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斜
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はす
ふりがな文庫
“
斜
(
はす
)” の例文
京の女中のは、黒繻子の帯をキチンと
斜
(
はす
)
かいに立てに結んだものが、大阪は両端を少しだらりと下げておったように覚えております。
女の話・花の話
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
大きな赤い口で、歯は
茄子色
(
なすびいろ
)
につやつやしていた。洗い髪がふっとふくれて、浴衣に博多の細帯をくいちがうように
斜
(
はす
)
にまいていた。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お高は、切り炉へ向かって
斜
(
はす
)
にすわって、ふくさを帯にはさんだ。湯加減をみて、ナツメを取りあげた。薄茶をたてようというのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何でも森を
斜
(
はす
)
に取って西北の地平線から西へかけて低いところにもしゃもしゃと
生
(
は
)
えてる
楢林
(
ならばやし
)
あたりまでを写して見ることに決めた。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ふと思ひついて、頭の上を手さぐりして、天井から
斜
(
はす
)
ツかひに引つ張られてゐる紐を掴んで、
手繰
(
たぐ
)
り寄せると、大丈夫手答へがある。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
山中組はジャンボーの通った石垣の間を抜けて、だらだら坂の降り
際
(
ぎわ
)
を、右へ
上
(
のぼ
)
ると
斜
(
はす
)
に頭の上に
被
(
かぶ
)
さっている大きな
槐
(
えんじゅ
)
の奥にある。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
書窓
(
しょそう
)
から眺めると、
灰色
(
はいいろ
)
をした
小雨
(
こさめ
)
が、
噴霧器
(
ふんむき
)
で
噴
(
ふ
)
く様に、
弗
(
ふっ
)
——
弗
(
ふっ
)
と北から
中
(
なか
)
ッ
原
(
ぱら
)
の杉の森を
掠
(
かす
)
めて
斜
(
はす
)
に
幾
(
いく
)
しきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それで二十段もある階段が
斜
(
はす
)
に上にかかって、その行き詰まりの所に出入り口があり、そこに古びた長方形の行燈がかけてあった。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
大方遊んでばかりいやがったのだろう、この
食
(
く
)
い
潰
(
つぶ
)
し
野郎
(
やろう
)
めッてえんでもって、釣竿を
引奪
(
ひったく
)
られて、
逃
(
に
)
げるところを
斜
(
はす
)
に
打
(
ぶ
)
たれたんだ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ドカリ——
洗面所
(
せんめんじよ
)
の
方
(
かた
)
なる、
扉
(
どあ
)
へ
立
(
た
)
つた、
茶色
(
ちやいろ
)
な
顔
(
かほ
)
が、ひよいと
立留
(
たちどま
)
つてぐいと
見込
(
みこ
)
むと、
茶
(
ちや
)
の
外套
(
ぐわいたう
)
で
恁
(
か
)
う、
肩
(
かた
)
を
斜
(
はす
)
に
寄
(
よ
)
つたと
思
(
おも
)
ふと
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
というなり、ベッドのはじに
斜
(
はす
)
かいにかけていた体を、半分伸子の上へおおいかぶせるようにして右手を伸子の体のあっち側についた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
海馬
(
かいば
)
の噴水の横から道を
斜
(
はす
)
に
行
(
ゆ
)
くともう白に赤の細い
縁
(
ふち
)
を取つたリラの
店前
(
テラス
)
の張出した
日覆
(
ひおほひ
)
が、目の前でぱたぱた風に動いて居ました。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それがちょうど二人の座席から二列前の
椅子
(
いす
)
で、ちょうどこっちからその
頸筋
(
くびすじ
)
と、耳と
片頬
(
かたほお
)
と
顎
(
あご
)
が
斜
(
はす
)
かいに見えるような位置にあった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
侍女
(
こしもと
)
に日傘をささせ、女坂の中段から右の平地を
斜
(
はす
)
に切って、そこに一軒ある古風な生垣に
蠣殻
(
かきがら
)
かぶせの屋根門をスウとくぐった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、菊池君は吃る様に答へて、変な笑ひを浮べ乍ら、ヂロ/\一座を見廻したが、私とは
斜
(
はす
)
に一番遠い、末座の空席に
悠然
(
ゆつたり
)
と
胡坐
(
あぐら
)
をかく。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
御承知の通り、寿座の楽屋口は隣接の
曙館
(
あけぼのかん
)
の薄暗い塀に面して居りまして、
斜
(
はす
)
かいに
三好野
(
みよしの
)
の
暖簾
(
のれん
)
が向い合いに垂れて居ります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
みのるは默つて後を振返つたが、人のゐない室には
斜
(
はす
)
