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奏
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かな
ふりがな文庫
“
奏
(
かな
)” の例文
その後はたゞ階下で
奏
(
かな
)
でられるピアノかハァプの響きや、召使長や給仕が往來する足音や、
茶菓
(
さくわ
)
が渡される時のコップや茶碗の響や
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
琴台
(
きんだい
)
の上に乗せてあるのは、二
絃
(
げん
)
焼桐
(
やきぎり
)
の
八雲琴
(
やくもごと
)
、心しずかに
奏
(
かな
)
でている。そして、ふと
琴
(
こと
)
の手をやめ、
蛾次郎
(
がじろう
)
のほうをふりかえった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女の眼は
偏
(
ひとえ
)
に三味線の糸の上に落ちているようである。恐らく彼女は、自分の
奏
(
かな
)
でている音楽を、一心に聞き
惚
(
ほ
)
れているのでもあろう。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
淋
(
さび
)
しきまゝに
琴
(
こと
)
取出
(
とりいだ
)
し
獨
(
ひと
)
り
好
(
この
)
みの
曲
(
きよく
)
を
奏
(
かな
)
でるに、
我
(
わ
)
れと
我
(
わ
)
が
調
(
てう
)
哀
(
あは
)
れに
成
(
な
)
りて、いかにするとも
彈
(
ひ
)
くに
得
(
え
)
堪
(
た
)
えず、
涙
(
なみだ
)
ふりこぼして
押
(
おし
)
やりぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
水車が休んでゐる時は松はひとりで
淋
(
さび
)
しく
奏
(
かな
)
でた。その声が
屡々
(
しば/\
)
のこと私を、父と松林の中の道を通つて
田舎
(
ゐなか
)
から出て来た日に連れ戻した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
その
弾丸
(
たま
)
が部屋の隅のグランドピアノを貫いたらしく、器械の間を
銛丸
(
ブレット
)
がゴロゴロと転がり落ちる音が、何ともいえない微妙な音階を
奏
(
かな
)
でた。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
斯様
(
かよう
)
なお喋りはやめにいたしまして、いかがでございましょう、お邪魔にならなければ、
拙
(
つたな
)
い琵琶の一曲を
奏
(
かな
)
でてお聞きに入れましょうか」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
優にやさしき
騎士
(
ナイト
)
達は、行列を作って夜もすがら、セレナーデを歌い
奏
(
かな
)
で続けて、お艶の一顧を得ようとするのでしょう。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしてたとへば巧みに琵琶を
奏
(
かな
)
づる者が、
絃
(
いと
)
の
震動
(
ゆるぎ
)
を、巧みに歌ふ者と
合
(
あは
)
せて、歌に興を添ふるごとく 一四二—一四四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
と云う意味は、父母の闘争時に
於
(
お
)
けるはつらつさは、どうして、ヴァイオリンの
奏
(
かな
)
で
出
(
い
)
だす恐怖音の如きなまやさしいものではなかったからである。
江川蘭子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
琴の糸の
奏
(
かな
)
で出すあやは、彼女の空想を一ぱいにふくらませ、どの芽から摘んでいいかわからない想いが
湧上
(
わきあが
)
るのだ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
月光のため白銀の炎のようにみえるその頂上のあたりには銀河がゆるやかに流れていた。天女の
奏
(
かな
)
でる楽の音が聞えたという伝説を残してもよかろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
蓄音機は再び美しいメロディーを
奏
(
かな
)
ではじめた。——私は、その
傍
(
そば
)
へ音叉を持っていって、ぴーんと弾いてみた。
暗号音盤事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その境に臨むと、山から谷、穴の中の
蟻
(
あり
)
までが耳を澄ます、微妙な天楽であるごとく、
喨々
(
りょうりょう
)
として調べ
奏
(
かな
)
でる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
バンドは、ラストの「グッドナイト・スイートハート」を
奏
(
かな
)
でていた。女は、小さな赤い唇をしていた。
その一年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
どこからか兵士の
奏
(
かな
)
でる
胡弓
(
こきゅう
)
の音が漂ってくる。姫は寝台に身を起して、じっと不思議そうに
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
を見詰めている。長い沈黙がつづく。咽ぶような胡弓の調べ。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
