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繋
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つな
ふりがな文庫
“
繋
(
つな
)” の例文
それだけ、今ごろ標札のかわりに色紙を欲しがる青年の戯れに実感がこもり、梶には、
他人事
(
ひとごと
)
ではない直接的な
繋
(
つな
)
がりを身に感じた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
銀灰色の細毛の密生した彼の手首に、六種の色彩の大理石を金で
繋
(
つな
)
いだ鎖が掛かっていた。その小さな大理石の一つは腕時計だった。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
我等
永遠
(
とこしへ
)
の
法
(
のり
)
を犯せるにあらず、そはこの者は生く、またミノス我を
繋
(
つな
)
がず、我は汝のマルチアの
貞節
(
みさを
)
の目ある
獄
(
ひとや
)
より來れり 七六—
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
お上のお手に掛るのなら、縛られても
繋
(
つな
)
がれても文句はありませんが、苗字帯刀を許されても、町人はやはり町人同士でございます。
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
茶店の女主人と見えるのは年頃卅ばかりで勿論
眉
(
まゆ
)
を
剃
(
そ
)
っておるがしんから色の白い女であった。この店の前に馬が一匹
繋
(
つな
)
いであった。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
まだ二三日は命が
繋
(
つな
)
がれようというもの、それそれ
生理
(
せいり
)
心得草
(
こころえぐさ
)
に、水さえあらば
食物
(
しょくもつ
)
なくとも人は
能
(
よ
)
く一週間以上
活
(
い
)
くべしとあった。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
だが一体、鉱山業のこの家の主人公と、そして帆村が苦心しつつある探偵事件と、どういう事柄によって
繋
(
つな
)
がっているのであろうか。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
繁った枝葉を巧みに縫い棹はあたかも
征矢
(
そや
)
のように梢遥かに
伸
(
の
)
して行ったが、落ちて来た時にはその先に山鳩を黐で
繋
(
つな
)
ぎ止めていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
火を吹く生活の現実の悩みに触れた人でないと、こういう二つの大きな感動を
繋
(
つな
)
ぎ合わせた、古い文芸の意図は捉えにくいかと思う。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
若い兵隊が甲鉄艦のやうな靴をひきずつて、ぞろぞろ通りかかると、二階から三階から
白粉
(
おしろい
)
の顔が梅の実のやうに
珠数
(
じゆず
)
繋
(
つな
)
ぎに覗いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
または自分の想像した通り
幻
(
まぼろ
)
しに似た糸のようなものが、二人にも見えない縁となって、彼らを
冥々
(
めいめい
)
のうちに
繋
(
つな
)
ぎ合せているものか。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
徳二郎は堤を下り、橋の下に
繋
(
つな
)
いである小舟の
纜
(
もやひ
)
を解いて、ひらりと乘ると今まで靜まりかへつて居た水面が
俄
(
にはか
)
に波紋を起す。徳二郎は
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
その間
鷲尾
(
わしお
)
は実際運動から文化団体へ移っていったりしたが、抜き差しならぬ過去は、こうしてちゃンと現在へ
繋
(
つな
)
がっていた。——
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
そして、一代目の喜兵衛は乳母の小供の
覚助
(
かくすけ
)
と云う者の世話になって露命を
繋
(
つな
)
いでいたが、暮の二十八日になって死んでしまった。
四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
因って
茅
(
かや
)
の小屋を結び帰り、夕方にその内に入りて伺うと黒衣の人果して来り、馬を樹に
繋
(
つな
)
ぎ墓内に入り、数輩と面白く笑談した。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その頃の——恐らくは今でも——
惣
(
すべ
)
ての人の親は、家に資産があると否とを問わず一家の運命希望を我が子の立身出世に
繋
(
つな
)
いでるから
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
江戸時代は周知のように此と言ってまともに此こそ彫刻だというものはないが、彫刻の技術方面の伝統を
繋
(
つな
)
いで来たことは確かである。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
……
扱帯
(
しごき
)
を