に見渡したみのるの眼に食卓の白いきれが
靡
(
なび
)
いて見えたばかりであつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
ところで、休んでいるうちに方角がわからなくなったとみえて、道を
斜
(
はす
)
に、大きな松の木の根が出ている
窪
(
くぼ
)
みのほうへどんどん歩いてゆく。
キャラコさん:03 蘆と木笛
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
不断着だけれど、荒い縞の着物に
飛白
(
かすり
)
の羽織を着て、
華美
(
はで
)
な帯を締めて、障子に
掴
(
つか
)
まって
斜
(
はす
)
に立った姿も何となく目に
留
(
と
)
まる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
兵庫に結った首は
斜
(
はす
)
に飛んで、つづいて登ろうとする浮橋の足もとに転げ落ちた。浮橋も女房も、はっと立ちすくんだままで声も出なかった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それと
殆
(
ほと
)
んど平行しながら通っているのだが、それらの二つの平行線を
斜
(
はす
)
かいに切っている、いくつかの
狭
(
せま
)
い横町があった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「おのれ、よくも地蔵菩薩を天狗だなどと
吐
(
ぬか
)
したな。」と、噛みつくように喚きながら、
斜
(
はす
)
に相手の
面
(
おもて
)
を打ち据えました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を
斜
(
はす
)
に肩にして二人は遊んでるのか歩いてるのか
判
(
わか
)
らぬように歩いてる。おとよはもうもどかしくてならないのだ。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「どうだね? 俊夫君。逆さまに読んでも、
斜
(
はす
)
に読んでも、一字おきに読んでも、さっぱり、意味をなさぬじゃないか」
紫外線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
斜
(
はす
)
かけに牽きだそうとして、馬がうんと一つ踏んばったので、馬子は
〆
(
しめ
)
たとばかり、止め石を当てるために車台の下へかがんだ拍子に足が
辷
(
すべ
)
った。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
喉仏はこわれて居たし、縄の跡は
斜
(
はす
)
に掛って居たんですって、——多分何処か技振りの良い松の木にブラ下って居るのを
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いゝあんばいに
躯
(
からだ
)
が
利
(
き
)
いて
来
(
き
)
ました、
斯
(
か
)
うなると
慾
(
よく
)
が出てまた
上
(
あが
)
つて
包
(
つゝみ
)
を
斜
(
はす
)
に
背負
(
せお
)
ひ
道中差
(
だうちゆうざし
)
をさして
逃
(
に
)
げ出しました。
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その男の手の甲に、
斜
(
はす
)
かけに、
傷痕
(
きずあと
)
らしい黒い
筋
(
すじ
)
のあったのが、いつまでも、いつまでも、私の目に残っていました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
背中から腋の下へ
斜
(
はす
)
に、渋段々染の風呂敷包を結び負いにして、朱鞘の大小ぶっ込みの
他
(
ほか
)
に、鉄扇まで腰に差した。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
いつも両方から視線が出会う度に(わたしたちは
斜
(
はす
)
かいに向き合って坐っていたので、そういう機会は度々あった)
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
疵は、逃げようとしたところをでも追い斬りに斬り下げられたらしく、右肩から左へ
斜
(
はす
)
にうしろ
袈裟
(
げさ
)
が一太刀です。
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その綱が几帳の
裾
(
すそ
)
などにもつれるのを、一所懸命に引いて逃げようとするために、御簾の横があらわに
斜
(
はす
)
に上がったのを、すぐに直そうとする人がない。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
頸筋
(
くびすじ
)
の皺がみんな集まって、ただ一つの
円座
(
えんざ
)
をつくり、皮でできた太い
環
(
わ
)
の上に、頭が
斜
(
はす
)
かいに
載
(
の
)
っているのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
赤煉瓦を
斜
(
はす
)
かいに並べた中央の大路を、
碧
(
みどり
)
色の
釉瓦
(
くすりがわら
)
で縁取りしている所は、いわゆる
矢筈敷
(
ヘリング・ボーン
)
と云うのであろう。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
噴水
(
ふきあげ
)
のうへを
斜
(
はす
)
に、——鶺鴒まがひの痩せた小禽がひとつ、青磁いろの一線を曳いて、さむくおちていつた。なにの言葉ものこらない。なにの囁きすらも。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
世間の抜道を
斜
(
はす
)
に歩く俺のような渡世人にゃ、この世の中がどうなろうと知ったことかい。ホイ、酒だ。おい、ごめんねえよ! いねえのか、誰も? おい!