楽堂の片隅に身を
狭
(
せば
)
めながら自分相応の小さな楽器を執って有名無名の多数の楽手が人生を
奏
(
かな
)
でる大管絃楽の
複音律
(
シンフォニイ
)
に
微
(
かす
)
かな一音を添えようとするのが私の
志
(
こころざし
)
である。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
折々は黄金丸が枕辺にて、
有漏覚
(
うろおぼ
)
えの舞の
手振
(
てぶり
)
、または綱渡り
籠抜
(
かごぬ
)
けなんど。
古
(
むか
)
し
取
(
とっ
)
たる
杵柄
(
きねづか
)
の、
覚束
(
おぼつか
)
なくも
奏
(
かな
)
でけるに、黄金丸も興に入りて、病苦もために忘れけり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
今日は常よりも快かりしとて、浪子は
良人
(
おっと
)
を待ちがてに絶えて久しき琴取り
出
(
い
)
でて
奏
(
かな
)
でしなりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
人の良い兄弟子の嬉しそうな
笑顔
(
えがお
)
を見て、若い子貢も微笑を禁じ得ない。
聡明
(
そうめい
)
な子貢はちゃんと知っている。子路の
奏
(
かな
)
でる音が
依然
(
いぜん
)
として殺伐な北声に満ちていることを。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私の魂よ、私とともに苦しみ年老いてきたお前を、私はどんなにかいっそう愛してることだろう! お前の皺の一つ一つは、私にとっては過去が
奏
(
かな
)
でる一つの音楽である。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
反逆者の魂にこもる執著の
憑
(
つ
)
いてさせる業としか思われない。しかもその成し遂げた
蹟
(
あと
)
を見るに、そこには人文の中心に向って
奏
(
かな
)
でられる微妙な諧和が絶えず鳴り響いている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ここにその大前小前の宿禰が、手を擧げ膝を打つて舞い
奏
(
かな
)
で、歌つて參ります。その歌は
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
彼は叔父がよくたえ子の
奏
(
かな
)
でるのを喜んできいたことを思い出した。それでこう云った。
恩人
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
往來を隔てた千駄木の崖の方で、蝉の聲が
逸早
(
いちはや
)
くも今年の夏の新しい歌を
奏
(
かな
)
で出した。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
忽ちにして歌ふこと一句、忽にして又
奏
(
かな
)
づること一節。農夫どもは
掌
(
たなそこ
)
打ち鳴しつ。母上は立ちとまり給ひぬ。この時童の歌ひたる歌こそは、いたく我心を動かしつれ。あはれ此歌よ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
一間と離れた後の
草叢
(
くさむら
)
には、鈴虫やら、松虫やらが、この良夜に、言ひ知らず楽しげなる好音を
奏
(
かな
)
でてゐる。人の世にはこんな悲惨な事があるとは、夢にも知らぬらしい山の黒い影!
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そして、
奏
(
かな
)
でる
人
(
ひと
)
が、
名手
(
めいしゅ
)
になればなるほど、
堪
(
た
)
えがたい
思
(
おも
)
いがされるのでした。
楽器の生命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
すぐ近所の市立公園ではオーケストラが音楽を
奏
(
かな
)
で、合唱団が歌をうたっていた。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
演歌師の
奏
(
かな
)
でるバイオリンの響きは、夜店の果てまで来たもの哀しさでした。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そしてしいられるままに、ケーベル博士からののしられたヴァイオリンの一手も
奏
(
かな
)
でたりした。木部の全霊はただ
一目
(
ひとめ
)
でこの美しい才気のみなぎりあふれた葉子の容姿に吸い込まれてしまった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
夜々
綢繆
(
ちうびう
)
の思ひ絶えざる
彷彿
(
はうふつ
)
一味の調は、やがて絶海の孤島に
謫死
(
てきし
)
したる大英雄を歌ふの壮調となり
五丈原頭
(
ごぢやうげんとう
)
凄惨
(
せいさん
)
の秋を
奏
(
かな
)
でゝは人をして
啾々
(
しうしう
)
の
鬼哭
(
きこく
)
に泣かしめ、時に
鏗爾
(
かうじ
)
たる暮天の鐘に和して
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
下の庭の老いた
胡桃樹
(
くるみ
)
の枝かげにゆらゆらと立ち昇っている、その噴水のささやきのなかへ、
奏
(
かな
)
で得る限り柔らかく奏でた調べを響き込ませる時と、ほぼ似たような満悦を彼に与えるのであった……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
