびゆ。風清く気澄めり。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私の背後のはるか彼方かなたそびゆるビルデングの一室が、真赤な血の色に染まっているのが、外からハッキリと透かして見える。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここは八ヶ嶽の中腹である。窩人の部落からは真下に当たる「つづみほら」という谷間である。正面に絶壁がそびえている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここから見上げると、鰡八大尽の大厦高楼たいかこうろうは眼の前にそびえているのであります。道庵先生はそれを睨みつけながら、
壁はいよ/\深碧ふかみどりの色を加へて、野中の大杉の影はくつきりと線を引いたやうに、その午後の晴やかな空にそびえて居る。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
城砦型に建てられた鉄筋コンクリートの小学校は、雨の日はみごとに出水する下町の中で、いやに目立ってそびえていた。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
模糊もことして暮れゆく、海にむかってそびゆる山の、中腹に眼をやりながら、モルガンは心に祈るようにすら言った。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「それじや余計な口を利かないやうにして下さい。」兵卒は急に元気づいて肩をそびやかした。「私は軍律に従つてるんですからね。」
最後の噴火のあったという「レッド・ブラッフ」のあから岩が、まゆこがすばかりに、近くそびえている。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
彼方かなたなる境内の樹木と本堂鐘楼とうの屋根を背景にして、その前にそびえる中門ちゅうもんまたは山門をば
ただそれのみでなく、湖水の東南より西南にわたって高くそびゆる豪壮なヒマラヤ雪峰は巍然ぎぜんとして妙光を輝かして居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ちょうばかりも登ると、屏風びょうぶを立てたような巌石がんせきみちを挟んでそびえている処へ出た。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今でも、ひどいことはひどい。都心に幾つもの大ビルディングがそびえるあいだに、この辺の部落に一燭光が増しているとも思えない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樹木はその頃の立木を残したもので、亭々としたかしだのかしわだのエルムなどが、家々の屋根をおおってそびえ立っている。
ウィネッカの秋 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
豊国が、城から見ると、美しく化粧したわがむすめが立たされている。そしてその側には、新木のはりつけばしらがそびえていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気がついて見ると、遥向はるかむこうのおかの上に高いオベリスクが、白いつるぎのように切っ立って、青空にそびえている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
抜け上ったぎわから前髪が堤防工事のように高くそびえて、少なくとも顔の長さの二分の一だけ天に向ってせり出している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高柳君は死と気狂とを自然界に点綴てんてつした時、せた両肩をそびやかして、またごほんと云ううつろなせきを一つした。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空には富士山がそびえている。その山骨の一所ひとところに騎馬武者が無数にうごめいている。そうしてそこから矢が飛んで来る。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それさえたいへんなニュースであるのに、その白骨島の山かげには、怪塔ロケットが八台も肩をならべてそびえ立っているというのです。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ空にそびえて鬱蒼うっそうたる古木の両三株がその上をおおうているだけが、昔の姿を存しているのである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
湖の向う側の、林の上にそびえているあかちゃけた禿山はげやまに、じいっと彼女は、眼を留めているようです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
見晴し台といったような、さいごの高所には、観音さまの巨大なコンクリート像がそびえ、その横に、香華こうげを売る小屋があった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は救はれたやうな聲をあげて、いきなり屋敷の裏、その裏口へ近々とそびえた、老木の梅の根元に案内しました。
非常によく晴れたいい天気の日で、すぐ目前にそびえている山のしわまでが手に取るように見える日でありました。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
お千代は何とも言いません。観念しきった様子で、眉も動かさずにそのほっそりした肩をそびやかすばかりでした。
その容子ようすが余り無遠慮ぶえんりょすぎたせいか、吉井は陳の後姿うしろすがたを見送ったなり、ちょいと両肩をそびやかせた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見渡せば、群を抜ける八溝山の絶頂は雲表うんぴょうそびえ、臣下のごとき千山万峰は皆眼下に頭を揃えている。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
高社たかしろ風原かざはら、中の沢、その他信越の境にそびゆる山々は、唯僅かに山層のかたちを見せ、遠い村落も雪の中に沈んだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
丁度向い側に、殆ど竣工しゅんこうの成った政務長官官邸がそびえ、王は日毎に此の建物を仰いでおらねばならぬ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さうしてほのほちかそびえたすぎこずゑからえだけて爪先つまさきいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
市街のむかつて右の石山いしやまの上にはノオトル・ダムの尖塔と黄金の女神ぢよしん像とがそびえて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
操山の腹にそびゆる羅漢寺らかんじなかば樹立に抱かれて、その白壁は紫に染み、南の山の端には白雲の顔をのぞけるを見る。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
その堀と堀の間には、たくましいクレーンのむれが黒々とそびえ立って、その下に押し潰されそうな白塗りの船員宿泊所が立っている。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
その最も近代らしい顔つきはようやく北と西とにそれらしい一群がそびえている、特に西方の煙突と煙だけは素晴らしさを持っている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
