翌朝あくるあさ)” の例文
そうなったら憎いが先に立って、私は翌朝あくるあさ起きてからもお宮には口も利かなかった。それでも主婦おかみさん階下したからおぜんを運んで来た時
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
翌朝あくるあさになって名音は、平生いつものように起きて朝の礼拝を終り、前夜のことを住持に話そうと思っていると、玉音が急に緊張した顔になった。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あの晩は長老の呉服屋さんの家に泊って、翌朝あくるあさ阿武隈川あぶくまがわを見に行って、それから汽車で仙台へ帰てみると、君が来ていた……
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
翌朝あくるあさは、枕辺の障子が白み初めた許りの時に、お定が先づ目を覚ました。嗚呼東京に来たのだつけ、と思ふと、昨晩の足の麻痺しびれが思出される。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その晩から天気は激変して吹雪ふぶきになった。翌朝あくるあさ仁右衛門が眼をさますと、吹き込んだ雪が足から腰にかけてうっすら積っていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
翌朝あくるあさとも云わずその夜のうちに、館林様は大野を去られた。一人で、寂しく、飄然と、裏切られた先駆者の悩みを抱いて。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たか山脈さんみゃくいただきは、あかるく雲切くもぎれがして、れてしまいました。一無事ぶじぎて、翌朝あくるあさになると、そらはいつものごとくあおれていました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが銭湯を出ると、そのまま以南さんは家へは帰らず、暁臺先生の宿へ来られ、翌朝あくるあさ一緒に旅立つたのださうです。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
お君はその後二、三度尋ねて来て、わたしが気をもむのもかまわず、或晩あるばんとまって、翌朝あくるあさもお午頃まで居てくれた事がありましたが、それなりけり。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌朝あくるあさ楊枝ようじくわえながら、いっしょに内風呂に浸った時、兄さんは「昨夕ゆうべも寝られないで困った」と云いました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みたものは、果たしてなんであったでしょうか? 翌朝あくるあさ、人々は白い紗に蔽われた巨像の下に、色青ざめて横たわる一人の青年の、冷たいしかばねを見出しました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
また大あらしのあった翌朝あくるあさ、からりと、嘘のように青空になると、待ってたように、しずめたり浮いたり、風に、すらすらすらすらと、薄いあかい霧をほぐして通る。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝あくるあさの新聞には、詩子ふみこが撃たれたとも、怪我けがをしたともなく、更に驚いたことに、昨夜ゆうべ確かに射たれた筈の詩子ふみこは、朝から機嫌よく勇美子と話したり、時々は庭へ出て来て
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お大名がお一方ひとかたもお泊りが有りますと、小さい宿屋までふさがるようなことで、お竹は甲州屋こうしゅうやという小さい宿屋へ泊りまして、翌朝あくるあさ立とうと思いますと、大雨で立つことも出来ず
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一日おいて、その翌朝あくるあさ、キャラコさんは、威勢よく長六閣下の部屋へ入って行った。
翌朝あくるあささっそく息子の源七の手前を何とかつくろって、源右衛門はその金を女へ渡したのだったが——結果は知れている。女もその妹という子供も、それきり豆店へは帰って来なかった。
翌朝あくるあさ幸ひ早起きの若い溝鼠どぶねずみが通りましたので、魚はこのことを頼んで見ました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
深酒ふかざけ翌朝あくるあさの早起は、自分自身に對しても負嫌まけぎらひで押通す三田のならはしだつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
その晩中、気色るそうにしていたが、翌朝あくるあさは、何時いつものように働いていた。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
さて、この死切しにきったらしいすがたで四十二ときつときは、氣持きもちねむりからむるやうに、自然しねんきさッしゃらう。しかるに、翌朝あくるあさ、あの新郎殿むこどのおことむかひにとてするころは、おことちゃうんでゐる。
ところが、お糸さんが三味線さみせんいた翌朝あくるあさの事であった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
翌朝あくるあさ、小畑は言った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
徹夜よどほし三人で一斗五升飲んだといふ翌朝あくるあさでも、物言ひが舌蕩したたるく聞える許りで、挙動ものごしから歩き振りから、確然しつかりとしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
翌朝あくるあさ日覚めると明け放った欞子窓れんじまどから春といってもないほどなあったかい朝日が座敷のすみまでし込んで、牛込の高台が朝靄あさもやの中に一眸ひとめに見渡された。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
然し翌朝あくるあさになると、あの人が讀んだらば立腹しはせまいかと、氣遣はれもするし、氣まりのわるい樣な心地もする。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