四邊
(
あたり
)
の
空氣
(
くうき
)
も
融解
(
とろ
)
くるばかりに、なつかしう
奏
(
かな
)
でゝ
下
(
くだ
)
され。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
ある時、熱田明神に参詣し、熱心に琵琶を
奏
(
かな
)
でた。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
マンドリン
奏
(
かな
)
でわづらふ風の
群
(
むれ
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
慈雨
到
(
いた
)
る絶えて久しき
戸樋
(
とひ
)
奏
(
かな
)
で
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
アポロンの
奏
(
かな
)
でる琴を聞かず
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
奏
(
かな
)
でいでつる一曲の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
だから宴楽の時などでも、楽人の
奏
(
かな
)
でる
調節
(
ふし
)
や譜に間違いがあると、どんなに酔っているときでも、きっと奏手の楽人をふりかえって
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
優にやさしき
騎士
(
ナイト
)
達は、行列を作つて夜もすがら、セレナーデを歌ひ
奏
(
かな
)
で續けて、お艶の一
顧
(
こ
)
を得ようとするのでせう。
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三人とも、離れ離れにいて、それぞれ勝手の形を取り、勝手の曲を
奏
(
かな
)
ではじめた時が、合奏のはじまる時であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
我及び我にまさりて愛のうるはしきけだかき
調
(
しらべ
)
が
奏
(
かな
)
でしことある人々の父かく己が名をいふを聞きしとき 九四—
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
薬師寺金堂の白鳳の如来と脇侍は、互に渾然たる調和を示し、美しい調べを
奏
(
かな
)
でていることは前に述べたが、三月堂の三像は、はるかに内面的だと思う。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
彼女は、令孃たちの描き上げた花や風景の美しい繪を誇つた。その歌ふ唄や、その
奏
(
かな
)
でる曲や、その編み上げられた紙入れや、飜譯出來る佛蘭西語の本を誇つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
九代目市川団十郎が『忠臣蔵』の大石
内蔵之助
(
くらのすけ
)
で、
山科
(
やましな
)
の別れに「冬の
恵
(
めぐみ
)
」を
奏
(
かな
)
で、また四国旅行の
旅土産
(
たびづと
)
に、「三津の眺め」の唱歌をつくったので、一層評判になった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
唯
(
たゞ
)
山深
(
やまふか
)
く
木
(
き
)
を
樵
(
こ
)
る
賤
(
しづ
)
が、
兎
(
と
)
もすれば、
我
(
わ
)
が
伐木
(
ばつぼく
)
の
谺
(
こだま
)
にあらぬ、
怪
(
あや
)
しく、
床
(
ゆか
)
しく
且
(
か
)
つ
幽
(
かすか
)
に、ころりん、から/\、と
妙
(
たへ
)
なる
楽器
(
がくき
)
を
奏
(
かな
)
づるが
如
(
ごと
)
きを
聞
(
き
)
く——
其時
(
そのとき
)
は、
森
(
もり
)
の
枝
(
えだ
)
が
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
満池
(
まんち
)
の敗荷はちょうど自分の別れを送る音楽の如く、荒涼
落寞
(
らくばく
)
の曲を
奏
(
かな
)
ではじめる。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一つの景色には、そうした様々の美しいトピアリーが涯しもなく並んでいる。そこには雄大なもの、繊細なもの、あらゆる直線と曲線との交錯が、不思議なオーケストラを
奏
(
かな
)
でているのだ。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
海
(
うみ
)
を
望
(
のぞ
)
みながら、はるか、
異国
(
いこく
)
の
空
(
そら
)
の
下
(
した
)
で、この
愉快
(
ゆかい
)
な
音
(
ね
)
を
出
(
だ
)
す
楽器
(
がっき
)
が、
何人
(
なんぴと
)
かによって
奏
(
かな
)
でられたり、また、この
楽器
(
がっき
)
が
鳴
(
な
)
りひびく
夜
(
よ
)
が、ちょうどいい
月夜
(
つきよ
)
で、
街
(
まち
)
の
中
(
なか
)
を
歩
(
ある
)
いている
人
(
ひと
)
たちが
楽器の生命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
奏
常用漢字
小6
部首:⼤
9画
“奏”を含む語句
節奏
合奏
伴奏
吹奏
協奏曲
前奏曲
覆奏
四重奏曲
四重奏
復奏
奏鳴曲
伝奏
弾奏
演奏
覆奏詞
変奏
変奏曲
奏者
悲愴奏鳴曲
演奏会
...