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睥睨
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へいげい
ふりがな文庫
“
睥睨
(
へいげい
)” の例文
「お前は……」と牧師が怒気のために息づまりながら何か言い出そうとすると、男はしずかに口を開いて牧師を
睥睨
(
へいげい
)
しながら言った。
悪魔の聖壇
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
月光を線に延ばして奇怪な形に編み上げたようなアームチェーアや現代機械の臓腑の模型がグロテスクな物体となって
睥睨
(
へいげい
)
し嘲笑し
バットクラス
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
時によると、主人でも叱り付けるという勢いであるから、この金蔵老人に
睥睨
(
へいげい
)
されると、大抵のものは縮み上がってしまうのである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
握った丸太はいつも上段で、じっと敵を
睥睨
(
へいげい
)
した。静かなること水の如く、動かざること山の如しといおうか、
漣
(
さざなみ
)
ほどの微動もない。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眼
(
まなこ
)
を
放
(
はな
)
たず
睥睨
(
へいげい
)
して
居
(
を
)
る、
猛狒
(
ゴリラ
)
も
益々
(
ます/\
)
猛
(
たけ
)
く
此方
(
こなた
)
を
窺
(
うかゞ
)
つて
居
(
を
)
る、
此
(
この
)
九死一生
(
きうしいつしやう
)
の
分
(
わか
)
れ
目
(
め
)
、
不意
(
ふい
)
に、
實
(
じつ
)
に
不意
(
ふい
)
に、
何處
(
どこ
)
ともなく
一發
(
いつぱつ
)
の
銃聲
(
じうせい
)
。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
士族
気質
(
かたぎ
)
のマダ
失
(
う
)
せない大多数の語学校学生は突然の廃校命令に不平を
勃発
(
ぼっぱつ
)
して、何の
丁稚
(
でっち
)
学校がという勢いで商業学校側を
睥睨
(
へいげい
)
した。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
何んとなく此界隈を
睥睨
(
へいげい
)
して居る感じですが、今朝はさすが
遽
(
あわた
)
だしく、人の出入が、町の人達の好奇と
苛立
(
いらだ
)
たしさをかき立てて居ります。
銭形平次捕物控:280 華魁崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
而して此間に
方
(
あた
)
りて白眼天下を
睥睨
(
へいげい
)
せる
布衣
(
ほい
)
の学者は日本の人心を改造したり、少くとも日本人の中に福沢宗と
曰
(
い
)
ふべき一党を形造れり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
暴風雨
(
あらし
)
がふけば、すぐ壊れるような土塀を、お城の鉄壁とも
恃
(
たの
)
んで、御家中はみな、非常の心構えを
弛
(
ゆる
)
めずに、四隣を
睥睨
(
へいげい
)
しておるのだ。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
返り血を浴びたまま顔色蒼白となって
四辺
(
あたり
)
を
睥睨
(
へいげい
)
しつつ「俺の
事業
(
しごと
)
を邪魔するかッ」と叫んだ剣幕に呑まれて一人も入場し得なくなった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして時折その軒先には花紋の
飾瓦
(
かざりがわら
)
を用います。しかも屋根の中央にあの驚くべき怪物が吾々を
睥睨
(
へいげい
)
するのがしばしば見られるでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
吾々は其高尚な永久の仕事に従う天の選民だと、其日を離れて永久が別に有りでもするような事を言って、傲然として一世を
睥睨
(
へいげい
)
していた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
当時の慷慨家をして「彼
巍然
(
ぎぜん
)
たるニコライ会堂」あるいは「東京市中を
睥睨
(
へいげい
)
する
希臘
(
ギリシャ
)
教会堂」と慷慨せしめたる、四百年前の最大」建築なり。
四百年後の東京
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
万里の
波濤
(
はとう
)
を
俯瞰
(
ふかん
)
し
睥睨
(
へいげい
)
する大ホテル現出の雄図、
空
(
むな
)
しく
挫折
(
ざせつ
)
した石橋弥七郎氏の悲運に同情するもの、ただひとり故柳田青年のみならんや!