我は一の樹梯はしだてを見たり、こは日の光に照らさるゝ黄金こがねの色にて、わが目の及ぶあたはざるほど高くそびえき 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
著者もかつて西湖に遊んで南岸の湖縁こべりそびえ立った五層の高い大きな塔の姿に驚かされた一人である。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
入口の石の鳥居の左に、とりわけ暗くそびえた杉のもとに、形はつい通りでありますが、雪難之碑と刻んだ、一基の石碑が見えました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人ふたり頭上づじやう連峯れんぽうひきゐてそびゆることわすれてはならぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひっきりなしに肩をそびやかしているこうづる(しまいに、そのしぐさはなんの意味もないことがわかる)。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
その翌日余り高くない波動状の山脈を五里ばかり進んで参りますと遙かの向うのマンリーという雪峰がそびえて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すると音もなく飛びすさるものがあって、数歩の前に富士が、くっきり、雪のひだの目を現わしてそびえ立った。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
道は草の峰になり、岩のそびえた渓川たにがわの間になり、大木のい茂った真暗な林になるなど、眼まぐるしく往く道が変化した。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
若い男の肩は少しそびえます。相手を岡つ引と知つて居る樣子で、その露骨な反感に、妙にわざとらしさがあります。
やまそびえ、はなふかく、みちゆうに、みづはや風情ふぜいるがごと
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
深い樹立のなかには教会の尖塔せんとうそびえていたり、外国の公使館の旗がヴィラ風な屋根の上にひるがえっていたりするのが見えた。
ある崖上の感情 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
赤丸平家に帰ってからもいたずらに空中にそびえる時計台の白い針のみが部屋の窓に侵入して私をいらいらさせた。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
あいたけ(赤石山脈)の支峰だと晃平のいう蝙蝠こうもり岳は、西の空にそびえて、朝起きの頭へ、ずしりと重石を圧えつける。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
カプリ島の級状をなせる葡萄圃ぶだうばたけ橄欖オリワ樹とは忽ち跡を沒して、我等は矗立ちくりふせる岩壁の天にそびゆるを見る。
「そら、あの真白い、おごそかな山が、北の方に高くそびえておりましょう、御存じですかね、あれが加賀の白山はくさんでございますよ」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
青い若葉のかげそびえる宏壮こうそうな西洋館が——大きい邸宅のそろっている此界隈かいわいでも
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それは黄なずきんかぶり鶴の羽で織ったしょうを着た、巌壁のそびえたったような道士姿であった。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
荒涼たる曠野に、のきも傾いた古い楼台が一つそびえ、そこへ一人の男が上って、髪を振り乱して叫んでいる。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
半腹の茶店に休むと、今来た町の家々は眼の下に連なって、修禅寺のいらかはさすがに一角をぬいてそびえていた。
秋の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
叢道くさむらみちの両側は、見上げるような山ばかりで、蓊鬱こんもりとした杉の木ばかり、そびえています。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
私たちは月見草などの蓬々ぼうぼうと浜風に吹かれている砂丘から砂丘を越えて、帰路についた。六甲の山が、青く目の前にそびえていた。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お千代は何とも言ひません。觀念し切つた樣子で、眉も動かさずにその細つそりした肩をそびやかすばかりでした。
反抗的に肩をそびやかせて、ヒョイと顔を挙げると、眼の前にヌッと立ったのは、定九郎を素で行ったような、恐ろしく自棄な浪人者でした。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
空は小春日和びよりの晴れて高くとびの舞ひ静まりし彼方かなたには五重の塔そびえてそのかたわらに富士の白く小さく見えたる
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
が、すぐに眼を開いて見ると、空は以前の通り晴れ渡つて、向うにそびえた山山の上にも、茶碗程の北斗の星が、やはりきらきら輝いてゐます。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あのつんとすまし、ぬけぬけと白膚を天にそびえ立たしている伯母の山が、これだけは拭えぬ心の染班しみのように雪消ゆきげの形に残す。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
唐津からつ港あたりに颱風を避難したのだろうと思い乍ら窓から覗いた彼の鼻先に、朝靄を衝いてそびえていたのは川崎造船の煙突であった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
此地、北に愛宕あたごの霊山半空にそびえつゝ、南方背振せぶり雷山らいさん浮岳うきだけの諸名山と雲烟うんえんを連ねたり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
で、また二人は荷物を担いで、そばに立っている木小屋の前を足音を立てずに通り過ぎ、雪をかぶってそびえている森の方へ歩いて行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その碓氷峠は想望するのみで、ここから見ることはできないが、小仏峠はすぐ眼前にそびえているのがそれです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
黄金色をした大きな外国の軍人の塑像が、アトリエの隅の方にそびえ立つてゐるのが目につくきりで、テイプやシェードの装飾はしてなかつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其処そこからは、村のとうげが、そのまわりの数箇すうこの小山に囲繞いにょうされながら、私たちの殆んど真向うにそびえていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
眼を転ずると、八坂やさかの塔が眼の前に高く晴れた冬空にそびえて居て、その辺からずつと向うに、四条あたりの街の一部が遠く望まれた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
宝蔵は館を少し離れた、庭の中央なかばに建っている。四辺あたりに灯火のないためか、秋の夜空にクッキリと黒くそびえて立って見える。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)