翌朝あくるあさは高い二階の上から降るでもなく晴れるでもなく、ただ夢のように煙るKの町を眼の下に見た。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のちに考えてこそ、翌朝あくるあさなんですが、そのせつは、夜を何処どこで明かしたか分らないほどですから、小児こども晩方ばんがただと思いました。この医王山のいただきに、真白な月が出ていたから。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝あくるあさ起きるなりそれまで貯えてあったわずかかな銭を持って、市場に往き、鶏の肉やがちょうの肉、魚、菓実かじつ一樽ひとたるい酒まで買って来て、それをじぶんへやへならべて、李幕事夫婦を呼びに往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蓮華寺の蔵裏くりへ来て、斯う言ひ入れた一人の紳士がある。それは丑松が帰つた翌朝あくるあさのこと。階下したでは最早もうとつく朝飯あさはんを済まして了つたのに、未だ丑松は二階から顔を洗ひに下りて来なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
翌朝あくるあさはやつもりだったが、てなくなった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
翌朝あくるあさ
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
こんな口説くぜつよろしくあって、種員は思いも掛けぬ馬鹿に幸福しあわせな一夜を過し翌朝あくるあさぼんやり大門おおもんを出たのであった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まだ去年の秋お宮のところへ二度めか三度めにいった時翌朝あくるあさ帰って気がつくと飛んだことになっていた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
翌朝あくるあさ書斎の縁に立って、初秋はつあきの庭のおもてを見渡した時、私は偶然また彼の白い姿をこけの上に認めた。私は昨夕ゆうべの失望をかえすのがいやさに、わざと彼の名を呼ばなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌朝あくるあさ目を覚ました時は、雨戸の隙を潜つて空寒うそさむく障子を染めた暁の光の中に、石油だけは流石に凍らぬと見えて、心を細めて置いた吊洋燈つりランプ昨夜よべの儘にうつすりと点つて居たが
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
翌朝あくるあさはその小立野から、八坂はっさかと言います、八段やきだに黒い滝の落ちるような、真暗まっくらな坂を降りて、川端へ出ていた。川は、鈴見すずみという村の入口で、ながれも急だし、瀬の色もすごいです。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝あくるあさになって、巳之吉は船頭に気つけの水を飲まされて我れに返った。船頭は村の者を呼んで来て、ともども巳之吉をその家へ運んで往って、事情を聞いたが、巳之吉は何も云わなかった。
雪女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その週間の残りの日数ひかずだけはどうやらこうやら、長吉は学校へ通ったが、日曜日一日をすごすとその翌朝あくるあさは電車に乗って上野うえのまで来ながらふいとりてしまった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌朝あくるあさは、グツスリと寝込んでゐる所をお八重に起されて、眠い眼をこすり/\、麦八分の冷飯に水を打懸ぶつかけて、形許かたばかり飯を済まし、起きたばかりの父母や弟に簡単な挨拶をして
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
翌朝あくるあさ、例の秋さん、二階へ駈上る跫音高く、朝寝の枕を叩きて、起きよ、心なき人、人心なく花かへつて情あり、さく、冷かにいひおとしめしを恥ぢたりけん、シヽデンの花、開くこと
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
中庭の小窓を明けて、手を洗って、さんをおろすのを忘れて、翌朝あくるあさよく父に叱られている。昨夜も今夜もきっと叱られるに違ない。澄江さんはぐうぐう寝ている——どうしても寝ている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……私は夜明けまで遂々とうとう熟睡しなかった。翌朝あくるあさ、お宮は
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
その週間の残りの日数ひかずだけはどうやらかうやら、長吉ちやうきちは学校へかよつたが、日曜日一日をすごすと翌朝あくるあさは電車に乗つて上野まで来ながらふいとりてしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
翌朝あくるあさの四時までに、都合十三回も便所はばかりに立つた。が、別に通じがあるのではない。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
翌朝あくるあさになって、腹の痛みも御蔭でとれてありがたいと、出立する十五分前に御夏さんを呼んで、昨日きのう申し込んだ結婚事件の諾否を尋ねると、御夏さんは笑いながら静岡には水瓜もあります
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ばん翌朝あくるあさと、段々だん/\薄紙うすがみぐやうでせう。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小夜さよけてから降り出した小雨こさめのまた何時いつか知らんでしまった翌朝あくるあさ、空は初めていかにも秋らしくどんよりと掻曇かきくもり、れた小庭の植込からはさわやかな涼風が動いて来るのに
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌朝あくるあさ彼は自分の名を呼ぶ細君の声で眼を覚ました。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)