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
渡世人
(
とせいにん
)
の姿勢を崩さず、
羞恥
(
しゅうち
)
とか、有り来たりの女らしさなぞは対岸に捨て去って、世間を
睥睨
(
へいげい
)
して暮らして行くのだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
その芸術の優秀なことに於て前後を
睥睨
(
へいげい
)
しているのと、案内人が遠慮会釈もなく、「これが有名な東大寺大仏殿の仁王、右が
運慶
(
うんけい
)
、左が
湛慶
(
たんけい
)
——」
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
喧嘩に勝った鶏は揚々として首を高くもたげて四辺を
睥睨
(
へいげい
)
し、あたかも凱旋将軍の如くでますます飼主に重んぜられる。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
去年までは車にしたが、
今年
(
ことし
)
は今少し
楽
(
らく
)
なものをと考えて、到頭以前
睥睨
(
へいげい
)
して居た自動車をとることにした。実は自身乗って見たかったのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
種々の制度もありてたがいに相
睥睨
(
へいげい
)
し、汝、我を斬らば、我、汝を刺さんというがごときの意気あるにもかかわらず
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
手もなくプロメシュースそっくりだ! 鷲のように辺りを
睥睨
(
へいげい
)
しながら、軽快な足どりで悠然と歩きまわってござる。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
二人は東京と東京の人を
畏
(
おそ
)
れました。それでいて六畳の
間
(
ま
)
の中では、天下を
睥睨
(
へいげい
)
するような事をいっていたのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真っ黒な大しゃもじは、しばし私を
睥睨
(
へいげい
)
するように、のし掛からんずるようにして、宙に止まり浮いている。
しゃもじ(杓子)
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そして三角州の突端、騎馬のウェリントン公爵像は背後に
英蘭銀行
(
バンク・オヴ・イングランド
)
を、右手に株式取引所の厖大な建物を護り、巡査部長のように雑踏を上から
睥睨
(
へいげい
)
している。
ロンドン一九二九年
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
真実に脱俗して栄華の外に
逍遥
(
しょうよう
)
し、天下の高処におりて天下の俗を
睥睨
(
へいげい
)
するが如き人物は、学者中、百に十を見ず、千万中に一、二を得るも難きことならん。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
築山の中腹に
血達磨
(
ちだるま
)
のごとき姿をさらして、左膳は、左剣を大上段に火を吹くような隻眼で左右を
睥睨
(
へいげい
)
した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
遙かに日之本六十余州を
睥睨
(
へいげい
)
していたと伝えられる、不落難攻の青葉城は、その天守までがひと目でした。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
築地塀
(
ついじべい
)
に似た屋根つきの土のへいをめぐらした広い敷地の中に、うっそうたる大樹に囲まれて、純日本ふうの二階家が、あたりを
睥睨
(
へいげい
)
するようにそびえていた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さすがの燕王も心に之を
悪
(
にく
)
みて色
懌
(
よろこ
)
ばず、風声雨声、竹折るゝ声、
樹
(
き
)
裂くる声、
物凄
(
ものすさま
)
じき天地を
睥睨
(
へいげい
)
して、惨として隻語無く、王の左右もまた
粛
(
しゅく
)
として
言
(
ものい
)
わず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
疾
(
と
)
うに卒業して、学生でもなく生徒でもなく、受験生という
変体名称
(
へんたいめいしょう
)
の下に
甲羅
(
こうら
)
へた髯武者達が来て、入学しない中から
日和下駄
(
ひよりげた
)
を
穿
(
は
)
いて
周囲
(
あたり
)
を
睥睨
(
へいげい
)
していた。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
生きながら彼はいま戒壇院を
睥睨
(
へいげい
)
しているわけである。ここのこの木牌室ほど県下で立派なものはないということだが、私も一度見た。金色
燦爛
(
さんらん
)
たる部屋である。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
四方を
睥睨
(
へいげい
)
する。見物に対する虚勢らしい。戦闘員がやって来ると、悠々と石柱のかげに引っこむ。兜の下に黒い面をかぶっているので、どちら方かわからない。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
今はもう、これまでと思いつめた教経は、大太刀、長刀をはじめ、兜まで海の中へ投げ捨て、身軽な装立ちになると、仁王立ちになって、あたりを
睥睨
(
へいげい
)
しながら叫んだ。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
宇内
(
うだい
)
を
睥睨
(
へいげい
)
し、日月を
叱咜
(
しつた
)
せし、古来の英雄何すれぞ墳墓の前に
弱兎
(
じやくと
)
の如くなる。誰か不朽といふ字を字書の中に置きて、
而
(
しか
)
して世の俗眼者流をして
縦
(
ほしいまゝ
)
に流用せしめたる。
富嶽の詩神を思ふ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
槍ヶ岳や
大天井
(
おおてんしょう
)
との
相撲
(
すもう
)
には、北穂高東穂高の二峰がそれぞれ派せられている、
何
(
いず
)
れも三千米突内外の同胞、自ら中堅となって
四股
(
しこ
)
を踏み、群雄を
睥睨
(
へいげい
)