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
午食
(
ごしょく
)
が済むと、青木が寝台の隅で、シャツ一貫になって、重たい義足のバンドを肩から
斜
(
はす
)
かいに吊り着けた。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
肩から
斜
(
はす
)
に腰へ巻きつけただぶだぶの
布片
(
きれ
)
が素足をのこして三角の裾をつくつてゐた。カーテンのお化けだ。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
さて來りて物をも言はず、目を
斜
(
はす
)
にしばらく我をうちまもり、のち顏をみあはせていひけるは 八五—八七
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
キュッと
紅
(
べに
)
をさした脣で小さく食い締めて、誰れが来ているのか、といったような風に空とぼけて、眼を遠くの壁に遣りながら、少し、頸を
斜
(
はす
)
にして、黙っていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
今度は
斜
(
はす
)
むこうの三
軒長屋
(
げんながや
)
の格子窓の中ほどの所を、風に吹きつけられたようにかすめて通って、それからまた往来の上を人通りがないのでいい気になって走ります。
僕の帽子のお話
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お鶴が迎いに行って
漸
(
ようや
)
く二階を下りて来たが、準備した夕飯の膳を
他所
(
よそ
)
に、柱に近く、
斜
(
はす
)
に坐った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
西関外
(
せいかんがい
)
の城の根元に
靠
(
よ
)
る地面はもとからの官有地で、まんなかに一つ
歪
(
ゆが
)
んだ
斜
(
はす
)
かけの細道がある。
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
もしこのおれが將官の禮裝でもつけてあの邸へやつて行くとする——そのおれの右の肩にも
肩章
(
エポレット
)
、左の肩にも
肩章
(
エポレット
)
、肩からは藍色の大綬章が
斜
(
はす
)
に掛かつてゐようといふ
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
その店からは
斜
(
はす
)
かいにこちらが見えるので、幸太が話しに来るのをいつも見ていたのに違いない。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
斜
(
はす
)
に白くつめたくのびた石だゝみのうえをそのまゝ広い境内へ入ると、欅だの、銀杏だの、枯れた梢のたか/″\と空にそゝる間でみたらしの手拭がそよりとも動かず
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
けれども女は、私にむかって叮嚀にお辞儀をして、私の顔を
斜
(
はす
)
に
覗
(
のぞ
)
き込むようにしながら、ごめん下さいましい、とまた言った。あたしら、ここの畑の百姓でございますよ。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
町中を流れる黒ずんだ水が見える。
空樽
(
あきだる
)
を
担
(
かつ
)
いで
陸
(
おか
)
から荷舟へ通う人が見える。
竈河岸
(
へっついがし
)
に添うて
斜
(
はす
)
に樽屋の店も見える。何もかも捨吉に取っては親しみの深いものばかりだ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
向ふの
隅
(
すみ
)
には痩た赤ひげの人が
北極狐
(
ほくきよくぎつね
)
のやうにきよとんとすまして腰を掛けこちらの
斜
(
はす
)
かひの窓のそばにはかたい
帆布
(
はんぷ
)
の上着を着て愉快さうに自分にだけ聞えるやうな
微
(
かす
)
かな口笛を
氷河鼠の毛皮
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
段々引裂かれて半分近くまでも
斜
(
はす
)
に
削掛
(
けずりかけ
)
のように
総
(
ふさ
)
が
下
(
さが
)
ってる帯を平気で締めていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
“斜”の意味
《名詞》
(シャ 主に例句で)正面からずれた位置。
(出典:Wiktionary)
斜
常用漢字
中学
部首:⽃
11画
“斜”を含む語句
傾斜
斜向
斜違
斜面
斜視
左斜
斜陽
傾斜地
狭斜
斜交
斜子
黒斜子
斜上
斜坑
斜後
傾斜面
横斜
斜掛
第二斜檣
緩傾斜
...