繋
(
つな
)
いで、それに
縋
(
すが
)
って、
道成寺
(
どうじょうじ
)
のつくりもののように、ふらふらと幽霊だちに、
爪立
(
つまだ
)
った
釣身
(
つりみ
)
になって覗いたのだそうです。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その河畔を、水戸街道からそれて、二丁ばかりのぼった河岸に古い伝馬船に屋根をかけた、あぶなっかしい舟小屋が
繋
(
つな
)
いであった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
荷駄
(
にだ
)
と荷駄とを
繋
(
つな
)
ぎ合わせて
馬囲
(
うまがこ
)
いを作り、人と人とは手をつなぎ、或いは槍の柄を握り合いなどして、一陣一陣濁流を渡るのだった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それはお雪の性質の
如何
(
いかん
)
に係らず、窓の外の人通りと、窓の内のお雪との間には、互に融和すべき一
縷
(
る
)
の糸の
繋
(
つな
)
がれていることである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何も朝鮮と歴史の
繋
(
つな
)
がりがあったのではなく、全く山国の生活が
淳朴
(
じゅんぼく
)
で自然で、気持ちにも
似通
(
にかよ
)
った点が互にあるからだと思われます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一艘
(
いっそう
)
繋
(
つな
)
いであって、船首の方が明いていて、友之助が手招ぎをするから、お村はヤレ嬉しと
桟橋
(
さんばし
)
から船首の方へズーッと
這入
(
はい
)
ると
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
船頭
(
せんどう
)
は
闇
(
くら
)
い
小屋
(
こや
)
の
戸
(
と
)
をがらつと
開
(
あ
)
けて
又
(
また
)
がらつと
閉
(
と
)
ぢた。おつぎは
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
てそれからそく/\と
船
(
ふね
)
を
繋
(
つな
)
いだあたりへ
下
(
お
)
りた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
並んで手を
繋
(
つな
)
ぎ合ってもいるし、また背中合せに
丈
(
たけ
)
くらべをしているようでもあり、何となく人
懐
(
なつ
)
かしい山に見えるからである。
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
およぎの出來る
兒
(
こ
)
にはもつて來いの遊び場だつた。舟を
繋
(
つな
)
いでおくにもよかつた。
川蝉
(
かわせみ
)
が居る、
鷺
(
さぎ
)
が居る、岸には水あふひが浮いてゐる。
筑波ねのほとり
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
欧洲の旅行から帰って以来、私の注意と興味とは芸術の方面よりも実際生活に
繋
(
つな
)
がった思想問題と具体的問題とに向うことが多くなった。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
向島は桜というよりもむしろ雪とか月とかで優れて面白く、
三囲
(
みめぐり
)
の
雁木
(
がんぎ
)
に船を
繋
(
つな
)
いで、秋の紅葉を探勝することは特によろこばれていた。
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
彼
(
かれ
)
は
夜
(
よる
)
になつても
燈
(
あかり
)
をも
點
(
つ
)
けず、
夜
(
よも
)
すがら
眠
(
ねむ
)
らず、
今
(
いま
)
にも
自分
(
じぶん
)
が
捕縛
(
ほばく
)
され、
獄
(
ごく
)
に
繋
(
つな
)
がれはせぬかと
唯
(
たゞ
)
其計
(
そればか
)
りを
思
(
おも
)
ひ
惱
(
なや
)
んでゐるのであつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
殊に
雁
(
がん
)
や
鴉
(
からす
)
とはちがって、いかにそれが江戸時代であっても、仮りにも鷲と名のつくほどのものが毎日ぞろぞろと
繋
(
つな
)
がって来る筈がない。
鷲
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかしボートは、——彼はそれを
繋
(
つな
)
いだろうか? 彼はあんまりひどく急いでいたので、ボートを繋ぐなどということはしなかったろう。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
余はこれに未来の望みを
繋
(
つな
)
ぐことには、神も知るらん、絶えて
想
(
おも
)
いいたらざりき。されど今ここに心づきて、わが心はなお冷然たりしか。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
無論
(
むろん
)
斯
(
こ
)
うして
紐
(
ひも
)
で
繋
(
つな
)
がれているのは、まだ
絶息
(
ぜっそく
)
し
切
(
き
)
らない
時
(
とき
)
で、
最後
(
さいご
)
の
紐
(
ひも
)
が
切
(
き
)
れた
時
(
とき
)
が、それがいよいよその