しおる
様
(
さま
)
は、丁度
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
今まで早稲田大学は帝都の
僻隅
(
へきぐう
)
にあって天下を
睥睨
(
へいげい
)
して威張っておったけれども、社会からあれは私立大学だと言われて、価値のないものの如く俗人から誤解されておった。
始業式訓示
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
巡査は巡査らしく立ちどまってあたりを
睥睨
(
へいげい
)
し、犬は鎖を張って子供を引いて去った。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
年処を経たオンコの珍しい巨大なのが一本、あたりの
濶葉樹
(
かつようじゅ
)
のなかにそびえ、緑というよりはむしろ、重くくろずんだまッ黒なときわ葉を密生させ、すッくと原野を
睥睨
(
へいげい
)
していた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
昔はぶっさき
袴
(
ばかま
)
の侍がその上に立って、四辺を
睥睨
(
へいげい
)
したであろう。石垣に続いた土手は、ゆるい傾斜で、濠の水面まですべっていた。水は青いぬらで
澱
(
よど
)
んでいた。菱の葉が浮いていた。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
悠然
(
いうぜん
)
と
車上
(
しやじよう
)
に
搆
(
かま
)
へ
込
(
こ
)
んで
四方
(
しはう
)
を
睥睨
(
へいげい
)
しつゝ
駆
(
か
)
けさせる時は
往来
(
わうらい
)
の
奴
(
やつ
)
が
邪魔
(
じやま
)
でならない右へ
避
(
よ
)
け左へ
避
(
さ
)
け、ひよろひよろもので
往来
(
わうらい
)
を
叱咜
(
しつた
)
されつゝ歩く時は
車上
(
しやじよう
)
の奴
が
(
やつ
)
が
癇癪
(
かんしやく
)
でならない。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
我黨は
廼
(
すなは
)
ち五大洲を
睥睨
(
へいげい
)
して彼の千魂萬魂といはれたりし怪物、わが日の本の鴎外將軍が審美の利劍に
劈
(
つんざ
)
かれて、つひにこそそが正體をあらはしつれと、
洽
(
あまね
)
くとつ國びとにのらまくす。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
日本全土を
睥睨
(
へいげい
)
して独特の奇才を現はしはじめてきたのが、石田三成であつた。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
宇宙の中心に座を占めて四辺を
睥睨
(
へいげい
)
した。自己に醒めたるものの必ず通り行く道は個人主義である。それには醒めたる個人をして、しかあらしむる現実生活の種々なる外的の圧力がある。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
風貌
(
ふうぼう
)
も、その時はちゃんとネクタイをしておられたし、
飄々
(
ひょうひょう
)
などという仙人じみた印象は
微塵
(
みじん
)
も無く、お顔は黒く骨張って謹直な感じで、鉄縁の眼鏡の奥のお眼は油断なく四方を
睥睨
(
へいげい
)
し
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
折々書生仲間の中には、頭髪を蓬々とし、肩を怒らし、短い衣服を着て、怖い顔付をし、四辺を
睥睨
(
へいげい
)
しながら、「衣至
二
于肝
一
、袖至
二
于腕
一
」などと
謳
(
うた
)
って、太い棒を持って歩いている。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
神田
(
かんだ
)
本郷
(
ほんごう
)
辺のバアやカッフェ、青年会館や音楽学校の音楽会(但し一番の安い切符の席に限るが)
兜屋
(
かぶとや
)
や
三会
(
さんかい
)
堂の展覧会などへ行くと、必ず二三人はこの連中が、
傲然
(
ごうぜん
)
と俗衆を
睥睨
(
へいげい
)
している。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ある
美貌
(
びぼう
)
の
声楽家
(
せいがくか
)
は、
指
(
ゆび
)
に
宝石
(
ほうせき
)
をかがやかせ、すましこんで、ステージに
立
(
た
)
ち、たとえ
聴衆
(
ちょうしゅう
)
を
睥睨
(
へいげい
)
しながら
歌
(
うた
)
っても、
蔭
(
かげ
)
では、
権力
(
けんりょく
)
のあるものや、
金力
(
きんりょく
)
あるもののめかけであったり、
男
(
おとこ
)
どもには
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
紫色の
潤
(
うる
)
みを帯びた大きな目は傍で観て居る人々を
睥睨
(
へいげい
)
するかのやう。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
開拓記念に最も
好箇
(
かうこ
)
な農科大學や、いつも高い煙突の煙りを以つて北地を
睥睨
(
へいげい
)
する札幌ビール工場や、製麻會社や、石造りの宏大な拓殖銀行や、青白く日光の反射する區立病院や、停車場、中島遊園
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
酔ヘバ則チ一世ヲ
睥睨
(
へいげい
)
シ、モシ意ニ
忤
(
もと
)
ルコトアレバ、
輙
(
すなわ
)
チ面折シテ人ヲ
辱
(
はずか
)
シム。
是
(
ここ
)
ヲ以テ
益〻
(
ますます
)
窮ス。シカモソノ志ノ潔ナル世知ル者ナシ。文久二年壬戌十一月二十八日病ンデ江戸
不忍池
(
しのばずのいけ
)
ノ
僑居
(
きょうきょ
)
ニ没ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
青木は傲然として、知識的にクラス全体を
睥睨
(
へいげい
)
していたのだ。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
“睥睨”の意味
《名詞》
睥睨(へいげい)
(context、dated)横目で見るように相手をよく観察すること。
睨みを効かせて威圧的に振る舞うこと。
(出典:Wiktionary)
睥
漢検1級
部首:⽬
13画
睨
漢検1級
部首:⽬
13画
“睥”で始まる語句
睥
睥目