人
(
ひと
)
の
死
(
し
)
んだ
時
(
とき
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
味も日本の饂飩よりは軽くって美味しゅうございますけれども時によるとどうしても
繋
(
つな
)
がらないでポツポツ
截
(
き
)
れる事があります。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
もう斯うなっては、仕方がない、書けても書けんでも、筆で命を
繋
(
つな
)
ぐより
外
(
ほか
)
仕方がない。食うと食わぬの境になると、私でも必死になる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ところが総円さんは短いかんじんよりで手足の指を
繋
(
つな
)
いで拝んだだけだが、それでもう自由がきかず、全くおとなしくなった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そうしてその血統と、財産とが、同時に絶滅しかけていたところを、私のお蔭で辛うじて、
繋
(
つな
)
ぎ止めたという状態なのでした。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
丸太の杭を打ってそれへ
繋
(
つな
)
いだはよいが、たちまち杭を引き抜いて暴れだし、とうとうお断りを食って肝腎の菊も見ずにそのまま引き返し
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
朝夕に適度な運動をさせてやるほかは、なるべく
繋
(
つな
)
いでおくこと。よその犬と
喧嘩
(
けんか
)
をさせないようにすること。流産をする心配があるから。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
食物でいえばガラス絵などは、間食の如きものでしょう、間食で生命を
繋
(
つな
)
ぐ事は
六
(
む
)
つかしい、米で常に腹を養って置かなくてはなりません。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
私は見えない無数のものに
繋
(
つな
)
がれている。孤立したものは無数の関係に入ることによって極めてよく限定されたものとなった。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
徳川氏に到りては、人と人とを信念の大本なる理を以て
繋
(
つな
)
ぎ、忠義なる空文に大義名分
てふ
(
ちょう
)
力ある哲理的の解釈を応用したり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
上陸すると、恐ろしく暑い土地で、足首を二人ずつ鉄の鎖で
繋
(
つな
)
がれた囚人等が働いていた。其処には浜の
真砂
(
まさご
)
のように数多くの黒人がいた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ほかに兄弟とてなかった父方の親類といえば言われるのはそこきりで、血こそ
繋
(
つな
)
がっていないが今でも親類づき合いをしているのであった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「甲府の牢屋の中に、まだ少年でそしてそれほどの剣道の達者がいると? いったいそれは何という者で、何の罪で牢獄に
繋
(
つな
)
がれたのじゃ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この一夏の留守居は、夫と妻の
繋
(
つな
)
がれている意味をつくづく思わせた。彼は、結婚してからの自分が結婚しない前の自分で無いに、
呆
(
あき
)
れた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分と笹村との偶然の縁も、元はといえば深山の義理の叔父から
繋
(
つな
)
がれたのだということも、何かにつけて考え出さずにはいられなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ボア・ド・ブウロニュ街の
薔薇
(
ばら
)
いろの大理石の館、人知れぬロアル河べりの
蘆
(
あし
)
の中の
城
(
シャトウ
)
、ニースの
浪
(
なみ
)
に
繋
(
つな
)
ぐ
快走船
(
ヨット
)
、
縞
(
しま
)
の
外套
(
がいとう
)
を着た競馬の馬
雪
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
鰹節
(
かつおぶし
)
や生米を
噛
(
かじ
)
って露命を
繋
(
つな
)
ぎ、
岩窟
(
いわや
)
や樹の下で、雨露を
凌
(
しの
)
いでいた幾日と云う長い間、彼等は一言も不平を
滾
(
こぼ
)
さなかった。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さるに妾不幸にして、いひ
甲斐
(
がい
)
なくも病に打ち
臥
(
ふ
)
し、
已
(
すで
)
に絶えなん玉の緒を、
辛
(
から
)
く
繋
(
つな
)
ぎて漸くに、今この児は産み落せしか。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
繋
漢検準1級
部首:⽷
17画
“繋”を含む語句
繋留
繋綱
珠数繋
有繋
繋縛
繋合
関繋
繋累
船繋
三繋平
繋船
繋縄
繋辞
数珠繋
繋船場
繋留所
連繋
馬繋
聯繋
駒繋
...